記念の蹄鉄 ( No.2 ) |
- 日時: 2013/02/20 00:08
- 名前: マルメガネ ID:eLEfDTic
春とは名ばかりで寒い日が続き、その日はみぞれがぐしゃぐしゃと降っていた。 馬のゴンザエモンの蹄鉄が合わなくなり、新調することにした。 古い蹄鉄が外され、装蹄師が金敷とハンマーでリズムを刻んで新しい蹄鉄を調整し、削蹄師がゴンザエモンの伸びた蹄を削る。 立ち上る煙と蹄が焼ける匂い。打ち込む釘の音。 ヤスリがけされて仕上がるまで、ゴンザエモンはおとなしくしていた。 「おっさん。ゴンちゃんの古い蹄鉄はどうするかな?」 汗だくになった装蹄師が聞いてきた。 「いつものことじゃが、記念にするわ」 私はそう答えた。 ゴンザエモンを家に迎えて何年になるだろう。 成長するに従って、取り替えた蹄鉄がコレクションになっている。 小さかった頃のゴンザエモンの蹄鉄。大きくなったゴンザエモンの蹄鉄。 私は代金を支払うと、新調した蹄鉄を装着したゴンザエモンに跨り、ゴンザエモンの古い蹄鉄を持ち帰った。 そしてそれらを専用に作った木枠にかけて釘で止め、新調した日を書き込んでおいた。それは我が子の成長を見るようで、いい記録になっているのだ。
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