逢ふ日
 


ふたつのおててがあるくせに
どうしてその手は何も掴めやしないの。

ふたつのあんよがあるくせに
どうしてその足は何も踏めやしないの。

あんなにすてきだったはずのこころもからだも
どうしてこんなにも持て余してしまったのか、と
何度も何度も壁に頭を打ち続けて、壊して、壊されて。

わたくしのこころは朽ち果ててしまったのでしょうか。
あんなに大好きだったうたもことばもほっとここあも
いらない、いらないと声をあげてこころが幼子のように喚くのです。



それでもきっとまだ
わたくしはうたうことをあきらめないで
詩人きどりしながら息をするのです。

そう、何年も昔のあの娘が私を見つめているの。



わたくしもおとなになりました。
十三の頃の頬の赤さと意気地のなさは相変わらずで
こんなにつまらない大人になってしまったことを
きっといくつになっても恥じるんだろうなぁと
昔は飲めなかったあの苦いコーヒーを口に含んでは
自嘲気味にわらうのです。わらうのですよ。

きっと、もう、ほっとここあは飲めないね。
きっと、もう、うたはうたえないね。なんて、さ。





 
詩葵
2012年12月24日(月) 10時23分41秒 公開
■この作品の著作権は詩葵さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 
公務員に就職が決まった私の昔の夢は詩人でした。
人の心に触れるお仕事がしたかった、きっと昔の私が今の私を知ったら、死んでしまうのかなぁ。なんてね。

やっぱりどんなにうたえなくなっても、私の帰ってくる場所は此処しかないのだと思います。

 

この作品の感想をお寄せください。
No.5  詩葵  評価:0点  ■2013-01-09 22:39  ID:L6TukelU0BA
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RAWさん、はじめまして。感想ありがとうございます。
残念ながらロングでもボブでもないですね(笑)
ちょうど最近髪を切ってしまったので。
けれど映像が浮かぶ詩であると感じてもらえて良かったです。
小説も趣味で書いているので、それが活かされたのかもしれません。
よく18、19は若いと言われますし、きっとまだまだなんでしょうね。
それでももっとやれるだけのことをやりたいと思ってしまいます。
中途半端にストイックな自分には、本当に楽になる言葉でした。
まだまだ未来があることを感じさせられました。ありがとうございます。
 
No.4  RAW  評価:40点  ■2013-01-05 20:18  ID:3.rK8dssdKA
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 初めまして。陽炎様へのコメントを読んで、読ませていただきました。
 良かったです。アンニュイな大人の女性のイラストを思わせる良い詩でした。机に頬杖つきながら、髪型は長い黒髪は男の願望みたいだから案外ボブかなとか、映像がすっと浮かぶ作品ってレベルが高いかもと最近思っています。
 余計なことかも知れませんが、僕のようなおっさんから見ればまだまだこれからだと思います。これからも素敵な詩を書いていただければ、と思います。
 失礼しました。
No.3  詩葵  評価:0点  ■2013-01-04 00:26  ID:L6TukelU0BA
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陽炎さん、こんばんは。ありがとうございます。
うたうことを諦めずに投げ捨てないことが大事なんですよね。
口にするのは簡単なのに私も一緒に簡単に綻びてしまいそうです。
創造者はこの苦しい期間が何よりの餌なのかなと思います。
早く私もきちんと動けるようになりたいです。
感想、本当にありがとうございました。

はじめまして、さん、ありがとうございます。
素敵だなんて言ってもらえて嬉しいです。
少しずつまた頑張ってみようと思います。
本当にありがとうございました。
 
No.2  はじめまして、  評価:50点  ■2012-12-31 21:28  ID:Xz1WMlDYHZw
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素敵でした。
No.1  陽炎  評価:30点  ■2012-12-28 10:30  ID:dJ/dE12Tc8A
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なんだかとても痛々しい詩ですね

うたうことをあきらめたくない
だけど、一体なにを書けばいい
なにひとつつかむこともできない
この手で
なにひとつ踏みこともできないこの足で
一体、なにを感じられるというの

そうして、自嘲してしまう

きっといまはそうすることしか出来ないのでしょうね
苦しい状況なのだと思います

『でも、うたうことをあきらめない』
この気持ちさえあれば
きっと、いつかこの苦しい状況から脱することができますよ

焦らなくて全然大丈夫ですから

また読ませてください
総レス数 5  合計 120

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