バーチャル国会 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/01/17 00:56
- 名前: RYO ID:T30RkNSo
国家予算を決める会議場――といっても、そこに国会議員が集まる時代は、とうの昔。バーチャルで作られた議場に、各々議員たちが集まってリアルタイムに意見を交わす。バーチャルな会議場が作られた理由として、国会議員はあくまでも地方の代表であり、地方から離れて国会のために首都に出てくるのは、時間的にも経済的にも無駄である、という考えによった。これにより、議員宿舎は完全に解体、閉鎖され、国会議事堂はスーパーコンピューターに押し込められ、その中で大聖堂のような外観に作り変えられてしまった。余談だが、国会議員が地元にいることができるようになったことにより、国会議員が地方議員の役割を兼務できるようになった。結果、地方議員の存在意義は薄れ、大幅な地方議員の削減を可能にした。 「いいですか、北の脅威が続く限り、国防費を五パーセントも削るなどというのは、この国を北の食い物にしてもかまわないということですぞ!」 軍服姿の大層な髭を生やした老年の議員が叫ぶ。老年といっても、実際は四十くらいの若手で、軍服なんて着たこともない議員だが。 「北の脅威といっても、実際北が攻めてきたことなど、この半世紀なかったではないか。そのくせ、国防費の名目で毎年のように予算は増額されてきたではないか。もう予算削減の対象になってもおかしくあるまい。それよりこの国の教育の充実のために予算は使われるべきだ。教員を五千人増するために、十億の予算を頂きたい」 そう答えたのは赤のジャージ姿に、竹刀を右手に持った議員だった。一体、何を思って、そんなアバターを使っているのか? これもバーチャル会議の弊害だろうか? 「教育が重要であることは疑いようもありませんでしょうが、実際、教員を増やすといっても、教員の質というものが向上しなくては意味がありません。質の低い教員が量産されてしまったとしたら、それこそ教育そのものの質の低下になりかねません。それよりも、現代の子どもが何から、知識を得ているのかを考えますと、サブカルチャーです。ゲームしかり、漫画しかり、アニメしかり、映画しかり。サブカルチャーは我が国の教育の一端を担っているといっても過言ではないでしょう。いや、根幹といっていいかもしれない。我が国のサブカルチャーは世界に誇るべきものでありながら、これまで国家が保護をしてこなかったことは明白です。サブカルチャー振興費を作り、一層の発展を促したいのです」 私はサブカルチャーから、大切なことは学びましたと言わんばかりで電子の妖精が踏ん反りかえる。手のひらサイズの全身は黄金色で、体の回りには小さな球体が飛び回っている。がいや、そういう人も中にはいないとも限らないんだろうが、これでは完全に議論をすり替えてしまっている。 とそこで、議長をしていた電脳天使が軽く手を上げる。そんなことはお構いなしに電子の妖精の姿を借りた議員は続ける。 「いいですか? すでにお隣では、我が国のサブカルチャー文化を真似するだけでは飽きたらず、国家を上げて予算をつけてきています。このままでは、いずれ追い抜かれてしまうことでしょう。我が国のサブカルチャーを目指して、外国から留学生や旅行者が訪れています。それを逆手にとって、サブカルチャー大国として、国際社会に打ってでるのです。経済大国などと呼ばれていたあの頃を髣髴をさせるものが、国民にはいるのです。それはサブカルチャーなのです」 ひとしきり力説して疲れたのか、電子の妖精は肩で息をしていた。そこで、電脳天使が口を開いた。 「言いたいことははそれだけか?」 「は?」 電脳天使の言葉に、きょとんと電子の妖精はきょとんとした顔をした。と、次に瞬間、 「なんだ、お前ら。勝手に人の家に入ってくんなよ。あ、それ、この前並んで買った初回限定のフィギュアァァァァァ!」 電子の妖精が叫び、なにやら揉める音声が響く。 「大人しくしろ! 十一時二十二分、容疑者確保!」 「ああ、俺のコレクションが……。いいか、能無しの国会議員ども、この国はサブカルで成り立ってんだよ! 国防? 今時の奴らが、戦争するかっての。兵隊になる奴なんているかよ。俺は大事なことは全部、サブカルから学んだんだよ。教育? てめえらの言ってるのは、学校教育だろうがよ。教育ってもっと幅広いものじゃないのかよ」 「うるさい! 黙らないか!」 「ちくしょう! 俺にはもっと言いたいことがあるんだ! この国を、もっと生きやすい国に――」 そこで電子の妖精の音声は途切れ、アバターも消えてしまった。 「議長です。この国会に発言権のないものが、ハッキングして勝手に議論に参加していました。私のほうで極秘に当局を向かわせ、無事に確保しました。それでは、議論を続けてください。あえて、私の方で先ほど方に意見すれば、サブカルは、なぜ一位じゃないとダメなんでしょうか? 二位じゃいけないんですか? といったところでしょうか?」 議長はそううっすらと微笑んで見せる。 「無駄は省かないといけません。無駄は」 議長がそう続けたところで、議員の一同は一斉に口をつぐみ、何も言えなくなってしまった。 「皆さんの活発な議論を期待します。その中から何が無駄かは私が判断します」 議長こと電脳天使は、この国会を取り仕切るスーパーコンピューター。国会の議決の全権と全責任を負う。 「あれ、どうしたんですか? さあ口をつぐんでいる場合ではありませんよ。先ほども話したように、無駄は省きますからね。無駄は。皆さんの活発な議論を期待します」 議長はそううっすらと微笑んだ。
----------------------------------------------------------------- 2時間くらい。誤字脱字は未確認。 なんだこれ? 強引過ぎる。薄っぺらい。だめですね。駄作だ。 感覚が戻るにはまだ時間が必要です。<言い訳
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