缶詰
 母の七回忌法要が終わり、出席した親戚縁者への挨拶を終え、帰宅したのは夜の九時を過ぎた頃だった。
 着替えをすませ、キッチンの明かりを灯し、ダイニングテーブルの椅子にへたり込むように腰を沈める。
 妻との協議離婚が成立して早二年、すっかり一人暮らしにも慣れたつもりだったが、一日あわただしく人に接したこんな日にはなぜか妻の声がふと思い出された。
 帰宅し、だれもいないキッチンに座って空腹を抱えている頃に、『ただいま』と、妻のとぼけた声…… 文句を言う気も失せたところに始まるパチンコの戦果報告。いつも軽く聞き流していた私だったが、時には口論になったことも今では遠い思い出となってしまった。

 無性に腹が減っていた、冷蔵庫を開ける。
 だが、なにもない。
 次に戸棚を物色する。インスタントラーメンぐらい残っていたと思ったがそれすら無かった。
 こんなことなら帰りにコンビニに寄ってくれば良かったと思ったが、後の祭りだ。さりとて今からもう一度買い出しに出かける気にもならない。
 私は悪あがきとばかりに、普段開けることもなかった戸棚の一番下の扉まで開けて中を物色してみた。
 一番奥にある大きな箱が目に止まった。引っ張り出してみようと思ったがかなり重い。使わなくなった食器かなにかだろうか。
 苦労して引っ張り出し、箱のふたを開け中を覗く。缶詰だった。
 だが、缶詰にはラベルが貼られていない。もしかすると職場の缶詰工場で試作した缶詰のサンプルだったかも知れない。
 箱の中には大小様々な大きさの缶詰が無造作に詰められている。その一つを手に取ってみた。重い、からっぽと言うわけでは無さそうだ。
 中身は何だったのだろうか。まったく記憶にないがひょっとすると食えるかも知れない。
 私は半分怖い物見たさもあり、何より空腹も手伝って、その缶詰を開けてみることにした。
 缶切りを持ってきて缶の上部にあてがい、ぷすりと穴を開ける。ふんわりとした肉の香りが鼻孔をくすぐった。
 うまそうな匂いだ。意外に上質の整形肉かなにかだったのだろうか。私は急いで缶切りを一周させるとパカンと上蓋を開いた。
 見た目はあまり良い物では無かったが、缶詰の肉など大抵こんなものだ。しかしながらこの匂いはすこぶる食欲をそそる。私は皿にあけようと食器を探したが手頃な大きさの皿はシンクにつけたままで品切れであった。とりあえず見つけた顔の大きさほどのオムライス皿の端っこにその中身を缶を逆さまにして落下させた。
 肉のかたまりはまるでプリンのように丸い形を保ったまま皿の上に乗っている。私はスプーンで内部を確認しようと切り崩していった。
 コツンとスプーンに抵抗を感じ、その部分を切り開いてみる。なにやら丸い異物が入っているのを発見した。切り崩した肉の上に丸い物体を乗せ、回りに付いた肉をこそぎ落としてみる。
 眼球…… に見えた。
 白い地肌に黒い瞳、反対側には視神経の残りまでくっついている。
 こいつは…… 不良品か…… 
 牛か、豚か、何の目玉だかは分からないがさすがに気味の良い物ではない。
 私は二つ目の缶を開けてみることにした。
 二つ目も同じ肉の缶詰であった。同じ特大オムライス皿の上に盛りつける。
 慎重にこれもスプーンで中身をチェックする。まさかと思ったが、なんとさっきと全く同じ物が切り崩した肉の中から出現した。
 バカな、偶然なのか? それとも異物の混入したロットを固めてあるのだろうか。
 私は憑かれたように次の缶に手を延ばしていた。箱の中に残った大きめの缶を開けてみる。
 さっきよりもやわらかな手応えがスプーンに感じられた。軟骨? しかしこの形は…… 
 次々に缶を開けてはオム皿に乗せ、その肉を切り崩し広げていく。
 耳の軟骨とおぼしき物もちゃんと二つあった。
 タンはほぼそのままの形で生き物のようにデロリと皿の上に横たわった。
 赤い魚の卵巣に見えた物は皿に乗せると上下二つにキレイに並んだ。
 最後に残った缶詰は特大の一つであった。私にはもはや手を止めることはできなかった。
 缶を開ける、中にはぐずぐずに溶けかけた長い女の黒髪がいっぱいに詰まっていた。
 オム皿の上部にぶちまける。テーブルの上に液状化した髪の毛がなめらかなウエーブを描いた。
 私はようやくすべてを思い出した。
 口論のあげく妻を絞め殺したあの日、ひそかに職場の精肉用ディスポーザーで妻の体をミンチにしたことを…… 
 頭部だけは異物が残ることを恐れて食肉用に混入せずに、小分けにして缶詰に加工し家に持ち帰ったことを……
 その甲斐あってまったくの完全犯罪の成立を確信した私は最後に私自身の記憶も封印したのだ。缶詰にするように……

