Re: 即興四語小説 ―明日から10月。やり逃したことはないか?― ( No.1 ) |
- 日時: 2012/10/01 01:05
- 名前: 水樹 ID:ZdFz9NcI
お題は、「暴風圏」「本格」「陰湿」「おれ働いたら、万年筆買うんだ……」です。
「立ち話もなんですから、そこに座ってコーヒーでも飲みながら語りましょう」 自己紹介を軽く済ませると、リョーと名乗る人は紳士的、且つ穏やかに私を駅前の喫茶店に促す。窓際の席、私達は向かい合って座る。 緊張している私は、窓にばかり目を向ける。女子高生二人が短いスカートを誰に見られる事もなく抑えている。暴風圏とまではまだいかないが、外に人の姿はほとんど見られない。 「台風が近づいているのですね」 「そうですね」 会話にならないまま、ブラックを飲むリョーに対し私は砂糖二杯とクリームを入れ、ほどよくかき回す。 物書きと言う事で、もう少し陰湿な感じのリョーを想像したが、服装、振る舞いはそうでも無かった。悪く言えば普通の人。それは私自身にも当てはまるのだろう。それでも、こう言う普通な人でもあんな作品を描くのだなと、リョーの作品をいくつか思い出す私は、不思議と笑みが零れていた。 お互いの第一印象、想像での人物象などを交わす内に、私の緊張も緩み、コーヒーも三杯目で口も滑らかになっていた。 さらに滑らかな舌触りのとろけるチーズケーキを私は御馳走になり、饒舌になる。 今まで入れ辛かったお題。私は、「おれ働いたら、万年筆買うんだ・・・・・・」との事を説明する。会話文はなるべくお題にして欲しくないとの私にリョーは、 「じゃあ、今度は三つとも会話文だね」 意地悪で無邪気な笑みを浮かべる。 「その時は、参加しませんよ」 石があったら投石したいのをぐっと堪え、少々ムキになった勢いで、今度はチョコレートケーキを注文する私。 それから、好きな映画や小説の話で、リョーの作品の幅の広さを垣間見えた気がした。 他には本格的な作品、一般投稿への意気込み、縛りや任意があった時代を少し懐かしんで、時間にして二時間ほどで私達は別れる。 外に出ると、湿っているが、何故か爽やかと感じる風が、私の足取りを軽くしてくれる九月の終わり。
|
|