ただ、一切は過ぎてゆきます

いつの間にか ひとりで街を歩けるようになりました
いつの間にか ひとりで喫茶店に入れるようにもなりました
いつの間にか あなたの声を思い出さなくなって
いつの間にか あなたを想って泣くこともなくなりました
あなたがいない世界なんて
あのころは想像もできなかったし
あなたなしで生きるなんて考えもしなかったけれど
案外平気に生きています


きっとあなたも同じなのでしょうね
私がいなくても あなたはあなたを生きている
いいえ きっとあなたは最初から
私なんかいなくても生きていけたでしょうけど


生きるってことは
ただそれだけで大変ですね
息を吸って吐いて寝て起きて働いて
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中
逃れられない日々に守りたい自分などどこにありましょう

ただひとつ 言葉が足りなかったばかりに
ただひとつ 言葉が余計すぎたばかりに
壊さないように壊れないように
大事に大事に守ってきたはずのことでさえ
いともたやすく粉々にして
散乱した破片を見つめては泣くことさえも敵わずに
笑うことしかできないそんな自分を繕う言い訳ばかりを
探しあぐねているような情けない夜
 
握りつぶせない過去にがんじがらめになって
一歩も前に進めなくなってしまう
眠れないまま迎えた朝に
いつまでもずっと馴染めないまま
時計の針だけが刻一刻と 時を刻んでいる毎日


それでも それでも私たちはきっと
私たちが思うよりもずっとずっと
強く出来ているのだということを


流した涙もついた傷も
いずれは自然に治癒していくものなのですね
朝 冷たい水で顔を洗い
身支度を整えて今日へと歩き出す
そうやって毎日は過ぎてゆき
そうやって少しずつ記憶は遠ざかってゆきます
忘れることを悲しむんじゃないと
あのころあなたはよく云っていましたね



あなたの云うように
時は悲しんでる間もなく
あとからあとから流れてゆきます
きっとそうやって人は
生きていくものなのでしょうね



元気ですか
あのころ描いていた夢は
まだ追い続けてくれているでしょうか


私はまだ
相変わらずヘタクソな詩を書いています
悲しみはいつまでたっても悲しいままですね
でも その先がちゃんとあるということを
教えてくれたのは たしかにあなただったから
それがなんなのか知りたくて私は
まだ 言葉をいじくり続けています



2月の空はピンと張り詰めたように冷たく澄んで 
白く凍えた風が どこからともなく吹きすぎてゆきます
この空を どこかであなたも見ているでしょうか
たぶん見てはいないでしょうね
いまごろはきっと くしゃみを4回していることでしょう
それは風邪ではありません
風の便りです



長々と話してしまいました
くれぐれもお体大切に
どうかお元気で





さようなら
さようなら
陽炎
2013年02月12日(火) 14時33分03秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
この前、年が明けたと思ったら
もう2月も中旬

日々の過ぎ行くのは早いものです

私はこの冬の、冷たく澄んだ空が好きです

この作品の感想をお寄せください。
No.5  陽炎  評価:--点  ■2013-02-19 16:21  ID:dJ/dE12Tc8A
PASS 編集 削除
☆はしずめまいさんへ☆

お久しぶりです、お元気でしたか
また読んでいただけてうれしいです

波長が合いますか^^
暗い詩ばかり量産してますが
こんな詩でも元気になってもらえたのなら
これほどありがたいことはないし
ない頭を振り絞って書いた甲斐がありました

まだまだ寒さ続きますので
体調など崩されませぬよう(^.^)

ありがとうございました


☆ゆうすけさんへ☆

いつもありがとうございます
前回は大変失礼を致しました
もう、感想を書いてもらえないんじゃないかと
内心ヒヤヒヤ(~_~;)
またこうしてお会いすることができて
ホッと胸をなでおろしました(*^_^*)

12月に大流行していたウイルス性の腸炎にかかってしまいまして
おまけに体が硬直して身動きがとれなくなるという
いや、あのときはホント参ってしまいましたが
いまは快復して、こうして詩を書く元気も出てきた次第です

あれれ、仕事が手につかないほどに(@_@)
それはまた大変なことをしてしまいまいた(冷や汗タラタラ)
でも、そんな私の詩が好きと云っていただけてうれしいです

インフルエンザ、大丈夫ですか
ゆうすけさん以外のご家族みなさん掛かってしまわれたとのこと
うつらないよう、こちらからも祈っております

ゆうすけさんの作品も、また拝見したいです
ありがとうございました
No.4  ゆうすけ  評価:40点  ■2013-02-18 14:56  ID:1SHiiT1PETY
PASS 編集 削除
前を見て歩いている人の姿が見えました。この存在感が陽炎さんの持ち味ですね。そして何故か初恋の人を思い出して、仕事が若干手付かず、この感情をかき乱される感じ、そんな陽炎さんの詩が好きです。不意に記憶のアルバムを紐解き、立ち止まって振り返り、そしてまた歩き出す。

体調はどうですか? うちの家族は私以外全員インフルエンザA型罹患という惨状、うつされないことを祈っています。

まったく創作する余裕もない日々にいつしかその意欲すら減退していたけど、陽炎さんの詩を読んでまた言葉と触れ合っていたくなりました。言葉を大事にして生きていきたいものです。
No.3  はしずめまい  評価:40点  ■2013-02-18 00:55  ID:CkaoRWyuPaw
PASS 編集 削除
お久しぶりです。

寂しさのなかに力強く前に進んでいこうとする姿が浮かびました。

濁りのない澄んだ言葉の世界。貴女様が創りだすその世界が、私は好きです。波長が合う、というか…元気になれます。

また拝読できてよかったです。
No.2  陽炎  評価:--点  ■2013-02-16 19:16  ID:dJ/dE12Tc8A
PASS 編集 削除
☆Fnoonさんへ☆
お久しぶりです^^
いつもありがとうございます

さわやかさを感じていただけてよかったです

冬の空はりんと冷たく澄んで
とてもきれいなので
ずっと見ていたくなります

ありがとうございました
No.1  Fnoon  評価:30点  ■2013-02-12 16:42  ID:ZeBLG8V72F2
PASS 編集 削除
空を見上げる人の姿が見えました。
あなたっていうのが誰だかは検討もつかないですが、過去一緒に生きてきた誰かなんでしょう。

なんかすこしの寂しさもありつつ、今は前向きに歩んでいますよ、という詩の主人公の姿勢がとてもさわやかです。

個人的には、一連目が特に好きです。
総レス数 5  合計 110

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除