『愛に会いに』


いつ雨が降ってもおかしくない日
いつ死んでもおかしくない ばあちゃん見舞った

同じ速さで 走行する はちがや線
うごめく 黒い雲が
原チャリ とばすぐらいの いきおいで流れていく

きっとこれは 止めようもないもの
たとえばある日 狭い駐車場に 白いバンが置かれて
しめやかに しめやかに とりおこなわれてくもの
会ったことないけど 向かいの ばあちゃん死んだよ
うちのばあちゃん 90才だよ

寝た切りの 世話に目をそらし
やさしい顔しか見たくないなんて ずるいよね

愛せるうちに 愛伝えよう
迷路みたいな 病室 探し当てよう
あとで 後悔しないために
ばあちゃんがくれた 執行猶予


あなたが生きてくれたから 今 私たちが在る
そんな当たり前のこと 改めて ありがたいよ

招待状買いに行った時 見つけた
造花のミニブーケ持って
「私結婚するんだよ」って もう届かないかな

きっと人は そうしてしか 生きれない
たとえば 毛むくじゃらを飼っていない人の 黒いコートが
ひそやかに ひそやかに 喪に服して見えること
私たちは 今ここにある現実に 身をゆだね過ぎて
別にある現実を いともたやすく忘れてしまう

うばすて山の 職員たちが
昨日の私の顔と 重なって見えて 悲しかった

愛せるうちに 愛伝えよう
お疲れさまでしたと 清らかであれ
生まれた この手のぬくもりは 
ばあちゃんからの いただきもの


だからこそ

授かった感謝を
遠くても 心の中で 大切にすること

おばあちゃん、ありがとう

結婚式のブーケと 写真 いっぱい持って
また 愛に 会いに 行くからね





ザイチ
http://www.geocities.jp/zkzk77jp/
2012年02月21日(火) 21時07分22秒 公開
■この作品の著作権はザイチさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
評価が付けられない性分ゆえ、失礼ながらも
感想だけ書かせてもらっている筆者なので、私への評価はなしでもいいです。

ただ何かこころに伝われば幸いに思います。


この作品の感想をお寄せください。
No.3  紀菜  評価:50点  ■2012-02-24 20:54  ID:ntRlLmbzBoM
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愛を受け継いで生きていくことは
とても幸せなことで
この詩は気付けなかった幸せを教えてくれました
ありがとうございました
No.2  陽炎  評価:40点  ■2012-02-23 22:07  ID:dJ/dE12Tc8A
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人を愛することができるのは
愛された経験があるからこそだと思います

その手のぬくもりは、ザイチさんの体温と交じり合って
やがてあなた自身のぬくもりとなり、やさしさとなり
「愛」と呼ばれるものになっていくのでしょう

だから、ザイチさんは人に愛を伝えることができる
愛を持って、愛に会いに行くことができる
あなたを待っているその人は
ふんわりとやさしい、いつもの笑顔で
あなたを迎えてくれることでしょう

今回の詩は、いつにもまして切実感が詰まっていて
それは「命」のリミットが迫っていて
ぬくもりが思い出に変わってしまう前に
伝えたい「愛」とかいうものが
ザイチさんの中に大きくあるから、なのかもしれませんね
No.1  はしずめまい  評価:40点  ■2012-02-21 22:57  ID:Vlg.gSKY1.s
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お久しぶりです。

去年、わたしの祖母が亡くなりました。新潟の人なのですが、当日新幹線の故障で死に目には会えませんでした。でも、その形見は大切にしています。

さて……「愛せるうちに」…固い決意のようなものを感じました。ありがたみって、そういうときに於いて初めてわかるんですね。もういない、って実感といっしょに、ね。
総レス数 3  合計 130

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