僕と河童と夏の海


　僕しか居ないはずの海岸、助けを呼ぶ声がして見ると、緑色の物体が溺れている？　なんだ蜃気楼か。緑か、メロンのかき氷が食べたいな。ああ、もう。
　河童がなぜ海に居る。海底へと沈んで行く河童の様子を窺う僕、どうやら演技でもなさそうだ。河童の死に際など夢見に悪い。そんな一夏の思い出はまっぴらごめんだ。
「助けてくれてアリガトチャン、俺はジョニー」
　名前など聞いていない、しかも図々しくも泳ぎを教えてくれときたもんだ。まあ、暇だからいいけど。
　基礎中の基礎からの泳ぎを教えるが、背中から沈んで行く駄目河童。どんだけこいつは出来損ないなんだ。
「フゥ、肩凝るぜ、ヨッコイショーイチ」
　せめて甲羅が外せれば、甲羅に座って激しく落ち込む河童を励ます術など僕は持ってはいない。
「胡瓜食べる？」
　ん？　甲羅？　ありがとう、頂くよ、甲羅の中にポケットがあるのだろう。　絶妙な加減、海水で塩漬けされていて美味しいのがちょっと悔しい。さらにコーラやお菓子など次々に出てくる、って、え！？　外せるの？　
　甲羅の中から出るわ出るわ、二十二世紀の四次元ポケットかと言うぐらい、週刊河流れ、携帯ゲームに、しかも出し惜しみしている。
「ふざけんな！　全部出せ！　お前はウッカリ手品師か！」
　本気で怒る僕。甲羅の許容量を遥かに超えている。
　あっさり水に浮く事が出来た。殴ってやりたい衝動に駆られるのを堪えるのに心底我慢を覚えた。水を得た魚、いや河童、アホ河童が嬉し涙を、いや、こんなのに付き合った僕もアホの部類だろう。潮風が目に沁みる。これは感動を分かち合った涙ではない、涙を流したら負けだろう。泣きたいのを噛みしめる。
「また明日」
　まずは友達からとジョニーは海に消えて行った。これ以上どう発展するんだ。でも、明日も楽しみな僕がいる。

　え？　どこが怪談って？　
　実は僕、溺死しているんですよ。
　海には浮かぶけど、浮かばれない霊なんですね。チャンチャン。
水樹
2012年11月19日(月) 00時54分39秒 公開
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No.6  水樹  評価：--点  ■2013-02-19 00:37  ID:r/5q0G/D.uk
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枯木様、ありがとうございます。
最近ダラダラしていたので、とても励みになります。
No.5  枯木  評価：40点  ■2013-02-18 00:38  ID:n0S/iTqa5.6
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はじめまして。
純粋におもしろいと思いました。テンポ感とか、言葉のチョイスとか。
最後のはとってつけたような感じがありますが、それはそれで、人を食ったような感じがあって、この作品にふさわしい気がします。
No.4  水樹  評価：--点  ■2013-01-06 00:32  ID:r/5q0G/D.uk
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帯刀穿様、ありがとうございます。
私自身、制限のある作品の中で、楽しく書けたのを覚えています。
肩の力を抜き過ぎたのかなと。
でも、もっと楽しくてもいいのかなと思ったり。
No.3  帯刀穿  評価：20点  ■2013-01-04 19:50  ID:DJYECbbelKA
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どう評価すべきか悩む作品。
不可思議ジョークで笑わせたと思ったら
実は幽霊でしたと。
週刊河流れとか、うっかり手品師とか、物を出し惜しみするとか。
そもそもジョニーと河童というネームの組み合わせ。
非常に不思議なセンスである。
No.2  水樹  評価：--点  ■2012-12-03 00:24  ID:r/5q0G/D.uk
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昼野陽平様、ありがとうございます。
高い目標ですか、ありますと断言しますね。
と言っても、こちらに投稿するのはまれでして。
取り合えずはみちのく怪談ですね。
No.1  昼野陽平  評価：40点  ■2012-11-19 16:14  ID:/M49zwFIFX6
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読ませていただきました。

水樹さんらしいキュートな作品だなと。

＞緑色の物体が溺れている？　なんだ蜃気楼か。緑か、メロンのかき氷が食べたいな。ああ、もう。

こういうノリがなんか好きです。
ラストのいい加減さもなんか好きでした。

注文をつければ、なんかもっと高い目標というかを持って書いてほしいかな、とも思います。なんでもいいんですけどね。感動させてやるぜー、でも、小説史上例のないものを書いてやるぜー、でも。

これはこれで面白いんですけどね。ほっとするというか。

自分からは以上です。
総レス数 6 　合計 100点

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