Re: 即興三語小説 ―「脱却」「極遅筆」「飛翔体」 ( No.1 ) |
- 日時: 2017/09/03 20:33
- 名前: 1 ID:SGISymPs
その飛翔体について、目下調査中である。 以上。
目撃情報より、一か月余り。 謎の飛翔体についての調査レポートをまとめた、某調査官はため息をついた。 極端な遅筆。極遅筆であって、その脱却を彼は試みていた。 そうこうするうちに、とっくにレポート提出期限は過ぎ、調査も終わっていた。 見かねた同僚は彼にこう言った。 「5W1Hで済ませないと、あとからあとから来るぞ」 と。 やっぱり、そうか、と彼は思うもののできないでいる。 簡潔明瞭に、情報伝達をするうえで重要なことなのだ。
西暦20××年7月〇日未明に目撃された飛翔体について ○○大陸現地時間午前〇時頃、東の空に多数の光る翔体を×市の市民が目撃した。 その飛翔体について、目下調査中。 政府は各国大使館を通じ、未確認飛翔体についての情報提供を呼び掛ける方針である。
たったこれだけのことなのだ。 そのあと、彼は上司に呼び出され、叱責された。 彼の同僚が提出したレポートには、
西暦20××年7月〇日未明に目撃された飛翔体について ○○大陸現地時間午前〇時頃、東の空に多数の飛翔体を×市の市民が数名目撃した。 飛翔体は西に向かって飛び去ったと思われ、目下調査中。 政府は各国大使館を通じ、未確認飛翔体についての情報提供を呼び掛ける方針。 最終調査の結果については判明次第報告の予定。
と書かれてあった。 数日後、目撃された飛翔体についての全容が解明された。 結果的には流星による現象であった。
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