Re: 即興三語小説 ―「あけましておめでとうございます」ってかぶってたらしい― ( No.3 ) |  
- 日時: 2015/01/06 23:28
 - 名前: しん ID:E2t3.zAc
 
  場所は種子島、みなさんご存知、日本で唯一ロケットをあげることができる施設がある島です。  そのロケット打ち上げ施設でのお話でございます。  次の日、人工衛星うちあげを控え、ロケットのチェックはおわっているのですけど、不安で胸がいっぱいになり、えんえんと同じとこをチェックしている男がおりました。  田中太助というのですが、この田中がチェックできるのは一部だけ。何度も何度もチェックするのですけど、そんな何度も同じとこをやっても、無駄だと、みんなから信頼されている田中のたずさわる機械が不具合をおこすわけがない、と上司の命令で帰宅を命じられます。  それでもこの田中、そんな何度もチェックしても、満足いかない。落ち着かない男です。けれども施設のもどってチェックするわけにもいきません。そこで田中は神頼みと、神社へお参りしにいこうということになりました。  神社へとむかう道中、田中は手ぶらでいって、少々のお賽銭で神様が願いをかなえてくれるとは限りません。  そこで、立派な一升瓶のお酒をかっていきます。酒がわからない田中、ともかくたかいのを、とかったら名前が「魔王」だったのですけど。  ついでに、道中でおあげさんを買いました。付近で一番大きい神社がですね、そう、狐の奉られたお稲荷神社だったのでございます。  神社につくとですね。少し困ります。お賽銭箱はあるのですけど、おあげとお酒をどこへおけばいいのかがわかりません。  仕方なく社務所にいくと、神主さんがきて、うけとってくれました。  その神主さんがお酒好きでして。  「魔王」にびっくり。これはいいものをありがとう、ちょっとまっててくださいなんていうものですから、待っていたら。神主さんが一升瓶をもってきました。しかしラベルなどはなにもついていません。  神主さんがいうには、それは御神酒といい、一度神様のささげたものをさらに神様からうけとったものだといい、素晴らしい力をさずけてくれるものなのだそうです。  田中はこれはいい、と頭をさげて、心底いたみいります、  田中は神社もでるときも何度もふりかえっては、頭をさげてありがたそうに御神酒を胸にいだき、かえっていきました。  田中は家にかえると、またロケットのことで頭がいっぱいになり、不安でイライラしてしまいます。  夜になり、ねようとしても、ねつけません。  そこで御神酒をのんで寝ようとおもいたち、御神酒を、飲むときのために買った升にいれてのみました。ふと気付くと、田中は意識を失っていました。
   朝おきると、寝るのがおそかったのと、お酒をのんだせいか、少し寝坊していました。  遅刻してはいけないと、急いで施設に向かいます。  どうにか間に合い、自分の担当部品をチェックしていると、ずきんと頭がいたみました。  田中の担当はエネルギー注入用のチューブの一部だったのですけど、頭のいたさで、ふと下をみたとき。  なんと、エンジンの一部から、シッポがでていました。  頭をふり、一度水をのんで、もう一度みても、やはりエンジンの一部にシッポはみえます。  基本黄色で、さきっぽが白い、もふもふしたくなるシッポです。  田中は自分の担当部分ではないのですけど、あまりに心配になり、その部分の担当者にチェックをお願いしました。  どうして? といわれて説明にこまります。  相手にはシッポがみえてないようですから、狐がエンジンの一部に化けているかもしれない、などは説明できません。  どうしても、とたのみこんで、チェックしてもらったら不具合がありました。  小さなヒビがあったのです。  ちょっとのヒビでもエンジンはこわれ、打ち上げ失敗につながります。  一度の打ち上げで100億くらいかかるモノであり、失敗すれば、それが一発でぱぁになり、多くのかかわった人間に類が及び、影響ははかりしれません。  それを事前に防ぐことに成功したのです。  みんな喜び、田中に感謝しました。  人工衛星の打ち上げは延期され、後に成功いたしました。  あのことをおもいだすたびに、田中は。  狐につままれたような気持ちになるようです。
  
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