俺の妹はサイコキラー |
部屋。 ナチュラルブラウンの壁紙。ベージュのカーテン。素朴な安心感を与える空気。そして―――その中に汚らしくぶちまけられた、人間の血と、肉の塊。 その、金臭い空気の中に一人立つ、彼岸花のように儚い美しさをたたえる、一人の少女。 年のころは、十歳前後だろうか。 艶やかな黒髪が、部屋の開け放たれたドアから漏れる光を反射する。 そして、少女が着ている真っ白なブラウスも、血液で真っ赤に染まっていた。 ―――二つの肉の塊は、『俺』と『妹』の母親だ。 ―――そして、殺したのは、『妹』だ。 「ごめんなさい・・・お兄ちゃん」 妹、愛理が涙のあとが残る顔をこちらに向け、涙声で弁解する。 「愛理、どうしても我慢できなかった」 その言葉は、当時の俺の心に残っている。 ―――茨のとげのように、刺さったまま離れない。 ―――――俺の妹は、サイコキラーだ。 熱い吐息が、部屋にあふれる。 何の飾り気もないベージュのベットの上で男と女――――いや、男と少女は己が身を重ね合わせていた。 「・・・・ぁ・・っ・・・おにいちゃ・・・ぁ・・気持ちいいよぉ・・・・」 『男』は、もとい。俺、佐上岳人(さがみたけひと)は現在俺の上に全裸で乗っかっている少女――妹である、佐上藍璃(さがみあいり)の細ッこい腰首を引っつかみ、動きを激しくする。 「・・・・っ!!・・・・だ・・め・・・ぇ!!おかひく、おかひくなっちゃうよぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・!!」 「・・・なっちまえよ、この――雌豚。勝手にイキ狂ってろ」 俺の人権侵害気味の言葉を聞いた途端、藍璃の華奢な身体が勢いよく跳ね上がった。 「――――――――ッツ!!」 そして、俺の身体にも絶頂の快感が駆け巡る 全てが終わった後には、事後特有の倦怠感と少しばかりの達成感が残るのみだ。 「ン・・・・・・は・・・ぁ」 藍璃はすっかり脱力した様子で、小さい体を俺の身体の上にもたれさせている。 そして俺も、このまま眠ってしまいたいぐらいに疲れ果てていたが、そう言うわけにも行かない。まだ風呂に入っていないし、何より飯も食っていない。 「・・・ぉら藍璃、起きろよ。風呂入って飯食おうぜ」 「・・・ん」 顎を俺の胸板に乗せ、藍璃は儚げな笑顔をこちらに向ける。 その彼岸花ににた慎ましやかな笑顔を見せられると同時に、俺の中でどす黒い衝動が煮え立ち始める ――――カワイイナァ ――――愛シイナァ ――――ブッ殺シテシマイタイナァ その白磁のように真っ白で美しい喉元を食いちぎってやりたい。 そのやわらかそうな腹部にナイフでも、鋏でも、包丁でもいい。なにか突き込んで、グチャグチャにしてやりたい。 ――――――気づけば、俺の分身は痛いほどに怒張していた。 下腹部にあたる硬い感触に気づいた妹はこまったような笑顔を浮かべ、 「・・・まだ、ヤる?」 と聞いてきた。 「・・・いや、大丈夫だ。先に風呂入ってこいよ」 正直な話、死ぬ寸前までイキ狂わせたかったのだが、妹の体のことを考え、辞退させてもらった。 全裸で妹が出て行ったあとの部屋で、俺はマルボロを一本くわえ、火をつける。 紫煙を味わいながらゆっくり肺に入れ、名残惜しい気持ちを抑えゆっくり吐き出す。(貧乏くさいと思われるかもしれないが、俺は妹からの命令で一日一本しか吸えないのだ) そして、考える。 いつごろからだろうか。 俺と、藍璃の人生が狂い始めたのは――――――――― 始まり始まり<第一話> 「ひっ・・・・ぎぃ・・・・ァ・・・・」 窓から月光が差し込んでいる 千田智文(せんだともふみ)は己の口から絶えず漏れる蛙のような呻き声を涙と鼻水ともに垂れ流していた。 この千田という男は「鬼月廻(ホウヅキカイ)」という名のヤクザの組員であり、その中でも組長・・つまりはオジキから5・6個のシマつまりは違法カジノや脱法ドラッグショップを任される程度には地位を持っている男であるのだが―――――― ・・・その彼が所属する鬼月廻の事務所はひどい有様であった。 部屋内のいたるところに血や臓物が飛び散っており、その飛び散っているものの分量に負けず劣らずの死体が転がっている。 それぞれの死体の損傷具合はすさまじいものがあり、ひどいものは大型トラックに満遍なく引かれた後にプレス機にでもかけられたのか?というぐらいの損壊度のものもあった。 まあ、用は肉内臓脳髄が満遍なく混ざり合いもとの性別すら分からない肉塊が鎮座していると思えばいい。 「うわァ・・・ゼリーみたい」 その『肉塊』を怖気づく様子も無くちょんちょんと棒状のもので突っつく15・6歳の少女がいた。名は「オルテガ・フィシティニア」である。 生まれつきであろう褐色の肌にまとわれているのは対照するかのように 白いノースリーブのシャツ、ズボンは膝元あたりで丈がきってあるジーンズである。髪は適当に伸ばしたものをこれまた適当に後頭部でまとめてある。 「・・・あんま弄るんじゃねえよ、後始末が面倒だろうが」 不意に、肉塊をちょんちょんつつくオルテガにむかってぼさぼさの金髪を携えた女性がぞんざいな声を投げかける。 名は「ニムバス・レイン」である。年齢は二十歳の半ば程度であろうか。 「えーーーーー・・・・・楽しいのになァ・・・まあいいや、そんでさ。こいつどうする?」 ようやく、千田にベクトルが移る。 褐色の少女―――オルテガが肉塊をつついていた棒状のものを千田に向けると、窓から差し込む月光によって、『それ』の全貌が明らかになった。 それは、ショットガンであった 正式名称「スパス12」 フルオートにより、アサルトライフルに勝るとも劣らずの連射力を誇り、そのくせ弾丸は発射または着弾の直後に破裂しバラける威力絶大の 粒弾(スラッグ)を採用した正真正銘の化け物銃である。 「殺しちまえばいーんじゃねーのォ?もうあらかた必要な情報とかはそこらでおねんねしてる連中から聞き出せたわけだし」 「そっか」 「ころさ(「バイビー」ドンッ あっけないな。とおもえてしまうほどには小さかった銃声とともに千田の顔が文字通り『潰れたスイカ』に変貌する。 千田に何かを期待していた読者の方には謝罪を申し上げようと思う。 