Re: 即興三語小説 ―二月ってなかったことにされるよね― ( No.2 ) |
- 日時: 2015/02/06 10:13
- 名前: マルメガネ ID:4b5Sh0Ac
某国とその国は戦闘状態にあった。 そんなある日、傍受した暗号。好転のチャンスとばかりに暗号解読が図られる。 しかし、その暗号を解くにあたってエラーが出た。 トランプに例えるならジョーカーを引いたようなものになるかもしれない。 「パンツは旅行中」 という暗号である。 「我々のメンツにかかわる重要なことだ。直ちに解読を」 情報部の部長が叫び、局員がキャラメルの粘りよろしくリロードを開始し、ようやくその暗号を解読した結果、 「機甲師団(パンツァー)は出撃せり」 となった。 それには、解読した局員も驚き慌てふためいた。 解読に時間がかかりすぎて、迎撃する余裕する時間はほとんど残されていなかった。 解読成功の報を受けた軍司令部は上の下への大騒ぎになったが、敵の思う壺にはまることを恐れて、直ちに駐屯している兵力をかき集めて待った。 しかし、一向に来ない。 さては偽の情報だったか、と思っている矢先にそれはやって来た。 機甲師団、つまりパンツァーどころではなく、航空攻撃部隊までもが。 「やられた」 指揮官が叫ぶ。 たちまち戦闘が始まったが、多勢に無勢。 かき集めた兵力ではとてもかなわず、さんざんにやられたあげく全滅してしまった。 その報は敵国にももたらされた。 「まさか、あんな暗号でうまくいくとは思いませんでしたな」 某国の暗号の立案者がそう言うと、それを聞いた将軍は 「ああ。そうだね。でも、あれは情報戦といえどもフェアーじゃないね」 と答えた。 立案者はそれには沈黙した。 某国とその国の間で和平交渉が行われたのは二年後。長い間続いていた戦闘も終結を向かえ、平和が戻ってきた。 その国を苦しめた暗号「パンツは旅行中」は、後に伝説となって語り継がれることになるとは、暗号の立案者も将軍も、解読した情報部も知らないことだった。
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