カポエラ使いの彼女と僕 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/07/24 23:55
- 名前: 水樹 ID:SD2w/uvM
お題は、「尿道」「心の慰め」「支離滅裂肉欲大食破壊僧南無」「カポエラ」「眼球」から三つ以上です。
「支離滅裂肉欲大食破壊僧南無南無になるため、修行の旅に出かけます。決して探さないで下さい」と意味の分からない書き置きを残し彼女は去った。応援する気も探す気も毛頭なかった。僕は平穏を取り戻した。 彼女は口酒女さん、いや、口裂け女さん、一時間三語で作者が困った時にいつも登場している人物だ。はて? 作者って誰だろう。彼女はいつの間にか一人暮らしの僕の家に住み着いていた。心の慰めだろうか、浴びるほどのお酒を飲んでは、僕に無茶な買い物を行かせ、戻って来るといつも酔い潰れて寝ていた。一升瓶を抱えて眠る彼女の表情は可愛らしい、裂けている口は閉じて、表情は穏やかで慎ましかった。悪戯しようとなんて後が怖くて決して出来なかった。 忙しい毎日を過ごしていると、口酒女さんとの生活も幻想に思えてくる。懐かしくも楽しかった日々を僕は決して忘れないだろう。 「おかえりだっちゃ」 仕事から帰ってきて、ドアを閉める僕。部屋を確認し、再びドアを開けて見ると、 「やっぱり焼き鳥はうめぇだべさぁ、このもも肉がたまらんぜよ」 どこの国へと旅に行ったんだろう。言葉が定まらない口酒女さん。 「おかえりなさい、修行は成功しましたか?」 破壊僧になる為の修行なんて聞いた事はない、彼女はすでに泥酔している。 「おぅ、ブラジルでカポエラを習得したのらぁ、今、見せてやるにゃん」 にゃん? そう言うと彼女は立ちあがり、足を振り上げ、アクロバティックに動きだした。 スカートの中身など気にして無い、純白の下着など決して凝視してはいない、僕の鼻先を彼女のつま先が掠める。激しく動き回り、酔いも大分回ってそのまま潰れて寝てしまった。 「グゥグゥ… 酒は飲んでも口裂けるな、お前の口も裂いてやろうか… ムニャムニャ…」 彼女はどんな夢を見ているのだろう。毛布を掛け、口酒女さんの寝顔を見て僕は微笑んでいた。 しばらくはまた彼女に振り回されるだろう、それでもいいなと思ったりする僕がいる。
|
Re: 糞まみれの瀬戸物の壊れやすい蠅まみれの三語 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/07/25 00:05
- 名前: 昼野 ID:lIduCPbc
君の眼球を覗く。君の眼球には草原が映っている。それも大殺戮の果てた後の、血塗れの草原が映っている。血に塗れた草原の草の一本一本が、太陽の光を反射して、眩しい。 僕は君の目を愛おしく思って、舌を伸ばして眼球を舐める。白眼の部分だけを用心深く舐める。 少ししょっぱい味を予想していたけれど、君の目はなんの味もしなくて、ただ仄かに暖かさを舌に残すのみだ。 僕たちは浴槽に漬かっている。生暖かい湯を張った浴槽。その中には無数の金魚を泳がせている。近所のペットショップで買った、肉食獣の餌用として売られていた一匹60円の、血の色をした金魚。 金魚は僕たちの裸の身体にときおりぶつかり、その度にくすぐったい思いをする。君はいたずらに金魚の一匹を指でつまみ上げる。そして僕にウインクをしてみせてから金魚を噛まずに飲み込んで見せた。 僕たちは平穏な日常から逸脱し、「心の慰め」といった言葉が氾濫する当世風の生き方に背を向けて、こういった行為をして楽しんでいる。先のことは考えていない。過去のことも考えていない。 金魚を飲む君の姿を見て、ペニスが勃起する。君はその僕のペニス先端、尿道口を舌先で舐める。そのままフェラチオに移行する君の頭を撫でる。