仕事が終わったなら、仕事人はさっさと退散するのが世の常というものだろう。 オルテガはスパスをギターケースを模した武器ケースに収める ニムバスも仕事道具が入っているのであろう馬鹿でかいアタッシュケースを軽々と方に担ぎ出口に向かう、オルテガもそれに習った。 二人の「サイコキラー」がいなくなった後の部屋には血だまりと肉の塊の軍勢しか残らない。 月光は数刻前と別段変わりの無い光を窓の間から垂れ流していた どこかのカフェテリア 「・・・えェ〜こいつら殺すのォ〜」 「文句言うんじゃねーよ」 人と人が交流し合い、いつも一定の騒がしさを保っているカフェテリアその奥のほうのテーブルについていたオルテガは、次の殺すべきターゲットの資料に目を通した途端、不満げな声を漏らす。 「いや・・・だってさァ、目を通すカンジ、なんもやましいとこないパンピーだよ?兄妹で、妹のほうなんか小6になったばっかだよ?寝覚めワリィじゃ〜ん・・・・ま、殺すことに変わりは無いんだけど」 ニムバスはオルテガのその言葉を聴き終えると嘆息し 「・・・当たり前、あたしらは殺すことしか出来ない。その趣味を、生きる手段に発展させるには殺し屋しかないんだからな・・・」 「ハイハイ御託はいーから・・・ん?」 スマートフォンが振動を始める。オルテガの物だ。 「・・・『社長』だ」 オルテガはそのちょうどいい感じに装飾された長方形の物体のディスプレイをあらため、ぽつりと言った。 通話接続のエフェクトをタッチし、テーブルの向かい側に座っているニムバスにも通話の内容がとどくようスピーカーホンにする。 「もしもし」 『オルテガか。―――――入国早々、ジャパニーズマフィアを皆殺しにするなんてことはコレきりにして欲しいものだな』 「そりゃ無理な話ですね〜日本風にいえば・・・無い袖は振れない、かな?――――ボクらにとっては、生きることが殺すことであり殺すことが生きること。ですから。あなたもそこをわかっていながらボクらを組織に組み込んだんでしょう?」 『そこを付かれると痛いな・・・ニムバスの調子はどうだ?」 「いつもどおりですよ〜現在進行形で絶賛すれからし中です」 「・・・あァ?」 ニムバスのぎょろりとした眼光から目をそらしつつ、オルテガは『社長』に疑問に思っている事を聞いた。 「・・・で、一つ質問なんですけど・・・ぶっちゃけ、このターゲットを殺して、組織になんの得があるんですかね?」 『気になるかい』 「そりゃなりますよ、資料に目を通す限り。このターゲットは兄妹で二人暮ししてるだけの一般人なんですから」 『・・・・・・・』 「安心してくださいよ。何もボクはやらないって言ってるんじゃない。あくまでこの一般人を殺す理由とそれによって得る利益を説明できるのであれば説明してほしいだけ―――――え?」 瞬間、オルテガは目の前の状況に凍りついた。 静寂 静寂であった 人と人の交流場所であるがゆえに、いつでも一定の騒がしさを保っていたカフェテリアが、いまはただ静寂という概念に支配されている。 「ニムバス・・・?」 怪訝に思ったオルテガは、向かいにいるパートナーに呼びかけた。 すると、それに答えるように ゴトン、とニムバスの首が落ちた。 「・・・・ッ!!――――――ッ!!??」 いつでも一定の人口を保っているカフェテリアならば、悲鳴の一つでも上がっただろう。 だが、一声も発するものはいなかった、正しくは発せるもの―――つまりは『生者』が一人としていなかった。 カフェテリアの中の人間は、ウェイトレスウェイター客すべてひっくるめて―――――『頭部をなくして』死んでいた。 「うっ・・・・!!うわァァァァァァァァァァ!!」 こんどこそ、オルテガは絶叫する。 それと同時に本能的に座っていた椅子から飛びのいた。 瞬間 ズパン!! オルテガが数瞬前まで体を預けていた椅子と机がまるで豆腐のようにサイコロ状に分断される。 「・・・・惜しいなァ」 そして、場違いなほどに可憐な声が響いた。 ヒュルルルルルル!!とサイコロ状に分断された机がある部分から、なにかがものすごい勢いでどこかへ巻き戻っていく。 そして、オルテガは可憐な声の聞こえたほうを振り向く。 振り向いてしまう。 そこには、彼岸花のようなしんみりとした美しさをたたえた少女がたっていた。 ぬばたまの黒髪、と形容するにふさわしい黒髪がゆらりとゆれる。 (こいつ・・・・・) オルテガは驚愕した (ターゲットの資料に乗っかってた写真に写ってた・・・妹!) そう そもそも殺し屋にマークされるような兄妹が普通であるはずが無いのだ。 目の前にいる少女はにっこりと笑う 可憐でそれでいてどこか儚い笑顔をオルテガに向け、言う。 「安心して?最高に気持ちよくぶっ殺してあげるから・・・・だからまずはおにいちゃんと遊んでね」 瞬間、オルテガはまったくの逆方向から男の手に首を引っつかまれる。 そして、信じられないような剛力で投げとばされ、これまた信じられないような速度で壁に叩きつけられた。 壁にぶつかった。 と、オルテガの頭が認識したとたんにすさまじい衝撃とともに肺の中の空気がすべて吐き出される。 メキメキッ!!と背骨が悲鳴を上げる。 ずるずる・・・とオルテガは磔(はりつけ)にされていた壁からずり落ちた。 「軽いなァ・・・ちゃんとご飯たべてる?」 そして、オルテガを投げ飛ばした張本人が気遣うような声を発した。 ここで追記しておくが、オルテガは決して軽いほうではない。 殺すために培われた筋肉のせいで普通の女性の平均より2・3キロ思いぐらいである。つまり、そのオルテガをまるで野球ボールを投げるぐらいの気軽さで投げた男のほうが異常なのだ。 (これが・・・兄貴のほう・・・) 目の前にいたのは、何の変哲もない至って標準の居住まいをした青年であった。 だが、今この場においては『普通』こそが『異質』なのだ。 オルテガは冷や汗が止まらない。 目の前にいる――――佐上岳人という男の絶対的なまでの殺人衝動に震えと冷や汗が止まらない。 青年の体からはあくまでも黒くクロく玄く性的衝動にも似たオーラが漂っている 「ひっ・・・・・・ぁ・・・・・・」 涙がこぼれる さらに、オルテガの股を生暖かい感触が襲う。 