ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
RSSフィード [141] 即興三語小説 ―秋ですが、まだ暑いです
   
日時: 2013/09/29 22:38
名前: RYO ID:P1hX66n6

「ところで、ほしいものは?」
 そう聞かれて、思い出したのは自分の誕生日だった。
「自由かな?」
「それって、私と別れたいってこと?」
「そうくる?」
 思わず苦笑してしまった。腕に抱かれておいて、彼女のセリフとは思えない。
「でも、ときどき不安にはなるのよ。独りよがりなのはわかっているんだけど」
「そういう気持ちになることが全くわからないわけではないよ」
 彼女の頭をぽんぽんと叩いてやる。喉を鳴らす猫のように、彼女の表情が緩む。
 これまで付き合った女から聞かされた言葉だ。「不安になる」と。オレの何がそういう感情にさせるのか、今もわからない。わからないが、女がそういう気持ちになるのだということは理解した。これまでの経験から。そういうことを言う女はオレの付き合った女だけかもしれないが。あるいは、そういうことを別れの理由に吐ける女としか付き合っていなかったのかもしれない。
「でも、自分の誕生日を忘れるくらい忙しい?」
 どうやら見透かされていたらしい。目を仕事に使うメッセンジャーバックにやる。パンパンに膨れている。必要書類というやつで、これから目を通すことを考えて、軽い頭痛を覚える。
「誕生日は空けておくから、何か美味いものでも食べさせてくれ」
「そんなこと言って大丈夫なの? あんなに膨らでる仕事が消化できるとは思えないけど」
 彼女が心配そうに見つめてくる。ま、その気持ちは分からないわけでもない。かくいう俺も自信があるわけでもない。が、
「オレを誰と思ってるんだ?」
 彼女の唇が、強がるオレの口をふさいでくる。
「ただの天才でしょ」
 彼女がいつものオレの口癖を唱えて、微笑んだ。
「ま、だから好きになったし、不安にもなるし。なんでも自分で決めちゃうしね」
 いたずらっ子のように、舌を出して笑う彼女に、苦笑するしかなかった。
「ただの天才のこのオレに、あれくらいはさっさと終らせるさ。それが終ったら、誕生日を楽しみにすることにしよう」
「あ、今、私のハードルをあげたわね」
 そう笑う彼女に、そろそろ身を固めることも悪くない気がした。
 


強制終了してしまった
--------------------------------------------------------------------------------


●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「ほしいもの」「メッセンジャーバック」「ただの天才」
▲縛り:なし
▲任意お題:なし
▲投稿締切:10/6(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

--------------------------------------------------------------------------------

○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

------------------------------------------------------------------------------

メンテ

(全部表示中) もどる スレッド一覧 お気に入り 新規スレッド作成

Re: 即興三語小説 ―秋ですが、まだ暑いです ( No.1 )
   
日時: 2013/09/30 18:56
名前: マルメガネ ID:Bxassi0s

    ある日の会話

彼のメッセンジャーバックにはほしいものが詰まっている。
ただの天才とは違うところは、その選別が巧みでセンスが良い。
「本当にほしいものはね。見たとき、これがいいと直感したときだよ」
 彼に秘訣を聞いたところ、そんな答えが返ってきた。
「あれもこれも、ってやってしまうなぁ。気がつけば結構買ってるんだ」
「うん。それはいいけど結局あとで後悔するんさね。本当に必要なモノ。そうでないモノを考えた方がいいよ」
 私は、なるほど、と思った。
 やはり彼はただの天才ではない。
 私はそれから買い物の考えを少し変えた。
 しかし、彼ほどのセンスはなく無駄買いばかり。
 でもいくらかは治まったような気がしている。

メンテ

(全部表示中) もどる スレッド一覧 お気に入り 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
E-Mail 入力すると メールを送信する からメールを受け取れます(アドレス非表示)
URL
パスワード (記事メンテ時に使用)
投稿キー (投稿時 投稿キー を入力してください)
コメント

   クッキー保存