チョコレートが消化できません。 ん? 何か違いますね。 初の前回からの続きものになりますが、 お題をどう消化するのか、そもそもお題を消化できるのか?-------------------------------------------------------------------------------- ●基本ルール 以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。 ▲必須お題:「ハンバーグ」「二度見」「あてもなく」 ▲縛り:「オリジナリティ溢れた前編のあらすじをつける(任意)【ただし、前編(第95回分)未投稿の場合はこの縛りはないものします】」 ▲任意お題:「厳重に密封」「ブラックホール」「黄昏」「歪んだ秒針」 ▲投稿締切:2/27(日)23:59まで ▲文字数制限:6000字以内程度 ▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。 ●その他の注意事項 ・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要) ・お題はそのままの形で本文中に使用してください。 ・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。 ・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。 ・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。 ●ミーティング 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。 ●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。 -------------------------------------------------------------------------------- ○過去にあった縛り ・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など) ・舞台(季節、月面都市など) ・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど) ・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど) ・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど) ・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など) ・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など) -------------------------------------------------------------------------------- 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ! それでは今週も、楽しい執筆ライフを!
月曜日の放課後、俺が文部(もんぶ)の部室に着くと、新入部員候補のランちゃんこと庭野玉子はすでに到着しているようだった。部室の中から彼女らしき話し声が聞こえる。「お待たせ」 挨拶しながら俺が部室の戸を開くと、部長とランちゃんがこちらを向く。「よう、来たな勉」「勉先輩、お待ちしていました」 おっ、いいねえ、いいねえ、この『先輩』という魅惑的な響き。ずっと待ち望んでいた瞬間だ。 ランちゃんにはぜひ入部してほしい。そんな気持ちを強くする。「ところで週末のチャットは見てた?」 俺は椅子に腰掛けるなり、本題を切り出す。 先週、ランちゃんがうまくミステリーを作れないと言うので、小説のお題を提案しているチャットの内容を参考にしてみたらとアドバイスした。ランちゃんも部長もそのチャットを見ると約束して、週末の部活はお開きになった。「見ましたよ、先輩。パパのパソコン借りました」「ああ、私も見てたぞ」 それなら話が早い。