オルテガは、失禁していた。 「いィーねェ」 その言葉が終わるとともに、岳人はオルテガの首根っこを引っつかみ壁に押し付ける。 「垂れ流しているものが涙にしろ唾液にしろ糞尿にしろ―――女性が何かを垂れ流しているのは、随分と俺の嗜虐心を刺激するんだよな」 涙でぐちゃぐちゃになったオルテガの顔を見て、岳人は心底気持ちよくて仕方ないという―――恍惚の表情をして見せた。 『・・・終わったかい?』 不意に、オルテガのスマートフォンから声が発される。 『社長』だ。 すると、兄の遊びをずっとニヤニヤ観賞していた妹が無造作に手を振った。 すると、兄妹の位置からはだいぶ遠くにあったスマートフォンに何かが巻きついたような音がする。 そして妹が引き戻すような動作をすると、何かが巻き戻る音とともにスマートフォンは妹の手に収まっていた。 種明かしをしてしまえば、単なるワイヤーをライター状のケースに収め 巻き戻しをボタン一個で出来るようにしてあるだけなのだが。 「まだ終わってませんよー・・・今はおにいちゃんが、褐色姉ちゃんで遊んでるところです」 「?」 瞬間、オルテガの頭の中を、クエスチョンマークが埋め尽くす。 なんで、ターゲットがあんなに親しげに『社長』と会話をしているのだ? 『まあ・・・入社試験に「遊ぶな」と記述はされてないがね・・・』 スピーカーホンで拡大されたその音声は、ほとんど物理的な力を持ってオルテガの脳髄を叩いた。 入社試験 その言葉が意味することは、「狩られるモノ」がオルテガと今は亡きニムバスであり「狩るモノ」がこの兄妹であるということ。 つまり、ターゲットはこの兄妹ではなく、自分たちであったということ。 「・・・・・・・は・・・・・・・?・・・・・・・・なに・・・・・・・それ・・・・」 ショック、などというものではない。 絶望、などというなまぬるいものではない。 ショックも絶望もこえた圧倒的な負の感情がオルテガの精神を食い尽くしていく。 げらり、と 目の前でオルテガの首根っこをつかんでいる岳人が笑いごえをあげた。 その笑い声はだんだんと大きくなり、果ては背後にいる妹にも伝染し、気が狂ってしまうほど息ぴったりのユニゾンでオルテガの聴覚を刺激する。 げら! げらげら!! げらげらげらげら!!! げらげらげらげらげらげらげら!!!! げらげらげらげらげらげらげらげらげら!!!!!! げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら―――― 気づけば、オルテガも笑っていた。 笑い始めると同時に、オルテガは自分の精神の大事なところが壊れるのをたしかに感じた。 「――――――――――――――!!!!!!!」 「・・・ありゃ、壊れちゃった?」 笑いつかれた兄妹が息継ぎをしている間にも笑い続けている褐色の少女を見て、藍離は呆れたようにポツリともらした。 「むーん・・・こうなっちゃいじめ甲斐もねえなぁ。藍離、ちゃっちゃと楽にさせてやったら」 そういって岳人は手を離す。 「ほーい」 ひゅん、と藍離は無造作に手を振る。 きらきらとこまかい糸がオルテガの首に巻きついてゆく。 「―――!!――――――!!!―――――――――!!!!」 死を目前にしてもなお、褐色の少女は笑い続けていた。 すでに喉は潰れていてもおかしくないのに、涙と絶望を超えた感情で顔をぐちゃぐちゃにしたまま、笑い続けていた。 それを見て藍離は哀れみを微笑にわずかににじませながら 「・・・おやすみ」 ひゅん、と糸を巻き戻した。 鮮やかな赤とともに、オルテガの首が宙を舞った。 『・・・いまから、データを添付したメールをそのスマートフォンに送る。そのデータを解凍すればその中に入っていたデータはフォーマットされる。その工程を持ってそれは君達のものになるわけだ――――ああ、安心しろ。基本料や使用料は『組織』が負担する』 『ついでに君達のコードネームだが――――オルテガとニムバスが使っていたものをそっくりそのまま献上させてもらうよ――――『双鳩(ツガイバト)』よろしく頼むよ』 こうして、サイコキラーの兄妹は再始動した。 笑ってる場合か<第二話> よう。 佐上岳人だ。 唐突だが、俺は小学校の教師をやるらしい。 ・・・・・・・・・俺は wwwwwwバカwwなのかwwっをまえwwwwwwwwww wwwwwwwwバカだろwwwwwお前wwwwwwwww 2ちゃん風に笑ってみた。 「って笑ってる場合じゃないだろうがクソボケェェェェェェェェェ!」 そして俺は目の前にそびえる摩天楼に絶叫した。 『組織』の本社ビルだ。 社長室 「・・・別に、取り立てて難しい仕事でもないだろう?猿並の知能しか持ってないガキどもの相手をしていればいいんだ。そんなに条件の悪い仕事ではないと思うがね?」 『社長』はその怜悧な瞳をすがめ、眼鏡をくいと押し上げる。 ちなみに、女性だ。電話口からは中性的な印象しか受けなかったが・・・・まあクールビューティとやらの部類に入るであろう美人だ。 「すべからく全国の小学生に謝れ。・・・・とにかく、俺は子供に勉強を教えられるほどオツムに自身はないし、なにより俺はまだ19歳だ」 「保健室だ。君が担当するのは保健室の養護教諭」 なん・・・・だと・・・・・・・!? 「・・・と思ったんだが、まあ。しょうがねえナ他に仕事がねーんなら それでいいやというかそれでおねがいしまぶぎゅべら」 何か社長に硬質なファイル投げつけられた。しかも角が横づらにぐさりとクリーンヒット。痛い。社員への暴力も虐待になるのか? 「死ねロリコン。・・・一応我らが『組織』が多額のカネをかけて建てた私立校だ・・・まあ、実態は体のいい殺し屋養成学校だがね。大半はそのことに気づきすらしないで卒業していく。まあ何にせよなにか妙なことが私の耳にはいったらそれ相応の覚悟はしておけ」 とかいいつつ、がちゃがちゃとM19コンバットリボルバーの弾込めをしてらっしゃる。おお怖・・・・ 「・・・問題ないですよ、俺がむらむらするのは妹だけですかうわぎゃひぃ!?」 ちゅいん!!と弾丸が俺の頭頂部を通過していった。禿げちゃう・・禿げちゃう!!! 