 キッチンに強烈な腐臭が立ちこめていた。
 テーブルの上のオム皿を見る。そこには妻の顔があり、その目がギョロリとこちらを向いた。
 そして引きつるような声が、しかしはっきりとその口からもれ出した。
 「ただいま」

   ――了――
陣家
2011年10月26日(水) 01時54分06秒 公開
■この作品の著作権は陣家さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
たまにはショートなものをと思い、練習に書いてみました。
やっぱり難しいですね。掌編は。
感想お聞かせくだされば幸いです。
10/28 若干修正しちゃいました。すいません。

この作品の感想をお寄せください。
No.16  陣家  評価:--点  ■2012-03-27 03:46  ID:1fwNzkM.QkM
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ピキーン、と
なぜか自分の中のドMセンサーが反応いたしました!
数あるTCの作品の中から拙作をお選び頂き、感想まで付けてくださりありがとうございます。
点数も四捨五入していただいてありがとうございます。
でも、ちょっと物足りないです、もっと罵倒されてみたいです。
拙作をお読み頂いたのもなにかの縁に違いありません。
勝手な希望ではあるのですが……
もし良かったら僕の他の作品もお読み頂けたら幸せです。
なにしろ忌憚無きご意見というのはこのサイトでは非常に少数派でして、ほとんど自分だけかなと思っておりましたもので。
なんだかとても心強い気持ちになりました。

よろしくお願いします。

No.15  山田ハル  評価:10点  ■2012-03-16 04:03  ID:.1IszGSr9S2
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面白くはなかったです。
一応10点を入れましたが、さすがに0点ではないというだけで、本来なら10点ないぐらいです。

がんばってください。
No.14  陣家  評価:--点  ■2011-12-04 03:10  ID:1fwNzkM.QkM
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お さん、感想ありがとうございます。
返信遅くなり、すいませんでした。

