片想いの末に(改訂版) |
カラッと晴れた空が心地よい、そんなある休日の昼下がりにアパートの一室で大学生の男が家庭用ゲームをしていた。珍しい敵の出現により白熱しているが、本当は今すぐにでもトイレに駆け込みたかった。先から気分が悪く胃の中でドロドロとしたものかが蠢いている感じがしていたのだ。 (何か悪いものでも食ったか…?) さっき食べたものといえばサークル仲間の女から貰った手づくりの菓子と冷蔵庫の奥で見つけた袋づめの椎茸だ。あいつの人柄からして腐ったものを俺に渡してくるはずが無いし、やはりあの椎茸が腐っていたのだろう。食べなければよかった。 (はやくトイレ行きてえ…) だがゲーム画面に映る敵はなかなかくたばってくれない。次第に意識が遠のいてきた。 体内のドロドロした物は徐々に上へ上へと移動する。そしてそれが喉の奥を刺激した時、急いでトイレに行こうと立ち上がったが間に合わずおエッと机に吐瀉物をぶちまけた。 (うわぁ…) 彼はぼんやりと自分の吐瀉物を見つめる。茶色や黄色の元食物がテラテラと光っていた。久々の嘔吐であった。だが吐いたのに爽快感は無い。更に体内ではドロついたものが容赦無く動き回る。異臭が漂う。吐瀉物を片付けなければいけないのかもしれない。ゲームの続きをしなければ。だが気持ちが悪い。吐瀉物を。いや、もう、どうでもいいのかもしれない。案外どうでもいいのかもしれない。俺は早くここから、このことから離れるべきなのだ。寝ようか。そうだ寝てしまうべきなのだ。 「寝よう」 虚ろな目でそう呟くと、吐瀉物を放置して布団に倒れこみ、寝てしまった。 部屋の中は彼の吐瀉物から異臭が漂い、ゲーム音楽が延々と流れ、彼のイビキが響く。 にちゃ 吐瀉物が微妙に動いた。 にちゃにちゃにちゃにちゃ 吐瀉物がまるで生き物であるかのように蠢く。 にちゃにちゃと中央に集まり、にちゃにちゃと人のような形を形成し始めた。一瞬、凝固すると、とたんに変色し一人の女性となった。恍惚とした笑みを浮かべて自分の身体を抱きしめる。 「う…ふふふふ。彼の食物。何かな?キノコ類かな?彼が箸ではさんで口に運び、咀嚼して飲み込んで胃で消化して彼になったものから私が出来た。彼のゲロからうふふふ。ふ」 穏やかに寝息をたてる彼にそっと口付ける。 「うふふふふ。私は今、あなたとあなたの物質を介して繋がっているのよ?友達以上、そして親友以上でしょ」 その女は彼の彼女では無い。ストーカーでも無い。同じサークルで恋愛相談にのったりのられたりする仲の良い、彼にとって親友のような存在だった。 「ぁぁあん。あなたに抱かれているみたい。あなたを傷つけずにあなたに告白もせずあなたに知られずあなたに抱かれているわ。ぁあん」 女は彼の眠るそばでぐねぐねと身をくねらせた。 「私のお菓子は美味しかったかしら?中身の髪の毛はおいしかったかしら?愛液は美味しかったかしら?教祖様のまじないを感じてくれたかしら?」 自分の身体を強く強く抱きしめて笑うその女は気持ち悪い以外の何者でもなかった。寝息をたてている彼は、その事象を知る由もない。 |
蒼樹 優汰
2013年04月06日(土) 16時38分03秒 公開 ■この作品の著作権は蒼樹 優汰さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.4 緒方 評価:30点 ■2013-04-20 01:27 ID:wxwaeJFv2JA | |||||
ぐお。食後だぜ。 てことで感想です。 よくわかんなかったんですが、ゲロからできた女は、咒者である女の記憶を持った新たな何かなのか、女の精神が宿ったモノなのか。後者とするとさすがにどうなんだろう。体がゲロって。それが気にならないほどいっちゃってるのか。うーん、それにしてもゲロだよゲロ。承服できるものなのかなあ。最低限、女として。愛すれば、ゲロまで愛おしい、のか。うん、怖い。そのあたりの狂愛の病みぐあいをねっとりやばーく描ききれば……かえって誰も読まんかも……。ま、いくとこまで行った方が良いのか悪いのか? |
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No.3 蒼樹 優汰 評価:--点 ■2013-04-06 21:48 ID:YelpAco7GN. | |||||
的確でわかりやすいアドバイスありがとうございます!とても参考になりました! アドバイス通りに伏線を追加させ、描写も具体的にしてみました! 今後も伏線や描写に気をつけたいと思います!貴重な御意見ありがとうございました!ここまで丁寧に書いてくださるとは予想していなかったので感激です! |
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No.2 卯月燐太郎 評価:30点 ■2013-04-06 19:51 ID:dEezOAm9gyQ | |||||
修正 点数は「30点」です。 すみません。 点数をチェックするのを忘れていました。 50点がついていますが、30点ぐらいだと思います。 まだ、こちらのサイトに慣れていないもので、ここに修正します。 |
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No.1 卯月燐太郎 評価:50点 ■2013-04-06 19:42 ID:dEezOAm9gyQ | |||||
「片想いの末に」読みました。 >>よい点 A>発想(アイデア)がよい。 B>内容がわかりやすい。 C>短いながら、片思いから人間ドラマが発生している。 D>構成(下記の悪い点を克服すれば)は、悪くない。 >>悪い点 E>「不愉快」「ムカつく」が「だから女はネットでこの方法を調べて実行したのだ。」で、彼女が彼の「吐瀉物」として現れることになると思うが、説明が簡単すぎる。(または、描写がない) F>Eに関連して、彼の吐瀉物がどうして、主人公(彼女)に変貌するのか? G>彼は机の上に吐瀉物をそのままにして寝ている。 普通の者はそんなことはしないでしょう。 あと片づけをするはずである。 >>これら、上に書いた問題点はすべて伏線を張れば解決します。<< ●問題点の解決策 >「E」について アイデアはよいのですが、一行の説明で済ますのではなくて、具体的に描写してください。すると、作品に臨場感が出ます。 >「F」について Eに関連していると思いますが、「彼女」が彼に「自分の体の一部を食べさせた」とか。 そうすると「吐瀉物」が彼女に変身するという意味は分かります。 「爪、髪の毛、体内から出た汚物、血、涙、そのほか、もろもろ(彼女の体の一部、またはその関係)」を料理した弁当か何かで彼に食べさせた結果。+アルファー「恋愛の神社とかで手に入れた物(まじないそのほかもろもろ) >「G」について 普通の者なら、後片付けをしてから寝ますよね。 それを彼はしなかった、これは伏線を張れば解決します。 彼は彼女の怨念(愛情)のこもった物を食べたので、後片付けをする精神状態(吐きそうで気持ちが悪くてできなかった、眠くなったでもよい)では、なくなっていた。 アルコールなどを副用してもよい。 以上です。 |
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総レス数 4 合計 110点 |
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