「やはり貴様はここで死ね・・・」 額に青筋が浮かんだ般若のごとき形相で社長が撃鉄をおこす。 「すとーぷ!!リラックスオーケー!?」 この掛け声は我ながら謎だ・・・日本語しゃべれよ、俺。 つーかこの社長に俺と藍離がもうやることやってるって知られたらどうなるんだろ・・・・・・想像したくもねー 社長はため息をつき、M19を机の上においた。(核シェルターあたりに仕舞っておいて欲しい) 「君に投げつけたファイルに必要な情報はすべて入っている。・・・その内容をしっかりと吟味して、明日からの仕事に望んでくれ・・・以上だ」 「へーい」 俺は適当にあいづちをうって社長室を後にした。 <佐上兄妹についての記述> 『一年前、○○町で起きた連続殺人事件の犯人。 犯行がすべて露見した際には、武装警官十名あまりをすべて殺害(妹) さらに精神に異常をきたした兄と殺し合いが勃発し、そのとばっちりでさらに三十名ほど死んでいる。 兄との殺し合いで植物状態になったと思われた妹だが、復活した警察病院にて医者看護婦をひっくるめて三名を殺害。 さらにそのとき病院にいた兄とともに逃走。 なお、兄妹の親族関係だが、母が一人。 その母も逃走した兄妹によって殺害されている。 事件の特異性により、一年で時効が成立した』 「飼えるか・・・?この兄妹」 にやり、と社長は唇をゆがめる。 「保健室の教師って・・・意外とやること無いんだな・・」 我が家のリビングにて、俺は明日から始まる養護教諭についての仕事内容をソファに寝転がりながら確認していた。ちなみに向かいのソファでは藍離が寝ている。 だが、思わず口に出してしまうほど、やることが無い。 たしか、内服薬を飲ませちゃいけない、ぐらいしか注意することはなかったと思う。 消毒して、絆創膏を張るぐらいは俺にもできるし、それで間に合わないような怪我を生徒がしたら救急車をよべばいい。 あとは包帯の巻き方ぐらいか。これは後で個人的に調べればどうとでもなる。 端的に言ってしまえば、楽だ。 社長から投げつけられたファイルの中に偽造された教員免許も入っていた(なんでも、養護教諭をやるには教員免許のみで大丈夫らしい。他にも保健士やら看護士の免許もとっといて損は無いが実質的に必要なのは教員免許だけだとか) 「・・・あれだな、どっかの大学の教育学部の生徒が今の俺を見たら激怒するわな」 試験も面接もなしフリーパスとかチートにも程がある。 あとは通勤のパイプぐらいだがファイルには学校に向かうために乗るべき電車の路線と時間も明記されていたので、最後の問題もコレでパスだ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・やることねー うわあどうしよう猛烈に向かいで安らかに寝ている藍離がむかついてきたんですけど。(ちなみに藍離も俺の赴任する小学校に通う事になっている) 「・・お・・にいちゃ・・ん」 お、寝言か。 「・・・ロリコン・・・シスコン・・・・ペドフェリア・・・・反社会性人格障害・・・・ショタコン・・・犯罪者・・・・お巡りさんこの人です・・・」 ピキッ ・・・頭のどこかで妙な音がしたが気にしちゃいけない。 そう、俺はお兄ちゃんなのであって、妹のこの程度の安い挑発に乗ってはいけないのだ。 「妹にしか興奮しない・・・・・・超絶変態鬼畜野郎」 犯してやろうかこのクソガキ というか犯す 誰にも聞かれてはいけない会話 『ふむ、明日から新しい教師が赴任すると』 「ええ、おそらく『組織』の新しい殺し屋でしょう。前任は、私が始末してしまいましたので」 『まだ一人か。随分スローペースだな『鬼蜻蛉(オニヤンマ)』もう2・3人は始末していると思っていたぞ』 「それがですね・・・あの学校の教師、全員殺し屋らしく・・・しかもかなりの手練でして」 『・・・ふん、『社長』のやりそうなことだ、設備の充実した私立校を装っておきながら、実質的には体のいい殺し屋養成学校といったところだろう・・・反吐が出る』 「まったくです」 『まあいい、君はそのまま諜報活動を続けたまえ。誰かに目撃されたら始末しろ。たとえそれが生徒でもな・・・『企業』のためにも、頑張ってくれたまえよ』 「わかりました『株主』」 「・・・でけェ」 朝 校門を小さい生徒達が次々とくぐっていく中 目の前にそびえる本校舎をみて、俺は思わずそんな声を上げてしまった。 小学校だろ?これ・・・・・ 俺が今たっている校門のところには、『聖リステア学園』と銘打たれている。 私立校というだけあって、かなり設備は充実している・・・というか、しすぎている。 まず、昨日渡された見取り図によると、食堂、自主学習室、自動販売機は勿論、いつどんなときに使ってもいいシャワー室もついているようだ。 しかも、金が必要ない。 入学費、そして月々の学習費さえ払えば、さっき上げたこれら全ての施設はフリーパスになるらしい、(ちなみに職員は自費らしい・・・シット!) 「もう一度言うぜ・・・小学校だよな?ここ・・・」 俺は、不審に思われ警備員が飛んでくるまで、ずっと唖然としていた。 職員室 先生方に挨拶をする。 「・・・あー、本日から保健室に赴任する事になりました佐上岳人です」 他にいうことも無かったので、精一杯頑張ります。とありきたりの挨拶で締めた。何しろ俺は実年齢19歳なわけだし、そんな気の利いた言葉がでてくるわけもない。 「・・・・・」 静まり返る職員室。 うん、我ながらつかみは失敗だ☆ しくったこんな事なら昨日にもうちょい考えておけばよかった・・・! ほら、さっそくあちこちで失笑があがってるし・・・・・!! ・・・まったく、社長もあいかわらず無茶をするお方だ・・」 「まさかあんな若いこをねえ・・・」 「まあ、使えるんでしょうよ・・・」 つーか、ぽろぽろと社長とか見知った単語が出てくるんですけど・・!! まさか教師全員殺し屋か畜生。 だったら最初ッからそういえよ!! ブーッ ブーッ 携帯のバイブレーターが鳴り始めた。 ・・・電源切れよ俺ェェェェェェェェェェェェェェえ!!! 「・・・っすいません!!すぐきりますんで!」 おおいにパニクった俺は、携帯をポケットからとりだしディスプレイを見た。 