CHACONNE

風は遮られ、張りつめた静寂の中で
私は巨大な穴の底にただひとり立ち
無数の眼差しと眩い光の焦点になっている



始まりは、雨上がりの緑濃い午後
葉漏れ日にかざすあなたの右手の白さ
私の胸は一瞬にしてはり裂け
体は沿道の木々に変異する
口をこぼれ落ちる生まれたての儚い震えが
湿った風に散々に吹き飛ばされる寸前、
あなたからシルクの風がそよぎ
青空からこまどりが舞い降りてくる



幾重もの季節の陽射しを受けて
ピアノとヴァイオリンの調べは
互いに離れては寄り添い
茂る芝生の上を舞い
林の木陰でたわむれ
小川の畔にたたずむ

澄みきった夜空に星々はまたたきだし
いつかのこまどりは
月のゆりかごに揺られ
穏やかな静けさの中で眠りにつく



赤く染まった雲間から
西陽が並木通りを抜けてとどいている
落ちる葉がまばたきをして
部屋のかべは静かにまぶたを閉じる

かろやかなピアノの調べはとぎれた
ヴァイオリンのかすれた声が吹き荒れ
降りやまない雪に陽はかげり
大地が凍る



春が再び訪れることはない
私はヴァイオリンを肩にのせて目を閉じる
弦に向けたこの弓を
強く深くひきおろす
遠ざかる草原

SHIRIAI
2013年06月14日(金) 00時41分13秒 公開
■この作品の著作権はSHIRIAIさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
批評お待ち致します。「なんとなく」でも構いません。

●バッハ作曲、無伴奏ヴァイオリンパルティータ第二番の終曲「シャコンヌ」のイメージから。演奏をお聴きになるときは、イツァーク・パールマンの演奏がベストです。

この作品の感想をお寄せください。
No.11  SHIRIAI  評価:0点  ■2013-07-10 20:34  ID:HGGGNe196sc
PASS 編集 削除
謝染さん、こんばんは。

リクエストに応えて頂き、ありがとうございます。

生きた詩を書いて、もっと世界が拡がっていくというわけですね。
私は今、現代詩に入ろうとしているのかもしれません。

さらに進歩していきます。
ありがとうございました。
No.10  謝染はかなし  評価:10点  ■2013-07-10 13:36  ID:X9WAINY/XpI
PASS 編集 削除
読みました。

まず前置きとして以下の二点をご了承してください。

1.すでに書かれている方々の批評を、ここではいったん忘れてほしい
2.私はSHIRIAIさんの詩を現代詩として読む

以上の前提の上でこの詩『CHACONNE』を読む。

最初のほうは良かったが、途中は完全に言葉が散り散りになっていて、イメージが拡散している。詩は、詩全体の緊張度、密度が揺らぐ自体には最も注意を払わなくてはいけない。
また詩というのは射撃しなければならない。目標に向かって。あれもこれもは、出来ない。
あとこの詩は動きへの意識が決定的に足りない。「そよぐ」とか「またたく」とか、そういう言葉が死んでいる。本当に風がそよいでいるのなら、もっともっと呼吸があるはず。「風がそよぐ」と書くだけじゃ、風はそよがない。

そんな感じでしょうか。
No.9  SHIRIAI  評価:0点  ■2013-06-24 23:17  ID:5PhxNt2MGXg
PASS 編集 削除
●作者による解説。

まだ読んで下さっている方がいらっしゃるようなので、最終解説を入れておきます。

時系列、

1、二節[春]

男女の出会い。男は並木道を歩いていて、彼にとっての運命の女性に出会う。

2、三節[夏]

男はヴァイオリン弾き(ラストでは独りで弾いている)、女はピアニスト。二重奏を楽しむ。二人のハーモニー(ヴァイオリンは上、ピアノは下、各partに離れたり、ハモったり、同じ旋律を弾く。音符♪は、ついたり離れたり。)は、描写の如く、幸せに舞う。実際に野や、林を駆けたり、寄り添ったり、というのも同時に表している。

3、四節[秋から冬へ]

一連、幸せのかげり、を暗示する比喩。[秋]
二連、破局へ。女が遠ざかる(心?、死?)。男は、すさむ。そんな比喩。[冬]

4、一節[孤独]

コンサートホールでの描写。聴衆の視線、ライトアップ。男にとって、どれも空々しい

5、最終節[たった一人の旅立ち]

バッハのシャコンヌの冒頭。悲痛な調べを奏で始める。


つまり、一節と最終節の心情の理由を二節から四節の思い出で語っている。
No.8  SHIRIAI  評価:0点  ■2013-06-18 03:21  ID:IIbnOzQ/0rQ
PASS 編集 削除
TAKEさん、こんばんは。

