Re: 即興三語小説 ―4月です。ブラックな季節の幕開けです― ( No.1 ) |
- 日時: 2014/04/06 18:21
- 名前: しん ID:E2t3.zAc
題:
間に子供をかこい、三人で歩む。 遠くから、盆踊りの曲がながれてきている。 祭りというと思い出す。
おれは小さなころ、祭りが大好きだった。 小学校三年のときも、赤くともったぼんぼりの間をはしりまわり、色とりどりのものをながめ、食べて、また走り回る。 その頃、相棒がいて、いつも一緒だったので、祭りも一緒にはしりまわったのはいうまでもない。 祭りをはしりまわって、半ばにまでなると、そこからがもう一つの楽しみで、そのころのおれにとってはそこからが本番だった。 夜の世界の探索である。夜に外出が許されるのは祭りの日だけだ。 いつもの町内は、夜になると別世界となり、新しい顔をみせる。 ひとしきり、町内を探索すると、きまって毎年池の桟橋に腰をかける。 その日は満月で、恐ろしいほど月がきれいだったのを今でもおぼえている。池の水面にも、もう一つ満月がうまれていた。 それをみて、おれと相棒は、この月のように二人がわかれてしまわぬように、永遠の友情を誓い合った。 「月がきれいだな!」 「そうだな!」 今おもえば変な話なのだが、月にむけて誓い合ったのだ。月のようにはなれてしまわないように。
それから二年がたった。 また祭りの日がやってきたので、相棒をさそいにでた。 さそいにでた、というのは正確ではない。相棒はいつも道の途中でまっていて、おれがそれを探すのだ。いなかったら、家までいって本当にさそう。 その日も道中に相棒がいないのだと思い、家にむかおうとした。 すると、そでをつかんでひっぱられた。 いなかったのではなくて、わたしが無視してしまったのだ、いや、気付けなかったのだ。相棒に。 髪を結い浴衣をきて、下駄をはいた相棒は、うつむいて何も声をはっしなかったけれど間違いなく相棒だった。 この頃の二年というのは変化がはげしい、いや成長というべきだろう。それまでまったく意識しなかった事実にこのときはじめてきづいた、 相棒は女だったのだと。 結局この日の祭りも相棒と一緒にまわったけれど、いつもと一緒ではなかった。下駄に浴衣の相棒を横にかけまわることはできず、町の徘徊もしなかった。 ただ、毎年の恒例として、池の桟橋に二人で腰かけた。 そらはくもり、月を隠していた。
それから、不思議なことに学校で変な噂がながれた。 今までと何もかわっていないのに、これまで通り相棒と一緒にいるだけなのに、二人の関係がまわりにはかわってしまったように見えるらしい。 何度か殴り合いのケンカになったが、勝敗はおぼえていない。 ただ、この頃から相棒はケンカのさいにまじって助けてくれなくなっていたなと今さらながらきづく。 そしてある日、帰り道のことだった。 これまで通り相棒と二人であるいていると、何人かがあらわれて、ひやかして、からかった。 もう慣れていたので、無視してすすんでいたのだけど、あまりにしつこいので、いい加減なぐってやろうとすると、相棒がおれの服のすそを握っていたのでやめた。仕方ないので、ここは逃げの一手と、相棒の手をにぎり、はしりだしたとき。 相棒がこけてしまった。スカートをはいていたのだ。 助け起こしたとき、相棒は少しないていた。
それからしばらくして、相棒と一緒にいるのをやめてしまった。 一緒にいたい、という気持ちはあったのだけど、同時に一緒にいるのが嫌だという気持ちもあったのだ。 矛盾しているようだけど、おそらく相棒の涙をみたとき、わたしのはっきりと相棒の女を意識して、急にはずかしくなったのではないだろうか、とおもう。 たまに、相棒をみると、たまに目があう。しばらくはそれだけだった。
祭りにうかれ子供がはしり、こけて、涙をにじませる。 若いころの妻にそっくりだ。 助けおこして、なだめてやる。 何かをおもいだしているのだろう、妻が微笑ましくて見ている。 子供がはしゃぎ、あれこれ買ってほしいとねだり、妻がたしなめる。 それでも最後には、降参して買ってやるしかないのだ。 空を見上げると、あの頃と同じ恐ろしく綺麗な満月だった。 「月がきれいだね」 わたしはその言葉を、空をみてではなくて、妻と子をじっと見て言った。 突然の言葉に妻が反応できずにいると、子供が 「そうだね!」 と元気にこたえた。 「わたしもよ」 と妻はこたえた。 あまりなやりとりに夫婦で赤面して、しばらく顔をあわせれなかった。 永遠にはなれないように誓い合ったのだ。
---------------------------------------------------- わたしはワードが簡単すぎると、インスピレーションがわかないときがあります。今回がそんなかんじです。 使いにくいワードを中心にストーリーをつくるので、今回みたいに全部使いやすすぎると、うまくつくれません。 前回みたいに二つつかいにくいと、また難しいので、なんともいいにくいのですけど。結構苦戦しました。
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