『社長』と表示されてやがった。 覚悟しとけよ次会ったときが貴様の命日だ。 『出ていいよ』 職員室全員がハモった。 何この無駄な連帯感、最初ッから最後まで仕組まれてるとしか思えない・・・! 俺はかるい頭痛を感じながら通話ボタンを押す―――― 『どうだい?針のむしろに座らされた気分は・・・?ぷっくくくく・・!」 「死ねェェェェェェェェェェェェェェェえぶhぎおrshちおpjぎおじょpふjこ!!!!!!」 保健室 『wwwwwwwwwww』 「・・・地獄に落ちろ」 『wwwいやっwwだwってさwwwwwwwあのwwww最後の壊れ方wwwwwwwwウケルwwww超ウケルwwwww』 「・・・・・・・」 十五分後 あの調子で十五分間からかわれ続けた。 「おにいちゃーん・・・ってひい!」 「シャチョウコロス、シャチョウコロス、シャチョウコロス・・・」 「おにいちゃんおちついて!!お茶の間にお届けできない顔になってるよ!!」 「何行ってんだ。コレが届くのはパソコンの前だろ――――それはさておき、はなせ藍離!!俺はどうしてもあの社長をR18にせにゃ気が済まんのだ!!」 「・・・それはエロい方で?グロい方で?」 「もちろんエ――――」 シュパン!と俺の前髪の一部が消滅した!禿げる!!!!!禿げちゃうよぉ!!! 「スイマセンフザケスギマシタ」 「わかればよろしい」 こん、こん・・・ 控えめなノックの音。 「っと・・?さっそく誰か怪我でもしたか・・・」 ドアを開ける・・・が、そこにいたのは意外にも生徒ではなかった。 「えっと・・・こんにちは。その・・・図書室司書の、鶴田弓美(つるたゆみ)といいます。・・・恐縮ですが、耳のガーゼを変えてもらってもよろしいでしょうか・・・?」 おずおずと声をかけてくるその女性は、なるほどかなりレベルが高い。 栗色の髪を一つにまとめ、まとめた房を肩口にかけてたらしている。 目にかけている赤ぶち眼鏡もあいまって、小動物というか、かなりほんわかする空気を纏った人だ。 「あ・・・はい、分かりました・・・それじゃ、その辺に適当に座ってください」 「・・・・・・・・・・・じーーーーーっ」 「あああそこにいる愚妹は気にしないでください。ほうっておけば二週間かそこらで天に召されます」 「セ、セミかあたしゃ・・・」 「それじゃ・・・ガーゼ替えますんで、あんま動かないでください」 「はい・・」 髪の毛が垂らされてないほうの耳はまったくの剥き身だったので、俺は努めて優しく、もう片側の髪の毛の房をどかす。 そこには確かに、テープではっつけられたガーゼがあった。 それをゆっくりと剥がす。 そこに、耳はなかった。 「・・・・?」 絶句、というほどではないが、そこそこの驚きの感情が俺を襲う。 「・・・佐上先生も・・・殺し屋、なんですよね?」 「・・・ええ、なったのはごく最近ですが」 「・・・こういうのが、日常です・・・あはは、こんなんじゃ半年後には体がなくなっちゃってますよね・・・」 「・・・」 「・・・私は、仕事には弓を使います。だいぶ前にターゲットとの戦闘になった時、あわてちゃって・・・その時はパートナーがいたので事なきを得たんですけど」 ・・・・聞いたことがある、弓道やアーチェリーの選手で弓を放った瞬間に弦で耳をそいでしまうことがあると。 つまり彼女は、同様のミスを犯してしまったということだろう。 消毒液をしみこませた脱脂綿でちょんちょんと傷口を消毒しつつ、俺は言った。 「・・・命があるだけ、めっけもんじゃないですか。生きていればたいていのことは出来ますからね」 「・・・有り難うございます」 一通り作業も終わり、ガーゼも新しいものになった鶴田先生は礼を言って保健室を出て行った。 おそらく俺の毒にも薬にもならない助言でもちっとは気分が楽になったはずだし、俺もなんとなく達成感的なものがあるしで万事解決のはずなのだが・・・ 「藍離・・・なんでお前そんな仏頂面してんだよ」 「別にッ」 こんこん! また、ノックがなった。 さっきとは打って変わって、随分と威圧的なノックだ。 まあ、今日は客が多いな・・・ってことで。 邂逅 「あなたが、佐上岳人ですわね?」 ノックに応じてドアを開けた俺を待っていたのは、ノックに負けず劣らずの威圧的な声だった。 ちなみに言うと、ドアの向こう側に立っていたのは二人の少女だ。 「・・・あー、まァそうなんだけど」 やたら知名度高くないか俺 俺が、少し困り気味にそう言うと、目の前にいる少女の片割れはフンッと鼻を鳴らす。 「・・・随分と教養の低そうなアホ面ですこと。これじゃあ仕事のほうの腕も期待できませんわね」 そういって、彼女は金髪に染め抜いてあるのであろう髪の毛を邪魔ッ気そうに払うときびすをかえし、この場から去ろうとする。 ところで一部だけ黒色が残っているのはファッションだろうか? 「・・・まって」 静止が掛かった。 もう一人の少女の方だ。 こちらは金髪の方の少女の活発かつ攻撃的な印象と違い、随分と静かな雰囲気を漂わせている。風林火山でいえば、静かなること林の如し、ってとこだろうか。 ちなみに、髪の毛は黄昏時のような藍色をしている。 金髪の少女の方が黒い部分をちょっとしたリボンで結んでいるのに対し、静止をかけた少女は特にいじっている形跡もなく、腰辺りまで伸びたものを適当にたらしているだけだ。さらに、少女自身の身長ほどもあろうかというアタッシュケースを持っている。 ――――そして、なぜか『眼帯』をつけていた。 とはいってもマンガにでてくるようなあからさまなものではなく、普通に医療用のだ。 「・・・ちゃんと、社長に言われた。これから一緒に仕事をする事もあるだろうから、きちんと挨拶するようにって」 「・・・チッ」 金髪の少女はあからさまに舌打ちをし、眼帯の少女と俺を忌々しそうににらみつける。 参ったな・・・どうやら金髪のほうの子は俺のことが気に入らないみたいだし。とりあえずここは――――― 「・・・とりあえずさァ、中に入って話しないか?ココでいつまでも睨み合ってるのもなんだし・・・お茶ぐらいならだせるけど」 「チッ」 もはや舌打ち一つで返されるぐらいに俺のヒエラルキーは地を這ってました とはいえ本当にどうしよう。