また終わるために
 神の存在を否定することで自分自身が神になるなんて、そんな愚論に僕は耳を塞ぐ。それでもあなたは僕に囁き続ける。神を踏みにじれ、と。僕は両手で耳を塞ぎつつ、発狂しそうになる。下痢! と叫びたくなる。なぜ下痢なのか、小便でも尿瓶でもなく、下痢なのか。自分でもよくわからない。僕は腸が弱くて、下痢をしがちだから、尿や尿瓶よりも、下痢の方が密接であるからかも知れない。それに下痢は、肛門を圧する炸裂するような勢いからいって、言い知れぬカタルシスを帯びている、尿や尿瓶よりも。
 そういった性向を持ちつつ、平穏に生きようとする僕に、あなたは言う。君は自分自身の運命を受け入れない、それどころか滑稽な逃走線をはり、惨めな逃亡を図る、と。しかし僕は、自分自身の運命を受け入れるほどに、強固な精神を持っていない。
 自己の内奥を手探りする手つき、どんな作業よりも手慣れた、しかし不器用な手つき、女の陰部をまさぐるよりも、魅惑に満ちた手つき、その腕首を、鉈でもって切断したい衝動に駆られる、何も考えないために。
 たびたび僕は、下痢! と叫んでいる。近隣の住人に聞こえているかも知れない。それでも構わない。下痢! という絶叫は、すべてを解決する、一時的に。
 かつての僕は、神を愚弄していた。そうして僕自身が神だった。根性があるわけではなかった、只単に、何も知らなかっただけだった。今は? 今はいろいろ知ってしまった。何を? 世間を。そうして今の僕は世間に怯えた病気の犬のようだった。いかなる悪意も喪失した、病気の犬だった。
 その僕にあなたは囁きかける、汚れたる事をなせと。僕はベッドに寝そべりながら、その声を聞く。今は休んでいるんだ。そして時折、下痢! と呟く。また戦うために、あるいはまた終わるために。
昼野
2012年02月15日(水) 18時51分21秒 公開
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■作者からのメッセージ
散文詩、のつもりです

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No.3  昼野  評価:--点  ■2012-02-21 20:53  ID:FJpJfPCO70s
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>ビーダーマンさん
感想をありがとうございます。
だいたいそういう意味合いで書いてみました。
「文学極道」はちょうど投稿しようかなと思ってたところです。敷居が高くて勇気いりますが…。
ありがとうございました。

>うんこ太郎さん
感想ありがとうございます。
なんか感想つけづらい感じになっちゃいました。もうちょっと読者の事も考えないとなと思います。
叫びが届いて良かったです。
ありがとうございました。
No.2  うんこ太郎  評価:30点  ■2012-02-21 13:01  ID:z2TSoSZU2ng
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読ませていただきました。感想はなかなか難しい作品だと思うのですが、
下痢、という叫びが力強くて印象に残りました。

No.1  ビーダーマン  評価:20点  ■2012-02-21 03:30  ID:0fDzFDqfvdI
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下痢=evangelion=悪魔=文学かもとおもいました
「文学極道」にも投稿してみたらいかがでしょう
そこでは勢いとか天才とかを求めているそうです
昼野さんの文学を咀嚼する人々もいるとおもいます
総レス数 3  合計 50

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