冬の陣@2012の開催を宣言しました。今から準備すれば間に合いますよ。ふるってご参加してくださいませ。--------------------------------------------------------------------------------●基本ルール以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。▲お題:「変色」「神がかっていた」「臨時ニュース」▲縛り:「観測調査船を作中に出す」もしくは「SFにする」▲任意お題:「血痕」「警察官」▲投稿締切:9/11(日)23:59まで▲文字数制限:6000字以内程度▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。●その他の注意事項・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)・お題はそのままの形で本文中に使用してください。・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。●ミーティング 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。--------------------------------------------------------------------------------○過去にあった縛り・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)・舞台(季節、月面都市など)・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)-------------------------------------------------------------------------------- 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ! それでは今週も、楽しい執筆ライフを!
▲お題:「変色」「神がかっていた」「臨時ニュース」▲縛り:「観測調査船を作中に出す」もしくは「SFにする」▲任意お題:「血痕」「警察官」です。「臨時ニュースです。現地時間午前九時、アメリカのアリゾナ州から飛び立った観測調査船の乗組員達の安否の確認が取れました。七十二時間以上、上空に停滞する地球外宇宙船に入った後、送信機、発信機の反応が途絶え、アメリカ西海岸沿岸に不時着していた模様です。調査員の五名とも命に別状ない模様です。おって連絡をお送りします」 地球の誰もが興味を持ってテレビに釘付けだった。 上空わずか三百メートルたらず、そこに突如として宇宙船は現れた。一つの街を覆い尽くすほどの大きさ、直径五十キロメートルの変色した? 何色ともつかない、見る人や角度によって色の定まらない円盤の真下は夜も同然で、人々の不安を煽る。神がかっていた状況に日夜祈る者も少なからずいる。祈っても無駄な時代だというのに。 相手から連絡がない以上、地球側から行動するしかない。「ええ、中は全くの空っぽだったのです。私達は隅々まで調べました。様々な器具を用いましたが、何も、誰も無かったのです、宇宙船の底に巨大なファンがあるだけなのです」 隊長、調査員全員が同じ事を言っていた。宇宙船内部を撮影した映像からも同様だった。 各国の調査員も搭乗するが、何一つ得られなかった。 これをどうするのか? 地球人はどうもしなかった。宇宙船の真下の街は、夜の街として観光を募っていた。すぐに日常になる。時間を置いて、一つ一つ、宇宙船が地球を覆い尽くすまで誰も不思議と思わなかった。 早朝、人知を超えた映像がそこにはあった。 それは空一面がまばゆいばかりの光を発していた。 何も描かれていない画用紙の白、真っ白、まさに世界は白く包まれている。 微かだが近所の家々の輪郭だけが浮き出ている。 