怨霊師ハマラン・『少年地獄(後編)』 |
アパートに帰った嵐はふてくされながらテレビを見ていた。 「まったく、なんなんだよ。あの親子は!!もう知らないんだから!!」 嵐が卓袱台を叩きながら叫んだ。 恵は困ったような顔をしながら言った。 「ねぇ・・・何があったか知らないけど奥さんを怒らせるような事したんじゃないの?」 「違うよ。あそこの息子が食ってかかってきたんだって!それに家に出た少年の霊について何か隠してるみたいだった・・・」 嵐が今日、戸松邸であった事を嵐に全部話した。 「そういえば最近、中学生の男の子が自殺する事件があったわね。川に飛び込んで鞄の中には進路で悩んで生きるのがつらいって遺書が入っていたって」 恵が落ち着いた口調で言った。 すると何と部屋の片隅に戸松邸に現れた少年の幽霊が現れた。 「違う・・・違うんだ!!自殺じゃない!僕は殺されたんだ!!戸松亮太にリンチされて川に突き落とされたんだ。遺書だってアイツに脅されて書かされたんだ」 少年の霊は悔しそうな顔で嵐に訴えた。 「何だって!!杉野君だっけ?その話は本当なの?」 「本当だよぉ〜それでその遺書をいつもカバンに入れておけって・・・僕は死んだ時に自分たちにと疑いの目が向かないようにって・・・」 少年の霊の話を聞いて嵐の顔が憤怒の表情に変わった。 そして少年の霊は嵐にお願いをした。 「嵐さん!お願いします!!実はいじめられていた証拠に殴られた時やお金を奪われた時にテープレコーダーを制服に忍ばせていたんです。その時のカセットテープが祖母の家にあります!それをもってきて欲しいんです」 「よしっ!!だったら私の体を貸してあげるよ!」 嵐がベランダで座禅を組み月に祈ると少年の霊と嵐の魂が合体した。 そして少年の祖母の家へと向かっていった。 証拠のテープレコーダーは祖母の家の仏壇の棚に隠してあった。 少年の霊と合体した嵐は祖母の家の前に行くとふわりと飛び上がり屋根の上に飛び乗った。 そして屋根裏から仏壇のある部屋に侵入した。 そして棚を開けカセットテープを手に入れると足早にアパートへと帰った。 「やった!!カセットを手に入れた!!」 嵐が喜びの声をあげる。 すると嵐の体から出てきた少年の霊も笑顔でバンザイをした。 「やった!!ありがとうございます!嵐さん、後はこれを警察やマスコミに渡してください。そうすれば戸松の悪事が明るみにあります」 「まかしといて!!」 嵐は親指を立てながらウィンクした。 そして翌日の午後、戸松家の居間では学校から帰宅した亮太に母の理恵がジュースを出していた。 その時である、母の顔がネバネバの粘液にまみれた腐乱死体に変わったのである。 亮太はビックリして母から離れる。 「どうしたのよ?亮ちゃん、そんな怖い顔して・・・」 「来るな!!化け物め!!こっちよるな・・・」 亮太の顔は恐怖のあまり青ざめている。 母は心配そうな表情で亮太に近づく。 亮太は居間のテレビの横に置いてあるトロフィーを持って母の頭に叩きつけた。 ゴツッ! 母は頭を押さえて叫んだ。 「ギャアアアアアアア!!!」 「死ねっ!!この化け物め!!殺してやる!!お前も杉野みたいに殺してやるウウウウウゥ!!!!」 亮太は母の頭をトロフィーでめった打ちにした。 倒れた母に馬乗りになり両手で頭にトロフィーの底を叩き込む。 頭蓋骨が割れ、脳漿と真っ赤な血がカーペットの上に飛び散る。 亮太が冷静になると腐乱死体ではなく、いつのもの母がいた。 だが、その姿は血まみれの無残な死体となっていた。 「ハハハハハハハハッ!!何だコレ!マジで冗談キツいッスよーーー!!」 亮太は狂気に満ちた目でトロフィーについた血と肉片をペロペロとなめだした。 そしてそのままトロフィーを口に加えて前向きに床に倒れた。 ブザッ!! トロフィーの先端が喉を貫通して後頭部から飛び出した。 親子の死体はその後、父親が発見した。 戸松亮太と母は杉野少年が見せた幻覚によって悪夢の中で死んでいったのだ。 そして事件のニュースを見た嵐はテレビの前で難しい顔をして腕を組んでいた。 「私はあの家の家族を放っておいてよかったのだろうか・・・私自身にも分からない。ただ分かるのは他人を苦しめれば必ず因果の法則によって報いを受ける。それは誰にも帰られない事実だということ・・・」 その後、杉野少年の自殺は嵐がマスコミに送ったカセットテープと事実を記した手紙により再調査が行われ戸松亮太と仲間によるリンチ事件である事が明るみになった。 また遺書も強制的に書かされたものである事が発覚した。 今回の悲しい事件は多くの人々の心に深い傷と衝撃を与えた。 |
テルザ・オーケストラ
2015年07月04日(土) 00時44分03秒 公開 ■この作品の著作権はテルザ・オーケストラさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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