闇に閉ざされて
 西嶋はゆっくりと立ち上がった。そして立ち上がった事で、己が床に這いつくばっていた事に気がつく。前髪を掻き上げる。頭が酷く混乱している事を今さらながら自覚する。何かに酷く失望していた気がするが、どうしてか思い出せそうにもない。アルコールでも大量に摂取したかのように、彼の目の前は滲んでは揺れていた。
 そこはとても静かだった。耳や肌に痛みが走る程に。その無音状態に耐えられずに西嶋が強く吐いた息は、彼の胸の中に残っていた僅かな温もりを全て奪ったのみで、あっさりと消えた。
「誰か! 誰かいませんか!」
 暗闇に向かってそう叫んでも儚く吸い込まれていくだけだった。せめて自分の周りを把握しようとしなければと目を凝らし、手を伸ばす。すると冷たい壁のようなものを探り当てた。寒く暗く、風のようなものも肌には感じるが、屋内なのだろう、探り当てた壁から並行した位置にもう一枚壁を確認した。ここは細い……廊下?
深呼吸をしてみても西嶋の頭の雑音と歪みは解消されず、それまで自分が何をしていたかすらも全く思い出せなかったが、一先ず歩き始めることにした。無論、当てなどない。両手を広げたらなんとか両方の壁に手をつく事が出来たため、そろりと前進する。
 どこまでも続く廊下なんてないなどと呟いてみた。廊下の終わりを見つけて何をしようかなど、考える余裕もなかった。あまりの心細さに、宇宙を彷徨っているような感覚が彼を襲う。しかし、しばらく粘って神経を集中させていた成果か、目が漸く慣れてきた。
 やはりそこは廊下であった。それも、とても長い。多少確認出来た事で安心したのか、西嶋は立ち止まり再び深呼吸を試みる。視界を得た事で、空気の冷たさは、不安を煽る先程までの効果とは違い彼の論理的思考を取り戻す手助けをしてくれた。しかし。しかしそれでも尚、彼の脳はここに至った経緯を掘り起こそうとはしなかった。それどころか、どんな些細な過去も思い出せないのである。
 記憶喪失、その単語が俄か現実味を帯びてくる。
(仮に記憶喪失だとしたら)
彼は鼻孔を膨らませて唸った。
(仮に記憶喪失だとしたら私はかなりまずい状況下にあるっていう訳だ。明らかに怪しい建物のなかに一人? おかしい……理由がない……)
 西嶋の舌打ちが孤独に響く。だが折角取り戻した思考力を無駄には出来ないと思い、現状把握のため自分の周りを見渡す。
 うす暗くはあるが、どう見ても正面には廊下が延々と続いている……それに左右はもちろん壁。一応背後も確認しようと振り返り、彼は驚き壊れたように叫び、尻もちをついた。
 そこには石像が置いてあったのだ。
 高さは一メートルはあるだろう。先程まで西嶋の目があった位置を丁度見つめるような角度で石像は佇んでいた。その石像の形状であるが、記憶をこぼしてしまった人間でも十分に見覚えのあるものであった。いや、これは西嶋の脳の記憶を司る部分が働いたのではなく、知識を蓄える部位が無事であったがためであろう。その石像は、見間違える事もなく、イースター島にあるモアイ像を模ったものであった。しかし、それは薄らと光っていた。だから窓の無いこの廊下でも視覚を使う事が可能だったのであろう。
 西嶋の叫び声は、数秒もの間、止まらなかった。それはまず、単純に視覚的な衝撃を受けたためであったが、叫ぶのをやめてからの第二の恐怖の波はそれをはるかに凌駕していた。今通ったばかりの道の中央に、間違っても跨いだとは考え難い石像が置かれているのである。まるで道を塞ぐかのように。モアイが自ら動くはずも無いだろう。
(つまり誰かが私の後ろにいたという事だ。しかも……相手には悪意があるようだ)
 そう認識した西嶋は、腰を抜かして正面からモアイを見上げていた状態からゆっくりと立ち上がり、少し後ずさりをした。しっかりと、モアイから目を離さずに。
「誰かいるんだろう! 私を愚弄する気か! 話し合おうじゃないか!」
 恐怖心により柄にもなく怒鳴った西嶋であったが、何の反応も無かった。人間の気配すら感じない。
 何もないという事に慄然とし、彼は、静かに佇んでいるモアイをこれ以上見ている事が出来なくなった。
 思わずモアイから逃げ出すように走り出す。後ろから誰かに刺されるのではという恐怖から彼の背中は小さな痙攣を始めていた。目を堅く瞑る。気が狂ったかのように走った。そして力が尽きそうになり、急停止すると同時に身構えながら背後を振り返る。
 しかし全力の走りも空しく、彼は更なる恐怖を味わう事となった。なんと、彼から三十センチにも満たない程の距離に、先程と同様にモアイ像は置かれていたのだ。全力で五百メートルは進んだつもりである人間のほぼ真後ろに、この像を移動させるトリックなど、西嶋には考えられなかった。本来なら、これだけの距離を走った直後である、熱い汗が噴き出しても不思議ではないはずの彼の背中は、悪寒が走るのみで乾き切っていた。冷や汗すら流れないほどの恐怖と驚きに包まれる。
西嶋は死の危機に直面する事を覚悟しながらも、再度モアイ像からの逃げ切りを図り、走り出した。そして再び、立ち止まる。今度は振り返らずに耳を澄まし気配を探った。しかし何も起こらなかった。少なくともそう考えておかしくないほどの静寂が廊下を包み続けていた。振り切ったかもしれないという安心と期待が一気に膨れ上がり、勇ましく後ろを向く。
 しかし、モアイ像は無表情で彼を見上げてそこにいた。
(猟奇的殺人犯に捕まったのか、私が狂って幻覚が見えているかのどちらかしか考えられない)
だから多分、これ以上続けても無駄なのだ、そう思い至りながらも、西嶋はこの廊下の出口を探すべく、像に背を向けて歩きだした。仮に狂った殺人犯だった場合、モアイに手を出したら即、殺されるだろうと考えたためである。それにモアイの大きさからして避けてその後ろの道に戻るのも困難そうである。ゆっくりと息を吸ったり吐いたりしながら暫く歩く。そして意表を突くようにいきなり振り向くが、当然のように石像はそこにいた。
 一時間も経たない内に、なんとか振り絞った冷静さも枯れ果ててきた。何も変わりの無い道と、無表情な像のプレッシャーが、どこまでもどこまでも永遠に続くようだった。何度振り返ってもそこにはモアイ像がいた。
 西嶋に体力はまだ残ってはいたが気力はもう残っておらず、どうしても座り込みたくなり、遂に力なく立ち止った。立ち止るというよりも、歩くのをやめたという風に。彼が初めて床に目をやると、こぶしよりも少し大きいくらいの石がいくつか転がっているのに気がついた。ゆっくりとしゃがんでそっと拾い上げる。その石は西嶋が思っていたよりも軽く、そして、驚くほどに正確で滑らかな球体をしていた。凹凸が一切ない事を確認するように空いている方の手の指でそっと表面をなぞった。微かに大胆な気持ちになるような不思議な感触を有したその石球を右手に持ちながら、彼は再び後ろを確認した。