このままじゃどうにもならんしなー・・・ ・・・しゃーない、強行作戦にでるか。 なでなで、と 俺は金髪の子の頭をなでてやった。 「・・・ひう!!いいいきなり何しますのッ・・・!」 少女が俺の手首を取って戒めから逃れようとするがそこは大人の意地、死んでも離さん。 ・・・しっかし髪質いいなー。サラッサラやんけ。 「・・・・・・・・はぅ・・・・・」 ガッツリ和んでらっしゃいますな、計画どおり。 見たか俺のゴッドハンド ころあいを見て俺は手を離し、少女に問い掛ける 「・・・入る?」 少女は俺が手を離した瞬間に名残惜しそうな顔をしていた。 しばらく黙りこくり、そして――――― 「まずい茶だったらぶっ殺しますわよグズ・・・!」 のっしのっしと保健室に入っていってくれた。 うむ 「金谷比沙子(かなやひさこ)。小六ですわ」 「・・・錦織藍染(にしきおりあいぞめ)。同じく小六」 二人の少女は、保健室の中に入ってすぐ、自分の名前を名乗ってくれた。 物静かな眼帯少女――――錦織さんはともかく、最初は超反発的な態度をとっていた金谷さんまでが落ち着いてくれたのは俺としても非常に嬉しいことだ。 今は二人とも、保健室においてあるパイプ椅子に座っている。勿論、藍離も含めてだ。 「・・・まっずい茶ですわねー」 俺が出した一番高そうな紅茶を一口飲んだ金谷さんの第一声がコレだ。 舐めてんのか。 「・・・金谷さんの家はお金持ちなのかなっ・・・・?」 リボンで結ばれた黒い部分をむしりとってやりたい衝動に駆られつつ、俺は勤めて平静を装った声でたずねる。 「ハンッ、少なくともあなた達よりは恵まれてるのは確かですわね。ああ茶葉がかわいそう、こんな教養の無い男に入れられるなんて・・・」 そういって黒と黄色のボーダー柄のストッキングに包まれたおみ足を優雅に組み替えつつ、またまずいといっていた茶を飲みはじめる。 「・・・大丈夫、普通においしい」 本当このクソガキどうしてくれようか。と思っていた矢先、錦織さんのこの言葉は砂漠でのオアシス並みに有り難かった。 「比沙子は、ひねくれ者だから。」 いや、それは今までの会話を思い返せば十分すぎるぐらいに分かる事実だ。 「つーか二人とも胸でかい・・・同い年でしょ?同い年だよね・・・?」 へんなとこ気にしてんじゃないよセミ。 ブーーーッ ブーーーッ 携帯がなり始める。 ・・・もう飽きたよこのパターン 『・・・比沙子と藍染は行ってるかい?』 「ああ、きてるよ。――――今は親睦を深めるためにお茶会中だ」 だれが深めますの誰が!!という金谷さんの声は無視だ。 「・・・つーか、あんたそろそろこのパターンやめろよ。数少ないこの作品のリピーターがマンネリ感じて離れてったらどうすんだ。・・・そうそうマンネリといえば最近のラノベはまさにマンネリの極地だよな。 右を向いても左を向いても魔王だの部活だの妹だの剣と魔法だの俺tueeeeeeeeeeeeeeeeeeeだの・・・まともな奴が一つもねえ。それがばかばかアニメ化されるんだからいかに出版社が金儲けしか考えてないかよくわかるよな。それとゲームもそうだよ。特にRPG!ちゃらちゃらしたムービーにばっかり金掛けやがってゲームシステムが普通先だろ大馬鹿者!!!!いーんだよ、ストーリー何ざノーボイスで!!これらのこと総合して考えるとやっぱFFは]までしか許せんッ!!!!]はまだいいんだよ]は!!ティーダとユウナの恋の行方とかジェクトやブラスカの親としてそして世界を救うものとして使命に対する苦悩がしっかりかけてるんだから!!!それにくらべて11はなんだッッ!!??オンラインゲームなんかにしやがってユーザー舐めてんのかッッッ!!!!!12もそうだよ遺大なる召還獣さまの名前を戦艦の名前にしやがってそのくせ出てくんのは「聖天使アルテマ」とかいうわけの分からんものばかり!!!!いい加減にしろこのクソボケ!!!!そして言うぞ、あえて言うぞッッッ!!!???FFの新作のハードはいったい何だァあああああああああああ!!!!!!!!・・・・・・・・・というわけだから、もうちょっとパターンを考えてだな・・・・・・」 『君の行ってることが一ピコもわからない。もしや統語失調症の気が?』 「何のことだ?」 俺は必要最低限の言葉しかいってないが、もしかして若くして認知症の気が? 『・・・まあいい、パターンか・・・ふむ・・・なら、こーゆーのはどうかね?』 「?」 ガラッ 「お茶会楽しそうだな!!私も混ぜてくれ!!」 「あら、社長じゃありませんの」 「・・・わー、社長だ」 「そのパターンは予想外ッ!!!!!?????」 「・・・まとめるとだね、彼らは『組織』の中のそこそこに強い殺し屋を倒したって事になるんだよ。だからまあ、入社試験合格として『組織』に組み込んだということなんだが・・・何か問題でも?」 今、社長が金谷さんと錦織さんに俺達の今までの流れを説明しているところだ。 「オルテガとニムバス・・・あの二人、ですの」 「・・・確かに、かなり名が通ってるほう」 それを聞いて社長が大きくため息をついた。 「まあ、確かに役に立ってたっちゃあ立ってたんでけどね・・・どうも、趣味と仕事の区別がつけられてなくてねぇ・・・ほら、『組織』に入ってしまっている以上ターゲット以外の殺しやってもうやむやになっちゃうじゃない?それに甘えすぎたというか、朱に交わりすぎたというか・・・」 ・・・とはいえ、自分と藍離がそれほどの奴を殺したなんて、今の今まで気づかんかったなァ・・・ 「・・・弱かったしねェ」 「うむ」 三人の会話から離れたところで、藍離と二人で微妙な顔をしつつ紅茶をすする。 「・・・訂正しますわ」 唐突に、金谷さんが言った。 「佐上岳人、あなたに言ったすべての言葉・・・今ここで訂正させてもらいますわ」 「・・・えっと、ありがとうなのかな?」 あれ、これじゃあ悪口言ってもらってありがとうの意味に誤解されないか・・・? 「『弾銃蜜蜂』(ダンガンミツバチ)・・・私のコードネームですわ。覚えておきなさいな」 うむ、数刻前のしたうちひとつで片ずけられる関係から見れば、かなりの進展だと思う。 