Re: 新歓と書いて、三語と読め ( No.2 ) |
- 日時: 2011/06/05 01:17
- 名前: 二号 ID:E0o49xvo
「話しがあるんだけど、いいか?」 その日、竹林が雨宮の部屋を訪ねてきたのは夜の十一時を過ぎてからだった。 「かまわないけど、何も無いよ」雨宮の部屋の冷蔵庫には何も入っていない。「お茶もコーヒーも無い」 「ビールとつまみなら買ってきた」 「いいね、それは」 「それで、何の話?」 「その前に、乾杯しよう」
二人で缶ビールのふたを開け、飲み口をぶつけ合う。
「それで、何の話?」 「少し言いづらいことなんだけどな」 竹林は言葉を濁した。
雨宮と竹林は、大学の教養課程のクラスで出会い、友人になった。 竹林は人懐っこく、大柄で、雨宮の目には彼はどこのグループに入ってもリーダーシップを取れるような男に映った。雨宮そんな男がなぜ自分のような男に声をかけてきたのだろうかと不思議に思ったが、出会ったその日のうちに竹林に半ば強引に昼食に誘われ、いつの間にか竹林に心を許すようになっていた。
そして、そこで二人はもう一人の友人を作ることになる。彼女も二人と共に同じクラスを受講していて、名前をと言った。 彼女を一目見たとき、雨宮はかわいらしい女だと思った。 竹林は雨宮を連れて彼女に声をかけた。いつものように人懐っこい笑みを顔に浮かべながら、これから一緒に昼食を食べないのかと誘った。 彼女は少し迷っている間に、竹林はもう彼女をつれて教室の外に向け歩き出していた。
そんな風にして三人は中のよいグループを作り、少しずつ確実に親密になっていく。
時折、雨宮は言いようの無い不安に襲われる。 俺たちはいままで三人でやってきた。中々上手いことやってきたはずだ。しかし、三人という組み合わせは果たして正しかったのだろうか? 三と言う数は割り切れない数だ。初めは気にならなかったその数が、そのうちに大きな違和感として雨宮の中で存在感を大きくしていく。二人の男に一人の女。おまけに彼女は魅力的だ。そして竹林も何処か人をひきつけるような魅力がある。 二人の美しい個性を持った男女と、平凡な一人の男。三人の中心は竹林で、俺はそれを後ろから追いかける存在だ。一号とできの悪い二号。この関係が崩れ去るとしたら、それは多分、俺が割り算の中のあまりになると言うことだ。 三人という組み合わせは果たして正しかったのだろうか? 俺は、いつかこの関係が崩れ去ることを覚悟しなくてはいけないのではないだろう。それはきっとできるだけ早いほうがいい。今のうちに、なるべく傷の大きくならないうちに、自分の中で何かの区切りをつけなくてはならない。恐らく、二人と親しくなればなるほどに、俺は手痛い傷を負うことになるのだろう。 しかし、それが果たして友人に対しての正しい接し方なのだろうか。あまり深入りをしないように付き合っていく関係の中で、果たして正しい関係性、つまり友情のようなものがはぐくんでいけるのだろうか。 そして仮に俺が二人と距離を置こうとしたとしても、竹林はたやすくその隔たりを飛び越え、いつものように俺のすぐ近くに入り込んでくるのだろう。いつものように人懐っこい笑みをたたえたまま。俺は、彼女の魅力と共に、竹林の中にある種の輝きのようなものにも惹かれているのだろう。まるで光に群がる虫の本能のように、抗いがたい力で。 必要なのは、あるべき距離感だ。少なくとも、彼女に対しては。 しかし、もう手遅れなのではないないだろうか。
竹林は一息にコップを空にした後に、口を開く。 「俺は明日、彼女に告白をする」 雨宮はその言葉を聞きながら、ついに来るべき時が来たのかと感じた。 「そうか」 しばらく沈黙が続いた後、竹林が口を開く。 「いいのか?」 「何が?」 雨宮は竹林の言わんとすることが理解できたが、とっさに気づかないふりをした。 「つまり俺は」竹林は何かを言いかけてやめた。「いや、わからないのならいい」 「きっとうまくいく」 雨宮は言った。
竹林が帰った後で、やはりこれが結末なのかと雨宮はため息をついた。何処かでそれについて深く考えないようにしてはいたが、やはりこうなった。 やはり俺は、距離感を間違えてしまったのだろう。
すいません。途中と続きが描ききれませんでした。これが洗礼ですね。ぐわー。
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