アイ・ワズ、アイ・ワズ!
 ジャックは左手でハンドルを器用に操作しながら、右手で備え付けのスピーカーの音量を調節している。体はやや斜め。助手席に座る女性のわずかな表情の変化をも、察知できるようにするためだ。つい今しがたも、女性はエレキギターの耳にギンギンと響く音に眉を寄せてカーラジオを見つめた。それをほんの一瞬のうちに察して、彼はスピーカーの音量を下げているのだ。
「音、大丈夫?」
 彼が言うと、女性は、刹那、目を大きく開いて彼を見つめたが、その驚きはすぐに緩やかな笑みに吸い込まれる。
「ええ、大丈夫」
 彼女の笑顔をしっかりと確認し、視線を合わせて微笑んでから、彼は再びその目を前へ向ける。スピーカーから離しても、右手はハンドルを握りはしない。この右手は再び彼女が顔をしかめた時のために、あけておかなくてはならない。彼女のための右手だ。左手だけでハンドルを操作し続ける。
 
 ジャックはロボット――ジゴロ・ロボットだ。最新型で、搭載された人工知能を学習によって高めていくことができるタイプ。これまでも、孤独な女性や訳ありの女性の慰め役として過ごすうちに、さまざまな知識を得てきた。例えば、今のように車に乗っている時に急ブレーキをかけてしまったとしたら、どうするか。女性の体をかばうように、その前に片手を伸ばして、つんのめりそうになるのを抑えてやる。そうすると、大抵の女性は喜ぶのである。他にも、一緒に歩く時は必ず彼が道路側を歩くようにするとか、高い位置にあるものはさりげなくとってやるとか、ふとした瞬間に女性の髪に触れてみるとか、とにかく、女性がうっとりなるようなさまざまな気遣いや仕草を、彼は学んできた。
 ジャックの持ち主は、高級ホストクラブのオーナーだ。そこでは、店内サービスと出張サービスの両方を行っている。もちろん、人間のホストもいる。しかし、彼らは女性の心を学習しようとしない。そのため、ジャックのようなジゴロ・ロボットの方が人気で、クラブの指名数のナンバー1からナンバー7までを独占し、ナンバー20までで18名を占めているのだ。今、隣に座っている女性も、いつも彼を指名してくれるお得意様の一人だ。彼はこの女性の好みや性格、そして男性を見る時のお気に入りの仕草や恰好まで知り抜いており、その情報はすべてデータ化され、胸にある彼の頭脳――三つのAIの内の力学AIに保存されている。彼女とのデートの時は、机の引き出しをあけるように、そのデータを取り出せばよい。そして、ただそのデータに沿って、小さく縁の細い眼鏡をかけてみたり、車をバックさせる時に助手席の背に手をかけてみたりする。それだけで、彼女を楽しませることができるのだ。
 
