真実の真実



男は扇子を左右に忙しなく振りながら物思いにふけっていた。残暑が残る8月の末日、湿々とした部屋の机の上で、ある家で起こったある事件の資料にその探偵は目を通していた。窓の外ではセミが口うるさく鳴いている。
「トントン」
ノックの音が聞こえ、ハッと男が顔を上げるとエプロンを着た女性が扉の前に立っていた。いつの間にか無意識になってしまっていたらしい。
「おう、久しぶりに幽霊を見てしまった。いや、違うこれは現実か。」
「現実ですよ。風橋さん。ちょっとお疲れになっているんじゃありませんか。最近私をお化けと間違う回数が増えてきてますよ。コーヒーをお持ちしましたからこれでも飲んで頭を休ませてください。」
「ああ、ありがとう。いやあ最近私の所にやっかいな殺人事件がもちこまれてねえ。」
「殺人事件ですか。」
「いやあそうなんだ"殺人事件"なんだ。まあ、君もそこに座って話をきいてくれないか。君にもこの事件についての意見を伺いたいんだ。」
「意見って私はただの家政婦ですけど。」
「まあまあいいじゃないか。とりあえずは作り話だと思ってだな。では、話すぞ。」
その話は、普通すぎるほど普通な殺人事件であった。


この町のとある家でその家の長男が殺害されるという事件があった。殺害場所はキッチン、殺害方法は包丁による殺傷、死因は腹部殺傷による大量出血死、そして犯人と思われるのはその家の次男、動機は数日前に祖父が死んでおりその遺産目当てだったと殺害したと思われる次男は供述しているという。しかしまだ物的証拠は見つかっていない。ちなみになぜ次男が殺したと思われるのかというと、長男の死体が見つかったあと次男がやけにおろおろしているので不審に思った家族が尋問したところ素直に白状したそうだ。そう、これは実に単純明快な事件なのだ。


「で、この事件のどこがやっかいなんですか?」
風橋がうんうんと言いながらコーヒーを飲み干し、いい質問だ。と家政婦の方を見て言った。
「重要なのはここからだ。実は事件が起こってから数週間したあとその家の長女が私の所に話を聞いてくださいといって出向いてこられたんだよ。」


事件があってから数週間後、斎藤絵美は風橋探偵局に事件についての相談をしに来ていた。突然の押し掛けにも嫌な顔ひとつせず風橋探偵は紳士的に接してくれた。絵美はもしかしたらこの人ならこの話を信じてくれるかもしれないという淡い期待感を抱いた。とうされた応接室で絵美は風橋探偵と向き合った。机にはコーヒーがならべられていた。
「で、この度はどのようなご用件で?」
風橋探偵は私の目を鋭く見つめながらそう言った。見つめられるとつい目をそらしてしまう。これは小さい頃から人見知りだったのでしょうがないといえばしょうがない。
「いきなりですが風橋さんは私の兄、斎藤浩が殺されたことをご存知でしょうか?」
「うーん.....存じ上げませんなあ。」
どうやらこの人は私の兄が殺されたことを知らないらしい。新聞には掲載されたと思ったのだがこの探偵は新聞を読んでいないのかもしれない。
「実はその兄を殺したのが私の弟かも知れないなのです。」
「ほう、それはまたどうして弟さんがお兄様を?」
「それは....前に亡くなった祖父の遺産目当てなんですが、私にはどうしても解せないんです。弟はお金に執着するような人間ではありませんし、それに人を殺すような人でもありません。それに...」
「それに?」
そのあとの言葉を絵美は一瞬言おうか迷った。しかし、ここまで来て引き返すわけにもいかなかったため意を決してその言葉をいい放った。

