Re: わしゃァ見たんじゃ。あれは間違いなく、三語じゃった。 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/08/21 23:11
- 名前: 楠山歳幸 ID:U4M0nCWk
うわー!ごめんなさい!
陸へ上がった人魚はただはいずり進む。
いつか暗い穴倉から見た自分とは違うもの。白く光る空のような水面から降りてくるもの。二本の尾ひれを持ち、目に眼帯のようなものを付けていつも岩のあたりで何かを探している。 「あなた」 姿を見せず話しかけるも、海水のために震える声。 「あなた」 いつも真剣な雰囲気。それはよほど大事な物をこの暗い広い世界で探しているに違いない。しかし、仕方なくなのか、それはいつも貝やらうにやらを持っては帰る。人魚はそれが何を探しているのか、見当がついた。 「違いますよ。そこを右に」 親切な人魚はいつも震える声でささやく。しかし、いくらささやけども降りてくるものには届かない。ある日、人魚は空に浮かぶ、降りてきたものが乗っているであろう黒い影を追い、そっと水面から顔を上げてそのものを目で追う。それは拾ったものを運びながら、海岸のそばの、立派な大きな箱の中へと入った。 「あそこに住んでいるんだわ」
陸へ上がった親切な人魚ははいずり進む。いつも見かける人間というものが真剣に探しているであろう大切なものを持ちながら。人間はそれを見て喜ぶだろうか。そして少しは仲良くなれるだろうか。
人魚の手には、人の頭がい骨があった。
うわー!ごめんなさい!ごめんなさい!
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