 またしてもすぐ手の届くような位置に在していたモアイ像の、変わらぬはずの表情が、ほんの瞬間だけ、彼をあざ笑うかの如く歪んだように見えた。そしてそれは、彼が暴力的な殺意に満ちるのに十分な目の錯覚であった。
「いつまで見てる! 私は負けない! 見るな! 私を見ないでくれ!」
 そう叫ぶのと同時に、彼の右手が動いた。
 モアイ像の広く四角い額に、石球が当たる。まるでガラスが割れたかのように軽くて乾いた頼りのない音を立てて、球が割れた。
その瞬間、耳をつんざくような高い音が廊下中に鳴り響いた。人間の悲鳴と黒板を引っ掻いた音を混ぜたような大音量に、西嶋も自棄を起こし、対抗するかのように吠えた。下に転がる石を掴んでは投げ、掴んでは投げた。しかし悉く石は粉々になり、たちまち彼の手の届く範囲の石は無くなってしまった。モアイは表情を変えることなく佇んでいる。ヒステリックな気分を起こさせるような挑発的で奇妙な悲鳴はまだ続いていた。あまりの大音量に耐えられなくなった西嶋は、両耳を手で塞ぎながら再びモアイから逃げ出した。
しかし音が鳴りやむ事は無く、音源から離れた風も無かった。それは石を投げつけている最中にも感じた事であったが、まるで部屋全体から悲鳴が聴こえるかのようなのである。
 その奇妙な音により吐き気を催した西嶋は、倒れこみ、耳に両手を当てたままの大勢で嘔吐した。ズボンにかかった吐瀉物を見て、自分がスーツ姿である事に初めて意識がいく。一通り吐いてから出来た僅かな間で、睨むためにモアイ像を振り返った時に、漸く超音波の大合唱が止んだ。
「……私を、私をどうするつもりなんだ」
 大音声が鳴り止んだ直後の影響で静けさが寂しく目立つ中、西嶋が弱々しくそれを破った。
 しかし、モアイは一切動かなかった。そしてまた寒さと暗闇と静寂が廊下での存在感を増す。暫く様子を黙ってみていた西嶋だったが、絶望感による涙を堪えるのが辛くなり、近くに石が無いか目で探し始めた。
「おい、ソイツをもういじめない方がお前さんのためだぜ」
 今まで自分が進んできた方向の道からいきなり聞こえてきたしわがれ声に、西嶋は驚き振り向いた。
「あーあー、こんなに吐いちゃって。お前さんハンカチは持ってねえのかい? 早く拭かなきゃ臭いが取れなくなっちまうぜ」
 その鼻の詰まったような声の主は、鳥であった。身体は白い羽毛で覆われている、鶴のような鳥であった。暗闇に慣れている西嶋には眩しく映るその鳥の白さは、彼を少し元気づけた。鳥は続けて早口で捲し立てる。
「俺ぁ高野って言うんだ、よろしくな。お前さんは? ん? 名前も名乗れないほど驚いているってのかい?」
 高野と名乗るその鳥の方に向き直りながら、西嶋は、狂った殺人犯に捕まったという自説を捨てた。
「……すみませんでした。私は西嶋と申します。以後お見知りおきを」
 そう出来るだけ丁寧に挨拶をして無理に笑顔を作りつつ、何とか起立した。
「そいで、西嶋さんよぉ、アンタ、どうせ自分の名前の他は全部忘れてるんだろ? 俺ぁな、ここに来た奴らに記憶を一部だけ蘇らせるってぇ役目持ってんだ。ほら、希望言いな」
 いきなりぶっきらぼうに言われて、西嶋はしばらく考え込んだ。そして慎重に尋ねる。
「その前にひとつだけ。私はこれから死ぬんですか?」
「さあなぁ。ただ、俺が人語を解するってくだらねえ理由で一々信用しない方がいいぜ。なんせ俺はお前の復活させたい記憶を運ぶだけの役目だからなぁ」
 そう言って下品に笑う高野の態度から、何となく自分が死ぬ事を視野に入れねばならないと感じた西嶋は、最初から気になっていた質問を投げかける事にした。
「私が死んで悲しむ人がいるか気になっているんです。その人たちに申し訳ないので。だから、私に恋人や妻がいたか、それにどんな職業でどんな友人がいたかだけ思い出させて下さい」
 高野は一瞬言葉に詰まったかのように見えた。しかし次の瞬間には大笑いしていた。
「おいおい、そんなに早く決めていいのかい、坊やぁ。お前さんほど早く決めた奴ぁ初めてだ! 気に入ったねぇ。しかも三つも要求してきやがる。よし、俺は機嫌がいい、大サービスだぁ! そのうち二つを教えてやろう!」
 そう言って大きく羽を広げた高野の姿は恐ろしくも神々しかった。その時、西嶋の頭蓋の裏側で、水泡を掻き混ぜる様な音と感触がした。まるで脳が鼻を啜っているかのような。目がかすれてきた。高野が叫んでいるのが見える……。
「お前さんにゃあ恋人がいたぁ! 五年も付き合っていた女がなぁ!」
「しっかしな、お前さんは自分の政治家秘書っちゅう下らねえ仕事のお陰で今どき政略結婚させられるんだもんなぁ!」
「お前さんは直ぐに結婚を決めたよなぁ!」
 そして、高野は羽を閉じた。ダイレクトに脳に情報を叩きつけられた西嶋は身体に負担がかかったのか眩暈を起こし、また座り込んだ。
「さあさあ、特大サービスは気に入ったかね?」
 高野が、鳥にも関わらずいやらしい笑みを浮かべているのが西嶋にはわかった。弱っている人間に優しい言葉を掛けてから混乱と絶望を招くような記憶だけを渡していたぶるのが趣味なのだろう。(いや、それとも私の過去が特別酷い事だらけだけなのかもしれないけれど)なんて意識の隅で思いながらもまだ彼はふらついて立てなかった。世界が歪む。眩暈でも歪んだし、手に入れた記憶でも歪んだ。なんと世界は脆い……。
「それとよぅ! その顔がデカイ石っころには気をつけろよぉ? お前さんはそいつによって死ぬんだからなぁ!」
 最後の台詞を満足気に叫び終えると、高野は狂ったような笑いと共に一気に膨れ上がって、破裂した。悪臭を放つ緑の体液が飛び散ったが西嶋は何も感じなかった。いや、感じる余裕がなかったのである。
(そうだ、薫だ……)
 それは西嶋の元恋人の名前であった。いや……元≠ネのかどうかすら西嶋には定かでなかった。高野が言った断片的な情報をほとんどそのままに記憶が蘇っただけなのである。幸運な事に、勢いに任せて名前までは思い出せた。多分記憶を司る部分が刺激されたためであろう。しかし、彼女と最終的にどうなったのかを全く思い出せないのだ。顔すら曖昧な状態である。政治家の娘と婚約した事実も思い出してはいるが、それに至っては相手の名前すら思い出せないでいる。
 しばらくして眩暈と混乱が止み、周りが無の支配する世界に戻った事を自覚するや否や、西嶋は高野の最後の言葉を思い出して弾ける様に立ち上がった。このモアイ像が、西嶋を殺すことになる……。