「死んだ祖父が長男を殺しているのを見てしまったんです。」
言ったあと絵美は深く後悔した。


話終えた後、満足顔で風橋は家政婦を見た 。
「どうだ、ものすごくやっかいだろ?」
「そうですか?本当にやっかいですか。私には斎藤絵美が弟を庇って言っているようにしかみえないんですけど。それにそもそも弟が自供しているわけですし。」
「それがそうでもないんだよなあ。それにたくさんの疑問点も調べた結果出てきている。そこからみて、俺は弟が犯人ではないと断言する。」
そう言うと、風橋は机の上から安全ピンでとめられた紙束を出してきて家政婦に渡した。
「これは、私が自分で調べて記した調査資料だ。決して警察からもらったものではない。」
「そうですよね。警察が探偵なんかに大事な調査資料を渡しちゃいけませんからね。」
「そうさ.....私は警察なんかから大事な調査資料をうけとってなんかいない.......」
「そうですよね。探偵は自分で調べるのが普通ですからね。」
「そうさ。では俺が弟が犯人ではないと思った理由はこの点だ....」

そして、風橋探偵は次のような点をあげた。
1.現場には、犯人に繋がるような物的証拠は一切ない。包丁は手袋か軍手が使用された可能性が高いがどちらも見つかっていない。(弟は近くの草むらに捨てたと言っているが見つかっていない)包丁は被害者の足元に落ちていた。
2.被害者の長男の体から睡眠薬が検出されている。
3.家のなかではアリバイは余り通用しない。(共謀するおそれがあるため。)なので家族の誰もが容疑者だ。
4.そして、長男は近所からの評判が大変悪く、家族からも敬遠されていた可能性がたかい。
5.弟はチキン野郎と近所でも評判なくらいヘタレなのでそんなことは出来ない。
6.ちなみに犯行時刻は夜の11時半と思われる。

一通り説明を終えた後、満足顔で風橋は家政婦を見た。
「どうだ。ますます訳がわからないだろう?」
「いや、なんとなく事件の全体像が掴めてきました。つまり、家族全員が嘘をついているということですね。」


続くかも


















トニー
2012年04月30日(月) 01時14分59秒 公開
■この作品の著作権はトニーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
難しいです。

この作品の感想をお寄せください。
No.2  マサチューサ  評価:0点  ■2012-07-12 23:15  ID:oCtkFZvppYg
PASS 編集 削除
 こんばんは、お初です。
 行頭の一字下げが無い、括弧とじの際に句読点がある、三点リーダの数が統一されていない、視点が唐突に三人称から一人称に変わる、など、ちょっと読み辛く感じました。文章作法は守ったほうが文章全体がクールになりますよ。
 探偵や家政婦の描写がまったくといっていいほどありませんが、さりげなく彼らの容姿を想像させるような言葉を入れておいてはいかがでしょう。年齢や容姿がわからないと、想像の幅がありすぎて逆に何も浮かんでこないので……

>とうされた応接室で
 正しくは、とおされた、だと思います。

 この物語は完結していませんね。読ませてもらったので感想は書きましたがが、評価の対象にはならないと思います。落ちまでしっかり書いてから投稿すべきではないでしょうか。
 生意気言ってすみません。これからもがんばってください。
No.1  白星奏夜  評価:20点  ■2012-05-08 19:29  ID:8eZ32nCHAgE
PASS 編集 削除
こんばんは、白星と申します。拝読しました。

冒頭で終わってしまったような、そんな感じを受けました。もっと読みたかったような気がします。理解力不足かもしれませんが、謎も謎のままのような。

完璧にお節介だとは思うのですが、思うところを述べさせて下さい。
中盤で急に長女視点に切り替わり、心理描写が出てくるのに、それがあまり活かされていないように感じました。意図があれば、申し訳ないのですが、そのまま探偵目線でも良かった気がします。
それと、祖父の遺産目当てで、長男が殺害され、次男や長女が出てくるのですが、まず遺産相続に関わってくる彼らの両親はどうなっているのでしょうか?
また、祖父の兄弟達は? ちょっと疑問に感じてしまいました。

会話のテンポなどはおもしろかったので、短いのが残念でした。我が身を棚に上げていろいろ書いてすみませんでした。失礼致します。
総レス数 2  合計 20

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除