わたしのあなたたちへ



梅が産声を上げようとした春の前触れに
たぶん何かを学ぶために
自分なりの大きな一歩で
故郷の大きな島を出た
もちろん船はわたしのではない
あなたたちの時間の木を切り倒してできたものだけど

新しい大陸を踏みしめて
海の見えぬその土地に恐怖した
あの香りはどこなのと
あると思ったその香りはとても遠くて
地図の読めない自分に呆れた

あなたたちは 「意外と栄えてないわね」とバカにしていたけど
わたしの故郷もこんなものだったわと少し思った
あんなに看板を持ったお兄さんはいなかったけど

下見もしてない部屋だったから
こんなにお隣さんと近いなんて思わなかった
洗濯物丸見えじゃないと口をとがらせた
ついでにロフトは高すぎて
寝ぼけて落ちて孤独死したらどうしようとあなたにいうと
笑って「気をつけなさいね」と言った
真っ青になったわたしをまた笑った


孤独が始まってもう1年半になった
思ったよりも寂しくはなかった
夜 あなたたちを思って咽び泣くこともなかった
朝 起きて挨拶をする人がいないことも慣れた
誕生日にメールも電話もなかったことは少しまだ根に持っているけど
あなたたちのいないここは悪くはない
一緒に夕飯を食べに行く友達もできた
人に言えなかった趣味も共有できる友達もできた
一緒にお酒を飲める友達もできたの
とても嬉しかった
ここに来たのは間違ってはいなかったのかもと思えた

でも

大きな島に帰ってきたら
なんだか寂しくなった

こことは違う爽やかな海風が吹くあの駅で
出迎えてくれたあなたたちは少しくたびれていた
弟は背も伸びてどこか記憶の中の声とは違ってた
鉄の馬の中あなたは少し棘のある声をだすようになっていた
こんなに舌打ちも罵声もする人だったかしら
こんなにあなたはもう一人のあなたをそんな顔で非難するような人だったかしら
あなたはもう一人に不満を持っていて
もう一人はそれにあまり気づいていないというか知らないふりをしていた

焦った

わたしがいない間にご飯も皆で食べなくなっていたらしい
一緒に笑いあう時間も少なくなっていたらしい

前まではいい年をして中学生みたいにじゃれ合っていたのに
何でそんな寂しそうな顔をするの
何でちゃんとかまってあげないの
昔からあなたは少し冷たい人だった
昔からあなたは少し甘えん坊な人だった
わたし知ってるよ 知ってるのに
どうして誰も気づいてくれなかったの
わたしが悪いの?

あなたたちは島に居てほしいと言っていた
そりゃそうだろうと思っていた
でもわたしはここに強く惹かれてしまった
ここの引力に縛られた
そんな我儘なわたしをあなたたちは大きく反対もせず 叱らず
好きにしなさい 頑張んなさい と言ってくれた
とても嬉しかった 嬉しかったのに

なんだか責められている気がした
わたしが欠けたその家は意外なほどに崩れかけてた

もっと声でも掛ければよかったのかな
もっと帰ればよかったのかな

わたしはあなたたちに生かされて今ここにいるのに
わたしはあなたたちに何をしてあげられるの


わたしがあなたたちを心配してるなんて夢にも思わないんだろうな
あなたたちはいつもわたしを心配している側だったから
わたしだって変わるんだよ
昔より広い目で離れてみることができるようになったんだよ
頭はちっとも良くなっていないけど
見えるようになったんだよ



あなたたちに言ったことはないけど
いつも思ってるよ

いつもありがとう
愛してる
どうか長生きして
そして仲よくしてよね
本当はバランスの良いあなたたちなんだから

近々帰ります
一緒に新しい年を迎えよう
お酒も一緒に飲みましょう

ではまた駅で


                あなたたちのわたしより

李都
2010年12月20日(月) 02時19分40秒 公開
■この作品の著作権は李都さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです
初めましてな方は はじめまして李都(りと)と申します
以後お見知りおきを