チャットで出されたお題が何であるか、二人とも分かっているはずだ。「じゃあ、必須お題はわかってるよね、ランちゃん」「確か、『ハンバーグ』『二度見』『あてもなく』でしたっけ?」「そうだよ、その三つだ。じゃあ、それで先週の続きを考えてみようか」 俺がランちゃんと向き合おうとして椅子を動かすと――「ちょっと待ったぁー!」 部長が大声を上げた。「ぶ、部長。驚かさないでくれよ」 俺が振り向くと、部長は不敵な笑みを浮かべていた。「勉よ、何か忘れてはいないか?」「えっ、何かって?」「お題はそれだけじゃなかっただろ」 チャットで決めているお題は、必須と任意の二種類がある。俺はその中の必須お題だけをランちゃんに聞いた。部長はきっと、任意お題のことを言っているのだろう。「他にも『厳重に密封』ってのがあったぞ。ミステリーにこれは欠かせないんじゃないのか?」 いや、それは任意お題だから、無理に使うことはないんだよ。「そういえばそんなお題もありましたね、部長先輩。『――凶器は厳重に密封されていた』なんてフレーズが出てきたらカッコイイですよね」 『凶器は』のところを低い声ですごむランちゃん。やはり見た目どおり、調子のいい奴みたいだ。 まあ、部長の言い分も分からないでもない。確かに『ハンバーグ』や『二度見』ではミステリーにはなりにくい。「まだまだいいのがあったぞ。確か……『歪んだ秒針』だ。そうか、ラン。凶器は秒針だったんだよ」 するとランちゃんは少し考えた後、はっと閃いたような顔をした。「わかりましたよ、先輩! 『犯人は秒針で一絵の首を一刺し、何事も無かったように元の場所に戻した』ってことなんですね」 おいおい、それじゃあ、凶器は厳重には密封されてないだろ。仮にもミステリーなんだから、後先のことを考えてくれよ。 俺は呆れながら部長の方を向く。「じゃあ部長、一応聞いておくが、同じく任意お題の『ブラックホール』はどうやって使うんだよ」 すると部長の目が光った。「じゃあ私も勉に聞こう。必須お題の『ハンバーグ』はどうやって使うんだ?」 げっ、逆に聞かれちゃったよ。 それをランちゃんと一緒にしっぽりと考えようという作戦だったのに。『ランちゃん、ハンバーグってどうやって使おうか』『どうしましょうね、先輩』『困ったなあ、ハンバーグ。食べるのは好きなんだけど』『えっ、先輩ってハンバーグ好きなんですか。私ハンバーグ作るの得意なんですよ』なーんて甘い展開をちょっとだけ期待していたりする。 俺が何も答えられないでいると、部長が勝ち誇ったように言った。「ほら、勉も答えられないじゃないか。チャットはチャット、私達は私達。無理にチャットのルールに従う必要なんてないんだよ」「そうですよ、先輩。楽しくやりましょうよ。私達、あのチャットに参加しているわけじゃないんですから」「でも、それじゃあ、先週の俺の苦労はどうなるんだよ。ちゃんとお題に従って段取りを組んだんだぞ。わざと『吹雪』を降らしたり、『たゆたう』を使って俳句を作ったり……」 俺が声を荒らげると、部長が怪訝な顔をする。「ちょ、ちょっと、勉。それってどういうこと?」 しまった! つい口が滑ってしまった……。「部長先輩。わかりましたよ、私。ヒントは一つ前のお題です」 げっ、ランちゃん。普段は天然っぽいのに、こういう時だけ鋭いのはどういうことだ!?「一つ前のお題って……?」 部長がランちゃんの方を向く。「私、見ちゃったんです。チャットをやってるサイトで。一つ前のお題に『でっへへへへ』とか『なんかすごいのきた!』ってのがありましたよね。だから私はこんな性格にされちゃったんです。本当は普通の女の子なのに。この日本のどこに『でっへへへへ』って笑う女の子がいますか? ねえ、勉先輩」 だ、だから、それは……。「そうか。だから私も『なんかすごいのきた!』って変なメールを書いちまったのか。おい、みんな勉の仕業なのか」「い、いや、お、俺は……」「正直に言わないと、先輩には『黄昏』てもらいますからね」「ランちゃん、ナイスアイディア。お題的にもバッチグーだわ」「…………」 すっかり困った俺がうつむくと、しばらくしてランちゃんが笑い出した。「なーんて、先輩。本当に黄昏ないで下さいよ~。私、本当の本当は天然なんですからぁ。でも責任はとって下さいよね。ちゃんと私にお題小説を教えてくれるって」「そ、それって……」「はい、私、この部に入部します。だって楽しそうだもん」「ははははは。