人々は靴も履かずに外へと飛び出し、光を全身に浴び、自らも白へと溶け込ませる。その光は人々の体の自由を奪うと空へと持ち上げた。「どうなってんだよこれ!! なんなんだよ!!」 阿鼻叫喚の叫びとともにいたるところで同じ声が聞こえる。 それでも光は上へ上へと天使の人々を天国へと浮かせる。 手足を回して踠いても何もつかめず光の空へと引き上げられる。 考えられるのは夢、もしくは自分は死んでいる。 これが終わりなのか、これから始まるのか何もわからない。 ろくな答えも出せないまま、どんな想像もつかないまま、ただ白い光へと導かれていく。 息苦しい、どのぐらい上がったのだろう? 視界といえば何一つ存在しない真っ白な空間、もう、上下の感覚もなくなり、果たして浮いているのかも分からない、ただ人々、動物の歓喜、狂気の声だけは耳に届き喘いでいる。 やがて地球人は見ることになった。 見た後全てを理解した。 光の奥にある巨大で壮大なミキサーに人々、動物達は吸い寄せられていく。 現実とは、かけ離れた映像を直視した人類はこう思った。 凄い夢だな… 人類が築き上げた文明、歴史、芸術は一日にして全くの無に帰る。 人の価値とは食料でしかなかった。 いくら人々に幸せをあたえたところで食料、いくら愛を分かち合ったところで食料、いくら子供を産んだところで食料、いくら子供の成長を見守ったところで食料、いくら円満な家庭を築いたところで食料、いくらお金を稼いだところで食料、結局は、いくら人に慕われたところで食料、いくらがんばったところでやっぱり食料、いくら面白い小説を書いた所で食糧、老若男女、人種をなくし平等に、人類最後の大収穫、まさに地獄絵図、地球を囲う、宇宙船の光の奥の無数の巨大ミキサーに増えすぎた人々、地球上の食料達は吸われていく。 抵抗もなしに、見るも無惨なグチャグチャの細切れミンチにされていく。 全ての生物、人々の悲鳴が大合唱となり、地球規模で壮大なグランドフィナーレ、ファンファーレを巻き起こす。 一通り、大半を収穫されると送られた衝撃波が地球の表面を削り、水、海を全て枯らし生物、地球に君臨していた人類はいとも簡単に根絶やしされた。そう、かつて地球を支配していた恐竜の時代がそうであったように。 地球は繰り返される放牧地、次の動物が進化し、莫大に増加し、次なる地球を支配しても再び血肉と化した食料にされる。 1250万年後、次に地球を支配したのは、恐竜でも、人類でも、チンパンジーでも、ゴリラでも、オラウータンでも他の類人猿でもなければ、犬や猫でも鼠でもなく、イルカや鯨でもなければ、ゴキブリでもカラスでもなかった。 以外にもコウモリ。 そう! 夜の帝王、真っ黒なコウモリが進化し、次なる地球の頂点に君臨した。 進化し、飛べなくなって人間と同じまで文明を築いても、その闇夜に染まる黒だけは抜け出せないままでいた。 そして、何も知らずに彼らもまた収穫される。
一見して穏やかそうに見える海も実は荒々しい表情を垣間見せることがある。 太平洋上の某地点でそれは確認された。 群青色の水面に横たわる黄褐色の帯。 変色した海域は激しく煮えたぎり、硫黄の匂いが鼻をつく。その場所は海底火山が多数存在している海域であり、過去何度も噴火しているのが目撃され、また魔の領域とされ忌み嫌われていた。 火山活動が活発化しているとして、観測調査船が出され綿密な調査が始まると、その変色域はさらに拡大し、噴出地点も増えた。「臨時ニュースを申し上げます。太平洋上にて、海底火山の観測に乗り出していた観測調査船が消息を絶ちました。乗組員三十名の安否が気遣われます。今現在、海上保安庁の巡視船二隻が捜索にあたっている模様。詳細は、のちほど情報が入り次第お伝えいたします」 ある日、そのニュースが流れ、人々は驚愕した。新領土が誕生するかもしれない、という密かな願いの裏に。 現場に急行した海上保安庁の巡視船は、付近の海域を捜索していたが、それといってめぼしいものは見つからず、噴火の危険性も高まってきているためそうそうに引き上げた。 