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RSSフィード [269] 即興三語小説 -「集落」「地元訛り」「秋の夜長」-締切10/11に延期しました
   
日時: 2015/10/04 21:56
名前: RYO ID:XXdbEMYQ

 なんとなく、夏の暑さがぶり返してきているような気がします。
 なかなか夏もしつこいですね。
 だから残暑っていうんですしょうけど。
 さて話は変わりますが、
 8、9、10月と3ヶ月連続で、全く別々の講師をするはめになって、
 やっと残り一つとなりましたとさ。
 シルバーウィーク中も資料作るとは思わなかったけど。
 ただいまラストスパート中……
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。
▲お題:「集落」「地元訛り」「秋の夜長」
▲任意お題:なし
▲表現文章テーマ:なし
▲縛り:なし
▲投稿締切:10/11(日)23:59まで 延期しました
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

メンテ

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Re: 即興三語小説 -「集落」「地元訛り」「秋の夜長」-締切10/11に延期しました ( No.1 )
   
日時: 2015/10/12 11:57
名前: 時雨ノ宮 蜉蝣丸 ID:CggQy9rM

「――そうしてシンデレラは、ガラスの靴を履いてお城へ行きました。王子様と結婚し、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
 絵本を閉じたタイミングで、タイマーが鳴いた。結が不思議そうな顔で「お終い?」
「ええ。お終い」
「シンデレラは、しあわせになったの?」
「ええ。幸せに、暮らしたの」
 私は小さな頭を撫で、絵本を置いてキッチンへと向かった。鍋の蓋を開けると、出汁のいい香りがふわり上った。茶碗蒸しは結と、私でないもう一人のリクエストだ。一つずつ取り出してお盆に乗せ、食卓へ運ぶ。結が駆け寄ってきて「ちゃわんむし!」とはしゃいだ。
「えび、ある?」
「あるわよー」
「茶碗蒸しか、久しぶりだな」
 背後から聞こえた声に、私はビクッと振り向いた。
「帰ってたんですか、先生」
「なんだその言い方は。ひどいなぁ……」頭をボリボリ掻きながら、先生は言った。結が「パパ!」と叫んで飛び込んでくるのを抱き留めて、小さく笑う。
「ああ、ただいま。結。楓――」
 私は「お帰りなさい、今日はお早いですね」と返した。三上和貴――先生は地元大学の教授で、民俗学の研究をしており、普段なら十時以降にならないと帰ってこない。いつもヨレヨレの(畳む時にはしっかりアイロンをかけている)シャツに黒いベスト姿で、鳥の巣みたいな頭に眼鏡をかけている。まだ三十代前半で、顔立ちだって悪くないのに……と、私は思っているが、本人はどこ吹く風だ。
「手は洗いましたか」
「もちろん。うがいもしたぞ」
「合格です、どうぞ」先生と向かい合う形で、私は着席した。右には結がいる。テーブルには茶碗蒸しの他に、温野菜、白身魚のポワレ、ネギと豆腐の味噌汁などが並んでいる。
「……蒸し物多くないか」
「デザートはプリンです」
「まじか」
 いただきますの声とともに、銘々が料理に手をつけた。早速、茶碗蒸しを食べた結から感想がきた。
「おいしい!」
「本当?」
 私は先生の方を見た。先生は木のスプーンで茶碗蒸しをすくい、口へ運び、軽く咀嚼してから飲み込んだ。「いかがですか」緊張の一瞬、先生の言葉は短いものだった。
「ん、美味い」
「やった!」
「出汁がいいな。俺の好きなやつだ」
「そりゃもちろんです」私はふふんと鼻を鳴らした。茶碗蒸しは得意料理なのだ、自慢しかけて、先生の呟きにピタリと声が出なくなった。