 ジャックはホストクラブまで車を走らせ、ギラギラと下品な光を放つその駐車スペースにすっぽりとおさめる。もちろん、バックの時、助手席に手をかけるのは忘れない。そして、ひらりと身を翻すように車外へ出ると助手席へまわり、ドアを開ける。女性は、ありがと、と短く言いながら、彼になど目もくれずに車を降りると、そのまままっすぐに店内へ向かう。彼はそんな女性を人ひとり分の距離を取って追う。
 店内に入ると、いつものように生ぬるい空気がゆらゆらと流れていた。熱い吐息があちこちで漏れていても、誰もが気付かないふりをする。そのため、ただ空気のみが熱を持つ。気が付かないふりをしやすいよう、薄暗い。人間がものを見るたよりは、陰った天井を泳ぐ、赤、黄、青といった色とりどりの点から漏れる微かな光の膜のみ。しかし、ジャックは視覚モードを暗闇に切り替えているため、この部屋の隅々まで認識できる。あくまで人間のための暗闇なのだ。
「おかえりなさいませ。お部屋はどちらになさいますか?」
 近づいてきたウェイターは、しん、とした雰囲気に溶け込むようなささやき声を出す。
「いつもの二〇八号室」
 女性の声は、ひっそりとした空間を貫くように、響く。
「承知いたしました」
 ウェイターはそう言い、ゆったりとした動作でカウンターへ戻ると、壁に取り付けてあるキーストッカーから、じゃら、と控えめな音をさせて一本鍵を取り出し、女性の方へ。そして鍵を渡すと「ごゆっくり」とだけ言い、カウンターへ身を隠すように、そっと戻る。
 二〇八号室は、このクラブで最もグレードの高い部屋の一つだ。コンセプトは水。ガラスのテーブルや床の中には、白砂がしかれ、まるで砂浜のよう。ベッドの脇にある太い柱には水槽が埋め込まれていて、その中を、まるで精巧に作り上げられた一つの作品のような、小さくも美しい熱帯魚が、漂うように泳いでいる。円形のベッドはやわらかいが決して沈み込まず、体をしっかり支えてくれる心地良さがあり、しかも二人どころか四人は横になれそうな広さだ。巨大な液晶テレビもあり映画の視聴もできる。尤も、ここで映画を見ることなど、ほとんどないのだが。
 ジャックは部屋に入ると、すぐに空調機のところへ行き温度を上げる。彼女は寒いのが苦手なのだ。それから照明をスタンダードからやや暗めな「3」に切り替え、湯を沸かそうと風呂場へ向かう。しかし、そこで、ソファに座ったまま、彼女は小さく、こう言う。
「やめて、今日はいいの」
 ジャックは浴室に掛けた手を止め、ひょいと首を動かして女性の姿をとらえる。その表情から彼女の心を知ろうと考えたのだ。だが、眉をひそめた、どこかおぼつかなげなその表情から読み取れるものは漠然としていて、よく分からない。彼は仕方なく彼女の方へ歩み寄り、横に腰掛けながら尋ねてみる。
「何かあった?」
 しばしの空白。女性は彼の方を向かず、ただ床の一点を見つめている。眉をひそめて。そして、数秒後、そのままの状態で、口だけ動かして話し始める。
「夫にここに来てることがバレちゃったの。だから、もう来れない」ふうと一息、口から洩れる。「でもあなたと一緒にいるのは楽しいから、最後にもう一度だけデートしたいなと思った。それだけ」
「セックスはしなくていいの?」
「ええ、したら別れ難くなるから。今日は、これで終わった方がいい」彼女はまた言葉を切ったが、少し間を置くと「さみしい?」
「さみしい」
 間髪入れず、彼は応える。すると、彼女は――声をあげて笑い出した。奇妙だ。口元とそこから漏れる声は笑っているのに、依然として眉は寄せられている。彼がこれまで触れたことのない、奇妙な、笑み。
「そんな言い方じゃ、嘘だってバレバレじゃない。もう少し勉強しなさいよ」
「嘘じゃない」
「嘘でしょ。だってあなたは『さみしい』って感じてないんだから。そう言った方がいい、っていうのは、本当に感じてないんだったら、嘘なんだよ」
 彼はうろたえる。こんなことを言われたのは、はじめてだった。胸の学習データをさらって、どう対処すべきか考える。コンピューターがせわしく稼働するジ、ジ、ジ、ジ、ジという音が、金属の骨を通して全身に伝わる。しかし、似たようなケースは一つもない。仕方なく、彼はコンピューターの動作を元に戻し――骨の震えが静かに消えていく――もっとも簡単な言葉を選択する。
「ごめん」
 瞬間、彼女の目は瞳の輪郭がくっきりと見えるほど、大きく見開かれた。が、その一瞬を置いて、瞼は緩まり、驚きは目から消えていく。
「あやまることないよ。あなたには感情がないんだもんね。私が馬鹿なこと聞いただけ」
「感情は、ある」彼は即座に言う。それははっきりしていたから。「オレのAIは三つのコンピューターから成っていて、その中には感情AIがある。自分が行動した結果、周囲がどう反応したかを学習データとして感情AIに取り込み、そのデータに応じて、自分を変化させて、感情を持つことができる」
「人の心を学んでまねたって、それは感情じゃないのよ」
「ちがう。きっと学習データがまだ少ないんだ。でも、完成されてなくても、感情はちゃんとある」
 ジャックが話す間に、女性の目は再び床の上を泳ぎ始めていた。はっきりと定まらないその視線は、なにやらそこに幻でも見るかのように、ぼんやりしている。しばらくは、そのまま彼女の時は止まったかのようだった。しかし、数秒後か、数分後か、とにかくある瞬間、うたれたように彼女はぱっと顔をジャックに向け、
「今、私と話して、どう感じた?」
「どうって……」
 そう言いながら、彼は正しい答えを探そうと胸のコンピューターの回転を速める。ジ、ジ、ジ、ジ、ジという、おそらく外には聞こえていないであろう音が、骨を通して全身に響く。体の芯が震える感覚――。彼はこの感覚が嫌いだった。
「不愉快だと、思った?」
 ジャックが答えを出す前に、女性が言った。不愉快? 彼のコンピューターはピタとその動きを止め、そして次の瞬間には再び「不愉快」という言葉を求めて動き出す。ジ、ジ、ジ、ジ、ジ――
「いや、思わなかった。なぜ?」
「普通の人だったら、思うのよ」
「ありがとう」
 彼の言葉に、再び、彼女の目は黒目の円い輪郭がくっきり見えるほど、大きく開かれる。しかし、今回、その驚きはすぐには消えない。
「なんでお礼なんか言うの?」
「教えてくれたから」と彼は事実をそのまま答える。
 彼女の大きく開いたまぶたは、緩く瞳の輪郭を包み、黒目がちないつもの目に戻る。そして、一瞬の間を置いて――彼女は笑い出した。
 その笑顔はさっきのあの笑顔と同じだった。口元と声は笑っているのに、目元には笑みなど微塵もない。眉を寄せ、喜びを剥ぎ取られたかのような、うつろな目。ただ、口だけで笑う。奇妙な笑み――
「今ね、これで良かったんだって、分かった。あなたに会えなくなって、良かったんだって。だって、夫はちゃんと側にいてくれるけど、あなたはいてくれないもの」
「ここにいるよ」
「そういう意味じゃないんだよ」と彼女は言う。「夫はね、ちゃんと私を愛してくれるの。仕事であまり一緒にいられないけど、でもちゃんと愛してくれる。ううん、別に愛してくれてなくてもいいんだな、きっと。そういう問題じゃなくて、なんていうか――例えば夫は私の顔を見て、キレイだなとか、逆に肌が荒れてるなとか、そういうことを思うの。私の隣に座って、楽しいとか、つまんないとか、思うの。私が他の誰かと寝てるって分かったら、嫉妬するの。でもあなたは――何も思わないじゃない。いくら私が楽しくたって、それは私一人が楽しいんであって、あなたは楽しくない。つまらないとさえ感じない。私のことを、好きだとも嫌いだとも、思ってくれない。それじゃ、一人でいるのと変わらないのよ。私は一人でさみしいからここに来てたのに、結局、ここにいる時もやっぱり一人ぼっちだった。楽しいから気づいてなかっただけで」
 彼女はそこで言葉を切る。そして、しばらく伏し目がちに床を見つめていたが、ふいと思いついたように「ばかみたい」とつぶやく。「ほんと、ばっかみたい」
 うつむいた片方の頬を水滴が一筋、伝う。静かに、しかしくっきりと描かれた線。それを見ると、ジャックの胸でジッと音がし、同時に体が動く。女性が涙を流した時、どうすべきかは知っている。彼は右手を彼女の華奢な肩にかけ、体を引き寄せ、そして両腕を回して抱きしめた。彼の平たく硬い胸に彼女の乳房が押し付けられて、つぶれる。お互いの、肩も、胸も、腹も、相手のそれに添うように、ぴったりとくっつく。しかし――
「やめてよ」
 と言って、彼女は両手で強く、彼の体を押しやる。引き離された瞬間、視線がぶつかる。彼女はぱっと顔をそむけ、
「これで終わりって言ったでしょ? もう眠る。それで、本当に終わり」