と、そのはるか彼方で水面がまんじゅうのように盛り上がり、激しい水柱と粉々に砕け散った岩石が四方八方に飛び散り、噴き上がった煙が空高く立ち上った。激しい轟音が辺りを震わせる。 噴火である。 降り注ぐ生まれたての軽石。そして厄介な細かな火山灰。引き起こされた高波。そして吹き荒れる熱風。 木の葉のごとく揺れる船舶は、回避行動に出た。 その操船はまるで神がかったようだった。「臨時ニュースを申し上げます。先ほど入りました情報によりますと、消息を絶った観測調査船の捜索にあたっていた巡視船二隻が、海底火山の噴火に遭遇。各船ともに被害」 灰を被り、軽石の直撃をうけて窓ガラスが割れ、船体も損傷した巡視船の姿が映像として映し出された。 巡視船がとらえた噴火の映像も生々しく、その場で核実験でも起こったような錯覚すら覚えるほどだった。 その衝撃的なニュースが報道された二日後、派遣された別の巡視艇と巡視船が、波間に漂う観測調査船の残骸を発見した。 軽石が大量に浮遊している海域から少し離れた場所であった。どうやら、噴火に巻き込まれたらしいのは確実であり、残され波間に浮かぶ船体は激しく傷つき、かろうじて船名が読み取れるほどであり、何十年も歳月が流れたようにみえた。 しかし、乗組員三十名の行方は分からなかった。 すべてが絶望的であった。 生存者がいると信じ、関心を寄せていた国民から落胆した声と深いため息が漏れたのはいうまでもない。 噴火はその後も絶え間なく続き、海上にぽっかりと小さな島が誕生した。 その島も激しい潮流による浸食を受けつつも、爆発的な噴火と緩慢で大量の溶岩を噴出する活動を繰り返し、確実に面積を拡大していった。 それから数年、数十年の歳月が流れ、人々の記憶から悲劇が消え去ろうとしていたとき、その島の付近に観測調査船が現れた。 月面を思わせるような凸凹して、多数の噴気孔、噴火口が蒸気を発している島の調査が目的だった。「黙祷」 船の甲板に立った乗組員が、黙とうを捧げる。 彼らは忘れていなかった。 かつて、ここで観測調査をしている最中にあえなく噴火に巻き込まれ、殉職してしまった仲間、あるいは先輩たちを。 その彼らに島は噴火することもなく、開いた多数の噴気孔や噴火口から、静かに湯気を立てているだけだった。変色した海の色は相変わらずであったが。 またその海域で激しい活動がいつ起こるのか全く予想はできない。 それがひとたび起こると、それは最強の核爆弾に匹敵するエネルギーが放出されるに等しいのだ。 その力の前に人の力は到底及ばないのである。
天気の良い昼下がり。目の前には青い空と青い海が広がっていた。 いつもと変わらない風景。何も起こらない平和な港町。 それをぼおっと眺めながらまったりしていた俺の視線の隅に、見慣れない一艘の白い船が現れた。「何だ、あの船?」 定期船が到着する時間ではない。かといって、貨物船にしては船体が綺麗すぎる。 俺は船体に書かれている文字を見ようと、派出所の外に出る。「く・ら・げ……?」 船の側面には、ひらがなで確かにそうペイントされていた。 不思議に思った俺は派出所に戻り、パソコンで『くらげ』を検索してみる。「何? エチゼンクラゲ観測調査船だって?」 画面に映し出されたネットの情報によると、なんでもエチゼンクラゲの生態を調査するために造られた船らしい。大量発生するエチゼンクラゲを捕獲し、それに含まれる炭素の量を測定してCO2排出権の取引に用いたり、さらにはバイオ燃料としての活用を研究しているのだという。 へえ、そんな船があるんだ、と俺が感心していると、突然机の電話が鳴り響いた。「はい、こちらは港町派出所。どうかしましたか?」「ひ、人が、し、死んでいるんです。早く来て下さい」「どうか落ち着いて下さい。場所はどこですか?」「観測船『くらげ』の中です」 俺は受話器を持ったまま、正に接岸せんとする白い船に目を向けた。「おまわりさん、こちらです」 調査観測船くらげに到着した俺は、早速船内に案内された。 階段を三階分くらい降りた場所にある小さな船室の中に、一人の男性がうつ伏せに倒れている。「脈なし。