Re: 即興三語小説 ー「温泉」「人生最高の」「一発解決」締め切りを11/4に延期します。 ( No.1 ) |
- 日時: 2018/11/04 14:27
- 名前: マルメガネ ID:.jdJHDt6
ここは、どこかの山奥。 人生最高の温泉を求めて、というコンセプトでそのプロジェクトは始まった。 しかし、山奥といってもさらに山奥の域を超えた秘境とも呼べるその地にたどり着くにはかなり困難を生じた。 温泉掘削、とまではいかない。 たちまちは源泉が発見されたのだが、そこは大火山地帯であり、地獄の様相をかもしており、草木は一本も生えず、飛ぶ鳥の姿すらもなく、ただ荒れ果てた噴気地帯であった。 問題はややもすれば、毒ガスの大噴出によるガス中毒死の危険性すらあって、ふもとに新設予定の温泉宿に供給する温泉パイプラインをどうやってひくのかという具体案も示されないままだった。 一発解決にならなかったのである。 ある日のことである。 ぐだぐだとして、一向に進まぬプロジェクトチームの会議室が揺れた。 地震である。 それから一時間もしないうちに遠方から野砲が轟き渡るような音がして、あたりが暗くなった。 全く状況がつかめずに右往左往するメンバー。 「大地熱地獄谷にて、水蒸気爆発発生。直ちに非難をしてください。繰り返します。大地熱地獄谷で水蒸気爆発が……」 役場の防災車がアナウンスをして回る。 そして、再び揺れが襲い、大艦砲射撃で着弾爆発したような音が響き渡り、川は湯気の立つ濁流が渦巻いて流れ下った。 それから何年かが過ぎた。 プロジェクトチームは諦めていなかった。 地獄谷に新しくできた噴気孔から勢いよく噴き出す蒸気と熱水が、毒ガスが発生しそうな危険地帯から外れて流れ出しているのが見出され、調査の結果、水蒸気爆発の危険性が生じたかつての新設予定だった温泉宿は位置の変更を余儀なくされたものの、パイプラインの設置計画線上にあったため、それは実施された。 その温泉宿は後に繁盛し、秘境というも、やはり人生最高の温泉を求めてくる客も増え、大爆発した地獄谷の噴気孔は熱湯の池になって観光名所になったのだった。
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