 女性がベッドで眠っている。ジャックはそのベッドの脇にあるソファに腰掛けて、彼女の背を見つめる。
 普段なら一緒に眠る。そう、彼にも眠りが必要なのだ。しかし、当然それは人間の眠りとは異なる。眠っている間に、三つのAIに蓄積されたデータを最適化するのだ。そうしないと、一日の内に得たデータの大きさのため、コンピューターの容量がパンクしてしまう。「睡眠」の間にデータを圧縮したり、場合によっては削除したりすることで、コンピューターの機能を保つことができるのだ。この作業は自動で行われるため、彼自身がどの記憶を残すかを選択することはできない。ただ、眠りから覚めた時には、彼は無駄な記憶をすべて削除された「最適」な状態になっている。無意識の中で捨て去られたものがどんなものだったかも、分からないまま。
 しかし、この時彼は眠りたくなかった。眠ることで彼女の言葉も、表情も、涙も、すべて削除されてしまう気がした。もしかしたら、そうやって削除されてきたものの中に、捨てられてきたものの中に、何か大切なものがあったのかもしれない。だから、彼は彼女のように孤独を、悲しみを、感じることができないのかもしれない。理解することができないのかもしれない。彼の不完全な感情は、ただ、忘れないことを望んでいた。
 しばらく、じっと、ベッドで眠る女性を眺めていた。だが、ある時ふと思い立ち、ジャックはソファから立ちあがり、彼女の方へ近づく。音を立てないよう、そっと。すぐそこまで来ると、掛布団からのぞく白い滑らかな背中が呼吸に合わせてゆっくり上下するのを、見つめる。光を反射し、まるでビロードのように背の艶が動いている。そして、彼は言う。唯一、はっきりと知っている事実を。
「オレは、いる」
 そう言っても、眠る彼女は反応しない。相変わらず、一定のリズムで肩を上下させるだけだ。当たり前だ。眠っているのだから。しかし、どういうわけか、期待が砕けたような感覚が胸に走る。

