Re: 即興三語小説 ―「あったか」「ショートタンクトップ」「鶏天」 締め切りは12/25に延長です ( No.1 ) |  
- 日時: 2016/12/25 21:51
 - 名前: みんけあ ID:S0LHJyQI
 
 あったか ショートタンクトップ 鶏天
  聖夜
  「ただいマンモス、ハッピークリスマス」  昼に最高の食材仕入れてくると海に潜った、見た目綺麗なおばさん人魚の海野恵、ザボンギさんは陽が落ちた頃に帰ってきた。冬でもショートタンクトップのザボンギさん。冬の海に潜るだけあって、人間とは体感温度が違うのだろう。  ザボンギさんに関してはSF板をご覧ください。 「いやあ、密輸船が見つからないかわりに、まさか伝説の生き物が手に入るとは思わなかったよ。クリスマスだし夕飯に食べようぜ」  そういう貴女も伝説の生き物ですけど。ちょ、頭のお皿に甲羅、緑色の皮膚、生臭さが増している。河童ですよね? クリスマスにそんなゲテモノ食べる習慣はありません。人型は勘弁して下さい。  床に置いた河童を恐る恐る調べるとどうやら息があるみたいだ。ペシペシと頬を叩くと手がヌメヌメの粘液を纏う。ケホケホと海水を吐き出した河童は目を覚ますと。 「助けてくれてありがとちゃん。俺はジョニー」  名前など聞いてはいない。目覚めた河童に対してザボンギさんが舌うちしたのが聞こえた。どんだけ食べる気満々だったんだ。  この家にいる唯一の肉親であるお婆ちゃんが温泉旅行でほっとしている僕がいる。  何故海に河童がとの質問の前に、ジョニーは、 「よっこらしょーいち」  え? 外せるの? 甲羅を外し、中から一生瓶五本とベルクの鶏天ときゅうりを出した。  豪快にラッパ飲みで一気に半分空ける飲んだくれ人魚。未成年の僕はジュースできゅうりをツマミに齧ると塩加減が絶妙でちょっと悔しさが募った。  それも取れるの? 頭の皿にお酒を注いで飲む河童。もはや異星人にしか見えない。  何だこれ? 今日は聖夜ですよね?  サクサクと飲む人外二人。酔いが回ると盛り上がった二人はゲームを始めていた。シラフの僕はどこか虚しい。 「ぐへへ、あっしが勝ったら姐さんのオパイを揉み揉みさせていただくでやんす」  何故口調が変わる。下衆な顔で河童は厭らしい手つきで勝負に挑んだ。  僕のレディーゴーの合図で腕相撲の勝敗は一瞬で決まった。  衝撃音と共にテーブルが真っ二つだ。河童の腕がプランプランしている。酔いが回っているから痛くないの? 「次はカラオケで勝負でやんす。あっしが勝ったら姐さんのオパイを舐め舐めぺロリンさせていただくでやんすよ」  甲羅からカラオケセットを取り出すエロ河童。明らかに甲羅の容量を超えている。どこぞの四次元ポケットなの?  ザボンギさんの歌。郷里の家族を懐かしむ、心に沁みる悲しい歌だった。人魚の歌声がこれほどとはと自然と泣いている僕がいた。  見るとゲス河童も涙を流していた。  歌の最後に、 「河童。帰る家があるんだろ。とっとと帰りな」 「そうでした。私の帰りを待つ家族達。クリスマスだって言うのに子供をほったらかしでいた自分が情けない。プレゼントを楽しみにしている子供に合わせる顔がありません」  会心したエロ河童。子供達に罪はない。ちょっと待ってとプレゼントに河童に携帯ゲーム機を渡した。ヌメヌメの手で握手されても嬉しくはない。甲羅にしまうと、御達者でと夜の帳に消えていった。玄関で見送る、二度と来ないでと心の中で呟いた僕がいる。  部屋に戻ると人魚は空の一生瓶を抱えて酔いつぶれていた。 「むにゃむにゃ、ウヒヒ、十二月二十五日は一年に一番の祭にしようぜ。あん? キリスト? 髭のおっさんか懐かしいな。南無南無」  何時の時代のどんな夢を見ているのだろう。いくら人魚でも風邪引くだろうと布団を掛けると腕を引き寄せられた。 「むぎゅ」  人魚の胸に抱かれる僕。 「温もりをありがとちゃん。あったかい最高のプレゼントだ」  寝言にしてはと思ったけど、僕もこのまま眠るとしよう。プレゼントは早起きして置く事にしよう。  シャンシャンシャンの代わりに、シャリシャリシャリときゅうりを齧る音がしていたのは気のせいだろう。
 
 
 
  メリークリスマス♪
 
  
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