開演間近の葬送記 |
息子を体育座りにしてロッカーに押し込む。鍵も勿論かけた。 早速、中からがんがんと抗議のキックをかましてくる。うるさい。 ロッカーについているつまみを回してやった。 つまみは二つついていて、一つは鍵が開く方。 当然、鍵を開けるつもりはない。 これで中身は数分後に蒸し焼きになっていることだろう。 ふと、後ろから声が聞こえた。「面白いことするのね」 振り向くと、見たことのない中年女性が笑っていた。 確かにさんざん息子に悩まされた私にとっては面白くも感じれるが、何故この女が面白がれるのか。 勝手に共感されるのはなんだか気に入らない。 女は暫く経ってもその下衆な笑いを止めなかった。むしろ声のボリュームが大きくなっていく。 次第には床下に転げて身を捻じりながら笑いだした。 無視して跨ごうとすると股間に拳を直撃された。 二つとも袋は無事だ。だが、それは私が世界びっくり人間よろしく三つ所持していたからなのだ。 普通に戻してくれてありがとうよと爆笑女を蹴った。 顔を蹴られて鼻血を出しても笑っていた女に透明の液体がどこからともなくかけられた。 途端に女は引きつった表情になり悶え苦しんだ。 「塩酸だよ」 液体をかけたのはあろうことかロッカーに押し込めたはずの息子だった。 この子、どうやって抜け出したのか。それにどこから塩酸を取り出したのか。 まさかこの子はイリュージョニストの器を持っているのか。 思うやいなや、改札口から出てきたプラスチックカードを手首のスナップをきかして息子を狙って投げた。 本当に息子がイリュージョニストになれるなら喰らうはずがない。 だけど期待は大きく外れた。 カードが息子の額に大きく食い込み、大量の血が溢れ出てきた。そして彼は絶命した。 金を産む息子なんて所詮夢のまた夢か。 とっくに動かなくなっていた爆笑女をこんどこそ問題なく跨いだ時、首筋にするどい痛みが走った。 「母さんが見たのは幻だよ」 やはり息子はイリュージョニストだった。いつの間にか背後にいる。 首の周囲が徐々に細められていく。そのスピードは息子である彼の最後の優しさなのか残忍さなのか……。 ただ、今までしてきた女装が息子にばれなかっただけでも良しとしようと、首が千切れるまで微笑んだ。 (おしまい) |
瞬光
2011年08月26日(金) 23時57分17秒 公開 ■この作品の著作権は瞬光さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.6 FK 評価:10点 ■2011-09-13 17:06 ID:TDUglOh.3FM | |||||
読ませていただきました。 「悪夢」ということだと思いました。小生も悪夢はしょっちゅう見ますが、大部分は小説にはなりません。 小説にするなら、もう少し整理して、読者が筋道ををたどれるように書くべきだと存じます。 以上、思いつくままに。 |
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No.5 片桐秀和 評価:20点 ■2011-09-05 18:37 ID:n6zPrmhGsPg | |||||
読ませていただきました。 不思議な面白さがある作品でした。なかなかに奇妙ですね。 ただ、不条理な展開が繰り返されるという意味では魅力もあったのですが、文章的な面白さがいまいちたりないと感じたため、インパクトとしては弱いかなと。 川上弘美さんの作品は読んだことがありませんが、この作品からなんとなく想像が出来る気もします。少し興味が出ました。 簡単ですが、僕からはこんなところです。 |
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No.4 瞬光 評価:0点 ■2011-08-31 22:46 ID:MPFU0eXDYm6 | |||||
