Re: 即興三語小説 ―異動しないかな― ( No.1 ) |
- 日時: 2015/02/27 18:01
- 名前: マルメガネ ID:pPep6a9E
残った餅はあとひとつ。 それを焼きながら、ラジオを聴いていると、今年最初の春一番がどこかの地方で吹き荒れたというニュースが飛び込んできた。 春はもうそこまで来ているのだろう。 辺りを見回してみても、梅がほころび咲きかけ、庭先にいつも繁茂してうっとおしくなる水仙が芽を出している。 冬の様相がまだ残っている時節といいながら、確実に季節が変わってゆくさまを目の当たりにするこのごろ。 部屋に据え置かれた火鉢もそう遠くないころに押入れの片隅にしまわれるに違いない。 残ったあとひとつの餅が膨らみ、香ばしい香りを立てて焼きあがった。 やけどしないように注意深くそれを取り上げ、酢醤油でいただく頃、時計の針は正午を指し示し、ラジオから時報が聞こえてきた。 そ れを聞き、たいして面白くもないニュースが流れるなか、すっかり残った餅を平らげた私は、ちょいと物足りないようなそうでもないような気持ちでいたのだった。
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