 やはりこのモアイ像は生き物なのだろうか。音も立てずにいつまでも後をつけ、餌が疲れた時にいきなり豹変し襲いかかってくる石像の様子を想像した西嶋にはもう、その石に背を向けて移動する勇気はなかった。しかしこれが功を奏した。そろりと慎重に、モアイに睨みを利かせつつ後退りで先に進んでいこうとしている彼を、モアイは眉ひとつ動かさずに見送る。追ってくる様子は見られない。その視線は頑なに一点に集中していた。近くにいると丁度西嶋と目が合うような、一点に。
その時西嶋は、モアイ像の顔にこの廊下に来てから一度も持ったことのないような感情を覚えた。それは、恐怖や不安とは違う、懐かしさや切なさのような不思議な胸のざわめきであった。
 西嶋は注意を張り巡らしながらも、自らの頭のどこかが刺激されているのをしっかりと感じていた。うまくこれで距離を作ることが出来るかもしれないと、気分が高揚すらした。しかし、モアイ像は見ている間は大人しいための油断からか、彼は自分の背後に対しては然程意識を尖らせてはいなかった。正面に気を取られていた西嶋には廊下の右側の壁がなくなった事にすら目をやる余裕がなかったのだ。
このことにより、初めてこの廊下の突き当たりというものまで辿り着いた時彼は、全く身構えすることもなく背面をから行き止まりの壁に突っ込んでいったのであった。いきなりの物理的な衝撃が西嶋を襲う。
ほんの少しの隙だった。
 彼は、ほんの少しだけ、壁を振り返った。
 西嶋がすぐにはっとしてモアイのいる方に顔を戻した時、既に例の像は彼のすぐそばに追いついて平然としていた。
「こんなことしていても埒が明かない!」
 苛立ちを抑えきれなくなって、悲痛な叫びを西嶋が発した時、彼の耳のすぐ傍を、何か鋭利な物がかすめた。
 驚いて通り過ぎた方向に目を向けると、そこにはふらふらと刃物が宙に漂っていた。刃物とは言っても、人を殺す威力はそれ程でも無さそうである。その平べったい刃を、西嶋は、石を彫るために特化されたものだろうと見た。
(これだ……今すぐこれでこいつをめちゃめちゃにせねば!)
 西嶋はそう思って手を伸ばしたが、刃物は見事にするりと指の間から逃げ、廊下の向こう側へと走り出した。いや、空中を滑るという表現が正確かもしれない。もしくは、空気を泳いでいる、であろうか。
 とにかく、かなりのスピードで逃げられたため、西嶋は焦って直ぐに後を追って走った。彫刻刀が何らかの意志か目的を持って進んでいるのは、先程鮮やかに西嶋の指からすり抜けた事からも明らかであった。廊下の中央を滑らかによどみなく進むそのシンプルで無駄のない動きは、美しくさえ感じられた。
 西嶋は不意に背後に気配のようなものを感じて振り向いた。もちろん真後ろにはしつこくモアイが移動済みであったが、彼が見たのはその奥、つまり廊下の向こうから来る、新たな刃物であった。しかも今度は二本来ている。西嶋は走るのをやめてその刃物が追い付くのを待った。二本の内の右側の彫刻刀の方が柄が赤く見えやすいため、そちらに飛びつくよう腰を屈めたが、刃先が自分側についている事による一瞬の躊躇いにより、またしても逃げられてしまった。
 また追いかけて走り始めると、最初の一本もまだなんとか見える位置を進んでいるようだった。まるでその三本の凶器は互いに競い合うかのように先を目指していた。しばらく追いかけているうちに西嶋は、いつまで経っても一歩手前のところで追い付けないようなスピードをわざと保たれているかのような感覚と、それによる投げやりともいえる結論に達してしまった。(このままじゃ私が意味無く疲れるだけだ)彼は一旦追い付く事を諦め、持久戦を視野に入れてピッチを落とすことにした。そして同時に、自らの記憶を取り戻しながら走るよう努めることにした。


