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RSSフィード [124] 即興三語小説 ―どうでもいいゴシップは平和の証―
   
日時: 2013/06/09 22:47
名前: RYO ID:17lWhk9k

 AKBの総選挙の発表が行われた日、脳みそがフリーズする挙動不審者が続出したが、それは長い話になりそうなのでやめることにする。開いた口が塞がらないようで、その口に思わず飲み薬でも入れたくなっても不思議ではないな、というのが率直なところだ。
 サッカー日本代表がワールドカップ出場を決めた日、DJポリスが十二番目の代表をうまくジャッジしたが、それも長い話になりそうでやめることにする。とりあえず、警視総監賞おめでとう。
 芸能界のデコボコ婚の離婚が発表された日、さして興味もないが、離婚の原因を作ったほうが淫乱なのか、肉食なのか、節度がないのか、どうでもいいが、そういえば、淫乱という言葉は女性にしか向けられない言葉であることに、ふと気がついたが、やはりどうでもよかった。
 女性といえば、おっぱい専門官はきっと下着売り場にいる店員に違いないが、きっとこのネーミングのせいで、いらぬ誤解を受けかねないと思うので、この話もやめることにする。とりあえず、おっぱい専門官、要するにブラジャーに詳しい人ってことでおそらく間違いはない。そういえば、ブラジャーを着けないほうが、おっぱいには良いらしいという記事をネットで読んだが、これは別に話だろう。
 
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「長い話」「挙動不審」「飲み薬」
▲縛り:なし
▲任意お題:「おっぱい専門官」「淫乱」
▲投稿締切:6/16(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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メンテ

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Re: 即興三語小説 ―どうでもいいゴシップは平和の証― ( No.2 )
   
日時: 2013/06/13 16:28
名前: zooey ID:NP6cDc6M

 ふと、背中に視線を感じ、心臓が縮む。それと同時に、聴覚を背後に集中させ、視線で前方に逃げ道を探す。その目はすぐに細い路地を捕え、次の時には歩が速まって、そこへ身を隠していた。外から見えない程度に奥に向かって進み、壁にぴったりと背をつける。目を瞑る。息を殺す。肩の上下がやけに大きい。頭では歯車が、ぐるぐる、ぐるぐる回っているよう。胸を打つ鼓動が、自己主張するように強い。
 しかし、しばらくじっとしていると、次第に頭の歯車が緩まっていく。次いで、思考が動き始め、ゆっくり、今の状況をなぞっていく。事務所、若頭、AV撮影、女の子――と、足元に何かが触れた。刹那、胸が凍りつく。思わず目を向けると、そこには――一匹の猫がいた。頭にその姿がくっきり刻まれると、胸の内が元の温度に戻っていく。そう分かってみると、足元にある感触は、柔らかく心地良い。何とはなしに、しゃがんで、頭から背にかけて撫でてやる。すると、その思いがけない毛並みの柔らかさと、体のしなやかさに、心が完全にほどけ、破顔してしまう。気が付くと、笑い声すら漏れていた。それに意識が留まると、やっぱりオレは猫が好きなんだな、と呑気なことが頭をよぎる。そして、改めて考える。なんでこんなことになったんだろうな、と。それは結構長い話になる。

 オレはある事務所の部屋住みだった。その名の通り、部屋に住み込んで、掃除や食事番、兄貴分たちの雑用なんかをこなしていた。要は、暴力団最下層のチンピラだ。
 オレらみたいな下っ端だと、付いてる兄貴分からもらう小遣いが唯一の収入源だ。だから、ケチなのに当たると何ももらえない。運の良いことに、オレの付いてた兄貴分はかなり気前が良い方で、毎日煙草をくれたし、偶に機嫌の良い時は、千円くらいの小遣いをくれることもあった。部屋住み二年目の新参にしては、かなり恵まれてる方だ。
 それでも、毎日、毎日、狭い部屋で雑用をこなすだけの生活をしていると、おかしくなりかけることもある。一番きついのは、夏だった。外が四十度近い熱さの日でも、部屋には冷房なんて大そうなものはない。しかも、空気もこもっていて、湿度が半端じゃない。重力が増したみたいな重みが、ずん、と肩にかかった。全身の毛穴から、玉になった汗が滲み、次第にそれが大きくなって、だら、と皮膚の上を伝い始めた。そのうち、体中の汗が垂れ流れ、額に貼り付いた前髪からも、鬱陶しく顔に滴ってきた。体の表面も内側も、べたべたするみたいだった。そんな、体が溶けちまいそうな気怠さの中、ひたすら終わりの来ない掃除を続けて、ただ、疲弊していった。それで、夏は、大抵、一人か二人発狂した。馬の嘶きみたいに叫びまくって、兄貴に殴られ、妙な飲み薬を口に押し込まれて、やっとおとなしくなる、という具合だった。オレはそうなったことはなかったが、そうなっちまうのは、分かった。すごく、分かった。こんな生活が永遠に続いていく、そう思うとオレもめちゃくちゃに叫びたくなった。