ですよねえ。
この手の掌編って、数そろえてなんぼって感じなので、ぽちっと一編だけ出しても、いかにも食い足りない感じすね。
でも掌編と言いつつ長くなるのもそれはそれで、駄目な感じだし。
短くともキレのある文章書くのは、まだまだ無理っぽいです。
それがよく分かっただけでも収穫だったと思います。
ありがとうございました。
No.13  お  評価:30点  ■2011-11-29 23:14  ID:E6J2.hBM/gE
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こんちわ。
読んだのは、ずっと以前でした。
なんとなく感想書きそびれていました。
多分、僕の好みはおおよそ知って貰えてるのかなぁと勝手に思ってたりしますが、それをふまえると、まぁ、僕としては、あまり作品に興じることができなかったのもご理解いただけるものかと。
まぁ、ともかく、なんというか、悪い意味で外連味がない。僕のようなものからしてみると、どうも小説を楽しむというよりも、ネタ披露を見た感じ? かな?
そんなことで、僕の好みを言うならば、もっと煽りたくってください。
そんなことで。
No.12  陣家  評価:--点  ■2011-11-23 02:38  ID:1fwNzkM.QkM
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水樹さん、感想ありがとうございます。
返信遅くなりすいませんでした。
協議離婚は記憶の改ざん、自己暗示の一つとして表現できるかなと思ったのですが、ちょっと違和感ありましたね。
このへんもう少しスマートにまとめたかったのですが、良いアイデアが出てきませんでした。
大変参考になるご感想でした。
ありがとうございました。
No.11  水樹  評価:40点  ■2011-11-20 16:51  ID:r/5q0G/D.uk
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陣家様、読ませていただきました。
食欲がなくなる、気持ち悪い描写がいいですね。
一つずつ開けると言う、展開も見事です。
特にはないのですが、口論のあげくとあったので、妻との協議離婚が成立してないんじゃないのかなと、思ったり。
No.10  陣家  評価:--点  ■2011-11-15 00:46  ID:1fwNzkM.QkM
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ゆうすけさん、こんな拙い文章に感想付けていただきありがとうございました。
せっかくのお昼ゴハンも台無しにしてしまいすいませんでした。
さすがに食べるところまでは描写しきれないところが自分のヘタレ具合を暴露しちゃってるところですね。
個人的にももっと心理的に迫るようなストーリーが好きなんですけどねえ。S・キングみたいな感じの。
次に書くときは、そんな生理的な恐怖を煽るようなストーリーで、練りこんだものを書いてみたいと思います。
読んだ人がトラウマになるぐらいの――なんてムリだろうなあ……
ありがとうございました。
No.9  ゆうすけ  評価:30点  ■2011-11-13 12:44  ID:YcX9U6OXQFE
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拝読させていただきました。
 昼ごはん片手に読みまして、見事に食欲壊滅です。おえっと吐きそうなぐらい、見事に恐ろしい光景を想像してしまいました。当然褒め言葉ですよ。
 ただ、味わいは強烈だけど後に残らないような感じです。淡々と描写が続いているからかな。
 缶詰に封印する、いろいろ封印できそうですね。主人公の良心とか後悔とか思い出とか、そういった感情も封印していそうな。個人的な好みなので恐縮ですけど、感情描写が欲しかったです。
 食肉用にした部分の肉を親戚で食べた描写があると、より一層おえっと吐き気をもよおして強烈かも。実はこうだった! って捻りがあると面白味がップなんですけど難しいですよね。
No.8  陣家  評価:--点  ■2011-11-08 01:41  ID:1fwNzkM.QkM
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ラトリーさん、感想をくださりありがとうございます。

実際のところ、初稿から手を加えていますので一時間なんてとんでもないです。
それでもこの程度ですのでまだまだ鍛錬不足を感じるばかりです。
それでもとりあえず、描写に大はずしな感じは与えなかったようで、安心できました。ありがとうございます。
しかし、よく考えてみるとこのお話ってホラーというよりもスプラッターですね。
勢いだけでやっちゃった感じです。
いつかラトリーさんを唸らせられるようなミステリーを書いてみたいと思いました。
ありがとうございました。



貴音さん、感想をくださいましてありがとうございます。

缶詰、そういえば最近食べていないですねえ。もしかすると缶切の使い方も忘れているかもしれません。
記憶を缶詰に封印というくだりは書きながら思いつきで追加した部分なのですが意外に効果的だったようですね。
こういうプロット外の、乗りで書いた部分がかえって印象的だったりするところが面白いですよね。
まあビギナーズラックと言えるかもしれないですが。
ありがとうございました。
No.7  貴音  評価:40点  ■2011-11-07 18:15  ID:6C1hXkRQcXM
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読ませて頂きました。
缶詰には何が入っているかわからない・・・・・。
そういう風に読ませて頂きました。
最近缶詰食べていなくて良かったです。
また、缶とともに記憶を一緒にひらいていくところ
が面白いなあと思います。
缶詰って怨念も保存されて詰まってそうですね・・・・・・。
No.6  ラトリー  評価:30点  ■2011-11-06 03:39  ID:x1xfMMn8lDg
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 こんばんは。土曜の夜だからと夜更かししてたら、かえって目も意識もさえてきて、何か書かねば気がすまなくなってきました。というわけで、流れに乗って感想など書いてみます。

 これを一時間以内で書ききるというのがお見事ですね。最低限の物語の流れがきちんと押さえてあって、読む側を痛撃する恐ろしさ、よどんだ空気、気味の悪さが全体に宿っている。肉の描写もイメージしやすくて、否応なしに光景を思い浮かべてしまいますね。まさにホラーの王道と感じました。
 お肉が出てきたところで、以前からその手のhuman fleshなお話を読んでいたのでもしやと思っていたのですが、表現の巧みさで一気に読め、その先まで想像が回らず、最後まで驚きを引っぱることができました。個人的には、母の肉もきちんと缶詰にしてとっておいてある、みたいなところまで踏みこんだ展開だと、さらに意表を突かれてたかもしれません。ちょっと現実味が薄れてしまいそうな気もしますが、とりあえず。
 やっぱりホラーはいいですね。ミステリー的な味があればなおさらだな、と。以上です。
No.5  陣家  評価:--点  ■2011-10-27 21:51  ID:1fwNzkM.QkM
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夕凪さん、感想ありがとうございます。