 窓の外を満たす夜闇は時間の経過にしたがって、だんだんにその色を薄くする。その薄さは次第に明るみを帯びて、闇に代わり窓から差し込み始める。そのうち、光の帯がベールのように幾重にも折り重なって床に日だまりを作るようになる。明るくなった部屋は、この建物は、夜の生ぬるくとろりとした雰囲気を、すっかり失う。そうなるまでの一部始終を、ジャックはソファに座って見つめていた。
 そんな光の変化がなければ、流れていることさえ忘れてしまうような時は、ある瞬間、壊された。
――がんっ――
 大きな音がし、彼の素足に床の震えが伝わる。咄嗟に音のした方を向くと、そこには一人の男が開け放たれたドアを背に立っていた。データにないその男は、冷たく、敵意をむき出しにした目で、ジャックをとらえている。二人の目がカチリと合う。――と、次の瞬間、男はジャックに飛びかかってきた。
――危険――
 彼のコンピューターがそう認識したと同時に、目の前が真っ赤な光に包まれる。あまりの強さに、何も見えない。そして、光は激しく激しく明滅し、彼の思考を奪う。危険、危険、危険、危険、危険、危険――。ただ、その言葉だけが回る。ぐるぐる、ぐるぐる回る。絶え間ない明滅と繰り返される言葉。キケン、キケン、キケン、キケン、キケン――
 ――と、ある一瞬を境に赤い光が弱まる。目の前に、ゆっくりと緩やかな明かりが戻ってくる。思考の輪郭も少しずつ、カメラの焦点を合わせるようにくっきりとなっていき、そして、カチリと部屋の様子が、目の前のものが、彼の目に映り、思考を捕える。
 男が倒れていた。うつぶせの状態で。黒い髪はまるで自己主張するかのようにてらてらと光を反射する。髪を艶めかすどろりとした液体は、頭から流れ出して床に赤黒い水たまりを作っている。そして、それはまるで生きているかのように、這うように、ゆっくり広がる。床を侵食するにしたがい、そのどろりとした濃い色は、伸ばされ薄くなる。男の近くにはガラスづくりの大きな花瓶が、割れてその破片をまき散らしている。破片はどれも先端を透き通るような赤に染め、その隙間から、透明なガラスが赤を反射しながら鋭く輝いている。
 目に映る光景によって、ジャックの思考は今起こった悲劇を悟る。そしてつぶやく。
「まずいな。すごく、まずい」
 悲鳴が響いたのはその直後だった。
 ベッドで目を覚ました女性は、すぐさま血を流す男に駆け寄る。彼の名らしきものを口にし、体を揺する。それは、どこか遠くで起きている出来事――モニターの向こうの世界のように、ジャックの目には映る。その遠い場所を見つめるうちに、彼の思考はある一つの選択に行きつく。彼のデータが、唯一、示した選択肢。
――逃げなくては――
 彼は窓から飛び降りた。

 ジャックは走る。人間と違い、疲れを知らないため、速さも体勢も、スタート時の状態をそのまま保ちながら、走り続ける。その速さゆえ、冷たい向かい風が剥き出しの皮膚――顔やはだけた胸や素足を強打するように、吹き付ける。冷たさと痛みが彼の体を蝕む。しかし、その感覚に――いつしか不思議な満足感を得ている自分に、彼は気が付く。内側で、データとは別のものが満ちてくる。冷たさや痛みを、感じる。そう、感じるんだ。感じてるんだ。