新入生にやられたな、勉」 俺がぽかんとしていると、ランちゃんは部長から渡された入部届けに必要事項を書き始めた。 まあ、とにかく良かった。とびきり明るい新入部員が入ってくれて。 さて、来週のお題って何だったっけ?----------------------------------一日遅刻の投稿です。スイマセン。なんかメタな内容になってしまいました。えっ、こんな風にお題を消化するのは卑怯だって。でっへへへへ、今回だけよん。部活やサークルで三語のお題を使うのって、本当に面白いかもしれませんね。(以下は2/27のコメント)すいません。後編を書いていますが、今日は疲れていてもう書けそうにありません。遅刻してすいませんが、明日以降に投稿したいと思います。よろしくお願いいたします。「記事を修正して投稿してください」というRYOさんのコメントを、読み飛ばしてしまっていました。すいません。作品を投稿していたところは、修正して感想を書きます。
九〇〇種類を超えるメニューのあるラーメン屋(?)に、ミライと名乗る少女が来店。少女は雷の精霊を身に宿す精人であり、同じく氷の精霊を身に宿す主人公、吹雪は彼女を家まで送ろうとする。だが…… あ、それはそうと、九〇〇種類ものメニューが存在するラーメン屋(?)には、定番なところでカレーやステーキ、変わった食べ物としては、のれそれ(アナゴの稚魚)や食用紅葉の天ぷらなどあるらしいが、変わった注文があった時、そのメニューに必要な食材を揃えることができるのだろうか? 仮に揃えられたとしても、客がほとんど来ない店ならほとんどの食材が腐ってしまうのではないだろうか? そんな疑問に答えられるのか? 「発電少女ミライ」(発電少女って、なんかエコっぽい名前じゃね? 自家発電っていいよね? ていうか主人公の吹雪とタイトルって関係ないよね? いろいろ考えさせられる作品だね)後半スタート! ▼ その子を生んだ母は病気でなくなり、その後、父も同じ病気ですぐに他界したらしい。彼を迎えてくれた親戚も、すぐに山奥の施設へと追いやった。 彼の唯一の救いは、施設の職員全員が暖かく迎えてくれたことにある。 施設は教育機関を兼ねているらしく、彼と同じように引き取られていった子供たちが学年ごとに分けられて勉強や運動をしていた。 その教育機関は子供が十歳になると卒業となり、その時行われる試験で優秀な成績を修めた子供はその施設の職員になれると教えられた。 彼も職員になれるように頑張った。 そして、試験の日。五十人くらいの子供達が集められたホールの中で事件が起こった。ホールは半径百メートルくらいの円形の密室で、周りの壁の一部の窓から、施設の職員が手を振っていた。それに気付いた子供が手を振った。赤い氷柱を腹から突き出して。 何が起こったのか、最初はわからなかった。 何人かが倒れたとき、彼はようやくそれが見えた。 何かが、彼と同じ子供の腹を突き破って飛んで行った。その衝撃で腹部から大量の血が噴きあがるが、その血が一瞬で凍った。そして、飛んで行った何かが再び別の子供の中に入り、その子も同じように腹を突き破られた。 彼は震える足を抑え、逃げて行った。その怪物から、少しでも遠くに行くように。 だが、他の子供は違った。その場に座り込んで泣く子、窓ガラスの向こう側で未だに笑顔でいる職員に助けすがる子、あろうことか怪物のいる方に逃げていく子。 その子たちは全員怪物の餌食となり、そして、それは最後に残った彼にめがけて飛んできた。 そして、三十分後。 彼は医務室に搬送されていた。「おめでとう。君の名前は今日から吹雪だ」 職員のその時の言葉は六年経った今でもはっきり覚えている。 ▼「……本当にこっちでいいのか?」「ええ、間違いないわ」「言っておくが、俺はあんたを信用したわけじゃないぞ」 吹雪は“研究所のお姉さん”とミライに呼ばれていた女性とともに、ミライのいるはずの場所へと向かっていた。『ミライちゃん、アイスクリーム買ってあげよう』 なぜ、木崎はミライの名前を知っていたのか。 吹雪も、そしてミライ本人も名前など言っていない。「少なくとも、発信機なんてつけてる時点で怪しい」「発信機じゃないわ。この機械は彼女の波長をキャッチしてるのよ。彼女は常に電波を垂れ流している状態で、その電波は特殊だからね。おかげで、あてもなく探し回らないで済むじゃない」「それはそうだが……」「それに、私の名前は紺野カエデよ。