自分、夕凪さんの感想レスが大好きで、いつも楽しませてもらっていました。
拙作に感想いただけて、嬉しい限りです。

自演の人??? とはなんでしょうか?
もしかして似たようなペンネームの人がおられましたですかね…… 

まあ、一時間というのは頭の中にあるプロットをそのまま文章にして、そこそこの形にできるかを試してみたかったのです。
当然、お話は一日かけて(仕事中に)考えています。
でも多分推敲を重ねても、この程度のプロットだと二割り増しぐらいの改善になるかどうかってところでしょうけど。

缶詰のお肉は…… ”良い匂い、うまそう”から、ラストの”実は強烈な腐臭”という呪いが見せた幻惑でした、的な効果が出せるかなと思ったんですが、分かりにくかったですね。

B級ホラーが夕凪さんのお好みでしたか、であれば、また書いてみたいという気になりました。

それでわ
No.4  夕凪  評価:40点  ■2011-10-27 21:16  ID:qwuq6su/k/I
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 自分はB級?ホラーを読まないと生きて行けない口なんで こういうのが一番嬉しひです。訳の判ら無ひ、高級な「読み物」なんか大嫌ひです。それと大変面白かったんで、何で一時間以内に書くとか、掌篇なんか執筆するのに拘わるのか意味が分かりません。長ひのを書いて下さい。只
陣屋さんは、自分が予想して居た自演の影では無く 
陣屋さん、本人と判ったんですが(自演の人は、料理得意なんで)
 普通一般の男性は、料理せんので缶詰に入った肉類なら生の筈は無ひから 直ぐ食べられる筈なんですが・・・見た目も、生と水煮では違うと思うけれど、、。まさか、缶詰にする前に 加熱した筈は無ひし。。そこがちょっと引っ掛りました。が、男性だし、料理なんかせんし シンクに皿は溜まりっ放しだし。その辺が いい加減なのは男性らしくて良いのかも。
久し振りの、好みのホラーで楽しめました。ゴッツアンです。
それと、主人公が自分の記憶も封印して缶詰にした部分が、あたし自身も、、有りさうで・・何か非常に怖かった。誰でも、有るかもしれ無ひ さういう封印って。。怖かった。
No.3  陣家  評価:--点  ■2011-10-27 19:51  ID:1fwNzkM.QkM
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Physさん、いつもながらの丁寧な感想ありがとうございます。
本当に痛み入ります。

怖がらせてしまってごめんなさい。安眠できましたでしょうか。

実は今現在書きかけの作品がなかなか遅々として進まない為もあって、ちょっと気分転換にショートな物をと思い書いてみたのですが、さすがに練り込み不足でしたね。表記の不統一もしかりです。
そして誤字脱字はゆっくりさん(ソフトーク)の朗読でやってみたのが手抜き過ぎだったようです。

ノリとしては、怪談小話的なこぢんまりと簡潔なものを目指したんですが、やっぱり表現力不足をひしひしと感じるばかりです。
プロットももう少し捻ったほうがよかったですね。ストーリーテリング力の無さですね。

そんな、生意気とか……
自分、基本ドMなんで、遠慮会釈ないご意見をこれからもお願いしたいです。
ありがとうございました。



zooeyさん、今回も早速のご感想書き込みありがとうございます。

プロットはありきたりとはいえ、もう少し見せ方を工夫すればもうちょっとましな物になったかなあと言う気はしています。
定石的に考えれば、おそらく妻の失踪の記述を先に持ってきたのが最大のミスだったと思われます。
ああ、書き直してえ…… 

イメージ的にはホラー半分、ユーモア半分ぐらいのとんでも展開を狙おうとしたのですが、ちょっと軽さが足りなくて中途半端な感じになってしまいましたね。読み手が人物の心情に踏み込んでしまう前にたたみ掛けるような展開で終わらせるつもりだったんですが、スピード感が足りなかったようです。

それでも、今回の最大の目的であった、一時間以内に書き切るということは達成できました。
自分、推敲し出すとエンドレスになるクセがあって、今作はかなり勢い任せでやってしまいました。
多分、前作のナッちゃんを書くのに二ヶ月ぐらいかかっちゃったので、そのリハビリみたいな感じでした。

まあ、それにしても平々凡々としたお話でしたね。
でもたまにはいいですよね。普通な感じも。
普通最高!