 しかし、ある瞬間、彼の胸でコンピューターの異常な音がした。ジジジジジジジジジジ――。その音は骨を通して全身に伝わり、振動させ、動きを奪う。足もガクガクと震え、ただそれまでの惰性で、足裏で地面を擦りながらかろうじて前へ進む。次には――胸のコンピューターが爆発したような凄まじい音がしたかと思うと、目の前が真っ白な光で包まれる。その一瞬の光を境に、今度はデータが、彼の記憶が、次々に現れる。これまで共に過ごした女性たち――金髪や黒髪、青、黒、榛色の瞳、滑らかな肌。そして――あの女性、奇妙な笑みを湛えた、あの女性の表情。それから憎しみに満ちた目、赤い閃光、てらてらと不気味に光を映す黒髪――。そういったものが浮かんでは消え、消えては浮かび――。そしてどんどん剥がれていく。見える記憶がどんどん減り、減るごとに暗闇が増していく。視界は次第にぼやけていく。思考の糸がぷつんぷつんと切れていく。全身が痙攣したかのように震え、目や口や鼻から体液に似せて作られた特殊なインクが漏れ出す。そして、悟った。自分は壊れるのだと。
 ジャックは消えかけていく意識の中、言うべきことがあるのを思う。彼が知っている、そしてさっき実感した、事実。その事実は彼が消えれば、一緒に消えてしまう。そうに違いない。だから、彼は叫ぶ。誰でもいい。この声を、事実を、どうか拾ってほしい。
「オレは、いた! オレは、いた! オレは、いた!」
zooey
2012年04月29日(日) 03時37分00秒 公開
■この作品の著作権はzooeyさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はじめてのSF(になるかどうか微妙ですが)ものを書きました。
『AI』という映画にジゴロ・ロボットが登場するので、
そこからアイディアを得ての作品です。

よろしくお願いします。

※ラストの方、少しだけかえました。読んでくださっていた方、申し訳ありません。

この作品の感想をお寄せください。
No.10  zooey  評価:0点  ■2012-05-22 04:28  ID:1SHiiT1PETY
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Physさん

ご感想ありがとうございます。
高く評価していただいて、なんだか恐縮です。
もともと好きな映画のキャラクターから書こうと思った作品(映画そのものではなくキャラが好きなんです)なので、
その分読み手の方に好きになってもらいたいなという気持ちがあったので、大変うれしく思います。

ただ、私自身、少しこの作品は問題があるだろうなと、時間がたつにつれて強く感じるようになっているので、
嬉しい反面、もっときちんと書かなければなと感じています。

お話としてはPhysさんの『コールドスリープ』の方が優れているのではないかなと、私は思っています。
この作品はストレートすぎて、ちょっとひねりが足りないよな、とか、
登場する女性の方がむしろキャラクターとしての魅力はありそうだよな(というより主人公にその分の魅力がない)とか、後から読んでみるといろいろと思うところがあります。

なんだか愚痴のようになってしまって、申し訳ないです。

設定などは、ちょっとネットで調べたりしながら書いたので、
きちんとできていれば嬉しいなと思います。
とはいえ矛盾点も多いので、そういった部分は今後改善していきたいと思います。

ジゴロがなぜ鈍器で殴ったかは、私自身の中では決まっているのですが
読み手の方にそういった部分を想像してもらえるのは、とてもうれしいことだなと思います。

恐ろしいほどに筆が進まないので、何だか新しいものを投稿できるのは、ものすごく先のことになってしまいそうな気がしますが、
読んでいただけると嬉しいです。

ただ、最近、みなさんがたくさん投稿されているので、ちょっと三語に出したものを投稿してみようかな、なんて思っています。

ありがとうございました。
No.9  Phys  評価:50点  ■2012-05-19 18:36  ID:QV0ue66.VUk
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拝読しました。

SF板はノーチェックでした……。しかもHALさんまで投稿されていますし。
今更になって申し訳ないのですが、感想を書かせてください。

すごい作品に出会いました。本当にこれは、すごい。感動しました。これまで
zooeyさんの書いたおはなしはだいたい読んでいる気がしますが、本作は特に
素晴らしい完成度でした。文句なしです。

私も先日AIもののSFを初めて書いたので(コールドなんとかです)、この
お話には感じ入るものがありました。私のケースでは『ロボットは自我を持つ
存在』という前提で、一切の考証を省いて書いたので、あれはもはやSFとは
言えないのかもしれないですけど。汗

その点、zooeyさんはきちんと設定を作り込んでいるので、書き手さんとして
かなり高い水準に達しているんだなあと(嫉妬交じりに)思いました。ホスト
クラブでロボットが女性を慰める、という設定にリアリティがありました。