恋愛ゲームで高感度が上がるってこんな気分のなのかもしれない・・・ と俺が謎の高揚感に浸っているとくいくいと服のすそを引っ張られた。 「錦織さん?どうしたの・・・」 「『断斬兜』(タチキリカブト)」 ぼそり、と彼女は言った。 「・・・私の、コードネーム」 確変キタコレ(>O<) 「まさしく愛だっ!!!!!!」 「キチガイですの・・・?」 「気にしないで・・・お願いだから気にしないで・・・」 何故か藍離が頭を抱えている。なんだろう、俺そんなに変な事いったかな? 「残念な奴とはうすうす思っていたが・・・まさかここまでとはな・・」 社長が何か慄いて(おののいて)いる。 「何言ってんだよ・・・俺は正常だって」 「そうじゃない人ほどそういいますのよ・・・」 味方がいねェ! 「・・・たけ、大丈夫。私はたけのみかた」 「錦織、さん」 ああ、あなたは神か? その言葉だけで十分だ!!ご飯百杯はイケルっ!! いつのまにかあだ名つけられてるとかは些細な問題のはずだ!! 「・・・だから、病院に行こう?」 全力逃亡 俺は正常だ!!ただ・・ただ若いだけなんだァァァァァァーーーー!! <初任務> 「・・・スパイ?」 俺は、声を潜めつつ言った。 『うむ、スパイだ』 俺が持っている携帯からは、社長の声が聞こえてくる。 金谷さんや錦織さんの襲来以外はさして何も無かった今日、きっちり定時で上がらせていただいた俺は、自宅のリビングでくつろいでいた。 手持ち無沙汰ぎみにテレビのチャンネルを切り替えていると、社長から電話がかかってきた。という次第である 『だから、最初の任務として、君にこのスパイの鎮圧をお願いしたい』 「・・・なんだ、スパイってことは『組織』と同じような事やってる所があるってことかよ?」 『うむ。『企業』『組合』『株式会社』・・・大小あわせてその他もろもろといったところだ』 「・・・へぇ」 ま、人間考えることは皆同じってことだな 『とりあえず、職務中に空いた時間を見つけて、校内の探索をして欲しい、変な行動をしている生徒ないしは教師がいないか。ぐらいしか見ることは無いがね・・・ああ、安心しろ。『組織』も全力を挙げて捜査する。あくまで君の探索は付属品だ。『見つけて即殺』の可能性があるからな』 「りょーかい・・・そんで、それだけか?」 『ああ、メールで学校の地図を送っておく。探索の参考にしてくれたまえ』 「つーか、組織の重要な情報を小学校においておくってのに問題があるんじゃないのか・・・?多少はセキュリティがあるとはいえ、ほとんどザルだろ?」 『それは違う。リステアに限ってはそこらの刑務所よりセキュリティは高い。・・・それに、おそらくスパイは『組織』にも入り込んでいるだろうからな。つまりは外部からではない』 たしかに、あの学校にいる教師は全員殺し屋だ。ごく少数とはいえ生徒にもいるようだし、まずスパイは『組織』に入社するって言う危ない橋を渡らなきゃいけない。 つまり『組織の殺し屋』の中にいるってことだ。 「・・・ってことは、本社ビルも結構やばいんじゃないのか?」 『問題ない。本社にはペンタゴン並のセキュリティが施してある。入れたとしても、そこにある情報には触れることも出来んさ』 「・・・ほわっと?」 『だから、『ペンタゴン並のセキュリティ』だ』 「すげえなおい!!」 『今更だ・・・それじゃ切るぞ』 「・・・・おう」 ぷつっと通話が切れ、程なくしてデータが添付されたメールが送られてくる。 社長の言うとおり、そこには間取りと施設の場所が事細かに記されていた。 まず、H型の校舎。三階建てがある。 一階に視聴覚室、二階に図書室、三階にトレーニングルームとシャワー室と食堂。 小学校ながら部活動もやっているらしく、細かい字で部の名が記されている。・・・これがH型の左側の第一校舎だ。 右側の第二校舎については何も記されていない。 つまりは、秘密のお部屋ということだ。 ・・・今の言葉で変なことを妄想したあなたには漏れなく妄想族の称号をプレゼントします。 俺はしばし黙考した。 そして 「よし、明日は図書室に行こう」 べつに鶴田先生に会いたいとかじゃない、多分。 >>>>>>>>>>>>>>>>>><<<<<<<<<<<<<<<<< 誰にも聞かれてはいけない会話 『なるほど・・・ペンタゴン並みのセキュリティ、か・・・』 「ええ、よしんばプロテクトをといたとしてもプロテクトの向こう側にはファイヤウォールが二重、三重・・・・五重ぐらいですかね?それぐらいかけてあります。・・・トラップやバックアップを微塵も考えていない物量的なディフェンスシステムですが、一応「ペンタゴン並」の条件は満たしているかと」 『壊せるか?・・・なんならこちらからその筋のものをもう二、三人送り込むが』 「問題ありません。プロテクトがダメならファイヤウォールを食い荒らすだけです―――――すでに消火用のシステムを作り始めているので」 『さすが、抜け目が無いな』 「あったらこの商売できませんから」 『まったくだ・・・それではな、健闘を祈る』 保健室 今日から白衣だ。 新品の白衣を身に着けつつ、これって化学の先生とかとキャラ被りしないんか?などと思っていたが、化学の先生は普通にジャージらしい。 何事も無く午前中が過ぎていき、昼食の時間になった。 「おお・・・給食カレー・・・久しぶりやナァ」 器にぞんざいによそわれたルーと白米をかきこむとスパイシーな風味が口の中に広がり思わず頬が緩む。 「これだよこれ・・・このいかにもッ給食ですって感じが・・・いィーねェ」 ガラッ 「・・・あなたってうんちくたれるの好きなんですのね」 あきれた顔をしつつ、金谷さんが保健室に入ってきた。その手にはカレーの器が乗っているトレイがもたれている。 「おわ、金谷さん。・・・藍離と錦織さんも」 無論、二人もトレイを持っている。 「やほー、おにいちゃんが孤独死してないか心配で見にきちゃったよ」 「・・・もとい、一緒にご飯を食べにきた」 俺はハムスターかなんかか あれ、でも俺は藍離のことをセミ呼ばわりしてた気がする。まあいいや 「・・・たけ、たけ、喉乾いた。お茶頂戴」 「牛乳あるじゃ「「大ッ嫌い」 珍しく錦織さんが間髪いれずに答えた。 