すいません、ヘタレのくせに…… ありがとうございました。
No.2  zooey  評価:30点  ■2011-10-27 00:13  ID:1SHiiT1PETY
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こんばんは、読ませていただきました。
プロットはかなり面白かったです。
ショートホラーとして映像化したら、すごくいい作品になるんだろうなと思いました。

ただ、それは映像化したらという話で、読み物としてはもう少し掘り下げてほしかったかなと思います。

缶詰が出てきた段階で、オチが読めてしまったので、
仕掛けが分かってる手品を見てるような気分になってしまいました。
缶詰そのものが目に見える「映像」であれば、それでも恐怖は伝わる気がしますが。
オチを隠したほうが良いのではなく、オチが分かったとしても「え? まさか―まさかー、違うよね……」みたいな恐怖を感じられる作りにしたほうが良いのかなと。

そのためには、やはりプロットだけではなくて人間そのものの恐怖というか、そういうものをにじませなければ、難しい気がします。
妻をミンチにする異常性、それを忘れてしまえる生に対する鈍感さ、そういうものがもっとにじみ出たら、すごく良い作品になったように思います。

ラストの「ただいま」はとても良かったです。
No.1  Phys  評価:30点  ■2011-10-27 20:19  ID:IkWWqGHDZ4A
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追記

ま、また陣家さんの名前間違ってました……。辞書登録したはずなのに……。
ソフトークの存在を今まで知らなかったのですが、とても面白いソフトですね。
これに小説を読ませて校正するのは、なんだか楽しそう、と思いました。

ストーリーテリング力のなさ、なんてご自身の実力を卑下なさらないで下さい。
一時間でこれだけ完成された文章を書ける方がそれを言うのは、なんだか嫌味
みたいに聞こえてしまいますよ。
(それでも陣家さんの美意識が、理想とのずれを許さないのかもしれませんが)

書きものって孤独な作業なので、筆が進まないときはすごく辛いんですよね。
諦めずに、ぜひ新作を書きあげて下さいませ。みなさん楽しみに待っていると
思います。


拝読しました。

こ、こわい……。掌編で良かったと思いました。この筆致でじわじわと恐怖を
煽られたら、夢にも出てきそうです。明日は早いので今日は寝かせて下さい。

母の七回忌法要、という冒頭は奥様のことを思い出すための引き金として機能
しているのですね。以前立ち読みした本で「冒頭には細心の注意を払うこと。
作者はそこに結末への鍵を隠している」と書いてあったことを思い出しました。

描写が(私にとっては悪い意味で)映像的で、グロテスクでした。それでも、
気持ち悪かったり、不快な印象を与えないのは、主人公さんの語り口が冷静で
淡々としているためだと感じました。それがサスペンスを引き立てています。

もし主人公さんの異常性だったり、なぜ奥様を殺したのかという背景の部分が
より丁寧に書かれていたら、私はこのお話が好きにはなれなかったかもしれま
せん。私はフィクションを介してまで、他人を傷つける人の心理を理解したい
とは思わなかったりします。殺人鬼は怪物として描かれて欲しいんですね。
(これは私の趣味の問題ですので、本当にただの感想です……)

最後に。一点、私が気になったところをお耳に入れておきたいです。

>まったく記憶にないがひょっとすると食えるかも知れない
>意外に上質の整形肉かなにかだったのかもしれない
>ばかな、偶然なのか?
>軟骨? バカな…… 
「かもしれない」「ばか」といった用語について、漢字やカナ表記の不統一が
少し気になってしまいました。短編くらいの長さなら気付かないのかもしれま
せんが、掌編だとこういった細かい部分が目についてしまうのだと思います。
陣家さんが意図してこう変換しているとすれば、的外れな指摘です。一読者の
単なる印象ですので、聞き流して下さいませ。

すみません。失礼を承知で、生意気な感想を書かせて頂きました。陣家さんが
稚作に丁寧に感想を下さるので、だんだん遠慮がなくなっているのかもしれま
せん。(かちん、ときた時にはきちんと怒ってください!)

また、読ませてください。
総レス数 16  合計 280

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