Re: 即興三語小説 ―頑固なヤニ汚れも真っ白に!― ( No.1 ) |
- 日時: 2015/05/07 19:16
- 名前: マルメガネ ID:xwuP.n3c
ショートピースの煙が漂う部屋のありさまといえば、それは霧霞のごとく漂い、チンダル現象を起こして閉め切られたカーテンのわずかな隙間から差す日の光が筋になって見える。 これは吸いすぎた、とばかりにショートピースの火をもみ消した部屋の住人は、少し息苦しそうな顔をして立ち上がり、タバコのヤニで茶色く染まって古びたように見えるカーテンを開け、建て付けの悪い窓をがたがた言わせて、霧霞のごとく漂う煙を外に出す。 断末魔のような軋む音を立ててようやく開いた窓から、煙が外に向かって吸い込まれるように消えてゆくのを見ていた彼は、そろそろカーテンも洗わなくては、と思い立ち、窓辺にかかっていたカーテンを取り外すと、風呂場に持って行き、風呂桶にそのまま放り込み、湯を入れ始めた。 その間にも彼は部屋の灰皿にてんこ盛りになったショートピースの吸殻を片付け、部屋の掃除を始めた。 長い間使うこともなく放置されていた洗濯板をもって風呂場に行くと、耐え難い色合いに染まった湯船の湯の色と臭気に驚きながらも、湯に浸したカーテンを洗濯石鹸で洗う。 それらの一連の作業を終えた後の部屋とカーテンは見違えるほどきれいになり、チンダル現象を起こしていた部屋とは思えないものとなり、彼は一種の達成感を覚えたのだった。 断末魔のような軋む音を立てる建て付けの悪い窓を開けたまま、彼はさっそくショートピースに火をつけたのだった。
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相変わらず酷いですが、投稿します。
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Re: 即興三語小説 ―頑固なヤニ汚れも真っ白に!― ( No.2 ) |
- 日時: 2015/05/10 21:20
- 名前: 星野日 ID:ThyT7ICI
なんかこう、昔のことで細かいことを覚えているわけでもないし、とっとと忘れてしまいたいんだけども、なんだか記憶にこびりついてしまいどうやっても忘れられない出来事というものは、誰しもにあるんじゃないでしょうか。 私にもそういう幼い頃の記憶があります。何かの拍子に「お母さんなんて嫌いだ、死んでしまえ」と言った次の日、母が風呂場で自殺しました。笑えますね。 どんなふうに死んでいたかは憶えていないのですが、血が染み込んでマーブル模様になった洗濯板を後で見た記憶がありますのでたぶん手首を切ったのでしょう。 私はそれからしばらくの時期、喋れなくなったそうです。これも余り記憶にないのですが。 昔から、困った時にヘラヘラと笑ってしまい、ひんしゅくを買うことがよく合ったのですが、この悪癖もこの頃からついたようです。 父や兄が時々ボソリとあの頃は大変だったなあと回想するのですが、本当に不思議なことで、母に悪態をついた記憶と、鉄臭い洗濯板のことぐらいしか憶えていないのです。前後の記憶は殆どありません。母に関しても余り覚えておらず、そういえばいつの日の朝に目玉焼きを一緒に食べた記憶というものを何故か覚えている程度です。あとタバコを吸っていたな。たしかピースという銘柄でした。 そもそも家族の記憶、というものが私には希薄です。 一度父と喧嘩をして、「私のせいで母が死んだから、私なんて嫌いだろう」とつい言ってしまったことがあります。 父の頭にカッと血が登るのがわかり、拳をぎゅっと固めるのが見えました。しかしすぐになんとも言えない顔をされ「嫌ってなどいない」とだけ言われました。 それからなんとなく父とどう距離をとっていいかわからず、そのまま成人前に私は家を出ました。 あのときいっそ殴ってくれたら、父とももっと違う関係を作れたのではないかと時々言われます。このご時世珍しいですが、父も兄も穏やかな人で、私に手をあげたことなど一度もないのです。この怪しい記憶が覚えている限り。
