Re: 即興三語小説 -今年もよろしくお願いします- ( No.1 ) |
- 日時: 2016/01/12 00:13
- 名前: RYO ID:Qv/OjJ.g
年が明けた。とぼとぼとショッピングモールを私は歩く。何もかもが灰色に見えた。 クリスマスまでは、多分こんなはずじゃなかった。今も信じられない。 組むはずだった腕がないことに気がついたのは、ダッフルコートのポケットに手を突っ込んだときだった。あまりにもなれていて、そんな当たり前のことすらわからなくなっていた。 別れたのはクリスマスだった。三年付き合って、なんとなく結婚するんじゃないかと思っていた。それくらいうまく行っていたと思っていた。 「今年くらい帰ってくるだろう? お父さん、会いたがってるよ」 そう電話をしてきたお母さんの言葉は、仕事が忙しいと嘘をついた。あいつと過ごすと決めていたから。実家に帰っていないのは、これで五年だ。今年ほど自分の親不孝を呪ったことはない。それでも実家に帰るという選択をとらなかったのは、なぜだろう。今にして思えば、気分でも紛れたかもしれない。年始のテレビに飽きて、レンタルついでに家から出る必要もなかったのかもしれない。 あいつはクリスマス用に買ったケンチキを食べながら、言った。 「他に気になる人が――」 そのあとのことはよくわからなかった。買っていたプレゼントを投げて渡したことは覚えている。欲しがっていたレザーのブーツをあいつを見ることはなかった。 「なんで、今日なのよ。今日はクリスマスなのに」 「ごめん」 作っていたパスタも、シチューも次の日に残飯にして捨てた。ワインを一人で開けて、仕事は休んだ。テレビに出ていた福山を見ながら、彼の結婚を聞いたファンの気持ちってこんなんだったのかしらとか思うと笑えて、乾いた声だけが一人ぽつんとした部屋に響いた。 本当なら、こうしてあいつと歩いていたのかな。 店の入口に申し訳なさそうに、小さな門松が置いてあった。店は和の食器の並ぶ専門店だった。 申し訳ないのは、私のほうか。 ごった返す人ごみに酔う。福袋に並ぶ列が蛇行している。もしかしたら、あの列にいたのかもしれないと思うと、さっさと売切れてしまえばいいのにと思う。ふと地元のショップに、売れ残った福袋が「買ってください」と言わんばかりに、店頭のワゴンに乗っていたのを思い出す。四、五袋はあったように覚えている。作りすぎたのか、それとも、売れ残りをこれを機にからっぽにしたかったのか。 私もいずれそうなるのかな。職場ではお局と言われるようなるのかしらね。 あながち冗談でもないような気がして、ため息がついてでた。 とりあえず、明日の仕事は出ることにする。代わりに休みたいと言っていた後輩に休みたいなら、休んでもいいことを連絡する。 こうなると仕事でもしていたほうがまだマシだろう。 ふと、もし今日がクリスマスで、サンタの格好をしている人にでも会ったのなら、こんなにも寂しい思いはしなくてもよかったのかな―― -----------------------------------------------------
大体60分くらい。 門松でみょうに難しくなった気がします。 物語にならなかったのは反省すべきですね。。
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