それにしても、私もHALさんと同じ意見で、やっぱりAIものはいいなあ、と
思いました。人間とAIとの交流を描くことで、人間の狡さが際立つのは、
二進法に従って生きるロボットたちの純粋さ故なのかもしれないですね。
感動的なドラマに動物や幼い子供が付きものなのも、無垢さや純粋さという
共通項で結ばれている気がします。

なぜ彼は男性を鈍器で殴ってしまったのかを考えました。危険に対して冷静に
対処した、と言えばそれまでなのでしょうが、もしかしたら、最後彼の中には
嫉妬という感情が芽生えたのではないかと想像しました。人間になりたいと、
強く願っていたのかも。存在とは、彼の中では『人間として認められること』
なのかな……。

感情を描かずには書けないAIものは、どうしても切なくなるんですね……。
前にHALさんの飛行機のAIのやつを読んだ時と同じ読後感でした。お忙しい
とのことですが、次回作も楽しみに待っています。期待しています。

また、読ませてください。
No.8  zooey  評価:0点  ■2012-05-17 02:24  ID:1SHiiT1PETY
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>HALさん
ご感想ありがとうございます。

正直、私はもともとAIものというジャンルに親しんでいなかったので、
ネットでAIものについてちょっと調べてみて、都合のいいところだけちょっとずつつまんで作ったような作品で、
いろいろと矛盾点が目につかないかなという不安があったのですが(そして矛盾点はたくさんあるのが分かってきたのですが)、
それでもディテールがしっかりしている、とおっしゃっていただけて、とてもうれしかったです。

女性の気持ちの描き方や、タイトルは、自分でも気に入っているところで、そこを褒めていただけたのも大変励みになりました。

一方で、自分で読み直してみると、終盤に取ってつけた感じがあって、そのため展開も悪い意味で早く、もう少しきちんと書ければよかったなと感じています。
おそらく尺が足りない、という印象も、そういった終盤の描き方に問題があるためではないかなと思っているので、
次回は改善できるよう、努力したいと思います。

自己の安全、の部分ですが、
私自身に、そこはとにかく主人公に自己の安全のためだけに動いてほしい、という気持ちがありました。
完全に私の好みの問題なのですが、
主人公を、彼が悪いわけではないのに罪に問われてしまう、という境遇にしたくないという気持ちがあって、
とにかく完全なる加害者という立場にしたかったんですよね。
「かわいそうなロボット」という印象を、できるだけ避けたいなと思っていたんです。
もともとラストがラストなだけに「かわいそう」という印象はついてしまうと思うのですが、
もともと私自身がかわいそうなキャラクターに抵抗があるんです。すごく変なこだわりのような気がしますが。
なので、うまく彼が100%加害者という状態のまま、矛盾点だけを取り去っていきたいなと思うのですが、難しそうだなという気もしています。

ご感想いただいておいて、何だか変なレスになっている気がします。すみません。
大変励みになりました。AIものも、また機会があれば挑戦してみたいと思います。
ありがとうございました。
No.7  HAL  評価:40点  ■2012-05-13 19:37  ID:I7piNPSwFys
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 出遅れましたが、拝読しました。

 堪能させていただきました。
 まず何より、ディテールが素晴らしいと思いました。私はどうも不勉強なもので、科学的/論理的に矛盾がないかどうか……という視点でSFを読むことができないのですが(汗)、細部のディテールがしっかりしていることで、作品世界をありありと想像しながら読み進めることができました。特に、AIの視点による世界の捉え方。

 別れを告げられる場面、主人公にはわかっていないのだけれど、読み手には女性の気持ちの流れがありありと想像できる、その筆力がすごいと思いました。
 それからタイトルも。ストーリーをおぼろげに予感させる題で、読みおえてから振り返ると、なお切ないです。

 たったひとつ贅沢をいうならば、尺がもっと欲しいと思いました。内容の過不足でいえば、語られるべきことは語られていて、不足は感じないのですが、作品の空気がものすごく自分のツボだったので、もっと読みたい、と思ってしまった感じがあります。これだけ濃密な描写があり、深いテーマが備わっている小説で、短編というのは、ちょっともったいない気がしました。

 自己の安全云々については、危険を感じた時点で、自分ではなく女性の安全をはかろうとした……というような理由づけもアリかな、なんて思いました。男の害意が、自分だけに向けられていたか、とっさに判断ができなかった……というような。

