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RSSフィード [3] 即興三語小説-第87回- ドMってなんのことぼくわかんない
   
日時: 2010/12/18 22:28
名前: HAL ID:qB.BimAY

 サブタイトルに意味はないです。
 いい感じに柔軟に使えそうなお題が出揃いましたね。皆様の力作をお待ちしています! もちろん遊び心たっぷりの奇作も大歓迎です。
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「雲海」「陽光」「微風」
▲縛り:「(登場人物が)非常に疲れた様子を表現する」「情景の描写に力を入れる(努力目標)」「オシャレを気に掛ける描写を入れる」
▲任意お題:「温水」「海月」「任意」「錆び付いた錨」


▲投稿締切:12/26(日)21:59まで
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

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Re: 即興三語小説-第87回- ドMってなんのことぼくわかんない ( No.2 )
   
日時: 2010/12/24 18:05
名前: ぢみへん ID:9Fk4y2hc

 窓から差し込んだ、黄昏の陽光。いつからか顔面にその光をまともに浴びて私は目覚めた。丸く、小さな窓からは遥か遠くで神々しく金色に燃える太陽が雪原の彼方、地平線の向こうへ落ちようとしている――
 そこまで眺めたところで、私は自分が見ているのが雪原ではないことに気が付いた。
 実際それは、見渡す限り壮大に広がる雲海であった。一体どこから来てどこへ行くのだろう? 太陽と飛行機と、その下の全てを覆うかのような雲の大群だけが存在し、その雲の下に地上があるとは、一瞬、信じられないほどにも思えた。高度4000メートルを疾走する鋼鉄の機体から望む、夕闇の迫る大空を前にして、私は、不意に自分の口元に微笑みが浮かぶのを感じた。
 しかし次第に意識が目覚め始め、機内の現実を認めたあたりから、私はなぜ自分がここにいるのかを思い出す。止むに止まれぬ、危急の事情に迫られて私はここにいた。微笑みが苦渋に変わった。


 昨日の深夜のことだ。根回しや商談の取りまとめで一日中歩き回り、たった一人残ったオフィスで「今日も終電か」などと思っていたところへ、一度帰ったはずの部下がやってきた。
「大井さん、まずいっスよ」
「知ってる」
「えっ?なんで?」
「お前の愛妻弁当は不味い」
「実はそうなんスよお……じゃなくて!」
「何だ?」
「まずいッス」
「田中、もうそれは聞いた」
「コペンハーゲンとの通信が確保できません」
「そうか……ってなにぃい?!」
 コペンハーゲン支社との通信確保に目処が立たないということは、このとき、少なくとも私と田中には死活問題を意味していた。

 私の勤める商社はいわゆるグローバル企業で、東京本社の他に国内に3つ、海外はデンマークとアメリカ、インド、それから中国に支社を置いている。私と田中は海外の鉱物資源企業との――ごく小さなベンチャー企業から、デビアスのような巨大メジャーも含めた――渉外実務の担当を任されており、実際の実務は海外支社との商談アセスメントが中心となっていた。
 二日後に迫っていた東京-コペンハーゲン間のオンライン会議はダイアモンド市場に関する重要な会議という位置付けで、これが上手くいかないことは会社の意思決定において少なからぬダメージを及ぼしかねない出来事となる。なぜならその会議にはコペンハーゲン支社の担当者だけでなく、某メジャー鉱物企業の重役も出席する予定だったからだ。商談とはどれも失敗は許されないものと言いながら、実際には上手くいかないこともある。だがこの商談は絶対に失敗できない。
「どうしましょう」
「分かっていると思うが」大学を出てわずか2年の田中と違い、三十路も超えてある程度の酸い甘いを知った私には自慢ではないがこういうときにどういう態度をとるべきかが分かる。「彼が来るということは、我々にサイトホルダーの提案をしてくる可能性がある」
 サイトホルダーとはダイアモンドメジャー企業と特別のコネをもつメンバーのことで、このコネを通じて様々な要望に応え得るダイアモンドを入手できる可能性が高まるのがメリットだ。適当な石を言い値で買わせようともするから注意が必要ではあるが、そもそもダイアモンド市場のコネクションは極端に狭いので、利権関係も集中しているから、コネを持つことは商売の上で極めて重要な要因となる。
 生真面目な田中は右手で左手の親指を所在無さげに弄りだした。何百万ドルという話が、会議の延期で流れてしまうかもしれないというと、多くの人はそんな馬鹿な、と眉をひそめるだろう。
しかしサイトホルダーになりたい輩はゴマンとおり、そもそも正式な連絡ラインというものも存在しない。何から何までコネなのである。つまり、話があったそのときに商談を詰めてしまえなければ、次のある保証は全くないということになる。オンライン会議用のソフトウェアが基盤としている通信インフラに故障が発生した今、私たちに可能な選択肢は一つしかなかった。
「コペンハーゲンに行くぞ」


