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RSSフィード [46] 即興三語小説 ―第112回― 第二回の傑作選無事終了しました。
   
日時: 2011/08/21 22:33
名前: RYO ID:LObdOpD2

第二回即興三語小説傑作選、無事終了しました。
長い期間にわたり、協力いただきました皆様ありがとうございました。
それでも三語はマイペースに続きます。
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「眼帯」「震える声」「そこを右に」
▲縛り: なし
▲任意お題:なし

▲投稿締切:8/28(日)23:59まで
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

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とうめいなタマゴ ( No.1 )
   
日時: 2011/08/29 02:07
名前: とりさと ID:3S9vtfaA



 彼女は、ふとんの中が好きだった。
 同い年で、家が隣だった彼女は、かわいらしい女の子だった。白い、透けてしまうんではないかという肌と、淡い瞳が印象的な彼女は、ふとんにくるまるととても落ちついたらしい。寒い冬はもちろんのこと、暑い夏でも薄手の毛布をくるんと巻いてフードにしてしまう。狭いところが好き。暗いところは落ちつく。縛られるとなんだか安心する。ふとんはそれを全て満たしているらしく、顔だけ出して寝そべっている彼女は、とても穏やかで満ち足りていた。
 逆に、ふとんの中にいない彼女はいつもおどおどしていた。俯いて、人と視線を合わせないで、ぼそぼそと喋っていた。中学の教室で、彼女はだいだい一人で勝手に委縮していあ。幼馴染の正輝とすら、外ではろくに話すことができなかった。
 だから、正輝が真っ先に思い出す彼女は、みのむしみたいになって幸せそうに笑っている顔だった。



 そんな彼女でも、子供の時はちょっと活発なところもあった。
 夜中、しめし合わせてこっそり家を抜け出る。小学生だけで、深夜のコンビニに買い物をしにいく。それだけで、でも、ドキドキワクワク出来た。
 ――そこを右に!
 近くのコンビニに行くだけなのに、彼女はなんだか誇らしげだった。ふとんの中ではゆっくりと静かに喋る彼女が、その時だけはバスタオルを羽織るだけにとどめて声を弾ませ、満面の笑みを浮かべていた。
 正輝も、それに嬉しくなったのをよく覚えている。



 そんな彼女は、高校に入ると当たり前のように不登校になった。
 中学は何とか通っていたのに、高校に入ったとたんダメになった。その線引きは、わからない。
 彼女の弱さが、ひどくいらだたしい時もあった。無理やりでもひっぱりだすのが正解だったのかも知れない。ふとんをはぎとり、制服に着替えさせ、机に座らせるのが正しかったのだろう。
 だけれども、正輝には出来なかった。
 彼女の脆弱さが、無性に愛おしかった。いっそ壊してしまったほうが良いのはわかっていた。けれども、正輝はその脆弱さが壊れることこそ恐ろしかった。そう。正輝は、どうせならば、脆弱で透明な彼女を、ずっと鑑賞していたかった。
 結局、彼女が高校を卒業するのは正輝より一年ほど遅くなった。



 ここに来ないで、といわれた時には、彼女はもうふとんにくるまることはしていなかった。
 うっすらと化粧をした顔に、わずかに申し訳なさそうな笑みを浮かべ
 ――彼が、嫌がるの。
 それを当たり前のこととして受け入れたのを、間違っていたとは思えない。当時彼女と付き合っていた男は、正輝よりも力強くて、前に進んでいた。
 自分が会うのが彼女の為にはならないことぐらい、とっくに気がついていた。
 だから、わざと避けるようにして過ごしていたのが悪かったとは思っていない。
 二ヶ月後、久しぶりに目にした彼女は、白い医療用の眼帯をして、ほほにはガーゼを当てていた。
 どうしたのか、と問い詰めてもはぐらかすばかりで、要領を得ない。方々で聞きまわり、彼女の友人から、付き合っている男から暴行を受けていると聞かされて初めてそのことを知った。
 警察に言おうと彼女の友人と相談したが
 ――やめて。
 それに気が付いた彼女が、それを嫌がった。
 聞いたこともないくらいに、強い拒絶だった。
 このままでも、確実によくなることはない。そんなことは、彼女自身だって承知のはずだった。
 それでも、彼女は他者の介入を頑なに拒んだ。
 彼女はまだふとんにくるまったままなのだと気がつかされた。結局彼女は脆弱なままで、なのにその透明さはとっくになくなっていた。
 ――それとも、正輝君はひっぱりだしてくれるの?
 震える声のそれに、頷く事が出来なかった。
 もし彼女が、かつてのように透明だったら、もしかした正輝はその手を取っていたかもしれない。
 けれども。
 何も答えない正輝に、彼女も何も言わずに去って行った。



 結局、彼女はあの男には捨てられた。それは随分とひどい終わりかただったそうだけれども、彼女に同情した人間は少なかった。被害者になって、周りからもさんざん忠告されて、それでも最後まで相手にしがみついていたのは彼女だったのだ。
 その後、親の勧めでお見合いをして結婚した彼女は、それなりに幸せそうだった。
 彼女の結婚式の帰り、慣れない道を歩いていた正輝、ふと分岐点にさしかかり、どちらだったかと一瞬だけ迷う。
「そこを右へ!」
 それは、彼女の声だった。
 もちろん幻聴だ。振り返っても彼女の姿など見えない。そもそも、それはふとんにくるまっていた頃の彼女の声だったのだ。
 たぶん、彼女のあの声を聞くことは、もう二度とないのだろう。彼女はその透明さも脆弱さも捨てて生きることを選択した。
 そんなことを思いながら、正輝は左に曲がって、帰路についた。

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むりやり一時間で切ったので、ちゃんと完成はしてないです……まあ、完結はしてるからいいやと。二千文字くらいです。

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