あんたなんて呼ばないで」「……ふん。あんたで十分だ」 とりあえず、カエデの言うことが本当なら、道を迷う心配はなさそうだ。 吹雪は足元に力を集中させ、彼女の指示する道を作り出す。氷の道を。 二人の足には吹雪が即席で作った氷のスケート靴がつけられている。 少し慣れたスケーターなら、疲れることなく長い距離を素早く走ることができる。カエデもスケートは苦手ではないらしく、しっかりと吹雪の後をついてきていた。「吹雪君は上手に精霊を使いこなしているみたいだけど、どうやってそこまで覚えたの?」「……そんなこと聞いてどうするんだ?」「ミライと関わる以上、私も精霊についてはしっかりと知っておかないといけないのよ」「……復讐のためだよ」 六年前。吹雪が目を覚ました時、彼は職員に泣きついていた。「怖かったよ」「先生、助かったんだよね?」などと、自分を実験動物にして殺そうとした人間に対して泣きついて安堵した……フリをしていた。その時の彼は泣きわめく表の中に、冷たく残酷な裏が存在したから。《わざわざ医務室まで運んで治療したんだ。ここで殺されることはない》《今は体力も無い。機を待つんだ》などと冷徹に観察していた。その時、吹雪の心は完全に精霊に乗っ取られていたのかもしれない。 そして、彼は三日後に計画を実行に移し、研究所にいた職員を残らず凍らせた。その後みたのは、とらえられていた子供達の遺体と、吹雪の中にいる精霊の研究レポートの山だった。 吹雪の中にいるのは、氷の精霊であり、集められた子供は氷の精霊に適応する可能性のある者たちだったこと。氷の精霊の適応者が見つかったため、他の子供は用無しとなり全員処分されたこと。そして、この研究所にはいない他の研究者の名簿だった。 その時、彼は誓った。この名簿に載っている全ての人間に、こんなくだらない研究の犠牲となった者たちと同じ目にあわせてやると。「そのためには力が必要だったんだ」「そう……」 カエデがつらそうに言う。「でも、復讐なんて辛いだけよ」 吹雪は何も答えない。 そうこうしているうちに、二人はある場所へとたどりついた。「ここ……うちも使ってる倉庫街だ」 吹雪の父のラーメン屋(?)には九百種類ものメニューが存在する。それだけの材料を保管する場所として、倉庫は欠かせない。 ちなみに、冷凍手段は、吹雪の力による急速冷凍。素材を痛めない素早さが命だ。「この倉庫よ」 そこは、吹雪の食糧倉庫の横にある倉庫だった。「気をつけてね。木崎は、おそらく最初はあなたを狙っていたはずだから」「……かもしれないな」 ミライがラーメン屋(?)に訪れたのは偶然だ。とあるエセ霊能力者がいうには、精霊同士は引力があって一か所に集まろうとすることが多々あるらしい。 なら、木崎の狙いは最初から吹雪だったのか、もしくは……「ただ、そんなのは関係ない。俺がするのは――」 鍵穴に水を入れて凍らせ、無理やり倉庫の扉の鍵をあけ、吹雪は中に入った。 ▼ ミライは悪い人と出会ったことがない。少なくとも、ミライが生まれてから三週間目の先ほどまでは。 そもそも、ミライには三週間以前の記憶がない。理由はわからないが原因は知っている。 ミライの頭の中には、爆弾がある。 生まれた時から、彼女が気付いていたことだ。 ミライの頭の中に複雑にからめられた電気回路が、彼女の中で使ってはいけないと指定されたプログラムを作動させた時に自動的に発動するウイルスのようなものだ。 おそらく、いや、確実に三週間前、ミライのそれは役目を果たし、彼女は記憶を失った。 唯一それが爆弾と違うのは、役目を果たしてもなお彼女の頭の中に居続けているということだ。 そして、彼女は思う。 記憶を失う前の彼女も、おそらくこんな状態だったのだろうと……。 体中から伸びた電極が、大げさな機械につなげられ、ガラスケースに満たされたよくわからない液体の中に閉じ込められ、口にあてられたマスクから呼吸する以外に身動きすらできない(そっか……) どうして彼女は記憶を失ったのか考えていた。 彼女の頭の中のウイルスが発動するためのプログラムは、ミライの意思とは無関係に悪用されるというプログラム。そんなことをする人がいると思わなかった。 少なくとも、ミライの知る、カエデお姉ちゃんや、その妹、三週間前にミライを助けてくれたあのヒトや、その友達、そしてラーメン屋の店主も、ミライと接してくれた全てのヒトが彼女に優しくしてくれた。