(薫と……薫と私が最後に会ったのはいつだったのであろうか)
 頭のどこかが、その問いに応えるように彼の鼻の奥をくすぐった。それは、コンクリートの地面が雨で濡れ始めた時に立ち昇る、あのどこか切ない香りであった。
(外で会ったのが最後だったのか?)
 雨が降っていた日、だった気がする。傘を持つ自分の手が痛むほどに冷たくなっていた感触が蘇る。
 西嶋は、自らが薫という名前を思い返す度に胸がじわりと熱くなるのに気が付いていた。記憶が薄れた今でも感情が反応してしまう程に彼女を好いていたということなのかもしれない。
(私は本当に、政略結婚を理由に薫と別れる事が出来る様な人間だったのだろうか……)


 順調に思考に沈みかけている西嶋を無理矢理現実に引き戻したのは、いくらピッチを落としていても訪れてしまった、体力の限界と肺の痛みだった。咳が出るようになり、さらにはそれが止まらなくなる。次第に刃物とも差が付いているのを感じていた。既に、先頭のそれは暗闇に吸い込まれて見えなくなっていた。
 疲れは注意力をも奪っていく。最後の力を振り絞ってがむしゃらに前へ進もうとした彼に、足元を見る余裕は無かった。
 西嶋は、廊下のあらゆる所に転がっているあの球状の石に足を滑らせてしまい、背中から地面に叩きつけられた。彼に再び立って刃物を追いかける余力はなく、息を切らして放心しながらただ球を見つめるだけだった。数時間前、これと同じ球をモアイ像に投げつけた時に生じた、あの自暴自棄ともパニックともいえる感情は、以前にも触れた事があったものに感じる。西嶋は仰向けのままの姿勢で目を上にやり、当然の如く自分の傍に控えるモアイを見つめた。何か引っかかるような気がするその顔立ちをぼんやりと眺めながら、再度西嶋は記憶を探り当てる努力を始めていた。


(私は……政略結婚の話が出た時、既に薫と別れていたのだ。そうか、高野の言い方に惑わされたのだ! 今、はっきりと思い出してしまった。私が先に捨てられた! 私が別れを切り出したんじゃない。仕事に懸命になり過ぎていた私に薫は愛想を尽かせたのだ……)
 西嶋は、涙が出ているのを感じた。鼻も熱い。仕事なんて、くだらないことで。あんなに好いていたのに。
結婚を決めたのも、薫に対する復讐のような気持ちと例の自暴自棄な状態が重なったためであった。(私は何という馬鹿な事をしたのだ……)そう思いながらも西嶋は彼女と最後に会った日の事を未だ思い出せずにいた。


