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RSSフィード [86] 即興三語小説 ―台風直撃の夜の三語です
   
日時: 2012/09/16 22:55
名前: RYO ID:FxFRVhT2

今週は主催者の即興はなしです。
たまにはいいよね。
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「猿」「真っ白」「りんご」
▲縛り: なし
▲任意お題:なし

▲投稿締切:9/23(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

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Re: 即興三語小説 ―台風直撃の夜の三語です ( No.3 )
   
日時: 2012/09/18 01:44
名前: 1 ID:9d9L33o2
参照: com

 今まで僕には彼女なんて出来た事はなかった。なんてったって、僕の顔が不細工だからである。大きな鼻が上を向いていて鼻くそは丸見えであるし、分厚い唇は縦に皺が深く刻まれ、萎んだ花に見える。あ、いや、もう顔の話はやめよう。とにかく僕は自他共に認める程の不細工。不細工であるから、僕は彼女が出来る事はおろか、女性と話す事も無ければ、無論、話をしようとも思えなかった。
 異性との会話時は自然と声が震え、汗が絶え間なく脇から湧き出る。それに、目が合った時なぞは、ニキビで腫れた赤い顔がさらに色を増し、風呂の熱気が沸き上がるように熱くなる。とにもかくにも、僕には女と言う生物が遥か遠くの存在であり、僕が視界に入れてはいけぬ程に崇高な存在であると思われた。
 だが、今の僕には彼女がいる。優しく、おしとやかで、唇が分厚く、鼻が上を向いている彼女である。一言で言うならば、彼女は猿に似ている。
 彼女は僕と同じコンビニでバイトをしていた。僕は猿に似ている彼女から自分と同類の気配を感じとった。彼女は女でないと思われた。女がこんなに猿に似ている筈が無く、女が甚だ苦手である僕でも、気兼ね無く猿と会話でき、日々を重ねるうち、僕は猿に似た彼女に対し徐々に恋愛感情を持ちつつあった。
 不思議なのは、女が苦手な僕がなぜ、猿に似た女に対し恋愛感情を持ったのかである。僕にはそれが未だわからない。
 今日は自宅に彼女が来る。初めてのお家デートであったが、僕は緊張もなにもせず、部屋を片付ける事も無ければ、甘い芳香剤も置きやしなかった。
 ソファーに腰かけ、テレビをぼんやり見ていると、不意に玄関のベルが鳴った。僕は彼女が来たと思い、
 「入っていいよー」
 と言った。ガチャリと音がし、
 「おじゃましまーす」
 と彼女の声が聞こえて、玄関とリビングを繋ぐ廊下の薄ぼんやりした中に、真っ白な服を着た彼女を認めた。
 彼女は僕の腰かけるソファーの前まで、真っ白なワンピースの裾を、はたはたと揺らしながら歩いてきた。美しい。僕は彼女に対して初めて思った。
 急に、彼女は自然な動作で対面するように僕の膝の上に座った。もはや、テレビも見えない。
 「会いたかったー」
 そう猿に似た顔で彼女は言うと、抱きついてきて顔を僕の右肩に乗せた。僕は勃起した。
 「積極的だな」
 僕は言った。
 「ちょっと頑張ったんだー」
 彼女は僕の耳元で言った。そうして僕の頬にキスをした。
 耐えかねた。今日の彼女は真っ白なワンピースで美しい。僕は彼女の唇に少し触れるくらいのキスをした。
 唇を離すと、今度は彼女がキスをしてきた。吸い付くようなキスであった。いよいよ抑えの効かなくなった僕らは、絶え間なくキスをし続けた。舌を絡め、唾液を混ぜ合い、キスは永遠に続くと思われた。
 キスをしながら、考えた。僕はきっと彼女を今日初めて女として見たと。思えば、顔は猿でも、装飾が女なのだ。彼女は真っ白なワンピースにより、女になったのだ。
 僕らは夕暮れまでキスを続けた。夕日が猿の顔を染める。僕はそれを見つめながら
 「帰らなくていいの?」
 と訪ねた。
 「そろそろ帰らなくちゃ、今日は楽しかったよ」
 「そうかー。俺もだよ」
 「あたしのファーストキス取られちゃった」
 「俺もファーストキス取られちゃったよ」
 「あたし、不細工だからファーストキスは永遠に無いと思ってた」
 「俺も不細工だから無いと思ってた」
 「ふふ、あたし達って似てると思わない?顔も似てるし!」
 「あぁ、似てる。お前が猿に似てなかったらきっと付き合ってないよ」
 「ほんとにー!?猿に似ててよかったー。」
 彼女はそう言うと、僕にまたキスをした。
 「お腹減ってない?リンゴしかないけど、食べる?」
 僕はそう聞いた。彼女は「減った」と答えたので、僕は台所に行き、リンゴを手に取ると、ソファーに座る彼女に向かって放った。彼女はリンゴをキャッチすると、ガシュリ、と音をたてて、リンゴにかじりついた。猿に似ていた。彼女はかじったリンゴを僕の方に放った。受け取ったリンゴに僕はかじりついた。僕は猿に似ていた。甘酸っぱい味が口に広がる。僕はまた彼女にリンゴを放った。彼女はリンゴをキャッチし、微笑しながら言った。
 「こんなんだから、あたし達は付き合えたんだね」
 「きっと、俺らはリンゴを二人で分けあえる知的な猿なんだよ」
 僕は冗談混じりに言った。
 「ずっとリンゴを分けあえる中が続けばいいな」
 かじられた後のあるリンゴを見つめながら、彼女は静かに言った。

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