(どうして、あのお兄ちゃんは、私をこのヒトに渡したの?) 確かに、あの吹雪という人は無愛想で優しい言葉をかけてくれるようなことはなかった。だけども、ミライはあの吹雪という人の中に何か暖かいものを感じていた。 だが、吹雪はこのヒトに私を引き渡した。おそらく、このヒトと仲間なのだろう。 ガラスケースの向こうにいる白衣を着た――木崎となのるこの男性の。「おや、目が覚めたのか? 精人。いや、そもそも精人という呼び方は……いや、どうでもいいか。今の私には……」(バ○タン星人なの?) そういえば、吹雪もそんなことを言っていた。もしかしたら、本当に宇宙人なのかもしれない。彼女は気付いていた。自分の力が普通の人には持ちえないことを。「君は素晴らしい。君の力があれば、世界中の機械にアクセスできる。アメリカの核の発射さえ可能だ。もっとも、人の命を失わせる仕事に興味はないがね」 人にはない力など素晴らしくなんかない。ミライは幸せになれないのだから。「大丈夫だよ、君の力をちょっと使わせてくれたら、本当にアイスクリームを買ってあげるからね。全てが終わったら、あの人ともう一度話すことができたら」(たぶん、嘘だと思うの) ミライは思う。それが本当でも嘘でも彼の願いも叶わないと。 なぜなら、すでに彼女のウイルスは起動しつつある。それはもう誰にも止めることができない。なぜなら、ウイルスはすでにミライの中にない。近くの場所にある数十カ所もの家庭用パソコンに時限付きウイルスを置き、時間がきたらミライの頭の中に浸食してくる。徐々にミライの記憶をくいつぶしていき、さらにはミライから伸びた電極を通じ、木崎の機械も使い物にならなくなる。 木崎が使い物にならなくなったミライのことをどうするのは、今の彼女にはわからないから。 今見ている景色ももう無駄なのだろうと、ミライは目を閉じた……が目を開け、その光景を二度見する。「俺がするのは、ミライを助ける。それだけだ」 そこに、吹雪が経っていた。 ▼「ミライ、無事か!」「なんだ、お前ら……私の邪魔をするな!」 木崎が拳銃をこちらにむけた。「……いつから日本は拳銃大国になったんだ?」 日本での拳銃入手はそう簡単にはできないはずだ。「彼女のためなら、私は鬼にも悪魔にもなる」 木崎は邪悪な笑みを浮かべて言う。「それに、吹雪君。君の能力は触れたものを冷やすことだ。遠くにいる私に攻撃などできないだろう」「……それはどうかな」 吹雪はそういうと、手を上に掲げた。 すぐに吹雪の手の中にそれが現れる。 玩具のように小さな氷の槍。ただし、水を凍らせたものではない。「気体を凍らせてる。触れたら凍傷くらいじゃすまないぞ」「君はゲームのしすぎのようだ。氷の槍だって? じゃあ、アイスランスとでも名付けたらどうだ? それをどうする? 投げるのか?」「もっと大きくするのさ」 その間にも、氷のやりはどんどん大きくなっていく。といっても、せいぜい数百グラム程度の重さでしかない。「お前、科学者なら知ってるだろ。空気っていうのはとっても軽いんだ。だから……」 吹雪は氷を少し口に含み言う。「……どれだけ酸素の氷を作れば、部屋中の酸素が無くなるかな?」 酸素は三十二グラムで二十二・四リットルの空間に存在するという。「バカな。空気の中から酸素だけを選んで凍らせるなんて芸当、お前にできるわけがない」「そうかな? だんだんと苦しくなってきたんじゃないか?」「ふん、知らないのか? この倉庫の天井には通気口がついてるからね。酸素には困らない」 木崎は再び銃口を向ける。吹雪はそれに対抗して、ライターを取り出した。「いいのか? 俺が死んだらこの氷はどうなると思う? 一気に気化して……これに引火するぞ。なら、この研究所はどうなるかな」 これはまさに命をかけた取引だった。 だが、それに木崎は笑って答える」「…………ハハハハハハハ墓穴をほったね。それが酸素の氷なら、なぜライターは燃えている? もしも酸素だけを凍らせているのなら、君の周りの酸素はかなり薄くなっているはずだ。なのに、どうしてライターはそうどうどうと、揺れもしないで燃えていられる?」「そんなの決まってるだろ」 そして、吹雪も笑った。「全部ウソだからだよ」 吹雪が言ったとき、銃声が響いた。「ぐっ……」 うめき声をもらしたのは木崎だった。