 漸く息が戻り立ちあがった彼は二度失恋をしたような気分に陥りつつも、気力を振り絞り歩を進めた。
 無論、既に視界に刃物は無く、見えるのはずっと続いている廊下と無数に転がる石の球ばかりであった。しかしそれは暗闇による目の錯覚であった事に、数分歩いたのち気がつく。道が二つに分かれていたのだ。
左右に伸びる二本の廊下は、見たところほとんど変わりが無いように思えた。勘に従って西嶋は左へと進む。暫く進んでから、モアイは右に行ってくれてなかったかと期待して振り向くも、やはりそこには変わらず石像が置かれていた。
 走るのをやめて歩き始めてから記憶を呼び覚ます作業がはかどっていた西嶋であったが、ここに来て道を間違えたのではないかという不安に襲われた。モアイが道を塞いでいるため後戻りは出来そうにない。
(本当にこのモアイが私に死をもたらすのだろうか)
 身震いをしてから、刃物を追いかけていた時にかいた大量の汗が乾き、さらに体温が奪われてしまった事に気付く。少しでも暖をとろうと両手をポケットに入れながら歩く。しかし、速度を落とせばモアイに捕まるのではないかという根拠のない疑念が湧いてきたため徐々に速度を上げてしまい、遂には走り出していた。
 少しして、彼の周りが段々と明るくなってきた。西嶋は、この先になにかあるのだろうと確信するが、それと共に恐怖心も訪れる。こんな狂っている場所で会う何かなど、もうたくさんだという絶望感に包まれていたからだ。
 確認のため後ろを振り返ると、廊下の先からこぼれてくる光に照らし出されたモアイの顔が、さらに不気味で鮮明になって西嶋の目に飛び込んでくるだけであった。(こんな像といつまでも睨めっこなんぞしていたら気が狂ってしまう)と身震いし、彼は確認したことを後悔した。
 出来るだけ感情を鎮めながら進んでいくと、廊下は何度も直角に折れており、曲がる度に段々と明りが強くなってきていた。西嶋の耳に何かを削るような暴力的な音が飛び込んできたのは、五度目の角を曲がった時である。
 その乾いた音は光と同様、西嶋が進む度に強まってきた。
 そしてさらに西嶋が八回直角に折れて進んだ時、彼は遂に光源へと達した。


 そこは天井の高い大部屋だった。光は、何から出ているという訳でもないようで、あえて言うなら壁自体が白く輝いていた。段階を踏んで明るくなってきていたとはいえ、全体が光に包まれたようなこの部屋の光度に西嶋の目が慣れるのには少し時間がかかった。いや、時間がかかっただけではなく、音の主がそこにいる事をどこかで直感し、それを見るのを西嶋は躊躇ったのかもしれない。
 とにかく、数秒の間の後、西嶋は天井の方を見上げた。それは音が高い位置から響いているように感じたことによる。床から大体三メートルくらい離れた場所に、それは浮かんでいた。


 そこに浮かんでいたのは、廊下で目覚めてから何度も床に転がっているのを見た、例のボールのような石であった。その石に刃を立てる事で、先程まで西嶋が追いかけていた彫刻刀のうちの一本が、乾いた音を奏でている。それは透明な人間が自在に操っているような動きではなく、何か人間を離れた、猪のような獣が混乱して狂ったように何かに突進と頭突きを繰り返している風にすら見える、必死さの溢れた動きであった。
 削られた石の粉が目に入りそうになるのを手で防ぎながら、西嶋はその作業に見入っていた。石粉は、まるで、あの日降り注いでいた雨粒のようであった。そして、雨によって生気を取り戻す木々のように、彼の記憶も段々と潤ってくるのであった。


 薫に別れを告げられての数ヶ月、西嶋は死んでいるかのように無気力だった。元気を出す方法が思いつかず、異常なまでに珈琲を飲み続けた上にストレスもあり、胃をひどく壊して病院へ行ったりもした。
 結婚が決まった時は、少し満たされた気すらしていた。仕事に打ち込んで充実感を探そうともがいていた。普段は滅多に行かないカラオケなどにも挑戦して気を晴らそうともした。
 彼女を失っても人生を満喫していると独り言い聞かせる事が、西嶋にとって、自分を捨てた薫へのささやかな復讐のようになっていた。無論彼女はそんなことも知らずに過ごしていただろう。西嶋は薫にたくさん伝えたい事があった。たくさん。

 雨の日だった。降り始めたばかりのそれはコンクリートの色を段々と濃くしていき、西嶋はその匂いを穏やかな気持ちで吸い込みながら道を歩いていた。
 いつもの帰り道。いつもの時間。そこに薫は立っていた。控えめに笑いながら。

 (そのあと、当然私は薫に挨拶をした。充実しているように見せかけて。そして結婚の話をしようとした時に……確か、復縁を持ちかけられたような気がする。それで今さら遅いとばかりに婚約の事を伝えたはずだ。薫は泣いていた……。薫は……何かを私に告げた? 他の男の存在を示唆されたような気がする。多分そうだ。そして、私は残忍な気持ちになり……あの時私は彼女に……何かをした。何を? 彼女を苦しめた? 薫は泣いた……泣いた……)
 そしてその時の薫の泣き顔が思い浮かんだ。とうとう西嶋は薫の顔を思い出したのだ。そして気がついた。
 先程から取り憑いたかのようにずっと自分を追跡している石像の顔が、薫の顔と酷似している事に。