「舞のより美味い」

 ――『舞』。その名に思考が止まる。先生がしまった、というような顔をした。不器用な人だと知っているけれど。正直者であることも、だけど。
「……ありがとう、ございます。褒めてくださって」
 結の手前、私は無理やり押し流すことにした。先生もすぐに乗っかってきて、「うむ。美味し美味し」と茶碗蒸しをかき込んでいく。きっと、もう味なんてしてないだろう。私だって、ポワレを口に入れたけど、味なんて初めから無かったみたいで。今日のソース、頑張ったのにな。
 先生。
 舞って、『舞子』でしょ。わかってますよ。
 昔から取り繕うの、苦手ですもんね。
「……かえちゃん? どうしたの?」
 結が不思議そうに首を傾げた。ごめんね。なんでもないの。頭を撫でると、結は茶碗蒸しを示して、
「かえちゃん。これ、ぎんなん、はいってる」
「えっ……。あぁ、本当だ。ごめんごめん」
 結は銀杏が苦手だったわね。間違えちゃった。代わりにおっきなエビさんが入ってるから、許してね。
「ママのには、はいってなかったよ」
 わかってる。反射的に返しかけて、なんとか踏みとどまった。頷く、声を出したら当たってしまいそうだったから。
 先生は気まずそうに箸を動かしている。地雷を当てたのがわかってる顔だ。わかってても踏んじゃう人だ、先生は。
 私は無理に笑って言った。ポワレのソース、どうです? バジルに胡椒が効いてるでしょ。そこのニンジン、今朝に下の奥さんからもらったんですよ。そういえばこの辺って地元訛りがきつい人多いですね。未だにリスニングできなくて困ってます。麻痺した味覚を誤魔化すように、喋り続けた。
 先生の脳裏に、あの人が映らないように。
 必死で。




 先生は昔、私の先生だった。
 私がまだ高校生の頃、先生は私の高校で歴史を教えていた。その頃のシャツはヨレてなくて、髪形もきちんとセットされていた。少し呑気で、笑顔が似合って、授業を脱線するのが好きで、可愛い一人娘のことを生徒に冷やかされて照れている、どこにでもいそうな先生だった。
 私は先生の一教え子に過ぎなかった。
 毎回、先生の授業を受けて、いじられる先生を眺めて、友人達と一緒に笑っているだけの。いや、あくまでそれは先生の視点でだろう。本当の私は少し違う。
 先生を目に留めるたび、胸の鼓動を鎮めるのに苦労していた。染まりかける頬を、友人に悟られないようにしていた。
 恋――
 私は先生に、決して届かないはずの恋心を抱いていた。事実、当時はただの横恋慕だった。先生の家族のことを聞くと少し心が痛んだり、嫉妬に似た感情が湧くこともあったが、それを表出させるような真似はしなかった。手が届かないことも、先生が困ることもわかっていたから。
 卒業すれば、いずれ忘れていく、青い熱。
 そう、信じていた。恐らくは、先生も。
 ――あんなことに、なるまでは。

 先生の奥さんが事故に遭ったのは、卒業式の三ヶ月ほど前のことだった。
 朝、ゴミ出しへ向かったさんは、凍結した路面でスリップした車に撥ねられ、そのまま帰らぬ人となってしまった。先生は連日、卒業式の準備に追われていて、奥さんがゴミ出しをするより早くに家を出ていた。
 舞子という名の、話好きで、足のほっそりした美しい奥さんだった。一度、先生の忘れ物を届けに学校に来ていたのを見かけたことがある。
 事故当時、舞子さんの履いていた靴が片方、凄く遠くに飛ばされていて、その靴だけが衝撃に巻き込まれず綺麗なままだったという。
 一週間後、先生は学校に復帰したが、以前のように笑う人ではなくなっていた。いつもどこか虚空を見ていて、生徒の声にも生返事をするようになっていた。
 そんなだから、次第に一人、二人と生徒からも同僚の先生からも距離を置かれていき、卒業式直前には先生は完全に校内で孤立した存在となっていた。授業以外では誰とも口を利かない、誰も話しかけなくなっていた。
 ――だが、例外が一人いた。
 私だ。
 私は先生に、挨拶から勉強まで、さまざまなことで話しかけた。復帰前より盛んに。話しかけて、笑って、以前の先生が皆にしていたように、先生と接し続けた。
 先生の目が、少しずつ私に向いてくるのが嬉しかった。少しずつ、私の話に応じてくれるようになるのが。笑ったり、照れたりしてくれるのが。嬉しかった。

