化猫 |
夜風はぬるく空は曇り。星も月も隠れていて、等間隔に建つ街灯だけが道を照らしてくれる。住宅街に響く足音は一つ。 人の死なんて世界では三秒に一度起きているという。 お通夜から抜け出してきた私は大きく溜息を吐く。 クラスメイトが死んだくらいで大袈裟だ。交通事故よりも少し珍しい、自殺でも。 長い髪についた線香の匂いを払い撫でる。 今朝、先生から知らされて、クラス全員参加だっていうから来てやった。 うなじの傷が空気に触れて、痛む。 今日は観たいドラマがあったから、どうせ死ぬんだったら明日にしてほしかった。最後までウザイ奴だ。 あいつの猫に玉ネギをちょっと食べさせただけで、あいつは私に飛びかかってきた。身の程知らずを皆で袋叩きにしたら、横で苦しむ猫と同じように痙攣したのは面白かったけど。最近見ないなと思ったら死んでたなんてね。 強い風が吹いた。 髪が乱れて視界を遮る。丁寧に整えて前を向くとそいつはいた。さっきまでは確かにいなくて、長い一本道のはずなのに、音もなくそいつは現れた。 街灯が点滅しだす。周りから人の気配が消える。そいつの鈍い足音だけが響く。近づく影が、濃く浮かび上がった。 背中から嫌な汗が流れる。脳が逃げ出せと叫ぶのに、視線を逸らすことができない。金縛りにあったように身体を動かせないでいた。 そいつの影が私に触れる。 震える声を噛み殺す。唇から血が垂れるのも気にせずに、恐怖の糸に絡まった身を翻そうともがく。 ぎこちなく振り向くと――。 「死ね」 紅く暗い猫が目の前で嗤った。 |
蒼月シャルノス
2014年12月02日(火) 16時31分16秒 公開 ■この作品の著作権は蒼月シャルノスさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 蒼月シャルノス 評価:--点 ■2014-12-22 20:37 ID:Te/NrfAmNPw | |||||
返事遅くなりました。コメントどうもです。 僕の化け猫のイメージが、人の負の感情に感化された猫の霊なので、オチとして無理やり締めくくることにも担って、「死ね」と直球で書きました。化け猫が怖いんじゃなくて、怨霊になった『あいつ』の方を怖く書きたかったんです。 しかし、肝心の後半がダメだったみたいですね。言葉選びや、もっと恐怖の描写を吟味するべきだったんでしょう。ホラーの勉強をして再チャレンジしたいと思います。 |
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No.1 游月 昭 評価:30点 ■2014-12-20 18:03 ID:qx2ygamosbQ | |||||
ふむふむ。それなりの効果はあったと思います。 「死ね」は、それまでの苦労も水の泡的で、他に何か手は無いのかという思いです。化け猫ですからね。アイテムは玉ねぎ、爪、夜中の猫の気味の悪い鳴き声、光る目などいっぱいありますからね。 前半はそれなりに人物像を紹介出来ていると思いますが、後半の肝心な、ジワジワと迫り来る恐怖感が味わえない感じです。 |
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総レス数 2 合計 30点 |
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