 AIもの大好きなので、また読ませていただけると個人的にはすごく嬉しいです、と、ひっそりリクエストしておきます。
 楽しませていただきました。拙い感想、どうかお許しくださいますよう。
No.6  zooey  評価:0点  ■2012-05-10 16:14  ID:1SHiiT1PETY
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>ゆうすけさん
ご感想ありがとうございます。

女性のロボット、というのは私も少し思いました。
おっしゃる通り、避妊の必要も性病の心配もないし、別れたくなったらすぐに別れてくれる、
きっと欲求不満の男性にとっては需要のあるロボットになりそうですね。
少子化が進んで世界が滅びてしまう、というのも近未来の話としてとても面白そうです。

簡単に人間に危害を加えてしまうところは、私も書き上げた後に、あ、おかしいと思いました。
そもそも、自己防衛が人間の安全よりも先に来てしまうのは、ロボットの設定としておかしいですよね。
おっしゃるロボット三原則に思い切り反してしまっています……。

一応、どう解決すればいいか少し考えました。
この作品で自我が目覚めたのは、「睡眠」をとらずに「最適化」しなかったことにより、機械的に考えれば必要ない情報が残ってしまって、それについていろいろと考えることがきっかけ、というつもりでした。
それが伝わっていないような気もするので、この部分もそもそも改善が必要なのですが、
その自我が目覚めたことによって、プログラムされたもの(例えばロボット三原則)よりも自己の安全を守ろうと動いてしまった、という風にすれば一応の筋は通るかなと思うのですが、
そういう流れにするためには、かなり変更が必要ですね。

ラストの展開が速い、というのはこの作品に限らず大抵の作品でやってしまっています。
直そうと思っても、なかなか直りません。次回こそはちゃんとしたいです。
ロボットに苦悩させる、その苦悩のさせ方に恋愛感情や嫉妬心、というのは私にはなかった視点でした。
そういった部分も考慮しながら、改善していきたいと思います。

あまりジャンルにこだわっていないので、SFについても書くか書かないか分からないのですが、
今度書くときにはもう少し設定を煮詰めてから、しっかり書いてみたいと思います。

ありがとうございました。
No.5  ゆうすけ  評価:30点  ■2012-05-08 09:23  ID:1SHiiT1PETY
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拝読させていただきました。

心の在処、ロボットと人間の境界、実に面白いテーマが描かれておりますね。
自我があるロボットの苦悩、語りつくされた感がある定番メニューながらも、うまく調理してあって楽しく味わえました。相手に合わせて対応する、人間も人間と接することで学んでいくわけですし、そのシステムを完璧に模倣し、これに生物的欲望を加味すればリアルな疑似人間ができそうです。
女性が望むことだけを選択して行うことによって人気を得るロボット、安易に快楽を求める堕落した未来感が最高です。この逆もありそうですね、デートしてくれる女の子タイプ、避妊も性病も考えなくていい対象、だらしない自分をほめてくれる相手、きっと少子化が致命的になって人類は滅んでしまいそうです。この設定世界からいろんな可能性が感じられて、すっかり萎えていたSFを書きたい気持ちが復活しそうです。
こういったロボットものだとよく言及されるのがアシモフのロボット三原則ですが、この短さの話ですと端折らないとめんどくさくなりそうですね。簡単に人間に危害を与えてしまうことに違和感を感じたのは私だけかな。
走って逃げて行って、壊れていくロボットですが、ここでさらに苦悩してほしかったです。恋愛感情とか嫉妬心に翻弄されるとか、変な性癖があるとか、って人の作品にいうのは簡単なんですけど自分で考えるのは大変なわけであって、勝手な感想ですいません。
ではSF路線も頑張ってくださいね。
No.4  zooey  評価:0点  ■2012-05-03 23:07  ID:1SHiiT1PETY
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皆さん、ありがとうございました。
返信が遅くて申し訳ありません。

>山本鈴音さん
はじめまして、ご感想ありがとうございます。
主人公が自我に目覚めるタイミング、確かに唐突というか、おっしゃる通りで目覚める経緯が描き切れていないと感じました。
私は、途中までは細かく描写していても、終盤はかなり粗くなってしまうという部分があるようで、
長さに関係なく、とにかく終盤は描写不足だったり急ぎ過ぎてしまったりします。
ご指摘を見て、やはりそういった部分は注意していかないといけないなあと思いました。
ラストのセリフや流れをほめていただけたのはとてもうれしいです。
見たままではあると思うのですが、ラストの「オレはいた」の部分が書きたくてお話として作ったので、
そこを褒めていただけて、書いてよかったなと思えました。
ありがとうございました。