息もしていない……」 確認したところ、確かにこの男性は死亡しているようだ。唇も紫色に変色している。 それよりも驚くべきは、男性の頭上には血だまりがあり、その血を使って文字が書かれていたことだった。『……神がかっていた』 床のその文字は、息絶える前に男性が指で書いたものらしい。男性の右手の指先には血が付いており、最後の『た』の文字のところで指は止まっていた。「ダイイングメッセージか……」 最初の『神』の前にも文字が書かれていた形跡があるが、血だまりが広がってしまっていて読むことができない。 さっぱり意味が分からず途方に暮れた俺は、刑事が到着するまでの時間に乗組員から情報を集めることにした。 死亡していたのは、大神一郎。三十八歳。調査観測船くらげで働く唯一の研究員だった。 そして船室には五人の乗組員が集まった。名前は、八神二郎、石神三郎、神宮寺四郎、森神五郎、野神六郎という。「この血痕を見て気付いたことがあったら教えてほしい」 俺が五人に質問すると、互いに顔を見合わせてからうつむき、黙り込んでしまった。 事件には関わりたくないという雰囲気が、それぞれの表情に浮かび上がっている。「どんな些細なことでもいい。知っていることがあったらなんでも話してくれ。頼む」 警察官の分際で刑事まがいのことをするのはどうかと思ったが、現場に一番乗りできることはもう二度とないだろう。俺はこのチャンスをものにしたかった。「もしかして……」 俺の情熱が伝わったのか、最初に沈黙を破ったのは一番若そうに見える八神だった。「そこに書いてある『神がかっていた』って、石神さんが買ったアレのことなんじゃないスか……」 すると名指しされた石神が八神に食ってかかる。「おいおい、物騒な事言うんじゃねえよ。俺は何もやってねえぞ」「だってあんた、アレを散々自慢してたじゃねえかよ」「ちょ、ちょ、ちょっと待った。喧嘩は止めてくれ。ところで、アレって何なんだ?」 俺は飛びかかろうとする石神を押さえながら八神に質問する。「コンバットナイフっスよ。通販で買ったとかいう石神さん自慢のナイフで、大神さんを指したんスよ、きっと」 すると、横の方から低めの渋い声がする。「いや、これは刺し傷じゃないですよ」 見ると、森神がしゃがみ込んで死体の頭部を覗き込んでいた。「むむむむ、もしかして……」 今度は森神が自分の推理を口にする。「メッセージの『神がかっていた』というのは、野神さんが飼っていたアレなんじゃないですかね?」 すると、死体から離れた場所に立っていた野神がうろたえ始めた。「ぼ、ぼ、ぼくが飼っているヒョロちゃんは、け、け、けしてそんなことしません」 ヒョ? ヒョロちゃんって何?「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。ちゃんと教えてくれ。ヒョロちゃんって何なんだ?」 慌てて俺が質問すると、しゃがみ込んでいた森神が野神を見上げるようにして言った。「野神さんが飼っているヘビですよ。見た目、もの凄く凶暴なんです」 野神は顔を真っ赤にして反論する。「ヒョロちゃんはちっとも凶暴じゃありません。それよりも神宮寺さんが狩っているラージャンの方がよっぽど凶暴じゃないですかっ!」 おいおい、今度のラージャンって何だよ。それに『狩ってる』ってどういうことだ? 第一、『神宮寺』って『神』の文字で終わってないからダイイングメッセージの内容にも合ってないぞ。 俺はさっぱりわけが分からなくなった。「ここまでだ。神宮寺、お前をモンハン賭博およびに殺人容疑で逮捕する!」 突然、太い声が部屋に響き渡る。敏腕警部のお出ましだ。「容疑者の引きとめ、大変感謝する。ご苦労であった」 そして警部は俺に向かって敬礼をした。 ちぇっ、もう終わりかよ。もう少しで謎が解けるところだったのにな……。 俺は警部に敬礼を返し、渋々と現場を立ち去った。 今日も港町はいい天気。青い空と海を見ながら、俺は派出所でぼけっとしていた。『臨時ニュースをお伝えします』 せっかくラジオから好きな曲が流れていたというのにニュースで中断かよ。