まず、私に確固たるものはありません。いろんな詩を書いて模索中といったところですが、いずれ、メインはこの詩のようなある程度わかりやすい詩の形になろうかと思います。
この詩にはいくつか仕掛けがありますが、どこまで読めてらっしゃるかは分かりません。読み取れないのは、比喩に慣れてらっしゃらないからじゃないかと思います。
ただし、なんとなくの雰囲気が味わえれば、私の今回の課題はひとつクリアー出来たと言えます。
一曲の音楽の、具体的ではない印象を、ある程度具体的に詩に起こし、それを読んだ読者がまた、読者それぞれの漠然とした印象に変換する、そのときに、音楽を聴いているときに感じるものと同じようなものを味わえればというのがねらいです。
ところが、なんとなくでも、感動を味わえないということは、やはり薄っぺらい(振り幅が小さい)仕上がりになっているのだと思います。私の目指す「音楽詩」の形の確立は、おそらくライフワークになることと思います。まだ詩を始めて一年経たないので、まだまだよちよち歩きって事でお許しください。ただ、批評の手をゆるめられるのは望みませんから今後もどうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。。
No.7  TAKE  評価:20点  ■2013-06-18 00:56  ID:mpY9oo4wFMI
PASS 編集 削除
 拝読しました。
 他の人とは一風変わった感想を頂いたので興味を持ったのですが、読んでみてなるほど、と思いました。
 全体的な雰囲気と解説を読んでパッと思い浮かんだのは、ご存じかは分かりませんが、のだめカンタービレに出てくるクラシック雑誌のライターの男性です。彼は聞いた曲のイメージを壮大な比喩と文章表現で言い表すというクセを持っています。
 おそらくSHIRIAIさんには、「詩とはこういうものだ」という確固たるイメージや法則があるのでしょう。それに則った流麗な表現は絵画でいうところのシュールレアリズムにあたるのでしょうが、読んでいて心地よく、感心します。
 しかし伝わるものは全体の雰囲気だけで、他の方も仰るように内容・主題に関しては読み取る事が出来ず、文章として成立しているのかも定かではなく、ただ読んでいる時間が過ぎたという、常温の水を飲み干したような後味しか残りません。自己陶酔の域をまだ出ていないように感じるので、もっとテーマを読者に伝える術を磨けば良いのではと思います。
 失礼しました。
No.6  SHIRIAI  評価:0点  ■2013-06-15 23:23  ID:bi3DsvN5XiY
PASS 編集 削除
流月楓さん、こんばんは。

>感情の波が見えてこないのです。

感情などは出来るだけそぎおとしています。が、情景描写や、情景の対比などで表そうとしました。冒頭の部分はみなさんのご意見から、情報が少な過ぎるのだといわれた、その通りだと思います。あとは、比喩が強いということではなく、それとは別に、比喩の振り幅が小さいと、再度読んで感じます。喜びや悲しみの描き方が冷ややか過ぎるのだと思います。静な中にも、もっとこい、もっとこい、と自分に言いたいですね。貴重なご意見ありがとうございます。大変参考になりました。今後も、よろしくお願い致します。
No.5  流月楓  評価:20点  ■2013-06-15 22:47  ID:7i6OEkkggig
PASS 編集 削除
読ませて頂きました。
全体を通して滑るような描写に「ん?」ってなりました。
どこにも心がひっかからない感じです。
もう一度よく読んでみると、頭に森のイメージが浮かびました。
あとは春夏秋冬の詩なのかな? って思いました。
表現はどれも詩的で素敵だと思いますし、テクニックをお持ちの方だと思います。
ただ読んでいる者にとっては、心に描きにくい。
音楽を聴きながらまだしも、文章だけですからね。難しいですよ。
そしてなによりもSHIRIAIさんの感情の波が見えてこないのです。
ここが重要な気がします。
何かを共感することで、人は人の感情に風をたてられるのだと思っています。
その点からすると、この詩は結局何が言いたいのか分からないんです。
伝わるものといったら、ただの描写でしかなく、心が置いてけぼりになってしまう印象です。
何が一番言いたいことなのか?
何を一番伝えたいのか?
この柱が見えないと、単に流れるだけの綺麗な詩ということになります。

もう少し比喩を少なめにして、読む側の為に(伝わることが大事ですからね)少しヒントを散りばめるといいかもしれません。
せっかくの綺麗な詩が勿体ないと感じました。

ちなみに「作品説明」は、ブラウザのタブの欄に記載されますよ^^
No.4  SHIRIAI  評価:0点  ■2013-06-15 08:57  ID:wM4rFoYMkSs
PASS 編集 削除
楠山さん、おはようございます。

やはり、冒頭ですね。どの程度明かすかが難しいところです。。

さて、投稿するときに、『作品説明』というのがあって、

→シャコンヌとは、バッハ作曲の『無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第二番』の終曲を指す。

と、書いていたんですが、どこにも載らないようですね。あれはなんなのでしょうか。

原曲は15分ほどの変奏曲なので、そのままなぞると、80パーセントはつらい緊張が続くので、構成を変えました。これはライフワークで、実はPart2です。まだまだですから、今後も新しく作り直し続けると思います。