拳銃が吹き飛ばされる「ナイス、カエデさん」「本当に無茶な作戦を思い付くわね、あなたは」「まぁ、倉庫の作りなんてどこでもいっしょだからな」 カエデは、熱斗が借りている倉庫の天井から木崎の倉庫へと侵入した。先ほど木崎が言っていた通気口だ。そこからカエデが入って天井から木崎の銃めがけて撃った。「たく、たまたまワシが倉庫にいたからよかったものを」 カエデと一緒に、熱斗が倉庫へと降りていく。確かに、彼がいなければ天井から侵入する方法など思い浮かばなかった。「まさか当たるとは思わなかったわ」 天井から縄をつたっておりてきたカエデさんが呟く。「…………まぁ、とにかくお前の負けだ」「そんな……せっかく、彼女に会えると……精人のプログラムさえ組めば、死んだ彼女を電子世界に生み出すことさえできると思ってたのに」「…………バカなこと言わないで」 カエデは言う。「あんたのいう彼女って、昔のギャルゲーのデータでしょ。そんなの、精人の力をかりなくても簡単に……」「違う! あの時の彼女は僕の中にしかいない! 新しくゲームをしなおしたって全く同じ彼女ができるわけが……」「バカ野郎っ!」「お前が愛したその女は、人の不幸の上にたって喜ぶような女か! そうじゃねぇだろ! お前がすることは死んだ彼女を救うことじゃねぇだろ! 彼女はそんなこと望んでねぇだろ」「……くっ……そうだよ。俺もわかっていたんだ。たとえ思考が全て同じでも、彼女は……もう戻ってこないことくらいわかってたんだ」「……いや、ホント……カエデさんに聞いた時は信じられなかったけど、すんげぇ最低のバカだな、こいつ」 その間にも、カエデはミライを助け出していた。 これで全てが解決だ。「ミライっ! ミライっ! 大丈夫なのっ!」 カエデが叫んだ。水槽から救い出されたミライはぐったりして動けない。「まさか、プログラムが……」 カエデはミライを置き、木崎のパソコンを操作する。「くっ、だめ。もう作動してる。このままじゃ、ミライの記憶が」「どけっ!」 熱斗がカエデをどかし、機械のボードを操作する。「な、半径三百メートルの全てのパソコンからウイルスが送られてきてるじゃねぇか」 カエデはあっけにとられていた。熱斗の指が光速でキーを叩く「何者なの、あなたのお父さん」「元精人の研究者。俺の殺す標的の一人だ」「本当なの?」 カエデが信じられない、という口調で訊ねる。「親父、行けそうか?」「あぁ、なんとかしてみせるさ」 ▼ あの日。吹雪が熱斗を殺そうとしたとき。「腹、減ってねぇか?」 氷の刃をむける吹雪に彼は言った。 それに吹雪は何も答えない。 熱斗は黙ってラーメンを置いた。「終わったら食え」 その瞬間、熱斗は手刀で氷の刃を叩きおり、自分の腹を突き刺した。「いいか、俺は自分で死ぬんだ。お前に殺されたんじゃねぇ」「な、何のつもりだ!」「いいか、復讐なんてつまらないマネは……やめろ。それより、お前は幸せに生きろ!」 次の瞬間、吹雪は熱斗の傷を氷でふさいでいた。「たく、荒っぽい治療だ」「文句をいうな。それより、ラーメンのほかに食いものはねぇのか?」「うちはラーメン屋だ」「俺はハンバーグが食いたい。俺に幸せに生きろって言うんだから、食いたいものくらい食わせろ」「……ちっ、わかったよ。ハンバーグだろうとなんだろうと、客が望むものならなんでも作ってやるよ」 ▼「はぁ、うちで何か食べてくか」 倉庫からの帰り道。「じゃあ、私はナポリタンで」「ミライはモンブランが食べたいかも」「たく、ラーメンを注文するやつはいねぇのか」 熱斗が笑いながら言う。「俺は、久しぶりにハンバーグが食べてぇな」ーーーー大幅に遅刻&大重量申し訳ありません。まだ、まとめきれない感があります。
「先輩、俺たちも酔っ払いでしたけど、先輩も酔っ払いだったわけで――」「ん~、なに? 私に口ごたえするつもり?」 二人の男のうち置くに座っている方が、彼女とやりとりをする。「いえ、そういうわけじゃ?」「あーそこの加藤君と呼ばれた、実は加藤君でない人。こっちは気にしなくて大丈夫だから」 もう一人の男がにっこりと微笑んで、司をその場から遠ざけようとする。「いえ……」 司は一瞬、どう答えるか迷う。まだ彼女が司の左手を掴んでいて、その柔らかい感触が伝わってくる。 彼女から覗き込まれる。いや、確かに、この人たちとは初対面だけど、もしかしたら、実はどこかで会っているのかもしれない。でも、なんか怪しいし――。