全くついていない。『昨日逮捕された神宮寺容疑者の供述を元に、先程から都内のモンハン賭博場の一斉捜査が行われ、三十人以上の組員が逮捕された模様です』 ああ、そういえば昨日そんな事件があったっけ……。 後で聞かされた事件の真相は、おおよそ次のようだった。 モンハン賭博をしていたのは、殺された大神一郎、逮捕された神宮寺四郎、そして一番若い八神二郎の三人。神宮寺と八神のモンハン対決がネット賭博の対象となり、それをジャッジしていたのが大神だった。 勝負は表向きには神宮寺の勝ちで、彼は一千万円以上の大金を手にすることになった。しかし、大神は神宮寺が密かに禁止アイテムを使ったことを見抜いており、それをネタに神宮寺をゆすったのだ。その結果、大神は神宮寺に殺されることになってしまった。あのダイイングメッセージは、『八神が勝っていた』と書こうとしたのではないかと、警察では考えている。 まあ、こんなところだ。俺にはさっぱり関係ないけど。「おまわりさん、今日も暇そうだね」「だったら僕達と遊んでよ」 いつの間にか、ガキどもが派出所を覗き込んでいる。「こらこら、俺は忙しいんだよ。あっち行け」「あっ、ひまひまひまわりさんが怒った」「やーい、税金泥棒~」 ちぇっ、最近のガキは嫌な言葉を知ってやがる。そこまで言われたらちょっくら相手をしてやるか。「おーいお前達、ラージャンって何だか知ってるか?」 俺は昨日聞いた気になる単語を質問してみた。「知ってるよ。モンハンに出てくるすっごく強いモンスターだよ」「もう、めちゃくちゃに暴れまくるんだ。アイツ大嫌い!」 モンスターハンター。 今や、生活の隅々まで入り込んでしまっているゲームだ。そして俺が最も苦手なゲーム。「そう、ありがとよ。じゃあ、あっち行け!」 俺はガキどもを追い払うと、また机に寝そべって海を眺め始める。ラジオからはアップテンポな心地よい曲が流れ始めた。 また何か違う船がやって来ないかな……。 ここ港町では今日も平和な時がゆっくりと過ぎている。 --------------------------------------------------久しぶりの投稿です。3100文字くらい。3~4時間かかりました。いつものように、何だかわけが分からない作品になりました。よろしくお願いいたします。
臨時ニュース、臨時ニュース! われらが『ワルキューレ団』のダキム隊長様が、悩めるみんなのためにとっておきの食糧を持って帰ってきましたよ! ……なんてな。 アジトへ続く階段を上りながら、つまらない冗談に俺は顔をしかめる。ついでにわき腹も痛む。「お腹すいてるの?」なんて言われないようにしないと。 いまやテレビなんてものを気にする余裕などない。人間の階層化が進んだこのご時世、最下層にいる俺たちにとっては、打ち捨てられた廃墟群に集団で巣くって飢えをしのぐのが精いっぱいってところだ。 食い物はいつも不足している。上層の奴らが繁華街で食い残したゴミを、警察の連中に気づかれないよう深夜にこそこそ動きまわって集めるしか方法はない。サイボーグ強化された警察官どもに見つかれば、改造で理性まで吹っ飛んでしまった奴らの『お仕置き』をその身に味わうことになる。 裏通りのあちこちに残された血痕が、暴力のすさまじさを物語る。半身不随にされるのも珍しくない。いっそ殺してくれたほうが幸せかもしれない。俺たちのアジトの奥で、口と肛門しか動かなくなった奴を三日間世話してた時はつくづくそう感じたものだ。 俺たちは、上層階級でしたり顔をしている富豪どものおもちゃにすぎない。こんな廃墟区画などさっさと更地にして、ついでに俺たちも粉みじんに押しつぶしてしまうことだってできるはずなのに、いつまでも放置しているのはそのほうが面白いからだろう。「ダキム兄ちゃん、おかえり!」「今日はいっぱいとってきたね」「ぼくこれ食べたい!」「だーめ、みんなでわけっこしなくちゃ」 それでも、ここにいる年下の連中の笑顔を見るたび、多少の喜びがわいてくるのはなぜだろう。こいつらはいつも、俺の持って帰ってきたなけなしの食糧を実にうまそうに食べる。