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RSSフィード [78] 即興三語小説 ―連休なんて幻想とです―
   
日時: 2012/07/16 22:25
名前: RYO ID:FxFRVhT2

 銀色に光り輝くカビの生えた羊羹を前に洋子は途方にくれていた。
 分かってはいたのよ、わかっては。そりゃこの季節、ほったらかしていたらどうなるかなんて。でもね、これは虎屋なのよ。虎屋の羊羹なのよ。このまま、処分なんて、どこかノラ猫でもカラスでの食べきてくれないかしら? 庭先にでも置いていたら、そのうちなくなるかしら?
 ふと、洋子の頭の中にノラ猫とカラスが羊羹を食べ争うさまが浮かぶ。
「そう言えば佐藤さんのところタマちゃんは、ノラ猫だかカラスだかにいつも餌を盗み食いされるって、多恵ちゃんが言ってたわね」
 多恵ちゃんというのは、洋子の隣のうちの七歳の女の子だ。以前、「タマがかわいそうだよ」と泣きながら洋子に訴えてきた。佐藤さんの家は多恵ちゃんの家の隣になるが、タマという名前は勝手に洋子がそう付けただけで、本当の名前はベッカムというらしかった。
「ノラ猫もノラ猫で、カラスもカラスで堂々と盗み食いを働いておったって、この辺じゃよくあることさね」
 そう多恵ちゃんをなだめたのは、ご隠居の源次郎じいさんで、近所の子どもに向かって、しょっちゅう戦時中の話をいって聞かせていた。
「とりあえず、ノラ猫とカラスに不自由はしないみたいだし、そのへんに放っておけば無駄にはならないわよね」
 洋子はそう結論付けて、庭先に銀色に光り輝く羊羹を放置することにした。このあとの恐怖も知らないで--



そんなこんなで、主催者の15分三語でした。
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「銀色」「カビの生えた羊羹」「カラスもカラスで堂々と盗み食いを働いておった。」
▲縛り: なし
▲任意お題:なし

▲投稿締切:7/22(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

メンテ

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Re: 即興三語小説 ―連休なんて幻想とです― ( No.1 )
   
日時: 2012/07/17 03:24
名前: 水樹 ID:zH2lCF5Q

 お題は、「銀色」「カビの生えた羊羹」「カラスもカラスで堂々と盗み食いを働いておった」です。


貞義ちゃん


 食後の日課、縁側で羊羹を摘まみ、お茶を楽しむ老婆の前に、ばさりと小さなカラスが落ちてきた。雀と思うほど黒光りの小さいカラス、よたよたと歩くと血の跡がついていた。
「あらあら、あなたどうしたの? じっとしてね、暴れないでね」
 カラスに喰い込んだ銀色の針金を、爪切りでパチリパチリと解いていく、うっかり真ん中の足指を切り落とすと、小さなカラスは絶叫し老婆の頬に嘴を刺し、穴を空け、すっぽりと口に入っていった。
 人の気配を察し逃げ込んだとも言える。
「よう、ここにちっこいカラス落ちなかったかい?」
 唐突に庭に男が現れる、パンツ一丁の半裸の男が老婆に尋ねた。近所に迷惑な情緒不安定な男。面倒だからと老婆は寝た振りを決める。
「いてて、あん畜生、おいらの左キ○玉食いちぎりやがった」
 男の縞パンは血で滲んでいた。入れ歯を立てず、れろれろと舌で口の中でカラスの傷を舐めまわす。カラスの傷は思った程軽く、自分の出血の方が多く喉に流れ込んで行く。
「この間は左目ん玉で、今日は左○ン玉、右の玉が無くなって、もうたまんねえよ、親父だけじゃなく、カラスもカラスで堂々と盗み食いを働いておったんよ、ああ、いてていてて、羊羹いただくよん」
 老婆の羊羹を平らげ、ぶつくさと立ち去る男、老婆は小さいカラスの傷が治り、飛び立つまで飼ってみるのも面白いなと、飲み込むのは止めにした。
 小さいカラスには貞義と名前を付けた。既に他界した夫の名を付けた。
 貞義ちゃんは老婆の口の中が大好き、腐った鰯臭い老婆の涎が大好物、お構いなしに糞尿も老婆の口内に排泄する。
 楽しい日々もつかのま、突然老婆は息絶える。
 涎の出ない老婆の口に貞義ちゃんは直ぐに興味を失った。
 そこは畜生、貞義ちゃんは老婆を啄み、口内から左眼孔まで貫通し、腹を満たすとカアと一鳴きで飛び去った。
 テーブルの上には、カビの生えた羊羹がいつまでもありましたとさ。



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