輝きの粒
いつだって あるのに一瞬で
見えていない

どれだけ愛されているのか
分からなかったり
どれだけの存在か
不安になったり

輝きの粒は そこにあるのに――

好きなものひとつ 買ってもいいよ
上から 落ちてくる声
いいの いいのと首をふる
なんで? としゃがんだ父
目が合う その奥
心が見える 0コンマ何秒の世界

細い真っ直ぐな道路
自転車のうしろ ゆられて
身体を傾けると
大きな背中越しに見えた
オレンジ色の風
買ってもらった
マーブルチョコ
ぎゅっと握りしめてた

目を閉じる
ハサミの音
すき間から見た 真剣な顔
今だけは独占できている 優越感
鏡を見る
眉毛の上の もっと上
不満爆発 気に入らない
セロテープを手に もどしてと怒り
元にもどると思っていた私

ベランダから 帰ってきなさい
怒鳴る夕暮れ
なまえ入りのオムレツ
風邪をひいた私にふり注ぐ
いつもより柔らかな音
私が産まれてから きっと
ずっと 自分は後回し
それでいいのだと
頷いたように見えた 母の笑み

輝きの粒は 泣きたくなるぐらい そこにある――

いつだって
通り過ぎてから分かる
とても大事な時を
過ごしていたんだ
光の速さに 愁い
やさしさに 微笑み
その存在に 涙で笑う

輝きの記憶は
私であるという 記録
身体中に散らばって
見えないだけで そこにある

思い出して

あたたかかった
しわくちゃな手
頭をなでながら 呼ばれた名
やさしい声は くりかえす
いつだって その場所は
私を子どもにする

輝きの粒は
私を抱きしめるようにして
今も そこにある

ずっと ここにある――



流月楓
2013年05月20日(月) 22時10分54秒 公開
■この作品の著作権は流月楓さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
久しぶりに詩を完成させてみました。
ちょこちょこ完成しない詩を書いてはいるのです。
なかなか時間がないです。。。涙

この作品の感想をお寄せください。
No.6  流月楓  評価:--点  ■2013-06-10 11:02  ID:7i6OEkkggig
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史裕さんへ
心地よくなんて、嬉しいです。
毎日痛かったり、辛かったり、泣いたり笑ったりしたはずなのに、さらさらと時は過ぎ去って、ただ目を細めてしまったりする現在です。
私のあちらこちらに見えない粒が纏っている気がします。
それがなんなのか、答えを探してみたくなったりしました。

ありがとうございました。
No.5  史裕  評価:40点  ■2013-06-08 23:52  ID:sZUFwFROn9k
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いい意味でただ流れていくと言う印象でした。

読むことによって心をただ過ぎ去っていく。
ただその存在感として、私に何か影響を残している。

回りくどくてすみませんが、
何がいいたいかといえば、単純にこの詩を読んでいる時間が心地のよかったと言うことです。
また読ませていただければと思います。
失礼します。
No.4  流月楓  評価:--点  ■2013-06-03 09:04  ID:7i6OEkkggig
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陽炎さんへ

ほんとご無沙汰してました。
また会えて嬉しいです。

いつものごとく、かわらずに、私の詩をかみ砕き読んでくださりありがとうございます。
ふと思い出すのは、ささいな毎日だったりします。
今のこの日常も重なって人生になっていくのだと思っています。
ただ、光の粒は見つけにくいですね。

陽炎さんの人生。私の想像もつかないつらさや苦しみ、悔しさを体験なさっていることだと思います。
それは、陽炎さんの詩に現れ、血となり肉となり、詩に命をふきこんでいる気がします。
私が言えることは、陽炎さんの詩を通じてたくさんの方が共感し涙し、なにかを感じているということです。
私もその一人です。
生々しい傷も、癒すにはあまりに深く、心に残ることでしょう。
それでも、陽炎さんにここで会えて救われてる人もいるし、励まされている人もいます。
私も前に、辛い出来事の時に詩を投稿し、陽炎さんの感想で励まされました。
分かってくれる人がいる、共感してくれる人がいると言うことは、なによりも心に染み入るものだと思います。
誰よりもきっと陽炎さんは、傷ついた分、ほんとに優しく、人の痛みを分かる方だと常々感じています。

久しぶりに詩を投稿して、どきどきしている私に、いてくれるあなたの姿にホッとしたりするのです。

こちらこそ、ほんとうにありがとうございました。

No.3  陽炎  評価:40点  ■2013-06-01 17:02  ID:te6yfYFg2XA
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楓さん、お久しぶりです
また素敵な詩を引っさげて
やってきてくれましたね
とてもうれしいです

小さな日常が積み重なって
いまの自分がいる
ここに描かれている日常は
決して派手ではないし
一見、どこにでもありそうな風景だけど
それは楓さんが愛されて育ったという証であり
大きな愛情に包まれて守り守られてきた記録なのでしょうね

光の粒かあ。。。
私が思い出す光景っていうのは
両親の怒鳴りあう声や
いろんなものが割れる音や
母の疲れきったような表情や
味方にならなかったら置いていくからと
ものすごい形相で睨んでくる母親の目や
自分の機嫌で殴られたり蹴られたり
暴言を吐かれたり。。。

そういうことしか思い出せなくて
こんな詩を描ける楓さんがうらやましいです

日常の大切さを知っている楓さんだから
きっとお子さんにもそれを伝えることが出来る
そういうふうに私は思いました

素敵な詩を、ありがとう(о^∀^о)
No.2  流月楓  評価:--点  ■2013-05-26 13:19  ID:7i6OEkkggig
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ゆうすけさんへ

当たり前の日常が当たり前すぎて、忙しすぎて、かなり通り過ぎた後にもう戻れないと知ったときは、寂しくなったりします。
いろんな思い出があるはずなのだけれど、思い出すのは父の目だったり、母の怒鳴り声だったり、私が泣き喚いたときの困った顔だったり、お爺ちゃんのうんうんと頷きながら頭をなでてくれた仕草だったりします。
どこどこ行った、楽しかった、旅行も沢山したはずなのに、思い出すのは、日常に散らばったがらくたのようなもの。
だから日常こそ、大切にしないとですよね。

ゆうすけさんもお忙しいと思います。
お互い、子供に輝きの粒を撒けるようにがんばりましょ。
私はなんだか、へたれぎみですが。。。

ありがとうございました。
No.1  ゆうすけ  評価:40点  ■2013-05-22 18:43  ID:1SHiiT1PETY
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 当たり前の日常の尊さ、そして、この世に生を受けて成長して大人になれた奇跡と、今ここにこうしていられるために費やされた両親の想い願い祈り喜び憂い、日々を大事に丁寧に生きていきたい、でも立ち止まる暇もなく、省みる余裕も鑑みるゆとりもなく、あがいてもがいて這いつくばって、前に進むしかない日々。この詩を読みながら、いろいろと感じました。

「通り過ぎてから分かる
とても大事な時を
過ごしていたんだ」
そうですよね。なればこそ今を大事に、未来の自分に後悔させない今を生きていたいものです。

時間がない……。お疲れ様です。私も創作したい気持ちはあるんですけどね〜。日々感じたことを書くと「育児に疲れたおっさんの愚痴」「仕事にてんぱったおっさんの愚痴」ばっかりだし。
忙しい日々もまた創作のタネになるはずと信じて日々頑張りましょうね。
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