射精へと高まっていく意識のうちに、頭を撫でるのをやめて、君の首に手をかける。 君を殺そうと、手に力をこめる。君はあまり苦しそうではない。拒絶する素振りも見せない。相変わらずフェラチオを続けている。 やがて射精し、君の首にかけていた手を離す。君は金魚を飲んだ時のように、精液を喉を鳴らして飲み込んで見せた。 君は笑みを浮かべて僕に話しかける。 「何を見ていたの?」 「君の眼球。大殺戮の後の、血塗れの草原が映っていたよ」 「それは私の心象風景そのものかもね」 「君の心の中で生活したい」 「平穏さに飽き飽きした?」 「そう」 僕がそう言うと、君はむだ毛剃り用のカミソリを、僕の首筋にあてた。僕は僕で、再び君の首に手をかけて、力を込める。 やがて僕は首にかけた手を離し、君もカミソリを離した。不意に可笑しさがこみ上げてきて、二人で笑い合った。
|
Re: 糞まみれの瀬戸物の壊れやすい蠅まみれの三語 ( No.3 ) |
- 日時: 2011/07/25 00:38
- 名前: 言葉に惹かれて ID:Cmh6kxgA
母の気まぐれ
外は、分厚い雲のせいで真っ暗だった。まだ雨は降っていないらしい。 わたしは暗い自室で、目をこらして本を読んでいた。読み始めて間もないのだが、 いたるところに鉛筆で線が引かれている。それが、母親の読書の仕方だった。かび 臭そうなその本は、わたしが一人暮らしをするにあたって母から渡されたのだが、 そのときすでに表紙はなかった。おまけに、背表紙の文字がすりきれているから題名 もわからない。手垢のしみついた茶色い頁には旧字体が散見され、漢字源なしでは意味 がわからない個所もある。 支離滅裂肉欲大食破壊僧南無。頁をめくると、そんな文字が飛び込んできた。意味は よくわからないが、いわゆる煩悩から俗人を救う言葉だとしたら、少しは心の慰めにな るだろうか。 眼球の奥が重い。薬のせいだろう。長引くから、夏の風邪はやっかいだ。しかし一人 暮らしの今、家にいるかぎりは誰に迷惑をかけるともない。昔は、風邪を引いたといえば 家族、とくに母親からは嫌な顔をされた。真っ先に発病するうえにおまえの風は必ず人に うつる、と。
会いたい。 支離滅裂肉欲大食破壊僧南無から先に進まない頁を見つめながら、思う。 お腹を切ってまでわたしを生んでくれたのに、母はよく言った。おまえは性格的に嫌い。 たしかに、さばさばしている母からすれば、私の行動にはいらいらさせられるのだろう。 だから彼女は、「あんたが突かれるの、よくわかるよ」とよく口にしていた。それだけなら まだいい。わたしにはもっと悲しいことがあるのだ。おはようと言っても彼女からの挨拶はめったに返ってこないし、自分たちが育ててきた子供の話をするのにも兄のことばかりで、 わたしはほんとうに彼女とは相容れないのだと実感してしまったのだ。 でも、だからこそ気が向いたときの彼女との会話は、わたしに大きな幸せをもたらした。 それは、おはようという言葉が返ってくることであり、わたしの話しかけに反応を示して くれることであった。 わたしは、母の気まぐれを望んでいる。 だから唱える。支離滅裂肉欲大食破壊僧南無、支離滅裂肉欲大食破壊僧南無。 二度、唱えてみる。独立して二年、ホームシックだ。 支離滅裂肉欲大食破壊僧南無、支離滅裂肉欲大食破壊僧南無。 母親との確執に関して、わたしはたくさんの壁にぶつかった。それでも、親は親なんだ。 支離滅裂肉欲大食破壊僧南無。それを、救う言葉だと信じて。そしてわたしは、救いを 求める声で。
三語、二回めの挑戦。かなり強引に終わらせました。でも、心の慰めにはなった気が します。ちなみにわたくし本人は実家暮らしです。 時間が足りなかったけど、投稿に遅れてしまったけれど、楽しくかけました。 ありがとうございました。
|