皆様こげな作文に感想ありがとうございます。 >時雨樹舘さん 端的でこの話の良い(?)部分をかいつまんで褒めて頂きありがとうございます。 詳細な描写ができないため、意図せずとも早くなってしまうんですねー。 でーすーが、30点という自分にとっては高得点、ありがたく頂きます。 > 山田さんさん 川上弘美さんの作品を結構読まれているんですね。名前を出しておきながらですが、実は「神様」しか読んだことはありません。 一冊しか読んでいないのに川上さんの名前を出した不届き者です。 確かに、異なるものが普通にいて飄々と物語が進んでいく感じでした。 筒井康隆さんという有名な方を例に挙げて頂いて恐縮です。 不思議+ホラー=不思議ホラー と、筆力がある人なら可能かもしれないところを 不思議(を狙ったもの)+ホラー(を狙ったもの)=ネットデブリ? になってしまったようですね。 でもこのままネット上に漂わせておきます。 あ、「失礼」では全くないですよ。 > toriさん わざわざご挨拶、どーもです。 こちらこそはじめましてー&宜しくお願いします。 切り口を褒めて頂いてありがとうございます。 (再度読み)…………はい、改めて見るとホラーではないですね。 スプラッター要素も少ないし……いや、一つの要素でも深く書いていけば恐怖さが出るのかもしれない。 そう思わせてくれた感想でした。 あざといようですが、御三方、感想ありがとうございました。 |
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No.3 tori 評価:20点 ■2011-08-28 22:06 ID:nyv4PhU4HKM | |||||
はじめまして、toriと申します。 これからもよろしくお願いします。 では、早速ですが感想です。 川上弘美さんの作品を未読な私ですので、雰囲気が似ているのか似ていないのかは判断できないのですが、不思議な物語にホラーを混ぜあわせた、という切り口はいいなあー、と思います。 それで、たしかに今作を読み終えると、不思議な読後感がしました。読んでる最中もふわふわしていました。それにホラーの要素があるかというと、ちょっと感じ取れませんでした。不思議の勢いにのまれて、怖さが減退している感触です。 恐怖とは・・・! と、掘り下げる必要があるのかは人にもよりますし、何ともいえないのですが、単純に人が死ぬことや、奇形を描いても、それはおそらく恐怖を呼び起こさないのかな、と思いました。 こう例えるのが適当ではないかもしれませんが、お盆にお墓参りをしたときの墓地とキャンプとかで肝試ししたときにいく墓地とでは、怖さも感じるところも変わると思います。怖い・・・! という状況が描写されていたら、何かちがった読後感になったかもしれません。 と、何だか支離滅裂ですが、私からは以上です。 これからも頑張ってください! |
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No.2 山田さん 評価:20点 ■2011-08-28 20:37 ID:zeNKjHaeezg | |||||
拝読しました。 川上弘美さんの作品を全て読んでいるわけではないですが、僕の知っている彼女の作品って、もっと日常に密着していたように思います。 市井の人々が普通の暮らしをしている中に、普通とは異なるものが、それこそ「普通」に登場してくる。 そして淡々と、あるいは飄々と物語が進行していく、そんな印象を持っています。 そんな僕の印象からすれば、当作品は川上弘美さんの描く不思議な世界からは乖離されているように感じられました。 むしろテンポが早く起伏の激しい内容は正反対な印象さえ受けました。 たとえるなら筒井康隆の作品の方に類似性が多いんじゃないかなぁ、と思います。 かといって、だから「悪い」ということではないです。 このテンポの良さは悪くないと思いますし、「女装が息子にばれなかっただけでも良しとしよう」なんてのは、結構フックが効いている文章のようにも思います。 ただ、もう少しはみ出すようなパワーというか、はちゃめちゃさが欲しかったかなぁ。 なんというか、ちょっとこじんまりと纏まっちゃっているなぁ、という印象です。 どうせなら、もっとグロくするとか、エロくするとか、思い切ってやっちゃっても良かったように思いました。 あとは「不思議な物語にホラーを混ぜあわせてみたかった」とありますが、僕が一番強く感じたのは「不思議」でもなく「ホラー」でもなく「スラップスティック」的な要素でした。 失礼しました。 |
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No.1 時雨樹舘 評価:30点 ■2011-08-28 17:47 ID:ZHaKzhz4Udw | |||||
展開が良い意味で早いです。 ラストが怖いのに綺麗です。 |
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総レス数 6 合計 100点 |
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