兄は、母が父と再婚する前に産んだ子供らしく、私とは半分しか血が繋がっていません。 いろいろと私を可愛がってくれていて、私が家を出てからもこまめに連絡をくれたり、物資を送ってくれたりしてくれます。兄の実父がどのような人なのか知りませんが、あまり語りたがらないので、良い思い出はないのでしょう。 父にも歳が十歳以上離れた妹が居ます。つまり私にとっての叔母です。とても明るい性格で容姿も綺麗な人です。しかしなんていうか悪い人ではないとおもうんですが、思いやりに欠けるというか我儘が強いというか、独身のまま歳をとった理由が察せられるような人です。私と叔母はとても気が合うのですが、父と彼女はそこまで折り合いが良くないようです。そういうところ、似ているのかも知れません。 昔、夕食の時に叔母の話が出て、父が兄に対して「妹には、そばにいて喧嘩したり仲直りしたりして、一緒に成長してくれる人がいなかったんだろう」というような話をしていました。 兄が私にあれこれ世話を焼くのも、そんな環境があったからなのでしょう。
叔母は職場の付き合いでお酒を飲み過ぎて電車の終電を逃し、私の部屋にふらりとやってくることがあります。あまりにも多いので、鍵を渡してあるほどです。 泥酔した叔母はそのままぐっすり寝ることが多いのですが、私が今日仕事から帰ってくると、チューハイの缶を片手にテレビを見ている叔母が今でまだ起きていました。 「お帰り」「ただいま。いらっしゃい」 短いやりとりを交わしてからシャワーを浴び、居間に戻ると、スルメをくちゃくちゃと噛む叔母が私に絡んできました。どうやら今日は悪いお酒の入り方のようでした。 あんたさー、家にたまには帰りなよ。あんたのお父さんや兄さんが心配しているよ。あんたのお父さんもまあ、不器用なやつよね。私とはしょっちゅう喧嘩して髪引っ張ってきたりいじわるされたけど、あんたにも同じようにしてやればまあもうちょっとは打ち解けられたかも知れないのにバカよねえあっはっは。あ、なに、あんたお父さん嫌いなの? 分からない? 馬鹿ねえ。 起きていようと寝ていようと、面倒くさいのは相変わらずのようです。付き合いで私もチューハイを一缶あけますが、どうも今日は話したいらしく、寝床に行かせてくれません。「明日お休みでしょ」確かに土曜日なのですが。 あんたのお父さん、子供の頃は結構やんちゃで、私なんかとは十二歳も歳が離れてるから喧嘩してもぜんぜん敵わないでしょ。私もあんたくらいの歳の頃はアイツのこと嫌いでさ、あ、別に嫌いってわけじゃない? しらねえ、まあ聞けよ。ともかくあんたのお母さんと付き合うまで疎遠になってたわけよ。んである日、私らのお父さんの葬式でちょっと話すことが合ってね、なんか悩んでることがあるんだというわけ。
叔母の話。 母は父の付き合う前に、別の男と結婚し、分かれているそうです。その男というのが暴力をふるうひどい男だったのだと、父は母からなんとなく聞かされていたのだとか。 ある日、父が家でくつろいでテレビの野球観戦をしていたときのことです。ひいきの野球選手が調子が悪く、エラーをするたびに怒鳴ったり、監督に文句を言ったりしていたそうです。ふと気がつくと、そばにいた母がいなくなっており、部屋を見渡すと青い顔で部屋の隅で隠れるように丸くなっていたのだそうです。安心させようと手を伸ばすと、断末魔のような叫びをあげられたのだそうです。 父はたいそうショックを受け、それからは声を荒らげたりしないよう、穏やかな態度で過ごすようになったのだとか。 「まあ弱い人だったのよね、あんたのお母さんは。あんたもさー、昔喋れなくなったの、お母さんに悪口言って死んじゃったからなんて話してたけど、気にすること無いんだよ。あの人が自殺したのは、あんたに言われたこと関係ないんだよ。なんかであんたのことを怒って、それで思わず殴っちゃって、そんなことをしたことを気に病んで死んだんだから。まったく」 言いたいことを言って、叔母はそのまま床に突っ伏して寝てしまいました。 私はその話をどんな顔をして聞けばいいのかわからず、ああいま自分ヘラヘラしているなと思いながら、聞いていました。 母が吸っていたタバコの銘柄はピースと言いましたが、その短さからショートピースとも呼ばれていたそうです。短い平和。笑えますね。
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シリアスな人間模様を書こうと思ったら、ただの鬱々した話になりました・・・!
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