久々に詩を書きました
手紙に近いけど

長くてだらだらでひでぇもんです
書きなぐりもいいもんです
もやもやしながらも少しすっきりしたかな

最近は変に冷えますね 
鼻から汁が出ます 病気でしょうか

ではまた

この作品の感想をお寄せください。
No.7  李都  評価:0点  ■2010-12-31 11:49  ID:UdyaZH35SPc
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ご感想有り難うございました
返事が遅くなり申し訳ありません

*OZサマ*
そうですね なぜか1連目で力んであとは休みっぱなしの表現になってしまいました
飾ろうかとも思ったのですが
激情の中で一気に書き上げたほうが素直な詩になるかな
わたしらしいかなと思いそうしました
だったら最初からそれで通せばよかったんですよね
ムラがあるのはわたしの悪い癖なのでちょっとアイタタタって感じです;
ご指摘有り難うございました

*千草詩葵サマ*
あらあらまあまあ 詩葵どのではありませぬか
お久しぶりです 覚えてますよ

大学生になりますと一人暮らしが始まり
日々自分は誰かに生かされてるなあって思いますよ
わたしなんかバイトもしてないから尚更ですw
>感謝の気持ちを述べられるかなぁ
詩葵さんも述べられますよ 大丈夫です
いずれ言いたくなると思います

締めよかったですか
ああぁ 良かったです 心配していたので;

ご感想有り難うございました
No.6  OZ  評価:30点  ■2010-12-25 01:28  ID:4MvGQJq3VCA
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一連がとにかく素晴らしいです。

>もちろん船はわたしのではない
>あなたたちの時間の木を切り倒してできたものだけど

上記引用部分がとりわけすごいと思いますが、
これだけ密度が高い一連を書いてしまうと持続が大変ですね。
ふわっと言葉が浮き上がるこの一連を受け止める着地点を
表現することができれば、お金になると思います。

No.5  千坂葵  評価:40点  ■2010-12-23 03:15  ID:6WTkOWarbEg
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こんばんは お久しぶりです
と言っても覚えてもらえてるかなぁ
千草詩葵です もし忘れていたら
また初めましてから始めてあげてください

題名の使い方が上手だなと思いました
もっと他に感動すべきところがたくさんあったのに
最後の締めくくり方がとても切なかったです
私なら誕生日に連絡をくれなかった人たちに
感謝の気持ちを述べられるかなぁ いや述べられない(苦笑)
私も大学生になればそんな風になれるでしょうか
個人的には四連目の表現が一番好きです
ロフトに憧れてはいるのですがきっと私も
孤独死してしまう気がします 寝ぼけ癖直さなきゃなぁ(汗)

あたたかい心に触れさせていただきました
ありがとうございました
  
No.4  李都  評価:0点  ■2010-12-21 00:59  ID:PixrXgJGrxA
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わお 久々の感想に嬉しく思います
皆さんありがとうございます
では拙いながら返事をば

*天祐サマ*
おほほ 辛辣とおっしゃいますがなんだか嬉しいですね
褒められてる気分です
お口に合わなかったのは少し悲しいですが仕方ありません
しかしまだ伸びる種はありましたかね
なんだか励まされた気分
一応訂正しておきますが上っ面な気持ちで書いたわけじゃなくて
「あなたたち」への気持ちは正直に書いたつもりです
まあ多少綺麗事になってはいますが
いつも思っていることなので まあそこは勘弁してください
「あなたたち」への告白と自分への整理だったので言葉としてはつまらなかったかもです
またなにか激情が生まれたら書くと思うので
その時じっくり言葉を選んで絞り出してみます
血反吐でも出してみますぜ 多分