 西嶋は凍りつき、もう後ろを振り向く事は出来なかった。薫そのものの顔はしていなかったが、石像は随所随所、薫と全く同じ形のパーツを有していた。まるで薫をモデルに作られたモアイ像である。
(私は一体彼女に何をしたんだ? 思い出さねば! 一刻も早く!)
 しかしそうやって焦れば焦るほどに思考は氷漬けにされたかのように硬く冷たく、機能しなくなるものだった。そしてパニック状態に陥った西嶋に止めを刺したのは、上空に漂う石である。
 まず浮くのを止めて落ちてきたのは、役目を終えた例の彫刻刀であった。そしてそれにつられるようにその表面上に何かが完成したと思われるあの石も、ゆっくりとではあるが落ちてきた。西嶋は反射的に手を伸ばし、石を掴んだ。刀の努力により元から比べると大分と角ばったその元球石を見てみると、それは小さいながらも、彼の背後にいるであろうモアイ像と全く同じ形状をしていた。
 白く輝く部屋に、西嶋の叫びが響き渡る。そして刹那、その小さいモアイ像を地面に叩きつけた。一番不安が高まっている時に掴むとは、モアイを見るタイミングがあまりに悪かったのだろう、反射的に投げつけてしまったのだ。
彫られた後の石は、それまでの転がっていた他の石とは違う反応をみせた。
 床に思い切りぶつかったそれは、重々しく、ぐしゃりと潰れた。その中からは真っ赤な液体が大量に飛び散る。その粘性を帯びた液体はてらてらと光りながら勢いよく流れ出てきた。
 西嶋は、いつまでも止まらないようなその勢いに動じながらも、中から手探りで刃物を探し出し、拾った。液体は彼の手にも纏わりついたが、手を何度も振ると床へと飛び散った。
 見る見るうちに、溢れ出たその赤い液は部屋全体を包んでいた。床だけではない。壁も。さらには天井までも。部屋は紅く危険な光で西嶋を照らした。

 全てのものが赤に染まりきると、西嶋の荒い息遣いだけが部屋に残っていた。
 彼の後ろにはまだモアイがいるのだろう。薫とほとんど同じ顔をしたモアイが。(目と口が本当に彼女に似ていた。あの像は一体私をどうしようというのだ?)と震えながら西嶋は思った。本能的に彼は振り向かずにまた部屋の奥へと走った。しかし、次に続くドアや出口は無かった。行き止まりである事に愕然としつつ、左右に廊下が別れた場所を思い出す。
(この広い部屋なら迂回してモアイを抜かして引き返すことが可能だ。きっとあそこが出口なんだ……)
 そう思って振り返るとそこにはモアイはいなかった。もっと部屋の奥の方の、小さいモアイを西嶋が投げて壊した辺りに大きいほうのモアイ像もまだいるようだった。
この部屋の出口が塞がれていない事に奇声を発して喜びを表現しながら、彼は走った。後少しだ。後、少し。もうすぐで出られる。

 そしていよいよ部屋を飛び出せた時、西嶋は呆気にとられて立ち止った。曲がり角の多い廊下があるはずのそこは、小さな丸い部屋に変わっていた。出る場所は一つしか無かったはずだと首を傾げながらもう一度広い方の部屋に戻ろうとすると、真後ろにはモアイがいた。そしてその奥にあるはずの出入り口は、綺麗に跡形もなく無くなっていた。
「閉じ込められた!」
 西嶋は思わず叫びつつ、後ずさりした。
 背後にも出られる場所は無さそうだ。モアイは取り乱す西嶋に構わないで動かずにそこにある。
「薫か! お前は薫なのか! そうなんだろ!」
 泣き叫びながら西嶋は部屋の壁を蹴る。やはり壊れそうもない。
「私に何がしたいんだ!」
 自らの絶叫に何の反応も示さずに無表情を保つモアイ像を睨む西嶋は、その像から何か太い紐のようなものが出ているのを発見した。紐ともパイプともつかぬそれは、この部屋と繋がっているようだった。
 彼は衝動的に、モアイを傷つけたい一心で、その紐に近寄り、先ほど拾い上げた刃物で思い切り裁ち切った。途端に中から黄色く半透明の液体が流れ出る。
 その瞬間、モアイは甲高い悲鳴を上げた。それは車が急ブレーキをかけたような、危機的なものだった。五秒もしないうちに悲鳴が止み、西嶋がモアイを恐る恐る覗き込む。表情は何一つ変わっていなかった。しかし、モアイのその動かぬ瞳からは赤い血のような涙が溢れ出ていた。
 パイプから泡を出しながら溢れる黄水にその涙が落ちて、混ざっていく。
 西嶋は自分が何か取り返しのつかない事をしたと悟った。
 しかし今さらどちらの液体も止めることは出来なかった。小さい部屋である、すぐに靴全体がオレンジ色の液に浸かるほどまで嵩は増えた。
 その時だった。モアイからまた声が聞こえた。ただの悲しげな悲鳴にも聞こえたが、何か言葉を喋っているようだった。苦しそうに。口も表情も変わらぬままで。しかし迫るように、懸命に。
 西嶋は注意してそれを聞き取った。
「トツキトウカヲマタズシテ
ナゼ…
ナゼエ…
トツキトウカヲトツキトウカヲマタズシテ! マタズシテ!」
 西嶋は溜まりゆく液体に映る自らの姿を見て、初めて自分の顔を思い出し、モアイに顔を向ける。
「私と同じ鼻の形だ……」
「パ……パパァ……」