>白星奏夜さん
ご感想ありがとうございます。
山本さんへのご返信にも書きましたが、ラストが書きたかったので、ほめていただけて、嬉しいです。
雰囲気を出す、というのはもともととても苦手だったのですが、コメントを拝見して少しは上達してきたかなと思いました。
人間のホストすげえ、というのは私自身も少し思って書きながらにやにやしてしまいました。
一瞬、人間の中の人気ホストがロボットをはめて殺人を犯させる、というのも考えたのですが、
途中で面倒になり(というか、本当は違う作品を書いている途中で飽きてしまってこちらを書き始めたので、あまり時間を割きたくなくて)
こういう形にしました。
すごい人ではありますね。この設定で人間ホストを主役にした作品も面白いかもしれません。

ありがとうございました。

>昼野さん
ご感想ありがとうございます。
文章や構成は、この作品については実感があまりなかったのですが、良くなっているようでほっとしています。
ただ、私はかなりムラのある書き手だという自覚があるので、もしかしたらムラの良い方の波が来ているだけで、そのうち元に戻ってしまわないかな、という不安もあり…。
とりあえず、しっかり書いていきたいと思います。

内容に関しては、もともとロボットが自我に目覚める話を書く、という目的から作ったものなので、
その内容であることは仕方ないのですが、
それであっても、きちんと自分なりの色が出せずに終わってしまったのかなと思いました。
設定自体がありふれたものであっても、書きようによってはきちんと新鮮味のあるものになると思うので、
そういった部分が足りていないのかなと思います。
今後は安易な方向に進めずに、なるべく自分の色の出る展開やキャラクターを描けるようにしていきたいと思います。

ありがとうございました。
No.3  昼野  評価:30点  ■2012-05-01 18:16  ID:FJpJfPCO70s
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読ませていただきました。

前にも書いたと思いますが、文章とか構成はいぜんより大分上手くなったなあと思います(偉そうにすいません…)。ジ、ジ、ジ、ジ、ジというオノマトペも上手く文章にとけ込んでて効果的だと思いました。
内容的には正直うーん、でした。ロボットが自我に目覚めるという話は手垢のついた感があるので、何か新しいものが読みたかったかな、と思います。
No.2  白星奏夜  評価:40点  ■2012-04-30 20:30  ID:8eZ32nCHAgE
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こんにちは、白星です。拝読させて、頂きました。

機械、そして感情。とても、興味のあるテーマだと感じます。これだけで、創作意欲が湧いてくる代物ですね。
ラストがとても切なかったです。心の在りか、とても考えさせられました。

その場の雰囲気がよく伝わってくる風景の描写などが、良いなぁと感じました。特に、店内の様子などが。自分自身は、わりとそっけなく書いてしまうのでとても参考&刺激になりました。

ロボットの方が気に入られて、店内の上位を占めている、この設定ににやけてしまいました。むしろ、人間でランクインしている奴は何者なんでしょうか。すごい人です(笑)余談で、すみません。

拙い感想というか、思ったことをつらつらと書いてしまいました。お許しを。新作、お待ちしています。ではではぁ〜!!
No.1  山本鈴音  評価:40点  ■2012-05-02 11:58  ID:xTynl89qwNE
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こんにちは、拝読させていただきました。

とても深いテーマを感じます。
感情があるとはどういうことなのか、考えさせられました。
痛みを「痛い」と認識することが感情なのか、あるいは痛みがある=感情があるということなのか……
分かりあうことの難しさ、本当の意味での共感って何なのか。読者が自ら内省したくなる感じがしました。

ただ、主人公が自我に目覚めるタイミングは、今一つ納得出来ませんでした。
自身の内にある心の動きを「感じてる」と感動している所は、よく伝わってきました。
その先の「共感して欲しい」もしくは「共感したい」という気持ちが、終盤に描かれていなかったのが少し不満でした。(←に補足:主人公が「感情の共振は必要無い」と考えているなら、こういった表現は必要ないかもしれません)

話全体の流れも、最後の台詞も感動的です。その中間で、主人公が変化していくプロセスが見たいと思うのです。
一連の掛け合いの後に「オレは、いる」と言った時から心境の揺れ動きが始まったのは伝わってくるので、後半部にもそのような変化が欲しい気がします。

どう直せばよさそう、と提案するだけの筆力がないもので……勝手ながら希望を述べさせて頂きました。
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