ご感想有り難うございました

*陽炎サマ*
お久しぶりです
なんだかこっぱずかしい詩を書いたなぁと思っていた矢先褒めていただいて
嬉しいです
自分の大好きな人たちのことを思って書いたので
少しでもそれが出ていたのなら嬉しいです
なんか自分ひとりで生きていけるような気がしていたんですが
全然ですね 頼りっぱなしです
通帳とりあげられたらご飯も家もありません
生かされてるししかも自由をいただいている自分は何ができてるんだろうって
出世払いでいいのかなって勉強や演習は頑張って
良い結果のものは報告したりして
「へえ 頑張ってんじゃん」なんて言われたりして「うへへ」て喜んでも
あまり褒めてくれない「あなたたち」なので
照れたようにすぐ電話を切られたりして
なんかさみしくなったりして
そんな日常や私の知らない日常についての想いが募ったので吐き出してみました

今年ももう終るのですね 早いです
風邪は今のところ大丈夫です 陽炎さんもお気をつけて^^
お酒はあまり飲めないので飲み過ぎはないので大丈夫

ご感想有り難うございました

*ω ̄) サマ*
う…うーん 別れてほしくはないので本当必死でつなぎ止めたいと思います
多分大丈夫だと思いますが
立派ですか 他の人に言われるとなんだか照れますが
私もそう思います 尊敬します
でも決して不快な結婚生活ではありませんよ
不満といってもそんな決定的なものではなくて…
うーん ちょっとした変化でも子は結構気付きますね
自分でもびっくりしました
機嫌くらいは怖かったから嫌でも気づきましたが
内部のあーだこーだはなかなか見えてなかったなと実感しました
少しは大人になれたのかなと自分ながらに思いました
親は偉いですね
よく小学校の時に尊敬する人は?という問いに「親」と書く人が多かったのは子供ながらに自分たちのために頑張ってくれる親を本能的に知っていたのかな
とも思えました
私は親の金食い虫なのでw時間の木を食いつくしてしまいそうで本当に怖いです
そのぶんプレッシャーも感じますが
まあ 頑張って生きてみたいと思います

ご感想有り難うございました

ではまた
No.3  天祐  評価:20点  ■2010-12-21 00:14  ID:ArCJcwqQYRQ
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拝読しました。
らしくないですね。
もっと書けるはず。上っ面の言葉ではなく、さらにえぐった表現ができるはずですよ。私情がいけないとは言いません。私情を吐き出すならもっとぶちまけるべきです。でなければあなたらしさはでません。もっと深く刻んで欲しいのです、読み手の心に。
と、辛辣ですが感想でした。
読めてよかった。また、読ませてくださいね。
No.2  陽炎  評価:50点  ■2010-12-20 20:15  ID:AmGH0NyvUK2
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☆李都さん☆

久しぶりにあなたの詩をじっくり読ませていただきました
今回の詩には魂を感じました
家族や生まれ育った町を離れ
ひとりで生きてくことを選んだ自分
ひとり暮らしの淋しさも
アパートの隣がやけに近かったり
少しずつお酒を覚えていったりすることで
薄まっていくような感じがするけれども

ふと故郷を思うとき
育ててくれた「あなたたち」を
あまり思い出さないでいる自分が淋しくなったりして

李都さんのいままでのどの作品よりも
この作品は光っているように思えました
本当にその人たちのことを思って
心を込めて書かれていることが
これでもかというくらいに伝わってきました

今年も残り11日ですね
風邪、インフルエンザなどには気をつけて
あと、飲みすぎも注意ですよ
この時期はきっと、飲む機会も多いでしょうからね

また読ませてください
No.1  ω ̄)  評価:40点  ■2011-01-03 11:12  ID:qwuq6su/k/I
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あなたたちの時間の木を切り倒してという語句が、凄かった。最初にこの語句が出て来 圧倒された。北海道という地域から、自分の是からの将来へ向かって飛立とうとする主人公とその両親の有りやうが、詩に現実的、感動的に表現され、感銘深い余韻を、、、。矢張り「あなた達の時間の木を〜」と言う言葉が、船にして・・・詩句として良かったので、、後が・・・。最後のほうへあなたたちのわたしへ、が 是が題名だな と思い、題名を見たら 反対になって居たのが・・何故か印象が強く・・・
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