 雨の日だった。西嶋はいつものようにコンビニと郵便局の間で曲がり細い道に入った。そのお気に入りの近道の難点は、傘をさしていると前から来る人とすれ違いにくいところにあった。見ると道の向こう側に人がいるようなので傘を一旦畳もうと下ろした。そして驚いた。
「薫!」
「隆志くん、久しぶり。元気だった?」
 そこには西嶋の昔の恋人である薫が手を振って立っていた。
 西嶋は嬉しそうな顔になるのを堪えながら平然を装う。
「ああ、元気だったよ、もちろん。ああ、そうだ! 実はね、私の尊敬する前島先生が私に……」
 その言葉は真剣な表情をした薫の言葉で遮られた。
「やり直したいの」
 時間が止まった。即座に引き受けたいところだったが、彼にもプライドというものがあった。
「今さら遅いね」
 冷たく言い放った彼の言葉に、薫は困ったような顔をする。
「……どうして?」
「どうしてじゃないだろう? 君が終わりにしたんだ。全部。全部だ。なんでそんな顔をするんだ? 意外かね? 私が君からの復縁を拒否するのは」
 勢いがつきながら、西嶋は頭に血が昇るのを感じた。
「私は前島先生のご令嬢と結婚するんだ。君が言う通り、私は仕事人間だからね! 君にとってだけじゃなく私にとっても、別れて正解だろう!」
 そこまで言い切った時に、彼は薫が泣いている事に気がついた。
「そんな風に言わないでよ……」
 少し、間が空く。そして反論しようと西嶋が口を開いた時に薫は言葉を続けた。
「妊娠したの、私。時期的に考えて、あなたの子供よ」
(時期的に……? だから復縁……? そんなに私は都合のいい男に見えるわけか!)そう思いながら、彼の手は凍るように冷たくなっていた。自分が残忍な気持ちになるのを抑える事はもう不可能な域に来てしまっていた。
「そうか、じゃあ堕ろせよ」
「え?」
「中絶するしかないだろう。私のキャリアに傷をつけるな」
「本気で言ってるの?」
「私は今の婚約者の事しか見えないんだ。今さら何と言おうと君は邪魔なんだよ」
 そんな答えは全く予想していなかったかのように茫然とする薫の表情にさらに腹が立ち、早足にその場を立ち去った西嶋が、しばらくして後悔し彼女に連絡を取ろうとしても、既に遅かった。
 そして友人の友人を辿っていきやっと薫の情報を得た時にはもう彼女は手術を終えていた――。


 西嶋が記憶を戻しても、時間が戻る事が無いのは明白だった。
 この石像は見れば見るほど本当に二人に似ていた。しかし今は血の涙を流しながら死へと向かっている。西嶋の腰が浸かるほどまでに液が流れ出ているためか、どんどんしぼんでいっているようにも見える。
「トツキ……トゥカぁ……パパァ……」
 段々と弱々しくなるその声を聞きながら、西嶋も涙を流した。冷静を取り戻すのも、父性に目覚めるのも、何もかもが、遅すぎた。
 彼がモアイ像にしてやれる事は、抱きしめることくらいであった。もう大分と中身が漏れ出て柔らかくなってしまった石像を、彼は優しい穏やかな笑顔で抱きかかえた。
「もう大丈夫だからね、パパが、ずっと一緒にいてあげる」

 肩まで液体が満たされて来ても尚、石像から声がしなくなっても尚、西嶋は笑みを浮かべながら小さくなった石像を撫で続けた。



 それから数カ月が経った。産婦人科に一人の急患が運び込まれた。医師が診察しようとすると、看護師の女性が彼に耳打ちした。
「あの人、確か前うちの病院にいらした方ですよ。ほら、恋人に未練があるのに強がってたら相手に婚約者が出来ちゃって、中絶しに来た、あの人ですよぉ」
 そんな患者もいたかな、女ってのはすごい記憶力だよ、とばかりに首を振りながら慣れた手つきでその患者の腹の中を見て、その医者は絶叫した。そこには明らかに服を着た男が入っていたからだ。大きさは胎児だが、身体つきは成人男性としか思えないようななんとも形容し難い生物だった。しかし、もう、死んでいるようだった。
 医者が患者をそっと振り返る。女は弱々しい笑顔で言った。
「あぁ……隆志さんね……? それ……あの人の好きなスーツなんです……」
 女は静かに息を引き取った。
ころんぶす
2010年12月19日(日) 03時52分23秒 公開
■この作品の著作権はころんぶすさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なるべくたくさんの感想をいただきたいです。
一応ホラーという分類ではありますが、純文学を意識して書きました。

この作品の感想をお寄せください。
No.4  ころんぶす  評価:0点  ■2010-12-27 18:51  ID:TMMF6nzKc4Q
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HAL様

はじめまして。ご感想ありがとうございました。怖い、そして切なさもある、と感じていただけたとの事ですが、素直にすごく嬉しいです。


>主人公の精神世界だけでのことなのかと思っていたら、最後の最後におそろしい現象が。ぞぞっと不気味で、そして、とても悲しい結末でした。


よかった!あえて、主人公の精神世界(例えば意識不明で入院中にみた、等)で起こったように書いておいたので、狙い通りにいったみたいですね。ありがとうございます、安心しました。