 でも、変化は突然訪れた。
 オレがいつも通り流しで食器を洗っていると、若頭が話しかけてきた。
「お前、ちょっと俳優の仕事、やらないか?」
 一瞬、何のことだか分からなくて、オレは白痴みたいに口を半開きにして、若頭を見つめた。でも、数秒後に、はたと思い当って、気付くと「はい」と答えていた。
 若頭は十近くの風俗店を取り仕切っていて、裏DVDの製作にもかかわっていた。そこいらからのミカジメ料が若頭の収入で、子分への小遣いもそこから出ている。オレら最下層の小遣いも、もとをたどればそこに行きつくわけだから、敬意がないわけじゃない。DVDに出演してくれということだから、申し訳程度でも、その恩返しができるわけだし、何より、それができれば若頭に目をかけてもらえる。そうしたら――オレはこの糞みたいな生活から抜け出せるんじゃないか? 眼前でどこまでも続く暗いトンネルの先に、やっと、光が、出口の光が、見えたようだった。
 それで、オレはAV撮影のために都内のあるホテルへ連れて行かれた。
 そこには、町で適当に引っかけられたのだろう女の子がいた。若頭やDVD製作側の男たちに囲まれ、事情を知ってか知らずか、にこにこ笑って話していた。しばらくすると、若頭は「ちっと相談してくるから、お前ら親睦でも深めてろ」と言って、他の男たちと部屋の外へ行ってしまった。
 オレと女の子だけが取り残された。そこで、やっと、オレは自分が何をどう話したらいいか、分からないでいることに気が付いた。一年以上狭い部屋で、同じメンツとだらだら過ごしていたために、人との接し方を忘れてしまっていたのだ。十七、八年、他人とべらべら喋っていた感覚は、不思議なくらい抜け落ちていた。一人で突っ立っていてもおかしいので、とりあえず女の子の隣に腰掛けた。
「何、きょどってんの?」
 女の子に言われ、オレの思考は弾けた。真っ白な頭で顔を向けると、彼女はまた口を開いた。
「挙動不審じゃん、絶対」
「別に」
 気づいた時には言葉が出ていた。寸秒遅れで追いついた意識は、何か続けようと思い、言葉を探した。で、なんとなく、思いついたことを言ってみた。
「お前さ、この撮影のDVDのタイトル、知ってる?」
「知らない」
「『淫乱女とおっぱい専門官』だってさ」
 言ってしまうと同時に、再び理性が追い付いてきて、ヤバい、と気づいた。一気に体が硬くなる。もし、この子が事情を知らずにここに来てんだったら、今のタイトルはさすがにマズイ。逃げられたりしたら、若頭にぶっ殺される。しかし、そう思った矢先、女の子は声を上げて笑い出した。
「マジで? 『おっぱい専門官』って、あんた? ヤバぁい」
 その様子に、緊張がすっと落ち、強張った体が緩んでいった。
 女の子は、あーウケる、とか言いながらも、笑いはすぐに収まっていた。ほっとはしたが、やはり話すことはなく、オレの胸では気まずさが所狭しと泳いでいた。そもそも、これからこの子にレイプ紛いのことをするってのに、お互いにそれが分かってんのに、なんでこんな普通に話なんかできてんだろう? そんな思いが波みたいに不安定に、心を漂っていた。
 オレが黙っていると、また唐突に、女の子が話し始めた。
「『専門』ってさ、漢字、間違えやすくない?」
「え?」
 すぐに意味が呑み込めず、オレが聞き返すと、彼女は再び、
「だから、『専門』ってさ、なんか『専』の上に点付けちゃったり、『門』の中に口書いちゃったり、しない?」
 あー、と言いながら頭の中で「専」という字と「門」という字をなぞってみた。「――言われてみれば、そうかも」
「でしょ? だからね、私、いい覚え方、見つけたんだ。あのね、『専門家には、手も口も出さない』って覚えんの。分かりやすくない?」
「うん」と反射的に答えていた。
 この時、オレは、頭にフィルターがかかったみたいで、彼女の言葉そのものが脳にまで届いてこなかった。ただ――彼女がこうやって話しているってことは、今、こんなくだらない話をにこにこ笑いながらしてるってことは、頭なんか通り越し、直に胸に来た。なんでそんな風に笑ってられるんだよ――
「あ、ほら! やっぱり! いい覚え方でしょ?」
 女の子は、顔をくしゃっとさせて、笑った。何のてらいもない、無邪気な表情。本当に嬉しそうだった。それで――その笑顔は、やっぱりストレートにオレの心に入ってきて、そこを抉った。できないよ、こんな子、犯せないよ。そう思うと、体が勝手に動き出した。なんでか分かんないけど、女の子の腕を掴み、体をぐっと引き寄せて、抱きしめちまった。腕の中の彼女の体は、びっくりする程小さくて、折れそうなくらいに細くて、くにゃくにゃと柔らかくて――猫みたいだな、と思った。それで、オレは完全にこの子にやられちまったんだ。
 そして、思いついた。夢みたいなことを。
「あのさ、これから二人で逃げちゃわないか?」
 どこまでも続いていたはずの、暗いトンネルの出口が、目の前で輝きを放っていた。白々した眩しい光が、オレに迫ってくる。そう、オレはいつでもここから出ていけるんだ。行こうと思えば、いつでも。
 
 それで、オレは、今、この細い路地にいる。組の奴らから隠れて。しゃがんだまま、足元の猫を一瞥し、ふう、と息を吐く。もうそろそろ大丈夫だろう。猫の頭を掌で包み、毛並みに沿って、ちょっと撫でると、じゃあな、と口の中で言って立ち上がる。その時、一抹の名残惜しさが、ちらちらと胸で灯った。でも、いいんだ。猫なら、オレのところにだっている。光の中、二人でどこまでも逃げていく、猫みたいな女の子が。
 オレは路地から出て、町の喧騒に戻っていった。
―――――――――――
二時間半くらいかかってしまいました。すいません。

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