バイブレーターはマナーモードに
太陽と溶け合っていく海――を、ながめながら――糞をする――。

海は血のいろ。それは太陽のせいではなく、死んだ神様が吐血した、赤い血のいろ。

精液をかける、君の美しい顔面にではなく、他ならぬ血の海に。

精液の白色と、血の赤色がまじった《桃色》は、凄まじくエロティックで。

僕たちは思考する頭脳と、射精する下腹部とを、併せ持っている。どちらかが真理で、どちらかが誤りで、という事ではなく。

頭脳と下腹部は、バラバラに在るのではなく、地続きになっている。

だから僕たちは形而上学的な考察をしながら、性交をするのである。

ドナティアン・アルフォンス・フランスワ・ド・サドは、乞食女を強姦しながら、壁に数字を刻んだ。

類似を見いだすのではなく、無限の差異を見いだすこと。

君は僕で、僕は君。だから結婚しよう。そして離婚して、他の人間とふたたび結婚しよう。

僕は自己の同一性を信用しない、漂泊者である(僕は昨日、仮面ライダーであったが、今日はアンパンマンであり、明日はブルース・リーである)。

結婚はただの制度以上のもの、多分。

アンドレイ・チカチロは、マザー・テレサに成りえたし、マザー・テレサは、アンドレイ・チカチロに成りえた。何故なら彼らは、同じ人間なのだから。

アンドレイ・チカチロと、マザー・テレサが結婚した。

みんな自殺していく。自殺するほどに安易な希望は、ないのだから。

あらゆる人間が自殺した後に、無数のバイブレーターのみが地上に残り、それらは芋虫のように振動している。

ヴヴヴヴヴヴヴ……。

主観的に捉えれば、世界の本質は、不条理と滑稽。

客観的に捉えれば、ただ事実のみがある。そして事実しかない。

あらゆるロマンは処刑される運命にある。

それでもなおロマンを追い求める(死ぬことも含めてロマンである)。

殺される事を覚悟してまで、なお。

どんなハリガネムシでさえ、なお。

どんなゴキブリでさえ、なお。

どんなウミウシでさえ、なお。

どんな条虫でさえ、なお。

どんな僕でさえ、なお。

結局は処刑されて、最後にはやはりバイブレーターのみが残る。

ヴヴヴヴヴヴヴ……。
昼野陽平
http://hirunoyouhei.blog.fc2.com/
2013年08月30日(金) 19時22分31秒 公開
■この作品の著作権は昼野陽平さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ありがとうございます。
よろしくおねがいします。

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No.2  昼野陽平  評価:--点  ■2013-09-06 16:07  ID:NnWlvWxY886
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>坂倉圭一さん

いつも感想をありがとうございます。
最後の方はたしかに俗っぽいなと言われて気付きました。
ありがとうございました。
No.1  坂倉圭一  評価:40点  ■2013-09-04 21:01  ID:VXAdgm2cKp6
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格好良さがあります。
ただ最後の「どんな〜でさえ、なお」のところで、若干ですが、詩の「質」が下がったように感じてしまいました。
いずれにしましても才能を感じました。
総レス数 2  合計 40

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