「まぁまぁ、座りなさいよ」 司は彼女に左手を引っ張られて、半ば無理やり座らされてしまう。正面の男が苦笑混じりに溜め息を吐く。「坂崎先輩、そうやって見知らぬ人を巻き込むのはどうかと思いますよ」「日高。先輩に対して、何、その言い方は?」「はいはい。ちょっと彼に、俺たちを紹介するから先輩はちょっと黙っててください」「むー」 坂崎はちょっとふて腐れてみせた。「それにしても君も人がいいね。これも何か縁だろう。俺は日高俊也。工学部の三年な。隣のが、同じく工学部の三村大樹。一年」 日高と呼ばれた正面の男が、紹介を始める。三村と呼ばれた男が司に軽く頭を下げ、司もそれを返す。「で、この人が、坂崎智世先輩。一見、中学っと」 日高が言おうとしていた言葉を止めて、ちらりと坂崎を見やった。「日高、今、何を言おうとした。先輩、怒んないから、正直に言ってごらん」 坂崎が半眼でにっこり笑って日高を見る。「まぁこれでも、教育学部の修士の一年生だ」「これでも、ってなによ! これでもって!」 司の隣で、坂崎が日高の方に身を乗り出して、ぷんぷんと頬を膨らませる。その様子が、可愛くて、可笑しくて司はぷっと吹き出してしまう。「何が可笑しいの?」 坂崎の目線がキッと司に向く。「あ、い、いえ……はい。すいません」 司は反射的に謝る。「よろしい。加藤は素直ね」 坂崎は満足そうに、司に笑った。「それで、君の名前は?」「日高、話を逸らそうとしてるわね」「先輩、ちゃんと自己紹介してもらわないと話が進まないでしょう」 そんなやりとりを三村はニコニコしながら見て、何も言わない。「えっと、俺は加藤で間違ってないですよ。加藤司。心理学部の一年です」 日高が目を見開いて、司を見る。三村はぽかーんと口を開ける。「ふふふ。私の言った通りじゃない」 坂崎は胸を張る。「そんな馬鹿な」 日高が打ちひしがれている。「いえ、でも、俺、あなたたちとは初対面だと思うんですよ。どこかでお会いしてます?」 日高が顔を上げる。「だよな。そうだよな。俺の記憶違いであるはずがない」 日高は一人うんうんと頷く。「やっぱり、初対面なんですね。良かった。俺の記憶違いかと思いましたよ。やたらと新歓に誘われて出まくっていたので、初対面じゃないかもって」 司も胸を撫で下ろす。「むーなんか面白くないわね」 坂崎がまた頬を膨らませる。この短い時間でどれだけ表情が変わっただろう。見ていて飽きないな――司が横目に坂崎を見て微笑む。「加藤君よ。まぁ、聞いてくれ」 日高が身を乗り出して、司に耳打ちする。それにあわせて、司も上体を前にする。「この坂崎先輩は、こういう性格なわけだから、誰とでもすぐに打ち解けるんだけど、酔っ払うと見境がなくなって、本人はあてもなくというか、誰彼かまわずなんだろうけど、この前やった新歓じゃ、新入生全員潰しちゃったわけよ」「え、そうなんですか?」「この小さい体で、胃の中はブラックホールなんじゃないかと――」「ひ、だ、か、くーん。何、いたいけな新人に吹き込んでいるのかしらね」 と、坂崎がいつのまにか、司と日高の間に割って入るように顔を近づけていた。ふっと、坂崎の吐息を耳に感じて、司ははっと坂崎を見る。「いやー事実を言っているだけですよ。っと、もうこんな時間ですか?」 日高が店内の時計を見上げ、席を立つ。その視線にあわせて、司も振り返り、時計を見上げる。歪んだ秒針の回るシンプルな丸時計が、二時半を差していた。「三時から約束があるんで、僕はこれで」「やば。俺もこれからバイトの面接があるんで」 三村も日高に合わせて席を立った。「何、二人とも。私というものがありながら」 坂崎はテーブルを駄々っ子のように叩いてみせる。それを見て三村と日高が苦笑する。「残念ながら、私には彼女というものがあるのですよ」 日高が眼鏡を上げながら、混ぜっ返す。「どいつもこいつも、彼女、彼女と。一人身の前で良い身分ね」「先輩、俺はバイトの面接なんですけどね」 時間が押しているのだろう、三村が時計を二度見しながら呟く。「そう言いながら、お前は女に不自由してないだろうが」 日高が三村のこめかみを小突く。三村は悪びれる様子もなく微笑む。「いいわよ。いいわよ。私には加藤がいるもの」 坂崎が司を見上げて、にっこり笑う。「そういうわけで、司君だっけ。先輩のことは任せた。君になら安心して任せることができる」 日高が司の両肩を両手で意味深にぽんぽんと叩く。