きみと仲違いしたのは



きみと仲違いしたのは
風の強い日だったことをよく憶えている
いつものように近道して
畦道を帰っていくと
権現さまの小高い丘の上で
カタパルトみたいな
赤錆びた鉄塔が
軋むように笑っていた

あの日を境に
世界は変わってしまった
それでもなお
あの土手にのぼって
きみとまた
移動映画を観れる日を
ぼくは指折り数えながら
待つのだろう

きみを蔑ろにしたわけではない
その証しに
ほんとうの気持ちを
きみに伝えるつもりだった

お内裏様のまねして
緋色のマフラーを首に巻き
糸杉の林を抜けながら
さめざめと泣こう
いったいなにが哀しいのかさえ
わからないけれど

耳もとで風が唸っている
嗚咽がとまらない
夜の余白にはりつくように
ゆなゆな揺らめく
白い花影
きみとぼくの愛の形見に
毟るように手折って
きみに手向ける

底冷えする土の中は
さぞかし冷たいだろうね
交尾を終えた雌カマキリが
雄カマキリを貪り喰らうように
きみがぼくを殺せばよかったのに

青山カオル
2011年11月21日(月) 01時47分34秒 公開
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No.4  橘 カオル  評価:0点  ■2011-12-22 09:08  ID:SE0CogCpn3k
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ザイチさま。
ご感想を賜り、ありがとうございました。
まだまだ、ダダの影響下にあり、なかなか
抜け出せないのですが、敢えて読み易いものを
書く必用もないかなと思っております。
ありがとうございました。
No.3  ザイチ  評価:0点  ■2011-12-15 23:09  ID:a3P/NMA3Ra6
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すごく景色が一望できるような詩ですね。
ざわざわと風の音まで聞こえてきそうで。。
個人的に「ゆなゆな揺らめく」の表現が秀逸!と思いました。
誠に勝手ながら、評価をつけられない性分なので申し訳ないです<m(__)m>
No.2  橘 カオル  評価:--点  ■2011-12-06 00:50  ID:iHbq62rA5d6
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いえいえ。
むろん、ぼくがきみを殺したんですよ?
どうしてそう読み取れるのかが、ぼくにはわからないですが。
もしかして、主人公は、女性だと思ったとか?

このごろは、まったく詩みたいなものを書いてないんですよ。
かといって、小説を書いているのかといえば、そうでもないし。
この詩は、ある女性と仲違いしてしまったときに、書いたものです。

No.1  笹雪  評価:40点  ■2011-12-04 00:43  ID:S6SCLCl937.
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 青山さん、かな?
 違ったらすみません。

 冒頭の物語的世界から最終連の切実な感情までうまくつなげてるなぁと思いました。第四連で客観性がすっと外れて、第五連で生身の感情がにじみ出る感じがいいです。色の使い方もうまいですね。それまでの赤や茶色のイメージから、白い花影が浮かび上がって、それを毟る感情が際立ちます。
 ところで、「きみ」が「きみ」を殺したのですかね? 最終連からはそう読みとれるんですが、そうすると第二連と微妙に噛み合わないんですよね。 
総レス数 4  合計 40

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