Re: 即興三語小説 ―春暁― 延長戦決まりました ( No.2 ) |
- 日時: 2015/05/06 20:18
- 名前: マルメガネ ID:4b5Sh0Ac
心地よい春眠から目覚めたケイが目覚まし時計を見る。 目覚まし時計はセットした時刻よりも一時間ばかり過ぎ去っていて、彼女は大慌てで起きた。 セットした時刻にけたたましく鳴り響いていただろう時計を無意識のうちに止めていたのかもしれなかった。 「あっ…。今日は、カフェのお仕事お休みだった」 慌てて身支度をしていて彼女が気づく。 その日は勤めているカフェ『アロジムロジ』の店休日であり、彼女が付き合っているいつも右目に黒革の眼帯をしている美形のタツキが来そうな気がして、急いで部屋の掃除にとりかかった。 「ケイ。いるかい?」 玄関先のベルに続いてインターホンを通して彼の声が聞こえる。彼がやって来たのだ。 お気に入りのタマムシ色の掃除機をかけていた彼女は、掃除機のスイッチを切ってそのまま置くと、インターホンに出た。 「ちょっと待ってね」 ケイがそう言って玄関のセキュリティドアを解除すると、彼が入ってきた。 「あっ…。 掃除中だったの?」 「う、うん。ちょっとね」 状況を察した彼に少し恥ずかしそうにケイが答える。 「なんなら、手伝ってあげるよ」 タツキがそう言ってきた。 「いいの?」 ケイが聞き返す。せっかく来てくれたのに手伝わせるのもなんだろう、と彼女は思ったが、彼のほうはそんなことは気にもせず、さっさと手伝い始めた。 「あれ? なんだこれ?」 テーブルの上のものを片付けていたタツキが何かを見つけた。 それは何かしら古びた黒いものだった。 「ああ、それ。忘れていたの。あなたが忘れて帰ったものよ」 「おれの? 何だろうな」 タツキがいぶかしがっていたが、やがて思い出したらしく、 「ああ、そういえば、ここへ来て泊まらせてもらったとき、忘れて帰ったような気がする」 と言った。 「そう。そのときよ。あたしも忘れていたんだけど」 ケイが答えた。 タツキが発見したものとは自分の黒革の眼帯だった。 彼は発見した自分の眼帯をしげしげと見ていたが、やがてポケットにそれを押し込んだ。 ケイの部屋の掃除はそのあとしばらくして終わった。 ケイがコーヒーサーバーからコーヒーをカップに注ぎ、それを来た彼に差し出しながら 「悪かったわ。来てもらったのに手伝わせて」 と謝った。 「いや、おれもさ。連絡もなしにいきなり来て悪かったよ」 タツキが言う。 どうもお互い様だったようだ。 二人は仲がいい。 「それにしても…」 「それにしても?」 ケイがタツキに聞き返す。 「まさか、ケイの家に自分のモノがあったなんて…。びっくりだったよ」 タツキが苦笑いする。 「じゃぁ、それまでどうしてたのよ?」 今度はケイが不思議がった。 「たまたま、コウさんに新調してもらったのがポケットに入っていたんだ」 タツキがそう話す。 彼が、コウさん、と言った人物は町外れで倉庫を改造した工房兼住宅で暮らし、革細工をしている大柄で温厚な職人である。 ケイはタツキの素顔を見てみたくなったが、眼帯の下を見るのは少し気が引けた。 しかし、よく見ると彼がしている黒革の眼帯には何かしらの紋様があることにようやく気づいた。 革細工職人の遊び心なのだろう。 「ところで、危険がいっぱいの裏のお仕事は?」 「今のところないね」 彼はそう言うとカップに残ったコーヒーを飲み干した。 ________________________________________________
久々の参加です。話が途中なのはこれ以上思い浮かびませんでした。
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