Re: 電波の海を潜れ、『一時間三語』! ( No.3 ) |
- 日時: 2011/08/05 01:57
- 名前: 弥田 ID:Vrnz9ThU
なで肩がはかない曲線をえがいて、その上の白いうなじが見えた、から。ショートカットの揺れる少女が、ぼくのまえで解体されていく。下半身には串刺しされた無数の鉤。逆さに吊られて、笑顔の少女。血が昇って紅潮した顔は、宝石だとか、月だとか、林檎なんかを連想させて、とてもかわいい。しかし、それも数瞬のことで、爆ぜるように粉砕された腹部から、血だとか、臓物だとか、下痢なんかが垂れ落ちて、塗れて、あんなにも完璧だった少女のかたちが、断末魔よりも速く穢れていく。 「御身が苦しそうです。解き放ちましょうか」 と、別の少女の声。うなずくと、ちいさな手が、慣れた手つきでチャックをおろしていく。空気にさらされて男根が冷たい。それもすぐに粘性の熱に覆われる。 部屋いっぱいに赤い生命が充ちていた。無垢な少女は、教義のために喜んで散っていく。文字通り、散る。逆さに吊った少女を、万力をこめてバールで殴れば、この通り、ぱちんと爆ぜて、柔らかな肉をそこらじゅうに飛び散らせるのだった。濃霧のように漂う血しょうが、男の肌を、少女の肌を、……そしてぼくの肌を、濡らしていく。 「教祖さま、見とれているのですか」 耳元で、声。ぼくの上にまたがる少女の。混じって、かすかに熱っぽい息。上下する腰から、くちゅぽん、と音が聞こえる。 「そうだね、この光景はとても美しい。これこそ、神に捧げるにたる壮麗だ」 くすくす、と少女は笑う。顔をさらに近づけて、そっとささやく。 「嘘つき。ほんとは神様なんて、信じてないくせに」 ぼくはなにも言わない。言えない。ただ微笑むだけだ。 「ねえ、教祖さま、きみもあんな風になりたいんでしょう。赤くて、穢らわしくて、綺麗で、あんな風になりたいんでしょう。でも誰もきみを殺してくれないから、殺してくれるほど好きじゃないから、だからああして誰もに好かれる、かわいくて愛らしい少女を殺していくんでしょう。あなたの代わりに!」 ぼくはなにも言わない。言えない。ただ微笑むだけだ。 「いいよ。わたしが、きみのことを殺してあげる」 「……どうして?」 「きみのことが好きだから」 「どういう風に?」 「きみの望むままに」 「……キスをしてあげよう」 「いいよ」 そうして、ぼくらはくちびるを重ねた。舌と舌を触れあわせて、ねばついた、したたり落ちるようなキスをした。しばらくずっとそうして、やがて離れると、少女の口から唾液がだらだらと零れていった。 「足りないよ」 僕のものと少女のものとが混ざった唾液を呑みこんで、少女は言う。 「こんなものじゃ全然足りない。足りないの」 「愛情は赤色をしている」 「ねえ、きみのことが好きなんだよ。こんな言葉なんかじゃ、全然言い表せないくらい、好きなの」 「生命は赤色をしている」 「好き好き好き好きなの。ねえ、本当に分かってくれてるの? 好きなの。愛してるの」 「ぼくはぼくを祝福しよう。そして、きみを祝福しよう。われらの赤色に加護のあらんことを」 「でも、きみは誰だっていいんだよね。殺してくれれば、それで。それだけで」 あはは、とぼくは笑う。少女が右手にナイフを握る。その刃先が弧を描いて、飛び散る血しょうもまた、アーチを描いて、少女が、笑って、
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