『先生のことが好きです。私と、付き合ってください』
 卒業式のあと、私は先生に告白した。確信はしていなかったが、フラれる気もしていなかった。
 大事な奥さんを失って、残された靴を片手に、世界の終わりを待っていた先生。
 届かないと信じていた先生に、私は手を伸ばしていた。
『……ああ、いいよ――』
 頷く先生の目が、どんな色をしていたのか。
 知りたくなくて私は、感情をもみ消すように先生にキスをした。

 先生が高校教師を辞めて、田舎の大学で教鞭を執り出したのは、それからすぐのことだった。
 学生でなくなった私が、先生と先生の娘の結と暮らし始めたのも、その頃だった。




「結はもう寝たのか」
 ベランダでぼんやりしていた私に、先生が問うてきた。湯気の立つマグカップを二つ持っている。おそろいで買った、青と赤のカップ。特別なものじゃない、ホームセンターの量産品。
 赤い方を渡されて、私は小さく「ありがとうございます」と呟いた。
「おまえ、角砂糖二つだったよな」
「ええ。合ってます」
 並んでコーヒーを啜る。しばらく私達は無言だった。秋の夜長に相応しい虫の音が、沈黙を取り持ってくれているようだった。
「あの」「あのさ」
 同時に声を上げて、私達はまた黙ってしまった。「……お先にどうぞ」「どうも」
「……悪かった」
 短く、先生が謝罪した。
「……何にですか」
「舞のこと。そんなつもりじゃなかったのに」
 そんなつもり――胸のあたりで、ガラスの割れるような音がした。
「どんなつもりですか、それ」
「持ち出す必要なんて無かった。迂闊だった」
「意識しなくちゃいけないほど、奥さんのこと考えてらしたんですか」
「違う」即答する先生に、私は目を向けなかった。ガラスがまた割れた。

「違うよ。楓」
「わかってます」
「俺が悪かった。おまえを傷つけて」
「わかってます。言われなくたって」
 無意識にカップを握りしめていた。やけに体が寒い。山麓の集落は夕暮れが早く、その分夜の気温低下も早い。今夜はどうだったか、思い出せない。きっと一桁に違いない。ああ、結の布団を冬物に変えるのを忘れていた。
「……わかってるんです。わかってるのに、……」

「先生」
 私が呼ぶと先生は、「なんだ」と返事をした。
「下品なこと、訊いてもいいですか」
「……なんだ」
「舞子さんと私と、どっちのが好きですか」
 ――本当に下品な問いかけだ、と自分で笑ってしまいそうだった。ひどい。これはひどい。先生を不器用って言ってるけど、これじゃどっこいどっこいだ。
「……今さら何を」
「答えてください」
 今さら。今さらだ。酷い。非道い。
「……」
 考え込む先生に、私は無機質に言葉を吐き出した。
「最近、急に心配になることが増えたんです。先生が教授になって、帰るのが遅くなって。私と結だけの晩御飯の日が増えて。結が私の作った御飯を食べるたびに、心配になるんです。『ママのと違う』って言われやしないかって。今日だってそう。舞子さんの名前を先生がこぼすたびに。何かしらのことをすると必ず、『舞子さんのと違うって言われたらどうしよう』って。料理も、洗濯も、掃除も、結にお話する時も、先生に抱きしめられてる時も、キスしてる時も。全部――」
 最初は、少しナーバスなだけだと言い聞かせていた。先生の隣に来て落ち着いたから、今まで気にしてなかったところが目立ってきたってだけだと。
 だが、いつまで経っても不安は消えず、ガラスのような膜となって、心臓を取り囲むようになった。
「先生も結も、そんなことないって。全部私の独りよがりな妄想だって。頑張ったけど。でも」
 些細なことで砕ける。脆弱な膜。弱い癖に、一度刺さると簡単に抜けない。
「ねぇ、先生」

