終わりの日

 夕方、子供達が庭で遊んでいる。すると家の中から母親が出てきて子供達に家に入るように命令した。
 もっと遊んでいたいと彼らは抗議をするが、それはできないことは彼らも理解していた。
 子供達が家の中に入ると夕方の住宅街の通りにはもう、誰もいなくなっていた。
 沈黙がその場を支配している。夕日がその日の終わり、そして人類の終わりを最後の見せ場といわんばかりに橙のスポットライトで照らしていた。

 3ヶ月前、地球に高速で接近する巨大な、しかも複数の隕石が確認された。各国の科学者達は民間には極秘で対策法をねるが、そのスピードと巨大さゆえに回避は不可能という結論がでた。
 そして、それは隕石の落ちてくる一ヶ月ほど前に、すべての人々に知らされた。始めはみんな動揺し、暴動などが起きはしたもの、やがてはそれを受け入れ、大切なものとの時間。とりわけ家族との時間を大切にするようになった。
 あらゆる情報は媒介者の不在のため、まわらなくなり、世界中のありとあらゆる食糧庫が開放された。そして兵士達は銃を捨て、愛するもののもとへと帰っていった。
 
 そして、終わりがおとずれた。
 高速で接近する隕石は、大気圏の中に突っ込んでいった。ほかの隕石も時間差で違う地点へと落下していった。
 そして。
なにも起こらなかった。
 少なくとも惑星規模のことは。

 最初の隕石が雲をきりさいて海へ、ほぼ垂直に落下していく。ところが海面から10メートルというところで突然、隕石の落下が停止した。海面にぽこんと椀のようなくぼみができた。しばらくして椀の中央にちょろちょろと水が流れ出し、椀の形が崩れはじめる。不自然な形で押さえつけられていた流体は本来の姿をとりもどし椀の中央だったところから盛大に跳ね上がる。しぶきは宙で停止したままの隕石にかかり、しゅっと蒸発する。それをきっかけにしたように表面に亀裂がはしり、割れる。
 漆黒のラグビーボールのような巨大な物体が隕石の中から姿を現した。ぶーんと音をたてて物体は回り、ノーズを海面と水平方向に向けた。物体が回り、動くたびに海面が変化する。物体は垂直に重低音を立てながら浮き上がった。上空200メートルに達しようかというとき、物体の滑らかな表面に緑の光をはなつ規則性を持つ模様がまたたいたかと思うと、次の瞬間物体は無数の欠片に割れ、散らばった。欠片はそのまま落ちていったがやはりあの隕石のように海のうえで落下を停止、ひとつひとつにトンボを思わせる羽がはえ四方八方にとんでいった。
欠片の中にひとつ、ずんぐりとした大き目のものがあった。どばどばと飛んでいき、ある都市の交差点の真ん中に着陸した。
その飛行物は直方体で黄色、悪趣味な軽自動車を思わせた。巨大なそれは6本の道路が通る交差点をほぼ全て占領していた。甲殻類型の着陸用の脚がすうと低くなると、がこんと物体の腹が地面に触れた。もう一度物体の腹が浮き上がると、その下に二つの生命体がたっていた。
人類に似た生命体だが、はだの色が緑だ。一人は地球人からみても、彼らの文化圏からしても派手なたたずまいをしていた。友達にはあまりなりたくないような奴。地球人からすれば「チャラついてる」といったところか。もうひとりは彼らにとっての執事のような身なりをした老人だ。
「チャラついてる」生命体があたりを見回し老人にこういった。
「ねえ、この星のもん全部くれんだろう。チョーラッキー。親父が王さんでぇ」





終わりだ。
宇宙鶏
2013年08月14日(水) 22時19分56秒 公開
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No.8  FK  評価:10点  ■2013-10-02 11:32  ID:K0PAnh1TB0A
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 読ませていただきました。
 題名と書き出しはあとの展開を期待させますが、徐々に描写が分かりにくくなっていくように思いました。オチは分かりませんでした。これって、人間が話しているのでしょうか。
No.7  弥生 灯火  評価:10点  ■2013-09-28 20:54  ID:dPOM8su8lqs
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最初のうちはリズムよく読めたのですが、『少なくても惑星規模のことは』辺りから後半が読みにくいと感じました。

オチ関連のことは他の方が書かれている感想と重複してしまうので控えます。

拙い感想、失礼しました。
No.6  宇宙鶏  評価:--点  ■2013-08-21 13:59  ID:LPiDzuMax1Y
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ありがとうございます。
精進します。
No.5  宵木 倫  評価:30点  ■2013-08-21 03:28  ID:dWCf6tQFXa6
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はじめまして、宵木です。拝見させていただきました。
面白かったです。まず最初に、作者様は状況描写に力を入れていて、その光景を想像させて引き込む文章がとても上手いと感じました。僕も是非見習いたいです。
しかし、ラストの味付けの薄さも気になりました。作者様の世界に引き込んで離さず、結末まで丁寧にエスコートしていただけたのですが、それが逆に読者に展開を予想させる結果になってしまっているのかと思います。謎を残して最後は読者に独りで扉を開けさせる。その先で『新品』のオチを用意していただけたら、更に味わい深い作品に仕上がっていたと思います。
未熟な僕の個人的感想で恐縮なのですが、そう感じました。
楽しい作品をありがとうございました。作者様の次回作を楽しみにしています!
No.4  宇宙鶏  評価:--点  ■2013-08-20 21:20  ID:LPiDzuMax1Y
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ご指摘ありがとうございます。参考にさせていただきます。
No.3  ゆうすけ  評価:20点  ■2013-08-19 19:01  ID:1SHiiT1PETY
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拝読させていただきました。

それぞれの部分の描写はわかりやすいですが、全体としての状況が分かりにくいと思いました。
冒頭部分、夜間は家に入らないといけないとの暗黙の了解がある世界が示されています。当然伏線であろうと読者は思いますが、空振りのようです。
そして三ヶ月前の隕石発見と、一ヶ月前の告知、では今現在描かれているのはいったいいつなのかと疑問に思います。冒頭部分は、すでに未知の生命体が飛来した後なのか? それともこれからくるのか?
ショートショートはわかりやすさと勢いが重要だと思います。わかりやすい構成にしたほうが、親切設計だと思います。
きつめに書きましたが、懲りずに頑張ってくださいね。
No.2  宇宙鶏  評価:--点  ■2013-08-18 21:24  ID:LPiDzuMax1Y
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ありがどうございます
参考にさせていただきます
No.1  gokui  評価:20点  ■2013-08-17 23:52  ID:SczqTa1aH02
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読ませて頂きました。
この作品はショートショートですので、オチが重要なはずなのですが…… 残念ながら失敗してますね。
原因は、隕石が落下したのに何も起こらなかった理由を長々と書きすぎなことです。人類が滅亡すると見せかけて、それをオチでひっくり返して締めくくらなければならないと思うのですが、そのオチが全体の半分を占めており、読者には途中で結末はばれてしまってます。オチを読者に予想させる暇を作ってはいけないってことですね。
状況説明はうまく描けていますね。映像が目に浮かんできます。そのせいもあってオチがばれてしまってるんですけどね。
今回は評価普通をつけさせてもらいましたが、懲りずに頑張って下さいね。それでは、次回作待ってます。
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