変色し、一部に虫がわき、ぬめりを帯びて酸っぱくなった食い物を、神様からの贈り物か何かみたいにありがたがって口に運んでいる。 上層のクズが何も考えずに快楽目的の性交を繰り返し、産まれた赤ん坊を下層に放り捨てる。優秀な子供は遺伝子操作をしたうえで試験管から生まれ、形ばかりの親の愛情と英才教育で親そっくりに育っていく。クローン技術が発展した先にこんな未来があることを、数十年前の学者たちは予想だにしなかっただろう。 だから俺を含め、ここにいるガキはみんな『できそこない』だし、だからこそ上層の奴らにとってはいい観察対象になっている。打算や論理、計画の外側で育っていく子供がどんな人間に育つのか、奴らはきっと舌なめずりしながら見守っている。「おかえり、ダキム」 数少ない同年代の一人、ザインとユマが廃墟の奥から遅れて現れる。十年前は同い年だけで十人はいたはずなのに、今はこの二人だけ。それでも――いや、だからこそ、こいつらは俺の大事な親友だ。顔を見るたび安心できる。 わき腹の痛みもしばし忘れるほどだ。食べなくても何とかなるだろう。「ただいま。ザインも何か食べるか」「僕はいいよ。まずユマに食べさせてあげなくちゃね」 すっかり小さくなってしまったユマを持ち上げ、ザインが小さく微笑む。子供の頃から羽根みたいに軽くて、俺が抱きしめるたびに顔を赤らめていたユマも、今ではザインがつきっきりで世話をするようになっている。たとえ両手両足をもがれ、眼球をえぐりだされ、乳房に刃物で胸糞悪い文句を刻みこまれ、あげく妊娠していたとしても、ユマは俺が生きてきた中でたった一人、心の底から愛した女であり続けるだろう。「じゃあ、頼む。俺はもういっぺん回ってくるわ」「えっ、でも」「俺は大丈夫だ。もともと頑丈にできてんだよ。お前こそちゃんと食っとけ」 本当は君も空腹なんじゃないのか、と言いたそうな顔が俺を見つめてくる。そんなことはない。俺が今食べるより、お前たちが食べるほうがずっと大事だ。「わかった。気をつけて。今度、君にまで何かあったら――」「何年同じことやってると思ってるんだ。気にすんな。行ってくる」 それでも、ユマの姿を正視することはできない。全身、包帯でぐるぐる巻きにされてザインに抱えられたあの物体がユマだなんて、本当は信じたくない。信じれば、過去のあいつの面影まで全部、塗り替えられてしまいそうな気がする。 だから俺はさっさとその場を離れ、また一人で食糧探しに出た。 ユマが変わり果て、ザインがその世話に追われている今、回収効率は確実に落ちている。このまま俺一人で無茶な食い物集めを続けていたら、今度は俺がユマみたいになってもおかしくない。そうなればあいつらはどうなるか。 やめだ。考えすぎるのは悪い癖だ。考えて危険を逃れたことは何度もあるが、危機に陥ったことだっていくらでもある。まして一人で行動していればなおさらだ。もうかつてのようなやり方ではいけない。俺には力が必要なんだ、力が。 外に出ると、物心ついてからこの方、ずっと変わらない灰色の雲に覆われた空が俺を見下ろしている。この厚い雲の先に目の覚めるような青空が広がっている、なんて本当だろうか。書物というものは、嘘みたいなことを何げなくさらっと教えてくれる。 廃墟区画に図書館なんてものがあったことを、俺は感謝しなくちゃいけない。おかげでまともに考えることができるし、わずかな自由時間に退屈することもない。それさえ上層の連中が仕組んだ計画どおりなんてのが真相だとしたら、さすがに笑うしかないが。「ユマ……俺に力をくれ」 あいかわらず不愛想な空を見上げ、かつてのユマを思い浮かべる。ザインと最後に三人で食糧調達に出かけた時の、屈託ない笑みを浮かべていた姿がよみがえる。小麦色の肌にすらりとした身体つきで、少しでもおしゃれがしたいと言って長い黒髪をポニーテールにまとめていた。どんな時でも明るく、周りを励まし続けていた。 灰色のキャンバスに思い描いたユマは、どこまでも神がかっていた。「……駄目か? 俺には、できないのか?」 目がかすむ。わき腹の痛みがひどくなる。手を当てると、ぬるりとした液体が服の下にへばりついているとわかる。やっぱりここまでか。あの時、警官に撃たれた時点で未来は尽きていたのか。俺はあいつらの約束を果たせず、こんなクソみたいな世界のど真ん中で無様に死ぬのか。なあ、教えてくれよ、ユマ―― 何も見えない。何も聞こえない。倒れた地面は暖かくて、どこか心地よい。俺を優しく迎え入れてくれる。見たことのない母親の姿を、俺はユマの顔に重ねていた。