「先生はまだ、舞子さんのことが好きでしょう?
 時々、私の前ででさえ、呼んでしまうくらいに」

 あの事故の日残された、奥さんの靴を持ったまま。
 永遠に戻らないもう片方の靴の持ち主を、ずっとずっと心に留めているんですよね。
 それは絶対に覆らない理と事実で。
 私がどんなに言葉や態度を尽くしても、ひっくり返りはしないのですよね。だって、
「先生の横には今も、奥さんがいるのでしょう」
 私は、シンデレラじゃない。
 十二時を過ぎて、ガラスの靴を手に項垂れる王子様に声をかけた、一人の狡猾な女だ。
 両方そろった靴を履いた、ただの。

「楓」
 先生が、私を呼んだ。「なんです」目を向けようとして初めて、自分が泣いていることに気づいた。
「言い訳はしないよ、楓」
「ええ」
「俺は、確かに今も舞を思い出すことがある。泣きそうになることも。けれどそれは、舞が愛しいからじゃない」
「だったら、なんです」
 語尾が震えた。冷え切った頬に柔らかいものが触れた、先生の指だった。
「おまえと、結と。三人の日々が幸せで、温かくて、満ち足りているからさ。舞のいた時間が壊れ去ったあの日から、俺は死んだも同然だった。結も生徒も同僚も、みんなどうでもいい気になっていた。それを繋ぎ止めてくれたのが楓、おまえだ。おまえが俺を、ここに縫い止めて、無くしたと思っていた温かな日々を取り戻させてくれたんだ」
 ああ、先生。違うわ。
 私、やっぱり最低な女なのよ。
 青い熱に侵された喉から嗚咽が漏れた。先生は私の手からマグカップを取り上げると、優しく言った。
「正直、舞といた間より幸せなんだ、今の方が。それが安心で、申し訳なくて。
 ――おまえを傷つけたこと、心から後悔してる」
 先生の腕が、私を抱き寄せる。

「愛してるよ、楓。俺の大事な人」

 囁きが、耳にかかる。
 心臓を覆うガラスが、粉々に散ってキラキラこぼれていった。
「先せ……」
「やめろ。『先生』は俺の名前じゃない。それに俺は、だいぶ前からお前の先生じゃないぞ」
「……和貴、さん」
 消え入りそうに呟くと、抱きしめる力が一層強くなった。
 長い間、呼べなかった。先生――和貴さんの名前は、舞子さんだけが呼べる特別な言葉の気がしていたから。
「楓」
「……はい」
「もう一つ、おまえに言えなかったことがあるんだが、いいか?」
「…………はい」
 和貴さんが、私から身を離す。いつになく真剣な両目で、私の前に跪き、左手をとって。

「楓。今までありがとう。今度は俺が、頑張るから。
 ――俺と、結婚してください」

「……はい」

 和貴さんの唇が、そっと私の薬指に当てられた。笑う顔が優しくて、不安になったことが哀しくて、私は和貴さんの唇に自分の唇を重ねた。
「……もっと、ロマンチックなのがよかったかな」
「いいえ」
「結が知ったら、驚くなぁ」
「ええ。……嫌がられないでしょうか」
「大丈夫だろ。今さらなことばかり、おまえは心配するな」
 また視界が滲んできた。
 和貴さんの手が私を撫でて、温かさに心が鳴いた。


 秋の夜。
 虫の音がさざめく、ベランダにて。
「隣に来たのがおまえで、よかった」

 十二時過ぎ。
 靴を残したシンデレラが、微笑んだような気がした。




 + + + + + + +

 期限オーバーですがせっかくなので。
 5400字くらいです。一、二日かかりました。
 突っ走ったので若干適当な部分がある気がします。すみません。わかってるのでグリグリ抉らないでくださいです……こんなハッピーな着地じゃなかったのになぁ。何でシンデレラにしたんだろう。
 目を通してくださった方に深く感謝致します。

メンテ

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