 それから12時間以上経ち、私と田中は共に飛行機の上にいる。
 コペンハーゲンに行くと決めた瞬間から田中は成田空港へ直行しブッキングに専念していたが、私はというと既に10時間近く経過したフライトに加えて、昨夜から殆ど一睡もできなかったために疲労感が抜けないままだった。田中のいない分も含めて急な出張によるしわ寄せを一手に引き受けねばならなかったし、さすがにもう若くはない。意識が一瞬飛んでしまうことが何度もあり、離陸直後にすぐ寝入ってしまったにも関わらず、まるで休んだ気がしないのだ。着ている服もそのままで、さすがに臭っているにではないかと心配になる。ファッションセンスを疑われるから、向こうについたら着替えなくてはならないだろう。
 だがそれより気がかりだったのは、帰りのフライトも入れると週末に一緒に遊ぶはずだった、子供との約束も叶いそうになかったことだった。少し、気が滅入っていたかもしれない。
 だが24歳の田中はさすがに元気そのもので、こっちの気も知らずに話しかけてきた。
「大井さん、すごいニュースですよ」
 こういうことを言うときの田中は、大抵当てが外れる。几帳面で記憶力も高いが、どこか抜けているのがこいつの特徴だ。最近の若者に多いのだろうか?
「古瀬絵里って知ってます?」
「さぁ……誰だ?」
「胸がでかくて、『スイカップ』って話題になった元アナウンサーですよ」
「お前の嫁とは対極の女か」
「ええ……」
「そこは否定しろ、嫁のために」
「…」
「で、その古瀬が何だって?」
「どうやら大きな障害を負ったらしいです」
「あまり面白くないニュースだな」
「僕、結構ファンだったんですけどねぇ~。残念ス」
 そんな話題に全く興味のない私は、手元にあったポータブルPCを起動し現地のニュースを確認することにした。今ヨーロッパは寒波がすさまじいという記事を見ると、ちゃんと到着できなかったらどうしよう、などと少し不安も生じたが、そもそも着陸できる見込みもないのにフライトが実行されるはずもないと自分に言い聞かせた。
 と、そのとき。私の注意が一つの記事に注がれた。
「……」
 知らないうちに機内食を取っていた田中が横から声を掛けてきた。
「大井さん、何か面白いニュースでも?」
「まぁ…な」
「何ですか? 教えてくださいよ~」こいつは子供の頃からこうやって生き延びてきたに違いない。
「お前、さっきのアナウンサーの話、どこで見たんだ」
「見たんじゃないです、空港のロビーで誰かが話すのを聞いたんですよ」
「ほぉー」
 私はPCのモニタを田中に見せた。田中は最初訳が分からないといった顔をしていたが、数秒してから噴出した。
「マジっすか」
「マジだな」
「何だよ~、恥かいちゃったな~」

 そのモニタにはこう書かれていたのだ。
『スカイプ、大規模障害発生。復旧見通し立たず』

「スカイプとスイカップを聞き違うとは、お前馬鹿だろ」
「いや~」田中の顔は真っ赤だ。
「会社のみんなに『スイカップ田中』誕生秘話を教えてやろう」
「いやいやいやいや」

 気が付くと窓の外はすっかり暗くなっていた。コペンハーゲンまであと10時間だと機内アナウンスが流れる。
 田中をからかって暇を潰すには少し長すぎるなと、私は思った。

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おひさしぶりです。ぢみへんです。
3時間くらい、特に何か構想があるわけでなく書きました。
もうちょっとヒネリをいれたかったんですけど…

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