Re: 三語「保存液」「そびえ」「砂時計」 ( No.2 ) |
- 日時: 2012/01/10 01:56
- 名前: 星野田 ID:pb5dvHKE
「保存液」「そびえ」「砂時計」 縛りは「最後は極上のハッピーエンド♪」 ジャンル:純文学 ***************
『連休』
【 】 その橋を渡るときは、呼ばれても振り向いてはいけない。祖母は生前、口を酸っぱくしてそう言っていた。自動車も通れないような横幅の古びた石橋で、住む人間も滅多に使わない。この橋には鬼が住んでおり、振り向いた人間を地獄への門に引き釣りこむそうだ。周囲は草木が好き勝手にそびえ、橋の名は雨風にけずれてもう読めない。そう思えば曰くつきの場所に見えなくもないが、人に忘れられた小さな橋だった。 ある日、橋の真ん中まで歩いたとき、後ろから「にゃあ」と聞こえた。振り向いた。
【 】 近くの公園で青空市場が開かれた。その一画にブルーシートを広げた老婆がいた。陽気に当てられうつらうつらとしている。のんびりとした雰囲気が気に入り、彼女の商品を眺めた。そのひとつに同じ大きさの砂時計がふたつ、横並びに繋がった置物があった。老婆はぼんやりとした口調で「金色の砂時計をひっくり返せば、五年若返る。銀色の砂時計は歳を取る」と言った。興味を持ったので、紙幣一枚と交換に砂時計を貰った。 家に持ち帰り、金色の砂時計を逆さにした。
【 】 メガネを壊してしまった。これでは危なくて外を歩けない。記憶を便りに一時間ほど部屋をあさると、コンタクトレンズの容器を見つけた。一度か二度はは使ったのだが、目にあわなくて結局メガネを愛用していたのだ。蓋を開けると保存液の中にはコンタクトレンズが入っていた。もういつのものだかは分からない。 このレンズを通して何を見ていたのだろう。そう考えながら、レンズをつけた。
【朝】 猫に餌をやり、靴を履いてドアを出た。
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