対話篇 (花)
向こうの椿は鮮やかであるとあなたは言った
足元を蠅が行過ぎた
蝦蟇ガマが捉えて
粘つく口で接吻をした
向こうの椿は鮮やかだった

こちらの躑躅つつじは枯れ果てているとあなたは言った
指先に蜂が吸付いた
針が捉えて
柔らかな肉の丘を抉った
こちらの躑躅つつじは枯れ果てていた

(風の吹き行く)

そちらの桜は鮮やかなのかとあなたは訊いた
唇に付されたプラスチック
声を捉えて
ざらつく砂にすり替えている
こちらの桜は振り落ちている

どこの椿は落ちずにいるかと私は訊いた
心臓に突き刺した脈動器
血汐を捉えて
うずもれた朝を叫んでいる


こちらの椿は鮮やかである



あなたが言った


足元を

蠅が

行き過ぎた




あちらの椿は鮮やかだった



かぜ、かぜ、かぜ。
カムサッカ
2013年08月23日(金) 00時04分06秒 公開
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No.5  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:30点  ■2013-09-08 00:00  ID:VMd.5DdGNNg
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読みながら、実家の庭先を思い出しました。そこに咲いていたのは椿ではなく山茶花と躑躅でしたが……。

いい雰囲気ですね。割と好きです。
花と虫、蛙と風が上手く絡んでいると思いました。

詩の感想を書くのが久しぶりで……
下手くそですみません。ありがとうございました。
No.4  カムサッカ  評価:--点  ■2013-08-25 21:48  ID:30GB.9HIXf.
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藤村さんへ

ヒキガエルの舌の色って何色でしたっけ(笑)
もう、生き物は名前の語感だけで使ってるので、色彩感が出ているとしても偶然です、すいません!

どこの椿は〜は個人的にお気に入りです。
褒めていただいてありがとうございます。
No.3  藤村  評価:30点  ■2013-08-24 16:50  ID:sg12n8JFuiY
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こんにちは。
おもわずヒキガエルの舌の色をたしかめてしまいました。
色のいろんな濃淡があるのだなあとあてもなくおもったり、
どこの椿は〜
に、はっとしたりしました。いいなとおもいました。
No.2  カムサッカ  評価:--点  ■2013-08-23 23:33  ID:30GB.9HIXf.
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SHIRIAIさんへ

ありがとうございます。
いろんな人からの意見が聞きたかったので、いろんなところに投稿してみています。
あちらでもよろしくお願いします。
No.1  SHIRIAI  評価:40点  ■2013-08-23 15:59  ID:5ZzWE3oSpa2
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こんにちは。

花と虫の使い方がいいですね。

そこを風が吹き抜ける。

>かぜ、かぜ、かぜ。
を句点でしめるのがいい。
ひらがなにしたのは意図するものがあるのでしょうね。
→風、風、風。
では重いですよね。風を軽くすることで、出来事がよけいに重く感じられていい。
独特の雰囲気。

あちらでカムサッカさんの名を見掛けました。がんばりますね。

ありがとうございました。
総レス数 5  合計 100

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