「え? え?」 戸惑う司を尻目に、日高と三村は店を出て行った。司はこれでは話しにくいと、坂崎の前に席を替えた。「そう言えば、加藤君には、彼女はいるのかしら?」 悪戯ッ子のように坂崎は目をくりくりと輝かせて、聞いてきた。「え、まぁ、なんというか……」 司は話すのをためらう。話そうとして、自分の中に抵抗感が生まれたのをはっきり感じた。「いない」と言ってしまえば、別れたことを認めてしまうようで、言いよどむしかなかった。「あ、聞いちゃいけなかったか」 坂崎が先に口を開いた。司ははっとして顔を上げる。悲しそうな表情の坂崎がそこにいた。「私もねぇ……」 坂崎が不意に司から視線を外してどこか遠くを見る。表情に憂いが宿っていた。さっきまでのむくれてみせたり、怒ってみせたり、笑ってみたりとは違って、それは別人を思わせて、司は瞬きさえ忘れて引き込まれていた。瞬間、司は唐突に理解した。この人も、別れたばかりなのだと。司は目を閉じて、息を吐いた。「ああ、加藤君はまだ、注文してなかったわね」「そう言えば、そうでしたね」「ここはね。ラーメン屋だけど、サブメニューのつくねが美味しいのよ」「つくね?」「っていうか、ハンバーグ?」 坂崎はもう楽しそうに笑っていた。さっきまでの表情は嘘のように見えなくなっていた。 司はこのコロコロと表情が変わる坂崎に、惹かれだしている自分を感じていた。――――――――――――――――――――――――――――――――遅刻、了解しました。って、投稿は私も明日になりますが。投稿遅刻掲示板でも作ろうか(笑締め切り、自己決定板。うーん……記事を修正して投稿してください。――――――――――――――――――――――――――――――――というわけで、とりあえず投稿。上手く行きませんね。相変わらず説明不足です。何のサークルだよ!なんでラーメン屋なのか、とりあえず先週の自分を問い詰めたい。
RYOさん>「まぁこれでも、教育学部の修士の一年生だ」四歳も年上ですか!この先も読んでみたいですが、どこで読めるのでしょうか。>「この小さい体で、胃の中はブラックホールなんじゃないかと――」この使い方は思いつかなかったです。お見事です。>「ここはね。ラーメン屋だけど、サブメニューのつくねが美味しいのよ」ウィルさんの作品も、ラーメン屋でハンバーグを食べる展開になっていたのは面白かったです。これは僕が見落としているだけなのかもしれませんが、坂崎さんのサークルって、何のサークルなんでしょうか?心理学部、工学部、そして教育学系大学院の人達が集まっているサークルってとても興味があります。ウィルさんこれは力作ですね。面白かったです。ちゃんとあらすじも付いているし。>吹雪は足元に力を集中させ、彼女の指示する道を作り出す。氷の道を。>鍵穴に水を入れて凍らせ、無理やり倉庫の扉の鍵をあけこの辺りのアイディアがとても良かったです。公募用でも使えそうですね。>「……どれだけ酸素の氷を作れば、部屋中の酸素が無くなるかな?」さ、さ、酸素の氷!!! 吹雪はマイナス二百十八度まで温度を下げられるのかっ!?と思っていたら……(笑)>あんたのいう彼女って、昔のギャルゲーのデータでしょ。やっぱりミライの声は、能登麻美子で良かったんでしょうか?(笑)それにしても、親父さんも名前から判断しててっきり同類だと思っていましたが、こんな正体とは驚きです。でも前編をよく読むと、「独身」とヒントが書いてありましたね。自作品ついにやってしまいました。もうちょっと真面目に、お題の消化を考えてもよかったかな。真面目に取り組むお二人の姿を見て、そう反省しております。
>可愛いあいつはモンブラン(後編) つとむューさん お題消化が反則といえば反則ですが、これで消化できるのは凄いなぁと。 キャラクターが前編と何か違っていても許せてしまう気さえします。 逆に、部活でもう一本書いてみると、落ち着いたりするのかもしれません。>発電少女ミライ(後編) ウィルさん 三語でよくここまで設定できますね、と感嘆しました。 ギャルゲー云々は、これまでの展開をすべて壊すインパクトですね。 この設定で一本良い作品が作れるのではないでしょうか?>傷心の出会い(後編) RYO うーん、何か思うようにできてないです。 ハンバーグが苦しいですね。 ラーメン屋め。 もう少し掘り下げたかった。 どうもストーリーテリングができなくなっている。