モアイがユーモラスなイメージがあるとの事ですが、同じことを友人にも指摘されました。どうやら、イースター島のモアイ像の顔がすごく怖いと感じていたのは、私だけのようです(笑)
これには参りました…やはり、読者の皆様からの理解と共感を得るには、同じセンスというか感性を持つことが大切ですよね。勉強になりました。ご指摘、ありがとうございました。
モアイ像に似た顔の女性という設定になってしまった事は執筆中も苦笑いでしたが、一応モアイの方に面影がある、くらいで考えていただければ…と思っていました。私の筆がまだ未熟だったのだと思います。ごめんなさい(汗)


>冒頭の段落あたりに、もうちょっと主題を予感させるような描写があってもよかったかもしれません。

確かにそうですね。少し、読者様の推理、展開の予想に対しての配慮が欠けていたと思います。ミスリーディングに気を取られていました。これからはもっと読者の方々の目線に立って考えます。


「トツキ…」の台詞のインパクトがあったのは本当に嬉しいです。ありがとうございました。


大変丁寧で素晴らしいご感想、本当にありがとうございました。
参考にさせていただきます。

今度、HAL様の作品も読ませていただきますね。
これからもよろしくお願いします。
No.3  ころんぶす  評価:0点  ■2010-12-27 18:32  ID:TMMF6nzKc4Q
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ゆうすけ様

ご感想ありがとうございました。返信遅れてしまってごめんなさい。

怖い!と読後に感じていただけたようでとてもうれしく思います。ラストの台詞もこだわってましたので、インパクトがあったのはよかったです。



>これはこのサイトでも時折見られる書き出しです。

確かに工夫がなかったと思います。これが、「冒頭が、やや凡長」という評価につながってしまった気がします。もちろん、文体が鈍い立ち上がりということもあります。このポイントは今後改善していこうと思います。ありがとうございます。

>正体が明らかになる過程が素晴らしい

ありがとうございます!とても嬉しいです。
過去のシーンの挿入がしつこくなりすぎていないか心配でしたので。


今度ゆうすけ様の作品も読ませていただきますね。
ご感想、本当にありがとうございました。

あ、ちなみに私も中絶は最低だと思っています。
No.2  HAL  評価:30点  ■2010-12-26 17:17  ID:iWnAIuxifQ2
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 はじめまして、ですよね。拝読しました。

 うわあ、怖いですね……。切ない、と怖い、と両方なのですが、怖い、のほうが勝った感じがします。夢の中の世界、あるいは死出の旅路のような、主人公の精神世界だけでのことなのかと思っていたら、最後の最後におそろしい現象が。ぞぞっと不気味で、そして、とても悲しい結末でした。

 気になったこと……というか、個人的な意見過ぎるかもしれませんが、モアイにユーモラスなイメージがつきまとっていて、それがちょっと、作品の重い空気に入り込むのを邪魔したような感じがありました。モアイの不気味な感じよりも、コミカルなイメージのほうが勝ってしまったというか。
 作られた時期なんかでいろんな形のモアイ像があるらしいですけれども、つい、イースター島のあの長い顔だけのもの、あれを連想しちゃうんですよね。それで、モアイが元カノの顔にそっくりっていうのが出てきた瞬間、ついおかしな想像をしてしまって。モアイ像のパーツが彼女にそっくりなんじゃなくて、モアイ像にそっくりな彼女を想像しちゃったんですよね(大汗)
 明らかに、へんな読み方をしたわたしが悪いのですが、重たくてシリアスな内容なのに、そこだけちょっと浮いてしまったような感じがあって。インパクトを出すために、あるいは息抜きポイントをつくるために、わざとそうされているのだったら、すごく余計な口出しなのですけれど(汗)

 あと、自分がいつも書き出しに失敗するので、人様のことはまったくいえないわたしなのですが、冒頭の段落あたりに、もうちょっと主題を予感させるような描写があってもよかったかもしれません。記憶喪失という設定は、演出としていいと思うのですが、失われた記憶そのものではなくても、堕胎、水子、裏切り、未練、そういうものに近いイメージをなんとなく感じさせるような、アイテムか描写か、そういうものがちらっと匂わせてあると、さらに自然にストーリーに没頭できるかもしれないなあと。
 ……などといいつつ、そういう小手先の技術や形式にこだわるのも何だろうという気もしますので、あくまで参考意見ということで、さらりとお聞き流しいただければ。

> トツキトウカヲマタズシテ
 既出のご意見と重複しますが、すごいインパクトのある箇所でした。悲しく、やるせないお話でした。

 拙い感想、そして自分の腕前を完全に棚の上に放り投げての物言い、大変失礼いたしました。どうぞこれからよろしくお願いいたします。
No.1  ゆうすけ  評価:40点  ■2010-12-22 14:23  ID:DAvaaUkXOeE
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拝読させていただきました。
まず読後の感想を言います。怖い! ぞくぞくしました。
トツキトオカ パパ! このセリフ、耳に焼きつきそうです。

さて冒頭からみますと、謎の廊下に佇む主人公、まったく状況不明。これはこのサイトでも時折見られる書き出しです。ここから殺し合いをさせられたり、復讐をされたりしますと、「またか」と思われてしまいます。そして謎の石像との遭遇、過去を思い出しながらその正体が明らかになる過程が素晴らしいです。
冒頭が、やや凡長に感じました。こういったサイトですと、冒頭における掴みがないと最後まで読んでもらえない可能性がありますよ。
ネタばれになりそうなのであまり核心部分は書けませんが、女房が何度妊娠しても絶対に中絶はさせないと誓った男がここにいると言っておきます。
総レス数 4  合計 70

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