ほう牛乳がきらいとな・・・それでその胸とは恐れ入る。 「・・・それでその胸とは恐れ入る・・・」 「「口にぃ出てんじゃボケがァァァァァァあ!!!」」 「ほぐゥ!!」 藍離と金谷さんに股間蹴られた。 つーか、今グチャって音したんですけど大丈夫かなマイジュニア 錦織さんのために入れたお茶をテーブルに置き、四人でテーブルを囲む。 ああそうだ、社長から言われた任務のことも話しておかないと。 俺は話を簡潔に三人に伝えた。 「スパイ、ですの・・・そりゃまた穏やかじゃありませんこと」 「・・・まあ、すぐ見つかるとは思うんだが」 「・・・私たちもなるべく協力する」 「ああ、助かる」 「三人寄れば文殊の知恵っていうしね!!」 「・・・四人ですの」 「うわーお・・・」 図書室に一歩足を踏み入れた俺は、その蔵書量に思わず目を見開いた。 昼食も滞りなく終わり、藍離たちも教室へ戻っていった後、俺は昨日から考えていたとおり図書室に足を運んだ。 だが、想像していたのとスケールが違った。 俺の中の常識では、図書室とは教室を二つ並べた程度の広さの部屋に申し訳程度に小さい本棚が並んでいるだけの空間だったと思う。 だが、今俺がいる図書室は体育館程度の部屋に、せいたかのっぽの本棚がずらりと並んでいる。 その本棚の中には、隅から隅までぎっしりと本が詰まっている。 「『図書室』じゃなくて『図書館』のほうがしっくりくるな・・・これは・・・」 まだ給食が終わった直後とあって人影は少なく、くせっ毛の女の子がカウンターで貸し出し申請をしているのみだ。 女の子の貸し出し申請が終わるのを見計らって、俺はカウンターにいる人物に声をかけた。 「どうも、鶴田先生」 「あ・・・佐上先生。なにか、御用ですか?」 「ああいえ、ちょっと気になったんですよ・・・教師でも図書室で本が借りられるのかなと・・・」 怪訝そうな目を向けられたので、とっさに嘘をつく。 「何だ・・・そんなことですか。はい、大丈夫ですよ。基本的に貸し出しは生徒も教師も区別しません」 「そうですか」 「借りられるのであれば、カードお作りしますけど?」 「いえ・・・それはまた後日ということで・・・ん?」 俺は、目の前にいる鶴田先生のほっぺになにやら白いものがくっついているのを見つけた。 「・・・?どうかなされました?」 「いえ、なんでもないですとりあえずそのまま動かないでください」 俺は迅速かつ的確にほっぺにくついていたご飯粒を回収する。 「あ・・・」 「・・・はは、ご飯粒ついてましたよ」 俺がそう言うと、鶴田先生がわずかに顔を赤面させる。 可愛いなぁ ・・・それはそうとこのご飯粒どうしよう? このまま捨てるのもなんか忍びないというか・・・ ・・・いいや、食っちゃお 「ッ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」 俺がご飯粒を口に入れると、鶴田先生の顔が「ちょっとした赤面」から 「完璧な赤面」と変貌する。 ・・・どうしたんだろう 「さ、さがみしぇ・・・・・はうぅ・・・・・」 眼鏡の内側の眼がぐるぐる回ってる。 しかも何か小声でぶつぶつ言ってらっしゃるんだが? 「た、食べられちゃったよぉ・・・食べられちゃったよぉ・・・どうしよう今から婚姻届取りにいくの間に合うかなぁ・・」 どうしよう、俺のあずかり知らぬところでとてつもなく事態が進行しているような気がする。 というか米粒一つで婚姻届けて。 てかもしかして鶴田先生ってテンぱりやすい・・・? 「・・・せ・・・責任とってくだしゃーーーーーい!!!」 そういい残して図書室から脱兎のごとく逃げ出していく鶴田先生。 いや、責任とって欲しいのはこっちのほうなんですけどね。 だって―――――― 「あらあら、スパイ捜索としたり顔でぬかしておきながら実態は気にいった女性にマーキングですの?いい身分ですわね・・・」 ゴリィッと俺の後頭部に金ぴかの拳銃が押し付けられる。趣味悪いなァと思ったが言ったら殺られる。 「・・・この際徹底的に教育――――いや『調教』すべき」 すうっと俺の喉元に日本刀が押し当てられる。 かみそりの切れ味に鉈の重量のキャッチコピーにたがわないその触感は俺に死しか予感させてくれない。 そして 「ねえねえお兄ちゃん・・・ごー★とぅ★へる★」 「あっ・・・!!三人ともちょっと待ってその間接はそっちには曲がらなッ・・・・・・・・・・・・・!!!」 ぎゃああああああああああああああああ・・・・・ その日、図書室から響いた悲鳴はリステアの七不思議になったとさ・・ ・・・あー体中いてェ |
阿厳
http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=14995 2013年08月08日(木) 11時52分39秒 公開 ■この作品の著作権は阿厳さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 阿厳 評価:--点 ■2013-08-22 20:03 ID:teDth0X3.a6 | |||||
恥さらしとはいってくれるなこの野郎!! と最初は思いましたが、よくよく考えれば普通に俺の方が悪かったです。 部活などが大きく重なり、まったく手をつける暇が無かったのです。 みなさまの気分を害して申し訳ありませんでした |
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No.1 ゆうすけ 評価:0点 ■2013-08-19 19:07 ID:1SHiiT1PETY | |||||
作者さんは、投稿して放置しているようですね。 規約を無視しての投稿は目障りです。 今後も、無視されて「恥さらし状態」が継続すると思いますが、せっかく書き上げた作品がもったいないですよ。 他人に読んでもらいたいと思うほどの自信作ならば、それ相応の見せ方があるはずです。投稿小説サイトがあったからとりあえず投稿してみたではダメでしょう。 |
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