今回、お題「神がかっていた」の使い方が難しかったので、それに着目して感想を書いてみたいと思います。>水樹さん>神がかっていた状況に日夜祈る者も少なからずいる。直径五十キロのUFOですか! 「神がかった」という表現が合っているかどうかは不明ですが(笑)、ものすごい状況ですね。何十万年先の人類がどうなってるかということを考えていたら、核のゴミをどうするかという話を思い出してしまいました。>マルメガネさん>その操船はまるで神がかったようだった。海底火山の噴火。それから逃げきるのは至難の業のように感じました。1952年の明神礁での事故を思い出しました。当時は映像技術もまだ発達していませんでしたが、現代で同じような事故が起きた場合は観測調査船からも映像が発信されるような気がしました。>ラトリーさん>灰色のキャンバスに思い描いたユマは、どこまでも神がかっていた。まるで、フランダースの犬のラストみたいに感じました。それにしてもこの作品はすばらしいですね。ちゃんとSFだし、お題も全部使っているし、内容も面白い。しかも、短くコンパクトにまとまっているのが憎いです。>自作品久しぶりに参加してみました。まだまだリハビリが必要かもしれません。でも三語は面白いですね。時間があれば、また参加したいと思います。
お題の臨時ニュースは「臨時ニュースですよー」と呼びかける以外の使い方は難しいな、と改めて思ったこの週末。>水樹さん 巨大宇宙船が街の上空に来る場面で映画「インデペンデンス・デイ」を思い出しました。宇宙人とは仲良くできるもの、なロマンティシズムをあの映画は木っ端みじんに砕いてくれたなあ、なんて回想してみたり。『いくら面白い小説を書いた所で食糧』あたりのくだりにはドキッとします。メタですね。 宇宙人か、地球人のどっちかで誰か個人的な目線を入れて出来事をキャラ視点で語る場面があると、個人的にはさらに好みだったかもです。>マルメガネさん 自然の脅威ですね。最近は特に実感させられる出来事が多い気がします。あるいは、どんなに文明が発達しても自然災害を完全に防ぐことができない分、それらが昔と変わらず膨大な被害をもたらして去っていくとより無力感をおぼえるからかもしれません。うーん、うまく言えないですがそう思います。 神がかっていた操船にもかかわらず全員が命を落とした海洋事故。何か一つ、その彼らの行動から未来へと遺す希望のようなものが読み取れれば、より物語が引き締まって見えたかもなんて思ってます。>つとむューさん おお、ミステリですね。大好きなのに自分で書くのは難しくて、こういう場で読めるのは本当にうれしいです。ちょっと、というかかなりカオスなところもありましたが、即興三語だからこういうノリも楽しいなと思ったり。エチゼンクラゲの有効利用に始まり、大神隊長が死んでたり、ファミコン探偵モドキが逮捕されたり、「モンハン賭博」が本当にあるみたいに書いてたり(ぐぐったらここが表示されました!)、各所に仕込まれた小ネタが面白かったです。「ひまわりさん」のネーミングも素敵。 よくばりを言うと、日ごろ推理小説ばかり読んでいるせいか、ラストにもうひとひねり真相を提示してくるかも! と変にみがまえたりしてました。「実はこっちが犯人でした」な展開を用意してあると、さらに楽しみが増えるかもです。>じぶんの 長編SFを構想した時に考えたキャラクターを、実際に動かしてみようと思って書いてみました。もっと素養を磨かないと長編は書けそうもないですが……とりあえず、すぐに誰かを死なせるやり方以外に何か思いつきたいところ。