次作は日本の曲を載せます。
よろしくお願い致します。
ありがとうございました。
No.3  楠山歳幸  評価:20点  ■2013-06-15 08:09  ID:3.rK8dssdKA
PASS 編集 削除
 読ませていただきました。
 文章は雰囲気があって良かったです。
 しかし、わたしは読解力が乏しいため良さそうだけどいまいちイメージが広がりづらかったです。感想を読ませていただいて、冒頭にここはコンサートホールだよ、という何かが欲しいとも思いました。
 シャコンヌ、検索しました。音楽を連想させるような形式、拍子などが欲しいと思いました。イメージだけ、というのはなんだか物足りないと思います。
 点数は辛いですが、作者様は実力がある方と思いましたので。
 失礼しました。
No.2  SHIRIAI  評価:50点  ■2013-06-14 05:40  ID:7sERtROrdZk
PASS 編集 削除
はじめまして。

批評って、いいもんですね。
と、悦に入りまして、
貴重な時間をありがとうございます。

ご指摘のような構成に問題があるということより、おそらくは、オープニングの比喩がきつくて、状況が思い浮かべられずに、ラストに繋がらないということになろうかと思います。

簡単な解説(あらすじ)を述べたいと思います。

●一
ヴァイオリン独奏者がコンサートホールに立っている。詩なので状況だけでなく「私」の心理描写も兼ねている
●二〜
ピアノ奏者との過去の描写。何らかの理由で彼女はいなくなる
●ラスト
無伴奏ヴァイオリンを弾きはじめる

が、ネタばらし。

ためになりました。今後もよろしくお願い致します。ありがとうございました。

No.1  卯月 燐太郎  評価:30点  ■2013-06-14 02:17  ID:dEezOAm9gyQ
PASS 編集 削除
「CHACONNE」読みました。

難しい作品ですね。
文章(文体)はかなりうまいのですが、構成に問題があるように思います。

1.シャコンヌ【(フランス)chaconne】(辞書より)
バロック時代の器楽形式の一。緩やかで荘重な三拍子のリズムを特徴とする変奏曲。
―――――――――――――――――――――――

A>風は遮られ、張りつめた静寂の中で
私は巨大な穴の底にただひとり立ち
無数の眼差しと眩い光の焦点になっている <

まず、このAは詩の始まり(導入部)なのですが、ここは絵になっています。(イメージが膨らみ、よいと思います)
私は小説の書き手なので「詩」の場合は文章のイメージ力と、構成(起、承、転、結)から、読み手がイメージを膨らます事が出来るかどうかを考えます。

B「短い言葉」とC「短い言葉」とのあいだにあるD「間」(音楽で言うところの音のない部分)。このB、C、Dの組み合わせにより、それぞれ、ばらばらなものが一つのイメージになります。

Aは完全にエピソードの一つになっていますし、わかりやすいです。
しかし、「主人公の状態はわかりますが」、「どうして、その状態になっているのかがわかりません」し、この「主人公は、ラストではどうなるのだろうか」と読み手は思います。

当然、読み手は、このAがどうなるのかを知りたがります。
小説などでは導入部で死体が転がっているところに主人公が関わったりする部分です。
そのまま死体に触れずに警察を呼んだらよい物を主人公は死体を見て、自分が人生の落伍者になるような証拠品を死体の人物が持っていることに気が付き、死体の身体をまさぐります。
そこを他人に見られて、あわてて逃げる。そして犯人にされて、警察に追われる立場になります。
御作のAはそんなインパクトがある導入部です。

Aの後の文章を読んでみると、美文が並んでいます。
その美文は平和というか愛のある時間を描いています。

ところが、後半になるとEのような平和な愛の時間が終わりを告げます。

E>>かろやかなピアノの調べはとぎれた
ヴァイオリンのかすれた声が吹き荒れ
降りやまない雪に陽はかげり
大地が凍る<<

ラストはFで締めになります。
そこで問題が起きます。
導入部のAとラストのFに関連性がありません。
導入部とラストの関連性がないままに、御作は終わっています。

F>>春が再び訪れることはない
私はヴァイオリンを肩にのせて目を閉じる
弦に向けたこの弓を
強く深くひきおろす
遠ざかる草原<<


●改善策
作者さんが導入部の「A」に何が書いてあるのかを「自覚して」、それをラストとつなげるようにする。
読み手は、Aを読んだ段階で主人公は巨大な穴の底で無数の者に見られていて、光が当たっていると感じているが、それが、何を意味するものかは分かっていない。
だからラストで作者は読み手に「A(起)」をわかるようにしなければならない。
その途中に「起、承、転、結」の「承、転」があります。
そしてその結果「結」でまとめて、読み手にすべての流れ(伏線込み)がわかるようにする。

A>風は遮られ、張りつめた静寂の中で
私は巨大な穴の底にただひとり立ち
無数の眼差しと眩い光の焦点になっている <

小説と「詩」は違いますが、基本的なところは同じだと思います。


文章は書きなれているようですが、美文を書けるあまりに「構成」とのバランスが悪いように思います。
作品を書くにあたり、何を書くのかの目的意識(テーマ)をもって書いたら、うまくいくと思います。
点数は30点にしておきますが、底力がありそうなので、今後に期待します。
総レス数 11  合計 150

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除