即興三語小説 ―第114回― ミーティングは日曜の21時から ( No.1 ) |
- 日時: 2011/09/05 01:39
- 名前: 水樹 ID:i0CsPwwM
▲お題:「変色」「神がかっていた」「臨時ニュース」 ▲縛り:「観測調査船を作中に出す」もしくは「SFにする」 ▲任意お題:「血痕」「警察官」です。
「臨時ニュースです。現地時間午前九時、アメリカのアリゾナ州から飛び立った観測調査船の乗組員達の安否の確認が取れました。七十二時間以上、上空に停滞する地球外宇宙船に入った後、送信機、発信機の反応が途絶え、アメリカ西海岸沿岸に不時着していた模様です。調査員の五名とも命に別状ない模様です。おって連絡をお送りします」 地球の誰もが興味を持ってテレビに釘付けだった。 上空わずか三百メートルたらず、そこに突如として宇宙船は現れた。一つの街を覆い尽くすほどの大きさ、直径五十キロメートルの変色した? 何色ともつかない、見る人や角度によって色の定まらない円盤の真下は夜も同然で、人々の不安を煽る。神がかっていた状況に日夜祈る者も少なからずいる。祈っても無駄な時代だというのに。 相手から連絡がない以上、地球側から行動するしかない。 「ええ、中は全くの空っぽだったのです。私達は隅々まで調べました。様々な器具を用いましたが、何も、誰も無かったのです、宇宙船の底に巨大なファンがあるだけなのです」 隊長、調査員全員が同じ事を言っていた。宇宙船内部を撮影した映像からも同様だった。 各国の調査員も搭乗するが、何一つ得られなかった。 これをどうするのか? 地球人はどうもしなかった。宇宙船の真下の街は、夜の街として観光を募っていた。すぐに日常になる。時間を置いて、一つ一つ、宇宙船が地球を覆い尽くすまで誰も不思議と思わなかった。
早朝、人知を超えた映像がそこにはあった。 それは空一面がまばゆいばかりの光を発していた。 何も描かれていない画用紙の白、真っ白、まさに世界は白く包まれている。 微かだが近所の家々の輪郭だけが浮き出ている。 人々は靴も履かずに外へと飛び出し、光を全身に浴び、自らも白へと溶け込ませる。その光は人々の体の自由を奪うと空へと持ち上げた。 「どうなってんだよこれ!! なんなんだよ!!」 阿鼻叫喚の叫びとともにいたるところで同じ声が聞こえる。 それでも光は上へ上へと天使の人々を天国へと浮かせる。 手足を回して踠いても何もつかめず光の空へと引き上げられる。 考えられるのは夢、もしくは自分は死んでいる。 これが終わりなのか、これから始まるのか何もわからない。 ろくな答えも出せないまま、どんな想像もつかないまま、ただ白い光へと導かれていく。 息苦しい、どのぐらい上がったのだろう? 視界といえば何一つ存在しない真っ白な空間、もう、上下の感覚もなくなり、果たして浮いているのかも分からない、ただ人々、動物の歓喜、狂気の声だけは耳に届き喘いでいる。 やがて地球人は見ることになった。 見た後全てを理解した。 光の奥にある巨大で壮大なミキサーに人々、動物達は吸い寄せられていく。 現実とは、かけ離れた映像を直視した人類はこう思った。 凄い夢だな…
人類が築き上げた文明、歴史、芸術は一日にして全くの無に帰る。 人の価値とは食料でしかなかった。 いくら人々に幸せをあたえたところで食料、いくら愛を分かち合ったところで食料、いくら子供を産んだところで食料、いくら子供の成長を見守ったところで食料、いくら円満な家庭を築いたところで食料、いくらお金を稼いだところで食料、結局は、いくら人に慕われたところで食料、いくらがんばったところでやっぱり食料、いくら面白い小説を書いた所で食糧、老若男女、人種をなくし平等に、人類最後の大収穫、まさに地獄絵図、地球を囲う、宇宙船の光の奥の無数の巨大ミキサーに増えすぎた人々、地球上の食料達は吸われていく。 抵抗もなしに、見るも無惨なグチャグチャの細切れミンチにされていく。 全ての生物、人々の悲鳴が大合唱となり、地球規模で壮大なグランドフィナーレ、ファンファーレを巻き起こす。 一通り、大半を収穫されると送られた衝撃波が地球の表面を削り、水、海を全て枯らし生物、地球に君臨していた人類はいとも簡単に根絶やしされた。 そう、かつて地球を支配していた恐竜の時代がそうであったように。
地球は繰り返される放牧地、次の動物が進化し、莫大に増加し、次なる地球を支配しても再び血肉と化した食料にされる。 1250万年後、次に地球を支配したのは、恐竜でも、人類でも、チンパンジーでも、ゴリラでも、オラウータンでも他の類人猿でもなければ、犬や猫でも鼠でもなく、イルカや鯨でもなければ、ゴキブリでもカラスでもなかった。 以外にもコウモリ。 そう! 夜の帝王、真っ黒なコウモリが進化し、次なる地球の頂点に君臨した。 進化し、飛べなくなって人間と同じまで文明を築いても、その闇夜に染まる黒だけは抜け出せないままでいた。 そして、何も知らずに彼らもまた収穫される。
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