Re: 即興三語小説 -「らぶ!」「狐」「青空」 ( No.1 ) |
- 日時: 2015/11/29 14:11
- 名前: マルメガネ ID:ArVVMI.o
雲一つない青空が広がっていて、マオが八角楼から出かける。 目当ては一つ向こうの町にある街角の喫茶室。喫茶室らぶ!な彼は八街の色町を出て大通りに出ると、すっかり葉を落として冬らしい姿になったポプラ並木の道を歩く。 途中、晴れているにもかかわらず雨がぱらつき、降り出すものと思った彼は慌てて近くの建物のひさしの下に入った。 しかし、少しばかり雨がぱらついただけで、何事もなかったように空は晴れていた。 なんだか変な天気だ、とマオは思いながらも建物のひさしの下に入ったのが急にばからしくなって妙に損をした気分だった。 さっさと歩いて街角の喫茶室に入る。 「ああ、それはですね。狐の嫁入りです」 厳めしい口ひげがトレードマークになっているマスターに、マオが晴れているのにぱらついた雨のことを話すと、マスターはそう答えた。 「晴れているのに雨が降る。お天気雨とも言いますが、いまだに解明できていない現象です。昔の人は狐が婚礼をする、と考えたようですけどね」 マスターが続けた。 そんなやり取りをしながら、のんびり時間を過ごすマオにしてみれば、非常に賢くなった気がする。 とりわけてマスターの博識ぶりからして、どこからそんな知識が入ってくるのか不思議に思う。 そのうち、外出していたらしいタツキがずぶ濡れになって帰ってきた。 どこにいたのかは知らないが、水も滴るいい男が、なんだがぬれねずみになっているのはちょっといただけない。 「急に降ってきたもんだからさ」 そう答えるタツキに、マオが狐につままれたような顔をする。 「皇都は広いから、街区によっては降っている場所もあるのです」 補足するマスター。 「なんだか、変な天気だよね」 「いきなり降られるのも嫌なことだよ」 タツキがそう言って着替えるために奥に入っていった。 すると、日が差しているのに雨の降る音が外から聞こえてきた。 狐の婚礼もたけなわになっている、とマオは想像したのだった。
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